BitSummitで電撃PS賞を受賞した『Wattam』はみんなを笑顔にする魔法があるゲーム。E3での出展は?【電撃PS】

電撃PlayStation
公開日時

 先日行われたインディゲームの祭典・BitSummit 7で出展されたゲームのなかで、ひと際、周囲の笑顔が目立っていたゲームがあった。PlayStationブースに1台だけ出展されていた『Wattam』だ。

  • ▲帽子をかぶった町長が主人公で、町長の得意技は爆発。
  • ▲キャラクターそれぞれに得意なことがあり、個性的。
  • ▲できるアクションのひとつに手を握ることが。みんなで輪になったり。

 プレイしている人もそれを見ている人も笑顔で画面を見ている、そんなゲームは会場でも異色で、じつは開場する前から関係者がプレイするために並んでいるほど注目されていたタイトルでもある。『塊魂』を作った高橋慶太氏が制作していることも注目されていた理由のひとつだった。高橋氏は先日発表された、毎週ゲームが配信されてくる新しいゲーム機“Playdate”用にゲームを開発していることも明らかになり、こちらでも話題になっている。

  • ▲“Panic!”から2020年に発売予定の“Playdate”。12週連続でゲームが配信されてくる、ゲーム機の右横にクランクが付いているのが特徴的だ。

 といったところで、来日していた高橋氏に、『Wattam』や“Playdate”についてを根掘り葉掘り聞いてみました(聞き手:電撃PS元編集長・西岡美道)。

  • ▲カメラを構えるとまともにこちらを見てくれない高橋慶太氏。

――『Wattam』はBitSummit 7で初めて日本で出展されましたが、プレイしたゲームファンの反響などはいかがでしたか?

高橋慶太氏(以下敬称略):コワくて見てないです(笑)。というのと、ずっと取材を受けていたのでなかなか見ることができませんでしたね。あと試遊台が1台しかなかったので、そこは申し訳なかったなぁと。PAXとかでは、フレンドリーにマルチプレイをみんなでやってもらうんですが、BitSummitでは1台しかなくて、しかも椅子がなく立ってのプレイだったので、これは失敗したなと。日本デビューは失敗でした(苦笑)。

――出展されていたデモは1時間もプレイできたみたいですが、今回は長く遊んで欲しいと思っていたのですか?

  • ▲町長がドカーンと行ったところ。みんな大喜び。

高橋:まだ制作過程なので試遊用のバージョンを作ることはできないし、うまくカットしてデモを作ることがなかなか難しくて、1時間になりました。

――数年前にPlayStation Experienceで『Wattam』をプレイさせてもらったときのバージョンとまったく変わってました。日本語も入っていたし、演出も豊富になっていて、あとプレイしやすくなっていました。

高橋:プレイしやすくなったところは、じつはちょっと葛藤があったんですが……。プレイしている人には迷ったり考えたりしてほしいですし、そういうのはゲームのひとつの要素なのでやりすぎないようにしたいと思っていますが、ただそのバランスは難しいですね。

――『Wattam』をプレイしていて思うのは、自分がニコッとする瞬間がいっぱいあるんです。で、その「ニコッ」は、子どもが微笑ましいことをしたときに思わず出る「ニコッ」なんです。これは自分にも子どもができたからわかったんですが、数年前にプレイしたときはわかりませんでした。

高橋:えースゴイですねそれは。あれですか、電撃PlayStationのコラムを読んで、僕にはこういうこと言っておけば喜ぶと思って言ってますか?

――そんなことないです(笑) なんだろう、混じり気のない笑いというか、それが誘発されるんです。

高橋:それは……まさに僕が『Wattam』でやりたかったことなんですよ。自分も、ほかの人でも、赤ちゃんだったり子どもを見ると温かく笑いますよね。あれはなんでだろうなと考えて、それをビデオゲームでも再現できたらスゴイだろうなと思って最初から作ってます。方法としては、子どもの声を使うとか、かわいいテキストを入れるとか、そういうことでもあるんですが、あの「笑い」は、ほかのビデオゲームではやっていないことだから。

――子どもがいない人が見たらもしかしたら僕が感じたような「ニコッ」ではないかもしれませんが、それでも1台しかなかった試遊台をプレイしている人とその周りにいる人は、みんなニコニコしていましたよ。その光景を客観的に見て、これはスゴイゲームだと。なのでメディアアワードの電撃PlayStation賞にさせていただきました。

高橋:ね、スゴイでしょ? 西岡さんのそういう感想を聞けただけでもBitSummitに来てよかったです(笑)。 

――主人公の町長のスキルで爆発するのを「やってやってー」とかキャラクターが言っていることは単純で、ほんとの子どもっぽいですよね。

高橋:そうそう超単純。あれが子どもですよね。AIの子どもに実際のように「やってやってー」って言われてやるゲーム。それが新しいと思って作ってます。

――キャラクターが増えてくるとほんとにいろいろなことができますよね。ストーリーラインを追わないで、例えばトイレでうんちを量産していても、予想していなかったことが起こって楽しい。ただこれ、組み合わせとか考えると調整がむちゃくちゃ大変ですよね?

