『フロストパンク』レビュー。気温-20度から始まる都市開発ゲームはなぜプレイヤーの心を引き付けるのか?

電撃PlayStation
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 DMM GAMESより2月27日発売のPS4/PCソフト『Frostpunk(フロストパンク)』。本作は、氷河期の訪れによって全世界が凍結した架空の19世紀を舞台に、都市を開発して生き残りをはかるシミュレーションゲームです。

気温はいきなり摂氏-20度からスタート! 常に死と隣り合わせの環境での生き残りがたまらない!

 都市開発シミュレーションといえば、まずは道路と建物を用意して、人を集めて~といった感じで、わりとほのぼのと遊ぶイメージが個人的にはあるのですが、本作は氷河期ですべてが凍り付いた世界が舞台。屋外の気温は一番暖かくて摂氏-20度! しかも-20度で過ごせる期間はごくわずかで、時間の経過とともに気温はどんどん下がっていきます。

 そんな環境下におかれた住人は簡単に病人になり、やがては死に至ります。プレイヤーは、住人の労働の対価に食料と住居を提供するリーダーとなって、都市を開発、運営していくのです。住民には“希望”と“不満”の感情が設定されていて、希望が低すぎたり、不満が高すぎるとリーダーを追放してゲームオーバーとなってしまいます。

 このタイプのシミュレーションは、おもに発展がゲームの目的となりますが、本作においてはあくまで自身と住人の生き残りが目的。過酷な状況がプレイヤーをじょじょに追い込んでいくサバイバル感が、なんとも言えないおもしろさをもたらすのです。

蒸気が万能エネルギーなスチームパンク世界。中央から同心円状に広がる独特の景観がステキ!

 本作の特徴のひとつは、蒸気をおもなエネルギー源として発達したスチームパンク世界であること。産業革命期のイギリスをモチーフとした様式に、さまざまな蒸気機械が組み合わさったデザインは、独特の見ごたえがあります。

 自分の作り上げた街をすみずみまでながめて楽しめるのは、都市開発シミュレーションのだいご味といえるでしょう。フォトモードも実装されているので、自分の作った街を自由にながめつつ、さまざまなアングルで街を撮影してSNSに上げることもできます。

 世界観がスチームパンクであることは、ゲームシステムにも大きな影響を与えています。本作の都市は、暖房兼エネルギー源である蒸気機関“ジェネレーター”によって支えられていて、すべての建物はジェネレーターからつながる道路に隣接しないと機能しない、というルールがあります。

 また建物は、ジェネレーターやこれにつながる“蒸気ハブ”と呼ばれる施設が発する熱によって寒さから守られるものの、暖房が効く範囲には限りがあるうえ運用には石炭資源を消費するため、建設は効率よく行わなくてはなりません。

 建物の配置を最適化していくプレイは、やり応えがあるとともにプレイヤーごとに差が出る要素でもあります。ジェネレーターを中心として同心円状に広がっていく街の景観は、本作独特のおもむきがありますし、SNSやLive from PlayStationなどを通してほかの人が作った都市を観察するのも楽しいですね。

食事をかさ増し! 住人の密告を奨励! ディストピア感あふれる法律の数々がヤバイ!

 プレイヤーは、法律に署名することで新たな建物をアンロックしたり、住人の労働などを管理できます。法律には、生き残りのために労働や医療、食事などの統制を行う“適応”と、住人に心のよりどころを与えて希望と不満をコントロールする“目的”の2つに大きく分かれていて、各法律はツリー状に配置されています。

 この法律、職場に24時間労働を強制したり、調理時に食料におがくずを混ぜてかさ増しする、住民の密告を奨励して隠匿物資や不満分子を摘発するなど、なかなかのディストピアっぷり。

 とくに、目的カテゴリの法律ツリーは、最後まで成立させると住民の希望ゲージが真っ黒に塗りつぶされて減少しなくなる反面、反対する住民は即座に処刑されるすさまじい社会が誕生します。

