映画『フクシマ50』苦難の際に持つ役割とは? 佐藤浩市さんと渡辺謙さんが語る

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 2011年3月11日午後2時46分、東日本大震災発生。そして福島第一原発事故。

 日本人誰もが経験し全世界が震撼した福島第一原発事故の関係者90人以上への取材をもとに綴られた、ジャーナリスト門田隆将さん渾身のノンフィクション作品『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫刊)原作の映画『Fukushima 50(フクシマフィフティ)』が、3月6日に全国公開されます。

 本作は、マグニチュード9.0、最大震度7という、日本の観測史上最大の地震となった東日本大震災時の福島第一原発事故を描く物語です。

 想像を超える被害をもたらした原発事故の現場・福島第一原子力発電所(通称イチエフ)に残った地元福島出身の作業員たちは、世界のメディアから“Fukushima 50(フクシマフィフティ)”と呼ばれました。

 世界中が注目した現場では本当は何が起きていたのか――、何が真実なのか――、浮き彫りになる人間の強さと弱さ。東日本壊滅の危機が迫る中、家族を、そしてふるさとを守るため死を覚悟して発電所内に残った人々の知られざる“真実”が、今、遂に明らかになります。

 主役となる福島第一原発1・2号機当直長・伊崎利夫役に佐藤浩市さん、福島第一原発所長・吉田昌郎役に渡辺謙さん。

 さらには吉岡秀隆さん、緒形直人さん、火野正平さん、平田満さん、萩原聖人さん、吉岡里帆さん、斎藤工さん、富田靖子さん、佐野史郎さん、そして安田成美さんら、豪華実力派キャストが結集し、邦画初となる米軍の撮影協力も得るなど、日本映画史上最大級のスケールで映画化した『Fukushima 50』が、いよいよ公開です。

日本外国特派員協会記者会見オフィシャルレポート

 3月4日に行われた日本外国特派員協会記者会見に、佐藤浩市さん、渡辺謙さん、若松節朗監督、角川歴彦会長が出席し、本作への想いを語りました。

 まず本作を映画化するに至った経緯を聞かれた角川会長は「この題材の映画化の話は故・津川雅彦さんから持ち込まれたもので、テーマが難しかったですが、福島第一原発の中で何が起きていたのかに迫りたいと思っていました。

 そうしてなかなか形にできずにいたところ門田さんの原作に出会い、これを形にすることで津川さんの夢を叶えようと思いました」と本作の企画するに至った経緯を語りました。

 そして若松監督も「人間の弱さや強さが入っている映画が大好きです。原発作業員の思いが重層的にある題材だと思い、やりたいなと思いました。毎年3月11日が近づいてくると、メディアも東日本大震災のニュースを流しますが、だんだんと少なくなってきているように思えます。毎年この時期に本作が放映されるようになれば風化を止めるきっかけになると思いました」と力強く語りました。

 本作がまもなく公開されるにあたって、渡辺さんは「この映画がいよいよ公開を迎えるとなった際に社会情勢がこのようになりました。それでも我々は未来を予見することはできない。国難のような岐路に立たされた時にどうするべきなのか、この映画を見ることでひとつのヒントを得ることができるかもしれない。そうした未来へ向かう大きなステップになる映画だと思います」とコメント。

 それに対し、佐藤さんは「最初は被災された方の気持ちを考えると映画化するには早いんじゃないかと思いました。それでも、この映画を実際に福島の方々に見ていただく機会がありました。本編には精神的にも痛みを強いるシーンが多いのですが、それでも最後まで見てくれた方が「映画を作ってくれてありがとう」と仰ってくれました。その言葉を聞いてギリギリだったんだなと思いました。

 人間は痛みを忘れることで次に挑戦できますが、この事実を風化させてはいけない。自分たちがもう一度見直すという意味ではギリギリだったんだなと思いました。痛みを次の世代に語り継ぐためにも、今このタイミングで本作を見ていただくということだと思います」と本作に込めた想いを語りました。

 演じた役どころについて聞かれ、渡辺さんは「自分が演じた吉田さんの経歴や育った環境のリサーチはしました。なによりも吉田さんと共にお仕事をしていた人たちからお話を聞く機会があったことです。

