『ラヴアール キス』3Dモデルのこだわりを開発者が明かす。ペアフォトセッションやキャラ制作のポイントも

kbj
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 角川ゲームスから発売中のPS4/Nintendo Switch用ソフト『LoveR Kiss(ラヴアール キス)』。本作を手掛けた開発スタッフへのインタビューを掲載します。

 『LoveR Kiss』は2019年3月に発売されたPS4用『LoveR(ラヴアール)』のアッパーバージョン。前作で導入されなかった冴稀陽茉利(さいきひまり)先生のシナリオや、フォトセッションの新機能が追加されています。

 プロデューサーの杉山イチロウさんとアートディレクター・九印さんに、ゲーム内容について質問。開発経緯から新要素、こだわりの要素について語っていただきました。

  • ▲プロデューサーの杉山イチロウさん
  • ▲アートディレクター・九印さん

 なお、インタビュー中は敬称略。

想定以上に受け入れてもらえた『LoveR』

――前作を遊ばれたユーザーからの反応はいかがでしたか?

杉山:基本的に喜んでいただけているという印象です。ストーリーやキャラに加えて、美麗になったグラフィックを楽しんでいただけました。気に入っていただいたユーザーの皆さんに、長く遊んでいただいているようです。

九印:フォトセッションではキャラの場所を移動できるシステムを用意しました。より自由になる一方でシステムチックになり、ゲームに寄ったと感じてしまう人がいる可能性について不安がありました。ただ、「場所を変えられて、思い通りの絵を作れる」と好評だったので、やってよかったと思いました。

杉山:ポジションアジャストは、スクリーンショットをよく撮られる方にとても好評でした。それを受けて、女の子同士の写真を自分なりに作って撮っていくことが受け入れられるだろうと考えて、新要素のペアフォトセッションを作ることになりました。

 もしも自由に移動させられず、こちらが調整したものだけを撮影するとしたら、作る喜びが大幅に減ります。ポジションアジャストがあったからこそ、割り切ってペアフォトセッションを作れたと感じてます。

  • ▲『LoveR』のゲーム画像。

――“割り切って”というのは?

杉山:ポジションアジャストでは、背景に食い込んでしまったり、キャラが浮いてしまったりします。なのでバグっぽい写真も撮れてしまう。けれども、そこは割り切っていて、アングルを工夫してもらうために用意しました。

 でも、皆さんはそれを受け入れてくださって、変に使うのではなく、いい絵を取るために活用してくれました。

九印:ポジションアジャストについて、いい反応といい写真をたくさんいただきました。どうやって撮影したのかわからないものがあれば、考えもしなかったような写真もありました。もちろんネタを聞くとわかるのですが、我々が思いもつかなかった使い方もあり、背景やオブジェなどをとても活用してくださっている。細かいところにも目を向けてくれていると感じて、非常にありがたかったですね。

杉山:動かない女の子を自由に動かすのは、主人公が時を止めているようなシチュエーションですし、人形っぽく感じてしまう可能性があります。いろいろな写真を提案してくれたことを受けて、こちらもいろいろなことを割り切って、より楽しんでいただける要素になるだろうとペアフォトセッションを入れました。

――いただいている意見で、他に想定していなかったことはありますか?

九印:ラヴァーズデイズについてですね。こちらは後日談になり、フォトセッションの幅が広がったり、時間帯に応じた反応をしてくれたりという、おまけ要素が強いものです。

 ただ、キャラから話してもらうことについて、予想以上に楽しんでもらっていると思いました。我々は作中のキャラが実際に存在しているように考えて作っています。そこに思い入れを持ってくれているのはとてもうれしいです。

 先日のヴァレンタインにもスクリーンショットを上げている人が多数いらっしゃいました。このような主要な季節イベントには特別なセリフがあるので、そこを見るために起動してくれる方もいます。

  • ▲『LoveR』のゲーム画像。

杉山:特別なものも含めてセリフはけっこう入っているのですが、生活サイクルが同じだと、同じ時間のセリフしか聞けなくて……。

 アップデートで時間帯を選べるようにしたので、たまに変わった時間にプレイしていただくとより楽しめると思います。

九印:Switchは持ち運びできるので、いろいろな時間に女の子にあっていただきたいですね。

インナーは毎日変えるもの! 陽茉利先生をはじめとする新要素に迫る

――『LoveR Kiss』の開発経緯についてお話いただけますか?

