【Fate HF III連載企画】浅川悠さんインタビュー「これからもライダーと一緒に」

セスタス原川
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 3月28日に公開予定の劇場版『Fate/stay night[Heaven's Feel]III.spring song(以下、Fate HF 第三章、または第三章)』のキャストインタビュー。第2弾は、ライダー役の浅川悠さんのインタビューです。

 『Fate/stay night[Heaven's Feel]』は、ヴィジュアルノベルゲーム『Fate/stay night』の3つ目のルート“Heaven's Feel(通称・桜ルート)”を全三章で映画化したもので、『Fate HF 第三章』はその締めくくりとなる物語です。

 インタビューでは第三章に関するお話をはじめ、浅川さんとライダーの出会いや、今だからこそ語れるライダーと声優人生にまつわるエピソードをお聞きしました。また、いつもやられ役だったことに対しての積もり積もった想いなど、ライダー役ならではのお話も語ってくださいました。

ようやく活躍の場が訪れた!?

――収録を終えた感想をお聞かせください。

浅川さん:「あっという間に終わっちゃったな」という気持ちです。世の中的には、公開に向けていろいろな情報や施策が展開されていて「始まるぞ!」という雰囲気ですが、私たち声優はアフレコがメインのお仕事で、その機会はわずか数回。そう考えると、体感している時間はあっという間でした。

――名残惜しいという気持ちもありますか?

浅川さん:やはり、終わってしまった寂しさはありますね。ついこの前まで「これから始まるね~」というお話をしていたと思ったら、もう終わりを迎えてしまいました。

――『Heaven's Feel』という1つのルートを3つの劇場版で描くという点についてはいかがでしたか?

浅川さん:単純にありがたいことですよね。我々はアニメに声を乗せることがメインのお仕事だと思っていますが、それにはまず出演できるかどうかで1つの関門があり、その次は大きい役なのか小さい役なのか……後半しか登場しないキャラクターなのか……たくさんの壁があると思います。

 それを考えると、3年間も同じ作品に出続けられることは、心境的に安心もできましたし、出演者としてすごくありがたいことだと思いました。第一章が始まった時は「あ、3年間はご飯食べていける」なんて思ったりして(笑)。

――第三章の見どころはどこでしょうか?

浅川さん:やはり最後のクライマックスシーンですね。“誰かの正義の味方になれば、誰かの味方をしないことになる”というテーマが回収されていて、正義を貫くことの残酷さが描かれたクライマックスだと思いました。

――劇場版とアニメでは収録の流れも異なると思いますが、明確に違いを感じた部分はありましたか?

浅川さん:まったく違いました。まず『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』だとライダーは、ほぼ1話だけの登場でしたからね(笑)。

――『Heaven's Feel』は、ライダーと関係の深い桜について描いた物語ということで、ライダーはセリフや登場シーン数が多くなっていますよね。他にはどうでしょう?

浅川さん:出番の他にというと、上映までの盛り上げ具合はTVシリーズのアニメ以上に気合いを感じました。家で見られるアニメと違って、お金を払って劇場に足を運んで見ていただくわけですから、そこまでして見に来てくれる人を増やすためには……という思いが表れているなと。

――その違いを感じたうえで、意識したことはありましたか?

浅川さん:収録の様子は同じなので、アニメであろうと、劇場版であろうと、声優である私たちがやることは変わらないんです。ただ、劇場で見るのと、TVで見るのとはやっぱり違うんですよ。これは、雰囲気の問題ではなく、設備や環境などが作品を見ることに特化した場所なので、“映像や音が身体に入っていく感覚”が違うんです。

 実際に劇場で映像や音を聞くと「これが伝えたかったところ!」という部分がより深く理解できますし、それを意識した演技になっていると思います。劇場でアニメを見る機会を増やして勉強しようと思いました(笑)。

――第三章ではライダーも物語に欠かせない重要な立ち位置のキャラクターになりますが、そこについてさらに深くお聞かせいただけますか?

