『バイオ RE:3』開発に携わる4人による対談。キャンペーンモードの見どころや『バイオ』誕生の舞台裏に迫る

Z佐藤
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※『バイオハザード RE:3 Z Version』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。

 カプコンから、4月3日に発売されるPS4/Xbox One/PC(Steam)用ソフト『バイオハザード RE:3』。本作の開発者スペシャル対談を掲載します。

 対談に参加していただいたのは、プロデューサーであるカプコンの川田将央さん、エムツー代表で本作の開発をまとめた三並達也さん、レッドワークス代表でディレクターの坂田聖彦さん、リードアーティストを担当したケーツーの佐々木光典さん。

 開発を振り返っての苦労や印象的だったこと、リメイクに当たってのこだわりなど、さまざまなことをお話いただきました。

  • ▲左から川田さん、坂田さん、三並さん、佐々木さん。

 なお、インタビュー中は敬称略。

エムツー、ケーツー、レッドワークス、そして『レジスタンス』を開発するNeobards社を中心にプロジェクト始動

――『バイオ RE:3』の企画がスタートしたのはいつごろで、どんな経緯でしょうか? 

川田:本格的に動き出したのは2年半くらい前ですね。経緯としましては、同時期に複数のタイトルが進行する中で、カプコン社内のスタッフだけではマンパワー的に厳しいところがありまして。社外の有力な会社さまとのお付き合いを広げていきたいと考えていました。

 そんな時、エムツーさん、レッドワークスさん、そして、これまでもご一緒させていただいていたケーツーさんとお仕事ができる話がまとまりまして、そこから具体的にプロジェクトの内容やゲームの方向性を深めていきました。

――『レジスタンス』が盛り込まれることは、企画当初から決まっていたことですか?

川田:長く遊んでいただきたいという観点から、オンラインで楽しめる要素は搭載したいと考えていました。そこに関しては、以前からお付き合いがあり、ネットワークまわりが非常に強いということでNeobards社さんという台湾の開発スタジオに協力をお願いしたという流れになります。

――作業を終えられた手ごたえはいかがでしょうか?

坂田:初めてお話をいただいた時には少し複雑な体制にも思えましたが、ビジュアルまわりやテクニカルなところはカプコンさんのRE ENGINEでの開発経験が深いケーツーさんでサポートしていただき、実作業をする側としてはゲーム作りに専念できました。これまで作ったどんなタイトルよりもいいものに仕上がったと思います。

――キャンペーンモードの開発に、エムツーさん、レッドワークスさん、ケーツーさんは、どういった形で携わられているのでしょうか?

三並:カプコンさんからお話をいただいたあと、プロジェクトに協力してくれる会社やスタッフを捜して、私からあちこちに声をかけました。その中でレッドワークスさんの名前があがり、もともと『バイオ3』の開発に関わっていたメンバーがいるなら進めやすいのでは? と、お願いしたり、そのあとケーツーさんにも加わってもらったりして、この開発体制を整えました。

 何かをお願いしたい時、丸ごと大きな会社に委託するのではなく、1チームだけ手を借りたい、というケースはあると思うんです。そこでお手伝いできるプロダクションのような機能をするものができたらいいなと動き始めていまして。その意味でも、今回はいい経験をさせてもらいました。

佐々木:『バイオ7』に続いてグラフィックを担当させていただいたんですが、私も最初は不安を感じていました。でも実作業に入ってからはスムーズに進められました。

川田:どんなセクションが必要なのかを確認して、いろいろな方面に声をかけて広がっていった感じでしたね。

三並:細かいところまで含めると、今回はかかわっている会社さんがすごく多いです。数が増えるとバラバラになりがちですが、すごくスムーズな環境で進められました。

坂田:同じ会社内で開発チームを組んでも、こんなにうまくいかないだろう、というくらいに動きやすかったと思いました。

川田:もしかしたら社内だけで開発するよりも、適度な“距離感”で作業ができたのかもしれません。あくまでも一般論ですが、近すぎて気心が知れている相手だと逆に意見の衝突が起きることもあります。協力して作っていくなかで、お互いに尊重しあって、いい距離感で仕事ができたように感じました。

三並:しがらみがないから、先輩だから気を使って意見が言えない、とかはない。互いにプロフェッショナルとして開発に取り組めたからだと思います。

 今回、僕はプロデューサーではあるのですが、内容について指示することはありませんでした。そのため、「原作のアクション性の高さやタイムリミットが迫る中での脱出劇をどう作ってくれるのか?」というところは僕個人としても楽しみだったんです。