杉山:オリジナル版『LoveR』を開発する際にもハードの候補でNintendo Switchはあがっていました。ただ当時は、これまでのタイトルをPlayStationハードで出していたことや、Switchの市場が読めなかったこともあり、見送りになりました。

 『LoveR』後、会社からSwitchとPS4でアッパーバージョンを発売検討するように打診されました。開発期間が短く、マルチプラットフォームは厳しかったのですが、Switchしか持っていない人もいらっしゃいますし、なおかつ携帯機ということで、カメラに見立てたプレイも可能。以前のタイトルは、PSPやPS Vitaなどの携帯機で展開していたのでコンセプト的にはマッチするということもあり、新たなユーザー獲得に向けて、Switchでも発売することを決めました。

――ハードが増えたことでより大変になったのでは?

九印:ハードが増えたことは本作『LoveR Kiss』の開発でもっとも大変だったことの1つです。

杉山:プログラマーがすぐにハードを解析し始めました。あわせて九印さんはビジュアル面でいろいろと研究し、ブラッシュアップしました。

九印:一番大変だったのは、インナーがハードごとに異なるので2パターン作ったことです。あとはスカートの動きなどが制限されるところがあったので、そこも対処しました。

――前作も開発メンバーは少なかったのですが、本作の開発チームもコンパクトだとお聞きしました。

杉山:音声収録やモーションアクターさんを除いた、開発のコアメンバーは10人くらいでしょうか。『フォトカノ』くらいからやっている人がいれば、前作『レコラヴ』から入っている人もいます。

――九印さんはどのようなことをされているのでしょうか?

杉山:『LoveR』のアートディレクターで、キャラモデルを始めとしてゲーム全般のビジュアルをディレクションしています。

――新要素についてご説明いただけますか? まずは新たに攻略できるようになった冴稀陽茉利先生について。

杉山:陽茉利先生は、唯一の眼鏡キャラにして巨乳キャラ。オリジナル版には恋愛対象キャラに眼鏡キャラと巨乳キャラがいなかったので、お待たせしましたというところです。

 子どもっぽい無邪気さのある先生なので、年上キャラが好きな方はもちろん、そうでもない方にも楽しんでいただけるかと。

――とはいえ大学卒業2年目ですから、そこまで年上ではないですよね。

杉山:確かにそうですね。演じられた丹下桜さんも収録後に、親しみやすいとおっしゃってくださいました。

九印:ルックス面では、他のキャラに比べて少し肉付きがいいです。もともと年上キャラが少ないタイトルなので、いままでになかった要素が加わり、よかったと思っています。

 ビジュアルはお姉さん的ですが、内面は登場ヒロインの中でもっとも少女チック。年上ではあるのですが、カワイらしい感じを出そうとして衣装や表情などを作りました。

――陽茉利先生はもともと入れる予定だったのでしょうか?

杉山:プロットで「こんな話にしよう」というところまでは考えていたのですが、開発期間を考えてオミットしたため、いつかは作りたいと思っていました。新要素として何か目玉が欲しかったので、構想を練っていた先生の話を入れました。

 すでに『LoveR』をプレイした方に、またゲームを通しでプレイしていただくのは大変だと思ったのと、開発期間を考慮して、ラヴァーズデイズに組み込むことになりました。

――アドベンチャーシーンとフォトセッションのキャラモデルは同じものでしょうか?

九印:基本的には同じなので、陽茉利先生の3Dモデルはオリジナル版から存在しています。ただ、フォトセッションでは自由にいろいろな角度から見られるため、3Dモデルをブラッシュアップしています。陽茉利先生についても本作に際して、いろいろと調整しています。

  • ▲『LoveR』のゲーム画像。

杉山:見比べるとかなり変わっているので、開発的には前のビジュアルは忘れていただきたいくらいです(笑)。

 マジカルユミナについてもYouTubeにあがっている映像の1回目と最終回を比べると見た目がまったく違うんです。少しずつ変わっているので視聴者の方は気づきにくいのですが、改めて見直すとわかると思います。アウトラインが太いですし、髪の動きもぎこちない。去年の秋くらいから、スカートがフワッとするようになっています。

九印:実は秋ごろから『LoveR Kiss』版のモデルになっているので、いろいろなところが進化しています。

――『LoveR Kiss』では既存キャラのモデルも進化しているのでしょうか?

九印:一部シェーダーやテクスチャーの調整を加えています。あとはSwitch版の髪や胸、スカートがふわっとする表現用にも各モデル諸々調整を加えました。

――続いてペアフォトセッションについてお話いただけますか?

