【BitSummit】吉田修平氏が語る、インディゲームの未来と『Dreams Universe』のツールエンジン化への野望【電撃PS】

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 2019年6月1日、2日に京都市勧業館“みやこめっせ”で開催された“BitSummit 7 Spirits”。会場を訪れていたSIEワールドワイド・スタジオプレジデントの吉田修平氏にインディゲームの展望などをうかがった。

  • ▲SIEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏。

中国製ゲームをはじめ、全体的な質の向上を感じたBitSummit 7 Spirits

──今回のBitSummit 7 Spiritsはどんな印象ですか?

吉田修平氏(以下、敬称略):時間の合間を見て回りましたが、今年は会場外周に展示されているメジャーなインディパブリッシャーだけではなく、中央にあるよりインディ的なゲームや学生さんの作品に面白いゲームが多くて、本当に全体的なレベルが上がっていると感じました。

──そのなかでも、具体的に気になったタイトルなどはありましたか?

吉田:まずPlayStationブースのオススメとしては『Wattam』や『Bloodstained: Ritual of the Night』といったメジャー感のあるクリエイターの作品があります。今年は、そこに中国や韓国のゲームもいくつか出しました。これは、昨年から「アジアのゲームを紹介しよう」ということで始めた試みだったのですが、今年はとくにゲームのクオリティが上がっていますね。

 私も開発の早い段階から見せてもらいましたが、たとえば『F.I.S.T』というアクションゲームや『ANNO: Mutationem』といったゲームなど、3Dのグラフィックスを使いながらもゲーム性が2Dという“2.5D”の作品が増えました。並ばれている方の時間を奪うわけにはいかないので自分では遊べなかったのですが、横から見ていても遊びたくなるようなクオリティの作品ばかりですね。もし、中国で作られたと言われなかったら、日本で作られたゲームとしか思えないところまで来ているかなと。中国は今、資金が豊富なのでこの勢いでいくとインディゲームの分野でも抜いていかれる可能性すらあると思います。

  • ▲PlayStationブースで体験できた『F.I.S.T』。

──アプリの世界では、すでに中国の技術力が高いですよね。

吉田:私も、今アプリで遊んでいるゲームのほとんどが海外製ですね。アジアのゲームの勢いが強まっているのを感じました。

──PlayStationのブースは、昨年以上に展示されているタイトルが増えていましたね。

吉田:内輪での話ではあるのですが、昨年まではインディゲームをサポートしている窓口のチームが出展を担当していました。今年は、なんとマーケティングのチームも入ってきて動いているんですよ。そういった意味でも社内の1セクションだけがやっているのではなく、会社ぐるみで真剣に取り組んでいる感じが出ていたのだと思います。

──それは、SIEのなかでインディゲームへの取り組み方に変化があったということですか?

吉田:おそらくBitsummitの認知度が上がったことで、その重要性が社内的にも認知された結果だと思います。今の社内的な印象ですが、あまりインディと大手を分けていないんですよ。良い物は良い物だと区別せず、普通に扱っている感じがしますね。

──PlayStationブース以外で、気になったタイトルはありましたか?

吉田:個人的に「オッ!」と思ったのが、任天堂さんのブースにあった自転車でのダウンヒルゲームですね。『Lonely Mountains: Downhill』というタイトルなのですが、すごくテクニカルな感じで面白そうでしたし、遊んでみたいゲームでした。

 それから『Sweep it!』というゲームですね。これは、移動やジャンプなどのボタン入力をすべてステップバイステップのプログラムみたいに置き換えたパズルゲームなのですが、メチャクチャ面白かったです。完成度も高いですし、プロの方が制作されていると聞いて納得しました。

  • ▲アクションゲームの動作を1手ずつ分解して入力していくパズルゲーム『Sweep it!』。

 
 ドイツのディベロッパーMooneye Studiosが作った『LOST EMBER(ロストアンバー)』というタイトルも良かったです。絵柄もすごくきれいですし、いろいろな動物に乗り移りながら進んでいくアドベンチャーゲームで気持ちよく遊べました。狼から乗り移って大きくなったり、逆にちっちゃくなったり、鳥になって滑空したりと、すごく雰囲気があって、会話も戦闘もないゲームなのですが良かったです。

 あとは『にんげんタワーバトル』ですね。回転も速いですし、会場内でも人気が高かったです。ゲームではないのですが発想が良いですね。

  • ▲好きなポーズで撮影し、人間自身がブロックになる『にんげんタワーバトル』。『どうぶつタワーバトル』の作者公認の会場限定体験型コンテンツだ。

 個人で作られていた『Here and there』というインタラクティブ絵本も良かったです。iOSで無料配信されているアプリなのですが、手描きで絵を描いてスキャンしてから取り込むという『Cuphead』のような手法で作られているんですよ。画面を触るといろいろな反応があって何かが起こり、小さな子供でも楽しめるような作品だったのですごく気にいりました。

ほかにはPlayStationブースで展示していた『ウエスト オブ デッド』も絵柄がカッコ良くて遊びたいと思いましたし、発売済みのタイトルですがDevolver Digitalさんの『Gato Roboto』も良かったです。本当に粒ぞろいで挙げると限りがないですね。

──確かに全体的なレベルが向上した印象です。ただ、そうなると突出して目立つことが難しくなっているような気もしますが、こうした状況をどうお考えでしょうか?