 企画が動き出す時に、内容について坂田くんから“ゾンビがあふれている中でのサバイバル感を出したい”というコンセプトを説明されて、すごく共感しました。ゾンビ映画にもそういうシーンがあったりしてわかりやすいですし、なおかつ『RE:2』の前後のお話という部分でも危機感をあおっていく……そんなイメージで最後まで作られていて、原作を初めて遊んだ時と同じような感覚でプレイしていただけると思います。

川田:『RE:2』にも原作に携わっていたスタッフが参加していて、思い入れが強く出ていました。同じように『RE:3』にもスタッフの強い思い入れがあったように思いますね。

――題材が『バイオ3』のリメイクで、当時開発に携わっていた坂田さんがディレクターを務められている点も、スムーズに進められた要因では?

坂田:まさにそうですね。実は『バイオ3』は、僕のゲーム制作人生で1番しんどかったタイトルなんですよ。というのも『バイオ2』発売後、次回作を作ることになった時、1年ほどで作ってほしいというオーダーでした。しかも、それまではプログラマーでしたが、初めてリードプログラマーというポジションになり、マネジメントも担当することになって。

 なんとか自分としては全作業やり切るつもりでしたが、リーダー業と兼任になったことで作業量が増え、もう20年以上前のことで現在はそんなことはありませんが、長期間ずっと会社に泊まり込んでも終わらないような状況になったんです。その意味でも、僕としてはあらためて取り組んで、リベンジしたいと思っていたんです。

――三並さんは『バイオ3』をリメイクする話を聞いた時、最初の印象はいかがでしたか?

三並:「えっ、どうやって?」というのが最初ですね。僕はエムツーという会社を作って、カプコンさんから小規模なプロジェクトのお手伝いをさせてもらっていました。そのなかで、いずれは大きなプロジェクトもやりたいという話はしていましたが、何も決まっていなかったんです。

 『RE:2』を作っているのはうかがっていましたが、次に『RE:3』も作りたいけれど、どこで作ろう? みたいな話をされまして。その時は聞き流していましたが、改めて「やってもらえませんか?」と。それが3年前くらいですね。そのあと半年くらいで人材や準備を整えて、2年半くらいで完成しました。

――佐々木さんはいかがですか?

佐々木:オリジナルの『バイオ3』に関わっていたスタッフは、ケーツーにはいないんですよ。けっこう若い会社で、当時、私も1人のユーザーとして遊んでいたくらいで。かなりレジェンド的なイメージのタイトルでしたので、参加できて本当に光栄に思っています。

原作『バイオ3』が生み出された経緯と、リメイクに向けた取り組みとは?

――『バイオ3』は、どのような位置づけの作品だととらえていますか?

三並:ナンバリングタイトルのなかでは異色のタイトルだと思っていますね。開発は僕のチームではなかったので初めて見たのはプレゼンの時でしたが、『バイオ1』、『バイオ2』と比べてスピード感があり、アクション性が高いところが非常に印象的だったことを覚えています。

坂田:『バイオ1』『バイオ2』がヒットして、ユーザーさんからの反響も届くようになり、「興味はあるけれど操作が難しい」「ゲームとしての難易度が高い」という意見も耳にしていました。それで、もう少し遊びやすい、触り心地のいいカプコンらしいゲームを目指したのが最初です。

 『バイオ3』のディレクターもアクションに強い人でしたので、そんな中で生まれたタイトルになりますね。例えば階段の上り下りをシームレスにしたり、クイックターンを入れたり。さらに“ラジコン操作”と呼ばれる操作方法をやめようという意見もあったくらいで。そういったチャレンジのなかで“緊急回避”が生まれたりしました。なので『バイオ3』は、ユーザーさんの意見を取り入れ、ブラッシュアップしたタイトルともいえます。

――探索の部分にも変化が感じられましたね。

坂田:そのあたりも意識したところで、『バイオ2』までは密室でじんわりと進むゲームでしたが、『バイオ3』では屋外のフィールドも探索できたり、わりと広々とした場所で、たくさんのゾンビやネメシスと戦っても『バイオ』らしく遊べるものを目指しました。

 立ち位置としては、そのあと『バイオ4』に続くんですが、ちょっとマニアックな『バイオ』から、もっとグローバルに展開する『バイオ』に転換する節目のタイトルになっていると思います。

――『バイオ3』をリメイクするにあたって1番に心がけたことはどんなことですか?