九印:ペアフォトセッションは2人のキャラを同時に撮影できるというものです。

 プレイヤーがいろいろなシチュエーションや構図で撮るにあたって、いい絵を探すと思います。その中でキャラが生きているような雰囲気を出しつつ、ゲームの性質にあったように、落としどころを探していきました。

 また、好きな衣装を着て、撮影する楽しみがあるため、衣装や髪形など自由にできるところはなるべく反映させられるようにしました。

杉山:アクターさん2人に来ていただき、このためにモーションを収録しました。

――キャラを1人増やすとコスチュームのパターンが増えますし、キャラが干渉する。地味にかなり大変だと思うのですが。

九印:その通りなので、これまで踏み込めなかったのです(苦笑)。全部のコスチュームでモーションを行うので、組み合わせは掛け算になり、調整が大変でした。

 もちろん考えていたけどできなかった要素はあるのですが、取捨選択をして「ここだけは残そう」という場所を残しつつ、可能な範囲で自由度を担保しました。

――ただ2人で撮影できると、シチュエーションの幅が広がりますし、妄想できることも増えそうなイメージです。

杉山:そうですね。女の子同士を撮影するのは楽しいんですよ。

九印:頭の中で考えていたことをより実現できるようになっているので、さわっていて特に楽しいのです。

杉山:カワイらしい衣装の女の子が2人いると、1+1が3以上になったようなパワーを感じます。あとは、女の子同士が見つめているシーンを撮影すると、そんなゲームではないのですが百合っぽい雰囲気になるんですね。「禁断の扉を開けてしまった」と感じました(笑)。

九印:好きなヒロインに物語や構図を用意したうえで写真を撮影して、それをSNSにアップするという楽しみがあります。その反応を得られるのは本作ならでは。1人で遊ぶゲームですが、ゲームを起点にしてより広い楽しみができるようになっています。

――曜日代わりでインナーが変わるという、現実に近い“ウィークデイ インナーチェンジ”はいかがでしょう?

杉山:こちらはNintendo Switch版のみの機能で、女の子が曜日代わりでインナーを変更します。ビジュアルについては、九印さんがいろいろとこだわって作っているので、このような要素が好きな人には楽しんでいただけると思います。

 アイデアとしては以前からあったのですが、諸事情があり、実装できませんでした。ただ、新要素を作るに際してNintendo Switchであれば実現できるということで、用意しました。

――普通に考えたら、男性も毎日同じインナーを履いているわけがないですからね。

杉山:これを声高に主張したのはプログラマーの1人です(苦笑)。スカートの動きをやわらかくした人で、とにかくこだわっていましたね。そのために九印さんがたくさんの種類のインナーを用意することになりました。

九印:最初はこのシステムのために、40枚のインナーが必要だと言われたんですね。そのあと、ショップ特典用の衣装を作る作業になった際に「じゃああと40枚行きますか!」ってシレッと追加されました。

――2倍になっていますよ!?

(一同笑)

九印:ビックリしましたが、プログラマーがインナーに強い想いを持っていました。また、やりたかったけど、できかなった要素はいろいろあります。だからこそ、チャンスをもらったものについては頑張りましたね。……でもなかなかに大変でしたが。

――PS4版において、『LoveR Kiss』への追加アップデートはいつごろになるのでしょうか?

杉山:こちら、『LoveR Kiss』の開発が終わってから作業をしているので、同時に出すのが難しく、ご迷惑をおかけしています。開発チーム一同頑張っていますので、もうしばらくお待ちいただければと。状況がわかりましたら、公式Twitterでお知らせします。

ウソを混ぜることも意識した絵作り

――学校はリアルさとファンタジーさが融合していると感じたのですが、作るうえでどのようなことを心がけましたか?

九印:以前から意識していることになるのですが、学校の中庭のような広い場所は目が散ってしまいます。ただ、注目するものがあると目がいきますし、絵としても華やかになる。

 それもあって、場所に噴水のようなものを配置することが多いです。水があると表現の幅が広がりますし、学校らしさが出るのも理由にあります。

――“ちゃんとしているところの学校っぽさ”がありますね。

九印:そうですね(笑)。理事長の孫娘があのような雰囲気なので、おそらくはちゃんとしているのだと思います。

 近代的な校舎の雰囲気と、レトロな感じを入れてもおかしくないような作りにしています。ただ、それだけだと写真映えしないので、少しファンタジーなところを混ぜています。運動場を入れて、堅苦しくない場所にすることも心掛けました。

 また写真を撮影するゲームなので、色が単一だったり暗い場所だったりするとおもしろくないので色合いを明るくしています。

――運動場はなかなかに広いですよね。

(一同笑)

杉山:あれは広いです! 特に都会の学校に通っていた人は驚くでしょう。

九印:作っている時にも「すごく広くなりそうです」と相談した覚えがあります。ただ、初等部から高等部まであるので、あれくらいの大きさになるのではないでしょうか。

杉山:タイヤやブランコなど、いろいろなシチュエーションもあるので、楽しい場所です。

――ロケーションなどを含めて、意識したことは?