浅川さん:やっと……! という感じですね。私が最初にライダーを演じたスタジオディーン制作のTVアニメシリーズでは、オーディションも無く、事務所から「こういう役です」という説明を受けた瞬間がライダーとの初めての出会いでした。ご覧になった方は知っていると思いますが、ほとんど出番もありませんでしたので、そこから15年経ってようやくお鉢が回ってきたな、と。

――ライダー初めて演じた時のお話をお聞きしたいです。

浅川さん:当時は、まだ私も『Fate/stay night』に詳しくなく、声優としては“浅川悠といえばこんな役”というイメージが固まってきた頃のお話でした。初めてライダーのビジュアルを見た時に「なんてビジュアルの強いキャラクターなのだろう!」といい意味で衝撃を受けました。動きも蛇のようで、口数も少なく、カッコよさと気味の悪さも兼ね備えたキャラクターという印象でしたね。

――しかし、先ほどご自身でおっしゃっていたように、これまでの作品では目立った活躍もできないキャラクターでしたが……。

浅川さん:これだけ濃いビジュアルなら、主役級なのかな? と思っていたのですが、そんなこともなく(笑)。初めてお話を読んだ時には「こんなにカッコいいのに、これだけのチョイ役なんてことある!?」と驚きました。

――それに、他のキャラクターと比較すると、どうしても幸の薄い印象が強いですよね。

浅川さん:他のキャラクターも素敵ですが、やはり自分の中では自分の役を1番愛しているので、それもあって、正直「なんでこんなに弱いの……」とショックがあったりはしました。誤解を恐れずに言えば、ただのお色気担当なんじゃないかと思ってしまったくらいです。

――それから15年の間、どのような気持ちでライダーを演じ続けていたのでしょうか?

浅川さん:ライダーは条件がそろえば強い。活躍できる『Heaven's Feel』というルートがある。というお話だけを聞いて年月が経っていき、いくら待っても他のキャラクターが強すぎて出番は回ってこず。これも全部、マスターの慎二のせいだと思っていました(笑)。それが、『Heaven's Feel』が劇場版になり、桜のかたわらでスポットを浴びる時が来ました。ようやく登場させてもらい、キービジュアルにも大きくキャラクターが描かれていて、感無量です。

▲記事冒頭にも掲載した第3弾キービジュアル(左)や第2弾キービジュアル(右)では、ライダーが存在感ある形で描かれています。

第三章ではセイバーとのリベンジマッチも?

――第三章におけるライダーの注目ポイントはどこでしょうか?

浅川さん:やっぱり戦っているところですね! 15年の恨みを晴らせます(笑)。スタジオディーン版ではセイバーに「ベルレフォーン!!」を言い終わる前にエクスカリバーで飛ばされちゃいましたからね。あれはずっと「この野郎!」って思っていましたよ! せめて最後まで言わせろよ~!(笑)

――(笑)。第三章では、その因縁のセイバーオルタと改めて対峙することになります。

浅川さん:セイバーは最優のサーヴァントと評されていて、しかもそれが闇堕ちしてさらに強くなっています。そんな彼女に士郎をはじめライダーたちがどうやって立ち向かっていくのかというところは注目です。お客さんの中にも、もしかするとライダーが単なるやられ役だと思っている人もいるのではないでしょうか(笑)。そんな人にこそ、15年の恨みが籠ったライダーの活躍をぜひ見てもらいたいですし、ライダーのことを好きだったという人は、彼女のカッコいいところを大画面で楽しんでほしいです!

――セイバーとの戦闘シーンの収録はいかがでしたか?

浅川さん:ライダーの戦闘シーンは基本アドリブも入れないのですが、演じる時にはカッコよくなるようにと思いながら声を入れていました。でも、私の中にすでにライダーよりもセイバーが強いという固定概念があったので「大丈夫なの!?」とハラハラして収録していました(笑)。

――ライダーの戦闘での活躍は、すでに第一章と第二章でも描かれていましたよね。

浅川さん:第二章の図書室のシーンでは、アーチャーを圧倒していましたからね! でも、やっぱりライダーは弱いという印象が頭から離れず、台本でお話はわかっているのに、どこかで負けてしまうのではないかとドキドキでした。