 現代社会では頭から否定されるはずの法律の数々を、“住民全体が生き残る”目的のもとに署名してしまう一種の背徳感は、このゲームならではの特色と言えるでしょう。ゲームをクリアしたい欲求と、たいていの人が持ち合わせる倫理観を天秤にかけながらプレイしていくのはたまらないものがあります。

 これらの法律は開発や生産を強化する反面、やりすぎると住民の不満や希望の悪影響が強すぎてゲームオーバーの原因になることも。住民の感情を適度なところでコントロールしつつ、生産性を最大限まで追求する絶妙なゲームバランスは、本作が都市開発シミュレーションとしても絶品である証とも言えるでしょう。

都市開発なのにエンディングがある!? ストーリー性があり、リプレイ性も高い4つのシナリオ

 都市開発シミュレーションといえば、用意された土地を開発してプレイヤーの満足がいくまで無限にプレイできる内容なのは定番と言えるでしょう。『Frostpunk』にも、プレイに期限を設けず納得いくまで街づくりが可能なモードは搭載されていますが、本作のメインとなるのは現在のところ4種類あるシナリオです。

 なお最初は、4つのうちチュートリアルを兼ねたメインシナリオ“新しい家”のみプレイ可能で、ほかの3つは新しい家で20日以上の生存に成功するとアンロックされます。アンロックされるシナリオは条件が特殊なほか、難易度が高めだったりするので妥当な設定だと感じました。

 各シナリオでは、プレイヤーに目的と期限が次々と与えられ、これを達成することでイベントなどが発生してストーリーが進行します。

 たとえば、新しい家のシナリオでは、最初に都市開発に必要なものをそろえる目的が与えられますが、ゲームを一定日数まで進めるかある条件を満たすとイベントが発生。一部の住民が離反して街を去ろうとする危機に陥ります。

 イベントが発生するたびに都市をとりまく状況が変化して、プレイヤーにはそれを解決するための目的と選択肢が与えられるため、常にある程度の緊張感をもって遊べるのは本作ならではの魅力でしょう。

 また、クリア条件を満たすとエンディングを迎えてゲーム終了となるのも本作の特徴。エンディングでは開発のリプレイをバックに、プレイヤーが行った選択の数々を振り返る内容となっていて、なかなかに身につまされますね。

 各シナリオはいずれも数時間程度で終わる内容ですが、上記の目的やエンディングの要素もあり、1プレイ当たりの充実感はかなりのものがあります。さらに、難易度を上げるとそれまで培ったセオリーが通用しなくなるレベルで難しくなるので、新たな建設や法律を試して繰り返し遊びたくなるリプレイ性もばっちりです。

 19世紀のスチームパンク世界を舞台に、ディストピアな都市開発を行う『Frostpunk』。シビアな世界観やときに人の生死を左右する選択の数々は人を選ぶかもしれませんが、プレイヤーの心をゆさぶるようなシナリオとイベント中の選択肢は、食わず嫌いせずにぜひ遊んでほしい魅力と感じました。

 レビューにあたってPS4版をプレイしましたが、操作性は非常に快適で、メニューなどの構成はコントローラに合わせて最適化されているので、シミュレーションゲームとしてかなり遊びやすい部類に入ると思いました。メニューなどについては以前の記事にまとめられているので気になる人はチェックしてみてください。

 都市開発シミュレーションが好きなプレイヤーはもちろん、ディストピアな社会スチームパンクな世界観が好きな人も気に入るのではないかと思います。また、“都市開発ゲームは嫌いじゃないけど、途中で飽きちゃうんだよね~”という方も、飽きる前にエンディングになるのでオススメできます。価格も手ごろでボリュームがガッツリあるのでお得な1本であるとも言えますね。

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Frostpunk(フロストパンク)

  • メーカー: DMM GAMES
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: SLG
  • 発売日: 2020年2月27日
  • 希望小売価格: 3,980円+税

Frostpunk(フロストパンク)(ダウンロード版)

  • メーカー: DMM GAMES
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: SLG
  • 配信日: 2020年2月27日
  • 価格: 3,980円+税

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