九印:中庭と海の丘公園など、背景に花や植物がある場所は作るのが大変ですが、多くの色がある場所を用意できるという利点があります。また、『LoveR』で描かれる“夏らしさ”を表現しやすい場所でもあります。

 学校の教室や体育館はある程度、要素が決まってしまい、オリジナリティを出しにくいのです。中庭や公園は設定を盛り込みやすいので、あそこまでの中庭がある学校は珍しいと思うのですが、あえて入れました。

杉山:ロケーションという意味では、プールの壁がアクリル板であることは外せませんね。

――あれは驚きました。

杉山:普通の壁だと、撮影していてまったくおもしろくないんです。目隠しの意味がまったくないのですが、壁を透明にしました(笑)。

――プールをやっている時、高い階で窓際の生徒は授業に集中できませんね。

杉山:でも柵がないのはおかしい……よし、透明にしよう!

九印:一番のファンタジー要素はこれですね。開発中に「プールの壁を透明にしてください」と言われた時に「正気ですか?」と返しました。

杉山:確かに言われました(笑)。透明にするとリアリティはなくなりますが、写真撮影を楽しんでもらうためなら、多少のウソもアリかなと。

――光は写真を撮る際に重要な要素。ただ、撮影をテーマにしたゲームで、光の表現や存在は難しさにつながると思うのですが、いかがでしたか?

九印:それは絵作りにおいて、かなり大変だった要素になります。これまでの話にも関係するのですが、完全にリアルに寄せてしまうと、暗くなってしまうので、ウソも入れています。

 ただ、今回は時間帯の概念があったり、物体の影が描写されていたりする。ウソも入れつつ、実際の現象もいれつつ……いい写真を撮るという最大の目的を阻害しない範囲で、プログラマーと調整しつつ、取り入れていきました。

杉山:ビジュアルの落としどころはなかなか決まりませんでした。夕方であれば最初は燃えるような赤でしたし、順光や逆光の差もうまく出ない……僕は横から見ているだけなのですが、今の状態に落ち着くまで半年くらいはかかりました。

 シェーダー(陰影の処理)もいろいろ調整していました。むしろシェーダーは作りながら増えていきましたからね。やりたい描写にまとまった時には、安心しました。

九印:ウソとホントの加減にはかなり苦労しました。だからこそ、ユーザーの方に愛されているのを見ると報われた気持ちになります。

杉山:『LoveR Kiss』発売後は、また新たな投稿をしていただけるかと。

――お2人が好きな衣装はどれになりますか?

杉山:なんといっても“サキュバスナイト”が一番のお気に入りです。刺激的なコスも九印さんがデザインすると品があるので、撮っていて楽しいです。

九印:全部お気に入りなのですが特に思い入れがあるのはウエディングドレスです。実はウエディングドレスは作る予定のない衣装でした。

 全員分のシナリオが上がってきた際、当然なのですが妹の優美菜だけは他の子と違い、“いつか結ばれるかもしれない”と想像できる描写が少なく感じました。でもそれだと優美菜がかわいそうで……。

 何とかして愛するお兄ちゃんのお嫁さんにしてあげたいと思い、「全員分のウエディングドレスを作るのでシナリオに入れてください!」と杉山さんにお願いしたのを覚えています。

 もともと余裕のない状態だったので大変ではありましたが個人的にはやれて満足してます。ちなみにちゃんと左手の薬指にリングもついてます!

杉山:そんなわけで、ウェディングドレスを着るイベントとその導入イベントを全キャラ分、追加で書き起こしました。

――個人的に水着の腹部やスパッツの臀部の描写にこだわりを感じました。ありがとうございます!

九印:お腹の表現には力を入れたのでそう言っていただけるとうれしいです!

 『LoveR』の時はセクシーな部分をなかなか前面に押し出しにくかったので、その中で女性らしさを表現するには……とこだわりました。

魅力的なキャラクターを生み出す秘訣とは?