吉田:やはり、もうパブリッシャーがなくてはならない存在だと思います。こういったイベントは、出展することでパブリッシャーに作品をピックアップしてもらう場にもなっているので、インディゲームを作る方は、イベントがあったらとにかく出すことを続けることが重要ではないでしょうか。

──その場合のプロモーションは、これからどうなっていくと思いますか?

吉田:そこは、パブリッシャーのカラーが出てくると良いと思います。たとえばDevolver Digitalさんはクールなゲーム、Annapurna Interactiveさんは個性的なゲームと、だいたいのイメージがわかりますよね。日本のインディのパブリッシャーさんもさまざまなゲームをサポートされていると思いますが、パブリッシャーとしての個性やカラーが出てくると、より良いかもしれません。

表現者を増やすための試みとして作られた『Dreams Universe』

──全体的に質が向上していますが、将来的にインディゲームの未来はどうなっていくと思いますか?

吉田:手前味噌な話で恐縮なのですが、今個人的にプッシュしているのが『Dreams Universe』という開発ツールなんですよ。これは誰でも表現できるツールとして提供しているのですが、長くサポートして開発を続けていこうと考えています。今は一般の人が普通のゲームと間違って買わないように、あえてアーリーアクセスにして「クリエイター向けですよ」とうたっているのですが、購入自体は誰でもできます。

 ツールとしては完成していて、これからみんなでコンテンツを作りましょうという段階なのですが、本当にあらゆる人に表現して欲しいですし、表現者を増やしたいですし、あるいは将来の表現者が誕生するきっかけになるようなツール類として出しています。まだ仕組みは出来ていないのですが『Dreams Universe』をゲームエンジンのように使って、完成した作品を商品として販売できるようにもしたいですね。本当に、いろいろなことをやっていきたいと考えています。

 プロトタイピングに優れたツールなので、たとえば学校で教材として使われたり、ゲームだけではなく舞台演出を考える時のスケッチに使ったりと、色々な分野のクリエイターが使えるようなものにしたいですね。ここから何が生まれてくるのか、非常に楽しみです。

  • ▲誰でも本格的なゲームが作れるツールとして期待が高まっている『Dreams Universe』。間口は広いが、非常に奥深いことが可能なツールとなっている。

 今のインディゲームブームの後ろにはゲームエンジンの発展がものすごくあったので、そこをもっと広げるような機会になって欲しいですし、弊社の『Dreams Universe』だけではなく、業界的にもそういった展開が進んでいくのではないでしょうか。マシンパワーもどんどん上がっていますし、小学生がすごい物を作って世界中に発信するような事例も出てくるのではないかと期待しています。

──ただ、実際に『Dreams Universe』でゲームを作ってみたくても、まだまだ難しそうだと思っている人はいるような気がします。

吉田:ツール類がすごく深いですからね。だから、上手い人が使うと「何が起こっているの!?」と思ってしまうくらい、魔法のように物ができていきます。もちろん、ゲーム作りが初めての方も『Dreams Universe』ではチュートリアルに力を入れているので、ただ勉強するのではなく、作りながら楽しめるのではないでしょうか。

 作ることを学ぶ=ゲームになるようなインタラクティブな物を作っていますし、今もツールをどう使うかだけではなく、背景にあるビジョンを一緒に学べるようなセクションも作っています。アートだったら、作り方を学びつつ、アートの基礎や気を付けるべきところなども一緒に学べるようなものですね。

アーリーアクセス版なので、コンテンツ自体はまだ2つくらいしかありませんが(作品を作るモード、アップロードされた作品をプレイするモード)、いろいろ楽しみながらそういった知識をつけてもらったり、自分の作品を作ることに限らず、楽しみながら“作る行為そのものを身に着ける”ことができる楽しいものになりそうな気がしています。

──作ることを学ぶこと自体から楽しめるのはいいですね。

吉田:できることが多くて本当に深いツールなので、そうしないといけないんですよ。サウンドツールが一番わかりやすいかもしれないですが、サウンドツールだけでも相当奥深いです。

──すでにアーリーアクセス版で購入し、制作している人も多いですね。作品のバリエーションもかなり見受けられます。

吉田:私自身が良いなと思ったことなのですが、チュートリアル動画を作ってYouTubeにアップしている人がいたんですよ。我々でチュートリアルを作らなくても、ユーザーさんが別のユーザーさんに教えるような流れができているんです。

 開発しているMedia Moleculeの人たちとも話していたのですが、ほかのゲーム制作ゲームで遊んでいた人が、こちらに移ってゲームを作ってくれているようですね。クリエイトをすることが好きな人たちや、作った作品をストリームなどで世の中に広めている人たちが、「今度は『Dreams Universe』を使おう」と思ってくれているみたいです。

──最終的に『Dreams Universe』は、開発ツールを使った大会を開くといったサポートを行うようなことも考えておられるのでしょうか?

吉田:いろいろやっていきたいですね。世界中にいるクリエイターが集まって情報交換できるような仕組みや、あるいは一緒に何かを発表するようなことができたらいいと考えています。『Dreams Universe アーリーアクセス版』は、ツールとして考えるととてもお得な価格で販売しているので、小さな子どもにも触ってもらいたいですね。プログラムを学ぶのではなく直感的ですし、チュートリアル自体もゲームのように遊べるので、吸収の早い子どもにも向いていると思います。

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