――あのシーンのライダーの強さを見て驚いた人も多かったと思います。

浅川さん:相手だったアーチャーも強いサーヴァントですからね。それをマスターである凛ともども圧倒して「これがライダー!?」と驚かせた時は、もう本当に気持ちよかったです。

 第一章の柳洞寺での真アサシンとの戦闘シーンでは、お客さんはまだ弱い慎二のライダーしか見ていないので、原作を知らずに見ている人の中には「ライダー、出てきて大丈夫!?」と思った人もいたのではないでしょうか(笑)。

――図書室のシーンでは、惜しくもアーチャーと決着をつける段階までは行きませんでした。

浅川さん:強くなったことが嬉しくて戦っているうちに、桜が怪我してしまいましたからね。なぜライダーが戦っていたのにそうなってしまったのか監督に聞いたら「あれはうっかりです」って答えが返ってきました(笑)。『Fate』シリーズをご覧になってきた人はご存知かもしれませんが、実はライダーって、基本的にはしっかり者なんですが、割とドジで抜けているところもあるキャラクターなんです。

桜を通して見えてくるライダーの奥深い一面とは?

――桜はどのようなキャラクターという印象でしたか?

浅川さん:ひと言で表すなら、よくも悪くもいい子という印象ですね。同性から見ると、近くに置いておきたくない女に見えると思います。ライダーは桜を黙って見守って、いざという時だけ現れます。もう少し早く出てくればいいのにと思うことは何度もありましたけどね。

  • ▲『Fate HF 第一章』より。

――桜を大切に想っていても、過干渉にならないところがライダーらしさなのでしょうか?

浅川さん:周りのキャラクターは桜のことを寄ってたかって心配していますけど、ライダーは心配しつつも見ているだけで干渉はしません。みんなは桜のことをかわいそうな女の子として見ていますが、ライダーは彼女を見守るお姉さんのような立場のキャラクターです。

 ライダーとしては、本当は桜に対してのあふれ出る気持ちはあるけど、過去の自分と似た境遇の桜だからこそ、自分にしかできない役回りがあると考えているのではないでしょうか。桜の気持ちを理解できるから、自分の二の舞にはなって欲しくないと祈っているのでしょうね。守ってあげたいという以上の感情を抱いているはずです。

――ライダーと他のキャラクターとの関係性はいかがでしょうか?

浅川さん:ライダーは寡黙なこともあって他のキャラクターと絡むことは少ないのですが、その中では士郎との関係が印象的ですね。見るからに信用できそうな子なのでライダーも気を許した部分があったと思いますが、彼のサーヴァントだったセイバーと敵対しなければならないので、いざとなったら本当に桜を守ってくれるのか? という部分で完全に信用しているわけではない……そんな関係性でした。ライダーにとっては、何があっても最優先は桜なので。

――桜との関係性についてはいかがでしたか?

浅川さん:桜がマスターであることが判明するまでは、ライダーは桜と一緒に登場させてもらえなくて寂しかったです。第二章では衛宮邸で凛やイリヤが作戦会議をするシーンがありましたが、そこにライダーも混ぜてほしかったなとも思いましたね(笑)。

――浅川さん的にはそういう心情だったんですね。

浅川さん:はい。とは言え、その時のライダーの立場が曖昧だったので、他のキャラクターも警戒している部分もあったんだと思います。これから命をかけてともに戦う仲間だし、その強さについては信頼を置けるものの、信用しきってはいないという微妙な関係性で、少し大人っぽいストーリーだなと思いました。

――衛宮邸のシーンでは、ライダーの食事シーンが印象的です。

浅川さん:シュールでしたね! あのシーンを初めて見た時は「なんだこれ……」と思いました。お客さんの中にはライダーをよく知らない人も多かったと思いますが、あそこで好感度を上げてもらえたかなと思います。セイバーでさえ着替えていたのに、あの格好のまま畳で正座しているという。しかも、お箸を使えないから和食をナイフとフォークで食べていましたからね(笑)。