――これから行く場所に確率が出てイベントが発生するシステムになっていますが、確率を出す仕様にしたのはなぜですか?

  • ▲『LoveR』のゲーム画像。

杉山:時間割りにあわせて必ずいる時もあれば、昼休みの食堂だといろいろな人がいるから遭遇しないこともある。そういうところを表現しています。

 やっていることはこれまでのタイトルと変わらないのですが、本作では確率を可視化しました。なぜかと言うと、プレイしやすいからです。

 昨今、遊びやすさやとっつきのよさを重視するユーザーが増えました。わからないと投げ出されてしまわれるよりは、情報を出して遊んでもらう時代かなと思い、取り入れました。僕もさわって、便利だと感じましたしね(笑)。

――そのうえでマジカルパワーを使用すると、確率を上げられるのもいいですね。

杉山:以前は複数の女の子を攻略する“ハーレムプレイ”が多かったのですが、「この子だけを見たい」というニーズがすごく増えています。両方やれるようにする必要があるのですが、1人に集中してプレイできるように、誘導できるシステムとして採用しました。

――姫乃樹凜世と容姿が似ている女の子、妃月凜世が『レコラヴ』にいました。シャボン玉のイベントなども同じですが、こちらはファンサービスになるのでしょうか?

杉山:あれ? そんなに似ていましたか?

  • ▲『LoveR』のゲーム画像。
  • ▲『レコラヴ』のゲーム画像。

――驚くことに声も似ているんですね……。

杉山:声は一緒ですね!(笑)

 マジメに話すと、写真を撮るゲームなので、見映えがいい部活に所属してほしいわけです。そうなると、ボディラインがよく見える新体操、体操、水泳などが候補にあがります。それぞれの部で夢に向かって一生懸命がんばっている子を描きたい。

 新体操はちょっとグラマーなお姉さんにしました。対比として体操を考えた時に、少し幼い女の子が努力してほしい。その際に、再び初等部の女の子を出すと、どうしても前の妃月凜世と比べられてしまうわけです。

 せっかく新キャラを作っても、凜世と比べられてしまうと勝てる気がしない。ならいっそ、新しい凜世を作ろうと。

――斬新な考えですね。

杉山:凜世同士で比べられる分には、平和でいいですから。『レコラヴ』もぜひプレイしていただきたいです。

 あと、『レコラヴ』で凜世が好きな人であれば、似たようなキャラが出ることを喜んでもらえるわけです。開発スタッフにも凜世のファンがいるんですよ。

――ちなみに開発内で人気のキャラは誰ですか?

杉山:どのキャラも人気があるんですが……マジカルユミナではないでしょうか。Vtuber(Vチューバー)の制作で、あのキャラに携わっている人も多いですし、長い間作っていたので、おそらく人気ですね。

九印:マジカルユミナについては、思い入れのあるスタッフは多そうです。目標の日程ギリギリになってしまい、「次こそは早く仕上げる」と言っても、結局作り込んでギリギリまでやってしまう……他のキャラが好きなメンバーももちろんいるのですが、取り組んでいた時間、人数が多いので、マジカルユミナがあがるのではないでしょうか。

――個人的には、堂島がいいポジションのキャラだと感じました。杉田智和さんの演技も相まって、好きです。

杉山:いいヤツですよね! 顔つきが怖いから友だちがいないというちょっとかわいそうなんですが、それゆえに親しみを持てる。杉田さんにはノリノリで演じていただきました。

九印:僕もすごく好きですし、ユーザーさんにも好きな人が多い。“堂島が撮った写真”という設定で、背景だけをTwitterにアップされている方がいて、おもしろいアイデアだと感じました。

  • ▲『LoveR』のゲーム画像。

――それはいいロールプレイですね。ユーザーからすごく評価されていて、オリジナル版であればPlayStation Storeのスコアも高いタイトルです。こちらをどのようにとらえていますか?

杉山:ありがたい限りです……理由としては、ストーリーを追うだけではなく、写真を撮るだけでもなくて、遊んでおもしろいところがあると思います。もちろんストーリーも大事なのですが、写真を撮影して楽しいという、自分でおもしろさを作れるところがよかったのかなと。

 あと、恋愛シミュレーションというジャンルのタイトルが減っているので、喜んでもらえているのだろうと思っています。

九印:開発的に、すべての要素を作れるわけではなかったので、コンセプトを絞ってそれに特化して作りました。そういう意味でチョイスした部分をしっかりと見てもらえたのだと思います。

――ストーリーナラティブのゲームが多い中、自分でシチュエーションを作るような体験型のゲームにしている理由は?

