あっ、入っちゃった!!【O村の漫画野郎#3】
- 文
- 奥村勝彦
- 公開日時
秋田書店の漫画編集者を経て、元『コミックビーム』編集総長もつとめた“O村”こと奥村勝彦さんが漫画界の歴史&激動の編集者人生を独自の視点で振り返る!
あっ、入っちゃった!!
あー。就職面接ってモンは普通、20~30分てのが相場だが、俺の秋田書店における面接は1時間もかかっちゃった。基本的に人見知りが激しい人間でも、“自分の話を楽しく聞いてくれる人”の前ではスパークしちまうでしょ?
その時の壁村さん(当時、少年チャンピオン編集長&役員)は確実に俺の話を楽しそうに聞いていた……ように思えた。喋った内容はほとんど覚えてねえけど「俺は興奮すると頭の中で『河内音頭』が流れるんです!」なんて言ってたような……。
ああ恥ずい!! アホ丸出し!! 目の前にいたらブン殴りたくなるヤツだったんだろうな俺。そんで、予定時間で席を立とうとした先方を「まだ話したりねえんです!!」つって、その後も話しまくり、結局1時間。なんたるハタ迷惑!! 無礼千万!!
そしたら何故か翌日電話があり、再び面接するという。今度は各雑誌編集長(壁村さんもいた)らによる面接だった。
いろいろ話した内容にツッ込まれて頭にきて「んなもん、やってみねえとわからねえでしょ!!」なんて言い返したりして(何に対して言い返したのかは忘れた)。ま、面接されるヤツの態度じゃねえわな。
……結果的にノーストレスで好きなこと言っちゃえたんで受かろうが落ちようがいいかあ、とアパートで寝転がっていたら、なんと内定の連絡が!? 結局、筆記もなんも無し……いい時代だったんだよなあ。
後日聞いた話だと、壁村さん以外の評価はズタボロで「あのバカは、俺んとこで引き取るから」という一言で嫌がる周囲を押し切ったらしい。……さもありなん。
んでまあ入社初日、俺は壁村さんに殴られた。
その理由は、ちょっと込み入っていて、チャンピオン編集部配属前に俺は同期の連中と、会社の向かいの喫茶店でメシを食ってたのね。「俺、チャンピオンなんて全然読んでねえなあ(本当に読んでなかった)……」なんて話しながら。
そしたら、当然、編集部の連中もそこでメシ食ってるワケで……「あの野郎、生意気だから飲み屋で袋叩きにしちまおう」って話になっちゃった。それを察知した壁村さんが、さすがに袋叩きは可哀想だってんで、気を遣って先手を打って自分で殴ってくれたらしい。
その時、彼は履いていた革靴のかかとで、パッコーンと叩いたワケだが(結構イタかった)、直接素手でブン殴ればいいのに、なぜそんな面倒臭いコトをしたのか!? その理由とは……待て次回!!
(次回は6月22日掲載予定です)
O村の漫画野郎 バックナンバー
イラスト/桜玉吉
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