高橋:大変(笑)。デバッグが大変です。

  • ▲ゲームを進めるとこんなに多くのキャラクターたちが登場する。それぞれを操作できる!

――自分はデモ版のプレイは途中で終わってしまったんですが、仲間を集め終わるとその先に何かあるんですか?

高橋:それはお話にかかわるから言えないです(笑) ゲームの最初に流れるムービーがあるんですが、そこでこの世界に何かが起こったことがわかります。最初は仲間を取り戻すことから始まります。

――現在、ゲーム自体の完成度はどのぐらいですか?

高橋:もう完成はしています。デバッグとか調整に時間をかけています。

――そうなんですね。『Wattam』は当初見えていた完成形と、今の姿はイコールなんですか?

高橋:開発期間が長かったので思い返してみると……最初期はSIEワールド・ワイドスタジオのサンタモニカスタジオと一緒に作っていたんですが、そこではゲームのコアな楽しさを証明しないといけなくて、登ったり爆発したりというアクションを作り、それができたら今度はレベルプログレッションという要素をつけて、どうゲームがコアループしていくかを見せないといけなかったんです。ただそれは自分が作りたかったゲームではなかった。もっとお話ベースで、ひとつひとつイベントの発生の仕方も違うし、単純なループではなかったけど、作らなければいけなかったからまずそこに時間をかけました。その後にSIEからは開発のキャンセルをされてしまいますが(笑)

 最初にアイデアを考えたときには、最初と最後は決まっていました。間をどう埋めいくかを考えてできたのが今の『Wattam』です。いろいろあってパブリッシャーもアナパルマになっています。

――なんでこの質問をしたかというと、『Wattam』は高橋さんの考えていることや思想がけっこう入っているゲームだと思っていて、開発期間が長かったことで途中で考えが変化したりとか、そういうことも影響を受けているのかなと。

高橋:考えの変化はないですね。だからゲームの根幹も変わっていません。テクニカルな理由で仕様を変更しないといけないことはありましたが、それ以外はないです。

――あとこれは失礼な質問なんですが、高橋さんはシニカルな方という印象なんですが、生み出すゲームはポップでキャラクターもかわいい。どうしてこのギャップが生まれるんでしょう?

高橋:それは僕にはわからないですね(笑) 作った本人はかわいくないしポップじゃないってことですか?(笑)

――髭も生えてますし(笑) 高橋さんとしての表現は『Wattam』なんですね。

高橋:かわいくないよりかわいいほうがいいです。汚いよりクリーンなほうがいいです、表現としては。

――高橋さんのゲームは作品色が強いと思っています。インディゲームはとくに、作っている個人の考えが反映されていきますし、作家性が強いと言われています。

高橋:あんまり自分のメッセージ色を強く出そうとは考えていないんですが、ただそこがアイデアのきっかけだから出てきているのはしょうがない。かつ、コンセプトとかを聞かれれば答えますが、そういうことがゲームに明確に現れているわけではないです。僕の作るゲームは商品であるのは間違いないので、最後は面白ければいいんですよ。作家性が強いって言われるのは自分は嬉しくないですね。そこで勝負しようとは思ってないですし、むしろ作家性とかを嗅ぎとられてしまうと恥ずかしいですね。

――ゲームは完成しているということですが、発売はどのぐらいを目指していますか?

高橋:今年中です。ゲームは完成していて、パフォ―マンスの向上と、デバッグをしています。そのへんに時間をかけていて最終調整に入っています。

  • ▲トイレが誰かを食べるとうんちに。うんちいっぱい。

――Playdateの話も聞いていいですか? 高橋さんはPlaydateでもゲームを作っていることが発表されましたが、いつぐらいから関わっているんですか?

高橋:2、3年前ですかね。ちょうどサンタモニカスタジオから『Wattam』の開発をキャンセルされてやることがなくなっていたときにPlaydateのゲームのアイデアを練ってました。

――高橋さんのゲームはクランクを使ったゲームですが、どういったゲームになりますか?

高橋:入力装置としてクランクが付いていると聞いて、これを使わない手はないなと。そこからアイデアを出して『Crankin’s Time Travel Adventure』になりました。

――クランクで時を巻き戻したり進めたりして障害などをクリアしていくゲームですよね?

高橋:そうです。公開されているムービーよりも後半はもっと複雑になっていきますよ。ボリュームもかなりあります。

――『Wattam』と並行して作ってたんですよね?

高橋:そうですね。加えて自分の個展も進めていましたし、常にサイドプロジェクトもある感じです。

 Playdateはシンプルで、こういうゲーム機が出てきてよかったなと思います。ゲームもシンプルなので、シンプルなゲームを作るには若さが必要だなと思っていたんですが、作れてよかったです。いいアイデアを生むことができたのでちょっと自分に安心しました。

――ちなみに『Wattam』はE3には出展されるんですか?

高橋:E3には出ないですね。開発してます。

――完成を楽しみにしていますー。

  • ▲サーモン寿司とどんぐりくん。

(C) Keita Takahashi