坂田:ホラーではありますが、少しアクションの風味を加えたのが『バイオ3』の立ち位置で、それを『バイオ7』や『RE:2』をプレイしたユーザーのみなさんに感じていただけるようにする、ということを心がけました。

川田:初期3作品でラクーン3部作と考えた時、物語はひと区切りしますがシステム的には若干消化不良な面も感じていました。なので今回、『バイオ4』以降のシリーズのいいところを取り込み、あらためて作られた本作は、『バイオ3』よりも坂田さんが1番最初に思い描いたコンセプトに近いものになっていると思います。

 客観的に見た時、そういう流れというか“縁”みたいなものがおもしろいなと。偶然のめぐりあわせではありますが、作るべき人が関わってくれているように感じました。

新たな設計図のもとでキャンペーンモードに注力され、かつての恐怖も鮮烈によみがえる

――原作をアレンジする部分、継承する部分に関しては、どのように決められたのですか?

坂田:あくまでもリメイクですので、世界設定や物語の根幹部分に手を加えることはできないと思っていました。原作『バイオ3』に収められたゲーム内容のすべてをリメイクするとなると大変なボリュームになります。ゲーム内容の取捨選択が必要になり、すごく悩みました。しかし、肝心のキャンペーンモードのクオリティをさげることは絶対にしたくなかったので、“ザ・マーセナリーズ”の要素はお休みしてもらっています。

 予め再プレイ性の部分は別のオンラインゲーム『レジスタンス』で担うとしていたからこその選択です。またライブセレクションの要素も取りやめて、1本のシナリオへプレイ密度を集中させています。

川田:やっぱりキャンペーンモードに注力していただいたこともあって、かつて坂田ディレクターが目指した『バイオ3』のストーリーラインというのはしっかり達成できていると思います。

坂田:そうですね。キャンペーンモードの内容に関しては原作『バイオ3』以上のボリューム感と密度が出せたと思います。演出面に関しても、当時は達成できなかったこと、「もっとこうしたかった、こう感じてほしかった」という部分にフォーカスして組み立てています。ある部分では原作を懐かしく感じ、ある部分では新鮮さを味わいながら最後まで楽しんでいただけると思います。

――クリーチャーのなかではハンターγが大きな話題になっていますね。かなりグロテスクと……。

坂田:カワイイですよね。あのカワイさがわかっていただけたようで、よかったです(一同笑)

佐々木:ハンターγのデザインは、攻略する楽しがあるゲーム性の部分と、どんな経緯で生み出されたのか? という設定部分。その2つを踏まえて融合させてあの姿になりました。

坂田:『バイオ3』のハンターγは、ハンターβの3Dモデルをベースに加工して作ったクリーチャーなんです。でも、当時の限られた開発リソースの中での工夫ですね。『RE:3』では、あらためてデザインを考えて、独自の攻撃やAIを搭載し、1から制作したクリーチャーになります。

――キャラクターデザインのリニューアルについては、どのようなコンセプトで決めたのでしょう。

坂田:リニューアルについてはファンの方、それぞれで意見が分かれるだろうと、覚悟していました。けれども、現行のハードでジルやカルロスを表現すると、今回のデザインが最適解だと思っています。プレイしていただければ「ジルってこうだよね、カルロスはこっちの雰囲気もいいね」って感じていただけると思います。

川田:我々としては、『RE:3』で最高のジルができあがったと考えています。ジルの声は、過去作と同じ湯屋敦子さんが担当されています。日本語ボイスでプレイしていただくと、よりジルのイメージを感じていただけると思います。

――ネメシスのデザインで、特に注目してほしい部分は?

坂田:胸の部分に何らかの器官を加えたのは、アートディレクターのこだわりですね。ネメシスについては、開発初期からいろいろなデザインを考えてもらい、最終的に20種くらいになったと思います。決定稿になるものがあがってきた時に、すごいパワーがあるデザインで、見た瞬間にこれで行こうと決まりました。インパクトがありますし、すごくいいデザインになったと思います。

――新アクションとして“ステップ”が加わり、“緊急回避”も強化されました。新たなアクションは、どのように生まれたのですか?