杉山:ゲームは、コントローラを握って操作するのがおもしろいものだと昔から思っています。そこは変えずにやってきています。

 フォトセッションについては「どうやってカメラを傾けるの?」と思ってコントローラを傾けるとジャイロで画面が傾き、驚きや喜びがある。他でできない体験を作っていきたいと思いつつ、開発しました。

――細かいことになるのですが、『レコラヴ』、『LoveR(ラヴアール)』と“ウ”に濁点を入れているのには何か理由があるのでしょうか?

杉山:“ラヴ”の方が類似タイトルが少なく、商標が取りやすそうという身も蓋もない理由です。

――なるほど。開発の中で、もっとも印象的だったことをお話いただけますか。

杉山:なんでしょうね……Switch版の開発は最初てこずったのですが、画面にグラフィックが表示されるようになってからはすごくスムーズで、プログラマーの底力を感じました。

九印:2プラットフォームあったうえに、マジカルユミナの展開があり、『LoveR』のダウンロードコンテンツも動いていた。同時並行でいろいろあったので、大変だったことは印象的です。

 ただ、タイトルが発表されて発売が近付くにあたって期待されている声が多く届きました。開発は大変だったのですが、その声を受けて頑張れましたね。発売から1年経っても写真を撮ってくれている人がいるのはうれしいですし、印象的です。

杉山:あとは発売日ですね。『LoveR』は発売が延期されてしまったのですが、『LoveR Kiss』はちゃんと出せてホッとしました。ハードを研究しながら、新要素を作りながら、『LoveR』のアップデートを重ねながら、映像を作りながら……という1年。

 短い開発期間にもかかわらず、スタッフが頑張ってくれて、ここまで来られたと思っています。

――魅力的なキャラを作る際に、物語、ビジュアルそれぞれで心がけていることはなんでしょう。

杉山:見た目や性格から、その子にとってベストなストーリーを考えることが大事だと思っています。ずっと恋愛シミュレーションを作ってきたので、たくさんの女の子を描いてきました。どうしても、過去の子でやったようなことや設定は出てきてしまうのですが、似ているからといってブレーキを踏まないようにしてます。

 ベストだと思えるシチュエーションができたのに、僕の過去作とかぶったことでボツにしたら、新しい子がカワイそう。過去のシナリオや設定と似ていることがあっても、そこは表現を変えたり、視点を変えたりしてアレンジしています。そもそも、いいシーンはだいたい夕方の屋上で夕日を見ながらだし、どうしようもないです(笑)。

九印:ビジュアルは設定を踏まえて作るのですが、ユーザーに愛されるキャラクターを第一に考えて作っていきます。オリジナル版を遊んでいる方が、どのような形で好きになってくれているのか把握できたので、それを踏まえて開発に生かしています。

 あわせて髪形や衣装は、「この子だったらこういう感じにする」や「こういうものは着ない」ということを考えます。性格によってキャラごとにアレンジすることもあるわけです。

――最後にまだ遊ばれていない人に向けてと、シリーズを遊ばれている読者に向けてひと言ずつお願いします。

杉山:漫画や映画では物語に恋愛がからんでくることが多いです。ゲームはインタラクティブ性があり、自分自身がその子と恋をすることになるので、恋愛ゲームに身構えてしまう人も多いと思います。

 『LoveR』は恋愛と写真をテーマにしています。たとえ写真に興味がなくてもゲームのスクリーンショットを撮る方は多いと思います。本作では、アングルや表情を自分なりに工夫して、自分だけのスクリーンショットを撮ることができます。その楽しさは、他のゲームでは味わえないものです。

 そのうえにキャラとの展開があって、自然にストーリーに引き込まれると思います……自分でいうのはアレですが(笑)。

 買うかどうか迷っていらっしゃる方は、PS4版『LoveR』の体験版がPS Storeにあるので、ぜひ遊んでいただきたいです。

九印:本作ではペアフォトセッションを用意しました。ストーリーの中で、キャラクター同士が描かれることはあったのですが、同じ空間でキャラ同士を撮影できるようになりました。

 2人いることで、キャラが存在している空気感をより感じていただけると思います。前作を遊ばれた方であれば、キャラを好きな気持ちがより大きくなると思うので、ぜひ体験してください。

©2020 KADOKAWA GAMES
※画面は開発中のもの。

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