――そういう、これまで見えなかったライダーの一面も『Heaven's Feel』で描かれていますよね。

浅川さん:これまで映像化された『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』などでは、ライダーはほとんど登場していませんでしたから。『Heaven's Feel』でライダーを改めて見て、意外とカワイイ部分もあるなと思ってもらえたら嬉しいです。『FGO』などの派生作品では、お姉さまをはじめさまざまなキャラクターとの関係性が描かれていて、中には健気だったり、かわいげのある描かれ方をされてもいます。

――『Heaven's Feel』では、ライダーと桜の関係がただ単にサーヴァントとマスターというだけではないと思わせるような描かれ方もされていました。

浅川さん:桜がライダーに対して、一緒にご飯を食べようとしてくれるところもいいですよね。慎二とは大きく違う桜というマスターの特性を表現していて、そういう描写は単におもしろいだけでなく、いろいろな含みがあると見た人に想わせてくれます。細かく見ると、ライダーが信用して桜に仕えていることが推し量れたりしますね。

――桜とライダーの会話で印象的だったセリフはありましたか?

浅川さん:第二章の「神父(綺礼)が一番警戒するべき存在です」という話をした際に、桜が「あの人は私には勝てないから」と言ったあとに、ライダーが「あっ」とだけ言う瞬間ですね。桜の発言に思うことはあるけど、余計なことを言わないのですが、そのわずかな反応にいくつも感情が込められていて……。信頼や心配、迷い、それでも桜の考えを尊重していることなどがにじんでいる描かれ方だったと思います。

――第三章でも、桜とライダーの関係性は重要になってくると思われますが、いかがでしょうか?

浅川さん:普段は自分の意見を言わないライダーですが、めずらしく自分の思いを言葉にして発しています。第三章では、自分の意志で桜の選択を変えさせようとする、これまでとは少し違ったライダーが見られます。それはもうサーヴァントがマスターに向けてではなく、親友に向けて言うようなセリフになっていて、ライダーの心情を考えると見方によっては、本当は辛いシーンなのですが温かいシーンにも感じられました。

『Heaven's Feel』収録でのエピソードは?

――改めて、『Heaven's Feel』でライダーを演じた感想をお聞かせいただけますか?

浅川さん:インタビュー冒頭では「ありがたい」と話しましたし、そのこと自体は本当なのですが、実際の演技について言いますと、ライダーを演じることは本当に難しくて、いろいろな意味で3年間ずっとつらい状態でもありました。人間の感情としてははっきり伝えたいと想いがあったとしても、ライダーはあの性格と口数の少ないキャラクターなので、それを言うことはありません。何回も、その場で桜を抱きしめながら考えを話してしまえばいい思いましたが、そうした気持ちを抑えて、ライダーの性格を意識しながら演じていました。

 逆に、マスターが慎二だったら楽だったんですけどね(笑)。今回は桜が真のマスターなので言いたいことはありますが、口数自体は変わりません。あのトーンとセリフの数で、「本当は桜のことを想っているんですよ」ということをにじませるのは、やはり難しかったです。

――慎二だったら楽だったのにというのは、見ているほうからしても「確かに」と思えますね(笑)。

浅川さん:初めて『Heaven's Feel』という作品を見た人が、パッと見て「この人味方なんでしょ? 冷たくない?」との感想だけにならないようにしなければいけませんし、でも、原作などで物語を知っている人が見た時に「あれ? ライダーってこんなに優しい?」と思われてもいけない。そんなバランスを保つ特殊な演技が求められましたね。そうしたライダーの表現は、音楽などの手助けもあって完成したところだと思います。お芝居としては、少しズルいかもしれませんが(笑)。

――収録中に監督やスタッフさんから指示が出ることはありましたか?

浅川さん: 1ヵ所だけ、士郎とやり取りをするシーンでセリフの間で「これだと気持ちが繋がらないのでは?」と思った部分がありました。その疑問は、監督さんと奈須きのこさんにどういう意味なのか聞いて「なるほど」と納得できました。長年演じてきた私たちも自分のキャラクターの心情を理解するまで時間がかかったので、見ている人にとっても難しいと思える部分もあるのではないかと思います。

――キャラクターの心情を理解するにあたって、どのような手順を踏むのでしょうか?