坂田:もともと『バイオ3』が、ちょっとアクション寄りな味付けをしたという話をしましたが、“恐怖”の部分は保たなければいけません。その点は『RE:3』でも重視して取り組みました。なので、新しいアクションを加えるにしても、その影響や、これに対してどうやって恐怖を感じてもらうか? という部分には細心の注意を払いました。

 ただ、開発途中では緊急回避は万能になり過ぎてしまい、なくしたほうがいいのでは? という意見が出てきた時期もあって。でも、やはり『バイオ3』を構成するファクターの1つとして“アクションの風味”は絶対に必要ということで、どうすればもっとよくなるのか? を考えまして。

 そのあたりを念頭に何度も試作を繰り返して調整しました。失敗した時のリスクと成功した時のリターンのバランスが、しっかり恐さの演出に繋がっていると思います。

――マップのデザインですが、色鮮やかな看板が印象的でした。このあたりは意識されましたか?

佐々木:看板はかなりこだわりました。どれも力作なので、ぜひ注目していただきたいです。あと、事件発生の直前まで人々でにぎわっていたが、壊れ始めた街並みの雰囲気も体感してほしいです。そういった空気感の表現にも力を入れていますので、端々まで見ていただければと思います。

――光と影の演出や炎の描写など、作品を重ねるごとに進化を感じました。RE ENGINE自体もより洗練された印象をうけました。

川田:RE ENGINE自体の進化というのもありますし、それを扱うスタッフの技術力の向上というのもありまして、作品を重ねるごとにライティングや質感表現というのは間違いなく上がっています。炎というのは『RE:3』で象徴的に出てくるものだと思いますので、そのクオリティは上げていきたいという話は最初からありました。

 より深く突き詰められたのが、今回のクオリティが上がってきた結果なのかなと思っています。特に火の粉の表現は、かなりこだわっていると思います。

佐々木:火の粉と炎の揺らぎはギリギリまで調整しました。ハデすぎるとホラーとしての怖さが薄れてしまいますが、今回はアクション寄りということもあり、少しハデな表現になっています。RE ENGINEでの『バイオ7』『RE:2』での経験、情報が共有されていますので、その積み重ねで新しい部分に注力できたところがよかったです。

原作を超え、『RE:2』のタイラントを超えた新生ネメシスが、街を恐怖で染め上げる!

――『RE:2』のタイラントとネメシスの違いについて意識されたのはどんな部分ですか?

坂田:タイラントはじんわりと追いかけてくるのに対し、ネメシスはすごくアグレッシブに迫ってきて、全力で抹殺しにきます。そのプレッシャーがネメシスのコンセプトになっています。近くにいる時はもちろんですが、姿が見えない時にもプレッシャーを感じてもらえたらうれしいです。あと、ネメシスの知能が高いところを表現するため、ロケットランチャーだけではなく、新たな武器として火炎放射器も使いこなせるようにしました。

――キャンペーンモードの中で、注目してほしいところはどんなところですか?

三並:『RE:3』に興味を持っていただいている方の多くは、『バイオ7』『RE:2』をプレイされた方だと思うんです。その流れに対してアピールするなら、やはりアクション性でしょうか。恐怖体験と両立させた新しい『バイオ』のアクションというものに期待してほしいです。

坂田:奇妙なことに、原作の1作目が密室、2作目が密室、3作目が屋外。今回も『バイオ7』が密室、『RE:2』も密室、『RE:3』が屋外と、同じ流れをたどっているんですよ。そういった流れもありまして、密室から解放されるような、当時と同じ感覚が味わえる点も見どころだと思います。あと、混乱した状態の屋外から建物や地下に入ると、雰囲気が一転、静寂による恐怖が味わえます。そのギャップの大きさも感じて欲しいです。

佐々木:ずっとネメシスに注目していただきたいですね。先ほど火炎放射器の話が出ましたが、そこもカッコイイですが、まだまだその先にも見どころがありますので。最終的には、ネメシスに惚れるくらいなっていただけたらうれしいです。

 また、ラクーンシティは『バイオハザード』を象徴的する街になります。シリーズを通して状況が二転三転していったり、暴動が起きたり……そういった状況をよりリアリティを感じる形で表現することを目指しています。表現の部分でも、色味や細かいディテールなどで他の作品とは違うテイストを出しているので、そのあたりも注意深く見ていただきたいですね。

――街の中を移動するのが印象的でした。

佐々木:街の中をゲームにするうえでバランスに苦労しました。構造的に屋外が多くなるのですが、広がりを表現しないと屋外らしくない。でも、ゲーム性から見ると広すぎると逃げ場が多くなりすぎてしまう。それらを考慮して、屋外でありつつゲーム的に破綻しないところのバランスを取ったデザインにしています。

坂田:カメラの仕組みや敵のAIなどが変わっているので、マップや謎解き、攻略の手順に関してはプレイヤーに最適な環境で楽しんでもらえるように、マップについてはレベルデザインからすべてを変更しています。原作とは大きく違うものになりました。

シリーズ第1弾が生み出された舞台裏とは? 秘められていた過去の逸話があきらかに!