 実際に原発内で事故が起きた時、どういう対応をしていたのか、どのように中操の作業員とコミュニケーションを取っていたのかなどを事前にリサーチできたことは大きかったです」と吉田所長を演じるにあたって、一緒に働いていた作業員などからリサーチを重ねたことを明かしました。

 主演の佐藤さんと共演の渡辺さんは12年ぶりとなる共演を果たした本作。お互いについて佐藤さんは「『許されざる者』(2013)を一緒にやれたことが大きかったです。年齢もほぼ一緒で、40年近く俳優としてものづくりの仕事をしている信頼関係はありますね。

 劇中で吉田と伊崎が直接話す所はトイレのシーンくらいなんですけど、二人の中にある共通理解というのは、絶対に取ることはないだろうと思っていた緊急時にだけ使用する赤い電話で話さなければいけない状況が来た、という時の気持ちが一番大きな部分で繋がっていたと思います」とこれまでに数多く共演してきた渡辺さんへの感謝を語りました。

 それに対して渡辺さんは「浩市くんの100本目の出演映画はなんでもやる、通行人の役でもやるよと言っていたら、あっという間に100本目を超えていたんですよ(笑)。そして、これまで吉田所長を題材にした映画のオファーを受けたことが2、3回ありましたが、それらは原発事故を再現するだけだとお客さんには何も届かないと思ったんです。

 本作のオファーを受けて、現場で働いてる伊崎に焦点を当てていて、素晴らしいヒューマンドラマになると脚本を読んで思いました。そして伊崎さんを演じるのが佐藤浩市だったので、出演するべきだと思いました。撮影を通して彼は信頼に値する素晴らしい俳優だと実感しましたね」と今回オファーを受けたきっかけと主演の佐藤さんを称賛しました。

 最後に本作が73の国と地域での上映が決まっていることに対して、渡辺さんは「海外にも多く友人がいますが、“福島”というワードをネガティブに捉えていると思います。日本の中でこの問題をどう解決しようとしているかについては関心が高いです。

 ネガティブに感じるものを我々がどうポジティブに捉えることが出来るようになるのか、この映画が起点となって世界に広まっていくことを願っています」と願いを込めて語りました。

 佐藤さんは「災害は負の遺産でしかない、でもその負の遺産、起きてしまった事象を正確に伝えつつもメンタリティを少し変えて遺産にしていけるようにこの映画を見て感じてもらえたらと思います」とコメントし記者会見は終了しました。

映画『Fukushima 50』作品概要

あらすじ

 あの日、原発内に残り戦い続けた50人の作業員たちを、世界は“Fukushima 50(フクシマフィフティ)”と呼んだ。

 2011年3月11日午後2時46分。マグニチュード9.0、最大深度7という日本の観測史上最大の東日本大震災が発生した。

 太平洋から到達した想定外の大津波は、福島第一原発(イチエフ)を襲う。内部に残り戦い続けたのは地元出身の作業員たち。

 外部と遮断されたイチエフ内では、制御不能となった原発の暴走を止めるため、いまだ人類が経験したことのない世界初となる作戦が準備されていた。それは人の手でやるしかない命がけの作業。

 同じころ、官邸内では東日本壊滅のシミュレーションが行われていた。福島第一原発を放棄した場合、被害範囲は東京を含む半径250km。避難対象人口は約5,000万人。それは東日本壊滅を意味していた。

 避難所に残した家族を想いながら、作業員たちは戦いへと突き進む――。

スタッフ(敬称略)
監督:若松節朗
脚本:前川洋一
音楽:岩代太郎
原作:『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』門田隆将(角川文庫刊)
製作:KADOKAWA
配給:松竹、KADOKAWA

出演(敬称略)
佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、緒形直人、火野正平、平田満、萩原聖人、堀部圭亮、小倉久寛、和田正人、石井正則、三浦誠己、堀井新太、金井勇太、増田修一朗、須田邦裕、皆川猿時、前川泰之、Daniel Kahl、小野了、金山一彦、天野義久、金田明夫、小市慢太郎、伊藤正之、阿南健治、中村ゆり、田口トモロヲ、篠井英介、ダンカン、泉谷しげる、津嘉山正種、段田安則、吉岡里帆、斎藤工、富田靖子、佐野史郎、安田成美

© 2020『Fukushima 50』製作委員会

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