浅川さん:今あげたシーンに限らずですが、そう感じた時には監督を質問攻めにしていましたね。そこで答えが出るのですが、それがなかなか自分の中でカチっとハマるまでは、お芝居として出すことは難しかったです。

――そういった気持ちの乗せ方は、我々のようにキャラクターを演じることがそうはない一般の人間にはわかりづらい、声優さんの難しいところと言えそうですね。

浅川さん:私たち声優の仕事は、作り手さんの表現したいものに声帯をお貸しすることなので、そこで「私が思うところ、このキャラクターは~」と意見を言う必要はありません。相談や質問をして、いただいた答えを自分の中に落とし込んで、“どう気持ちを動かしていけば求められる通りにセリフを出せるか?”というところが難しさではありますね。

――ライダーの口数の少なさもそうですが、すべてを言葉で表現しないところも『Fate』シリーズらしさという気もしますが、いかがでしょうか?

浅川さん:ええ。もう本数を重ねている作品ですから、今さらペラペラと説明しながらたくさんしゃべるキャラクターはいません。中でもセイバーに関して言えば、黒化して、セリフもかなり少なくなっていますしね。説明が必要な部分でも、文章だけで説明するのではなく、キャラクターの動作や目線、カメラが写しているものなどもふくめて描写しているところは『Fate』シリーズらしいと思いました。

――そういった表現方法は、浅川さん個人としてはどのような印象を受けますか?

浅川さん:秘められた感情を見る側が読み取っていくということは、実は情操教育にとてもいいなと思っています。しっかりと行間を読んで、そこから人の気持ちを読み取っていくことは、必要なことだと思います。『Heaven's Feel』はそういう描写が多いですから、そういう意味でも見てもらいたい作品ですね。

――表現に関しては『Heaven's Feel』はビジュアル面も見どころのひとつだと思います。

浅川さん:はい。文章だけで描写していないと言いましたが、中でも絵の力は大きいですね。ただひたすらに難解なだけの作品もあると思いますが、『Fate/stay night』は難しさだけがウリな作品ではありませんし、表現が難しい部分でも、ビジュアルや音楽が説明していたりするので、注意深く見ていただければ理解できるのではないかと。

――アフレコ現場の様子はいかがでしたか?

浅川さん:お芝居に関しては、みんな当時から15年経ってもまだまだ活躍されている人たちが集まっているわけですから「すごい!」のひと言に尽きますね。聞いていて「あっ……声優さんだ!」と思いました(笑)。みんないい声だし、その声が各々でしっかりと立っていて。第一章の完成版を見た時にも、同じような感想が出てしまいました。

――浅川さんがおっしゃるのなら、お客さんからすればもっとすごいものに聞こえるわけですよね。

浅川さん:第一章で三木さん演じるアサシンが少し登場しましたが、わずかなセリフだけで感銘を受けましたし、植田さん演じる凛も「綺麗に通る、マイクに乗る声だな~」なんて思いました(笑)。臓硯なんて鳥肌モノですよね。このレベルの方々はお芝居が上手なんて当たり前なわけですが、持っている声自体も素晴らしくて、本当にすごいと思いました。また、このメンバーの中に自分がいることが嬉しかったですね。

 聞いていて「すごい!」と思えるような声優さんたちと一緒に演じられるなんて、本当にありがたいことです。……新人みたいな感想ですけど(笑)。アフレコに参加している時は、内心ウキウキしていました。嬉しく、楽しく、そしてためになる現場でした。

――他のキャストのみなさんとは、どのようなやり取りをされましたか?

浅川さん:雰囲気はすごくよかったです。声優の現場って、よくも悪くもお互いをリスペクトしている場所ですが、学校ではないのでディレクターさん以外が指示をくれるようなことはまずありません。そのため、お互いのお芝居についてディスカッションすることは基本的にないのですが、長年続いてチームワークが出来上がっているこの作品では、声優同士でお芝居について話すこともありました。劇団みたいで、ちょっと楽しかったです。

浅川さんにとってのライダーの存在の大きさ

――劇場版の収録を終えて、改めて『Fate』に対する印象をお聞きしたいです。

浅川さん:今ではSNSを通してお客さんの反応も手に取るようにわかりますので、それを見てもやはり『Fate』シリーズはすごい作品なのだなと思いました。数字的な面ももちろんですが、このサイクルの早いアニメ業界の中で15年以上続いている作品なんて、とんでもないことですよ。

――今後の『Fate』の展開として、ご自身の中に「これをやりたい!」という希望などはありますか?