――シリーズが世界中で愛される理由について、開発に関わるみなさんはどうお考えですか?

三並:『バイオ』の企画が進んでいるとき、僕は別のチームにいたので横から見ていましたが、さすがにディレクターを務めていた三上くん(三上真司氏 タンゴゲームワークス代表)も、ここまで世界的にビッグヒットするタイトルを作ろうと取り組んでいたわけではないと思います。

 目標としていた販売本数も、それほど桁外れなものではありませんでしたし。ただホラーのゲームで、ある程度のスマッシュヒットを出したいと考えていたようで、そこの思い入れは強かったみたいです。そのあとシリーズを重ねるごとに、単純なリニューアルではなく、大幅なモデルチェンジをしていますが、これだけ内容を変えながら、途中で立ち止まっていないタイトルは、他にないと思っています。そこをうまくできているのが、このシリーズの凄味なのかなって思います。

川田:当時、カプコンのタイトル全般がそうだったと思いますが、国内だけではなくて海外の市場を意識したものが多かったと思うんです。『バイオ』に関しても英語音声、日本語字幕だったりして。そういった意味ではグローバル化というのは、当初から考えていたのかもしれませんね。

坂田:海外のホラー映画のようなテイストですよね。そこの雰囲気をいかにして出すか? というところで日本語の音声が入ると雰囲気が崩れてしまうので。洋画のようなテイストにこだわったのが第1作の『バイオ』だったと思います。それも世界中で受け入れられた要因の1つだと思っています。

――『バイオハザード』シリーズで好きなキャラは誰になりますか?

三並:僕はレオンのチャラい?ところが好きです。クリーチャーで印象に残っているのは最初のハンターですね。初めてであった時に、一瞬なぜやられたのかわからなくて(笑)。インパクトがありました。

坂田:『RE:3』のキャラクターは全員愛着がありますね。ただ、シリーズの中で誰が好きという質問だと、バリーになります。

 第1作『バイオ』のカットシーンは、キャラクターのアニメーションについては手や首の動きだけで表現していました(当時はキャラの動きは手作業で付けることが多かった)。女性キャラクターはボディが細いこともあり、しっくり収まらない。ジルはなかなか満足できるものにならなかったんですね。

 ところが、バリーはどんなモーションを当ててもすぐにイイ感じになる。僕が全シーンを見ながら、ボイスを聞きながら、手や首の調整をやった結果、バリーはすごくやりやすかったこともあり、好きになりました(笑)。

川田:ウェスカーが好きなんですが、思い入れはがあるのはジルです。第1作『バイオ』を遊んだ時に衝撃的だったのは、女性の主人公がいたことです。普通、あのような特殊部隊が出てくるゲームは、クリスのような男性キャラが主体になると思っていたのですが、珍しさもあり、印象的でした。そこから始まって、『バイオ5』や『リベレーションズ』などでも、主人公として活やくしているんですね。

 今回の『RE:3』を含めて、どの作品でもビジュアルで意識しているのは、“シルエットにジルらしい雰囲気を出せるか”です。本作は時間軸的には“若い”ころのジルなのですが、それ以降の作品で登場したジルのいいところもフィードバックされたうえでのジルになっていると思いますね。ずっと生き続けているキャラという感じがして、思い入れは他のキャラクターよりも強いと感じています

佐々木:僕もジルですね。もともと学生時代に第1作『バイオ』をプレイして、さんざん遊んだのに『ディレクターズカット』を買い足すくらいに大好きでした。ゲームで映画的な表現を初めて感じて、それがこの業界を目指す“要因”の1つになりました。ジルでプレイしていた時に、いろいろなゲームオーバーのパターンを楽しんだこともあり、シリーズを通してジルが好きですね。

――『バイオハザード』らしさは、どこにあると思われますか?