浅川さん:ライダーとしては、桜がああなってしまわずに進む物語があったらおもしろいなと考えてしまいますね。ちゃんと桜がマスターとして、全力のライダーを率いて聖杯戦争を戦ったら一体どうなるのか……気になります。慎二のように、毎回ライダーとマスターの関係はどこかいびつなので、ちゃんと戦ったうえでのライダーの実力を見てみたいです。

――それは気になりますね。はたして誰が勝ち残るのでしょうか?

浅川さん:どうなるのでしょう……? みんな強いサーヴァントだから、セイバーやアーチャーと正面から戦うのはちょっと難しいかな……? 桜とライダーも強くなってもらうために、成長するような何かがあるといいかもしれませんね(笑)。

――インタビューの冒頭や、演技についての質問でも少しお話しいただきましたが、浅川さんにとって、ライダーというキャラクターはどのような存在でしょうか?

浅川さん:声優の浅川悠という存在を助けてくれたキャラクターなので「本当にありがとう」とお礼を言いたいですね。役をいただいた当時は、正直なところメインキャラクターを演じる機会が少なくなってきて、声優としてこれからどうしようか悩んでいたタイミングでもありました。その時に、ライダーという存在が私を助けてくれて、浅川悠といえばライダーとして、みなさんに知ってもらえるきっかけになりました。

――それを実感したきっかけはどこでしたか?

浅川さん:これは海外に行った時のお話なのですが、海外のファンの方は、ライダーみたいなセクシーな女性が好きな方が多いんですよね。その際にファンの方に「ライダー! ライダー!」とすごく喜んでいただけた思い出が印象深いです。

――15年前のライダーから始まり、現在では浅川さんは多くの『Fate』シリーズに出演されていますよね。

浅川さん:ライダーのおかげで『Heaven's Feel』や『Fate/Grand Order』にも出演させていただけて、彼女はまさに私自身のサーヴァントではないかと思ってしまうような存在です。これから先も、私はライダーと一緒に声優人生を歩んでいくのだと思っています。

――最後に、ファンのみなさんにメッセージをお願いします。

浅川さん:インタビューをお読みいただきありがとうございます。みなさんの応援もあり、3月28日に、ついに『Fate/stay night[Heaven's Feel]III.spring song』が公開されます。嬉しいような、悲しいような、いろいろな気持ちがありますが、ライダーとしては納得のいくエンディングになっていると思います。

 公開前に、改めて第一章と第二章も見ていただけると、劇場でいろいろな発見があると思います。マスターとサーヴァントたちによる熱い戦いで盛り上がったあとには、さまざまな感情を抱くことになると思いますし、そうなってもらえると嬉しいです。ぜひ劇場に見に来てくださいね!

――ありがとうございました。

劇場版『Fate/stay night[Heaven’s Feel]III.spring song』作品概要

公開日
2020年3月28日

メインスタッフ(敬称略)
原作:奈須きのこ/TYPE-MOON
キャラクター原案:武内崇
監督:須藤友徳
キャラクターデザイン:須藤友徳・碇谷敦・田畑壽之
脚本:桧山彬(ufotable)
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:松岡美佳
編集:神野学
音楽:梶浦由記
主題歌:Aimer
制作プロデューサー:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:アニプレックス

メインキャスト(敬称略)
衛宮士郎:杉山紀彰
間桐桜:下屋則子
間桐慎二:神谷浩史
セイバーオルタ:川澄綾子
遠坂凛:植田佳奈
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン:門脇舞以
藤村大河:伊藤美紀
言峰綺礼:中田譲治
間桐臓硯:津嘉山正種
ギルガメッシュ:関智一
ライダー:浅川悠
アーチャー:諏訪部順一
真アサシン:稲田徹

(C)TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

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  • 発売日:2019年8月21日
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