佐々木:ゲームがどんどん進化していき、多様化しています。その中で、タイトルが発売され続けているのに『バイオハザードらしさ』が維持され続けていることはすごいと感じます。

 比較的最近のタイトルにかかわらせていただいたのですが、開発初期には毎回“『バイオハザード』らしさとは?”という話題があがります。現場レベルでは全員が1回は悩みますね。ただ、『バイオ』らしさというのは、その時その時に構築されると思っていて、あえて「これだ!」と決めてしまう必要はないかな、と考えています。

三並:前のタイトルにとらわれないこと。もしとらわれてしまったら、新しいことが何も生まれないと思っていて、それをしていないから『バイオ』らしさがあると思います。

 同じようなものがずっと発売されることは、ファンの中にはうれしいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ただ新しい発見や驚きは欲しいだろうな、と思います。クリエイターが『バイオハザード』らしさを考えて、新しいアイデアを出したのに「今までと違う」と否定されると、そこで終わってしまう。過去作にとらわれ過ぎない作り方をしているところが、いいんじゃないかなと思います。

川田:佐々木さんがおっしゃったことと相反する形になるかもしれませんが、おそらく“らしさ”を構成する要素はいくつもあると思うんですよ。システムであったり、設定であったり、ゾンビやクリスの存在だったり……。

 そういった要素をどれだけ並べることができるのかと、あえてそれらを壊して、新しい要素を入れること。両方についてうまくバランスをとることができたら、“『バイオ』らしさ”を維持できるのではないでしょうか。

 あまり明確に「こんなところがシリーズらしさなんですよ」と答えたら、それは違うような気がしています。

――そこがわかっていたら、もっと似たタイトルが出ていたかもしれませんね。

川田:グラフィックにしても、リアルな画を目指して作るのですが、リアルな絵を見せることが目的なのではない。それぞれの要素で、意識していることは多々ありますからね。

坂田:僕はゲームとしておもしろくないとダメだというのが前提にあるのですが、1番大事にしているものはビジュアルとかリアルさとかではなく、シリーズ初期作のコンセプトだった“恐怖と破壊”だと考えています。

 怖いだけ、グロいだけで終わってしまうホラー映画やエンターテインメント作品もたくさん存在しているのですが、『バイオハザード』はシリーズの共通点として仕掛けがあったり、武器・弾薬のアイテム管理であったり、ストーリーであったり、怖さを打開するため要素があり、それがバランスよく組み立てられています。“恐怖”を凌いだ先にある“破壊”のカタルシス、僕のなかではそれが“『バイオハザード』らしさ”だと思っています。

――『バイオハザード』に携わることで影響を受けたこと、変わったことはありますか?

川田:開発に参加するようになって、仕事としてホラー映画を見ることが多くなりました。

佐々木:ホラー映画といえば、小学生の時に初めて見た『エクソシスト』が1番怖いと思っているので、それ以上怖い作品には今のところ出会っていませんね。

坂田:僕も『バイオハザード』の仕事をするようになってから、ホラー映画を見るようになりましたが、いまだに慣れません(苦笑)。僕は「何をわざわざ怖いものを見るのか?」という立ち位置です。

川田:小学生の時、家に友だちを呼んでホラー映画を観た時、あえて雨戸を閉めて真っ暗にして見ました(笑)。

三並:最初の『バイオ』を夜遅くにチェックしていた時、フロアの電気が半分くらい消えていたうえに、ヘッドフォンをしていたんですね。僕はホラー映画が好きでもともと見ていたので怖くないと思ったのですが、あの時はさすがにビビりました!

(一同笑)

――最後に『RE:3』を楽しみにしている読者に向けてメッセージをお願いします。

三並:今回はプロダクションという形でかかわらせていただきましたが、『バイオ7』『RE:2』とつながってきている中で、『RE:3』も遊びごたえのあるボリューミーなものになりました。手にとって損をするところはが一切ない、期待を裏切らない作品になっていると感じますので、ぜひとも楽しんでください。

坂田:『バイオ7』『RE:2』からシリーズに興味を持っていただいたゲームファンの方々には、引き続きこちらも楽しんでもらえると思います。もともと『バイオ3』が好きだった方は、かつての雰囲気を味わいつつ、ちょっと違う遊び心地になっている現在の『バイオ』を感じることができる作りになっていますので、ぜひ手に取って遊んでいただけたらと思っています。

佐々木:これまで複数のタイトルにグラフィック面で関わらせていただきましたが、そのなかでも『RE:3』は最高峰のクオリティになったと自負しております。内容に関しても、すごく遊びごたえのあるものになっていますので、ぜひ物語のラストを体験していただきたいと思います。

川田:お陰様で前評判もよく、非常に期待されていることをよろこびつつ、プレッシャーも感じているところです。今回の開発に参加されているクリエイターのみなさん全員が「自信を持ってお届けできる」というその言葉を聞きまして、私としてもうれしいですし、本当にその通りの内容に仕上がっていると思います。

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