アニメ『イド』をもう一度見たくなる。最終話や続編、細かすぎる伏線も監督に聞いてみた(ネタバレあり)

長雨
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 殺意を感知するシステム“ミズハノメ”が生み出した犯人の深層心理“殺意の世界(井戸)”に入り込み、事件を推理する名探偵・酒井戸たちの活躍を描くオリジナルSFミステリアニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』のBlu-ray BOX上巻が4月24日に発売されます。

 発売を記念した本作の監督・あおきえい氏のインタビューをお届け! 後編は演出面の苦労や、Blu-ray BOXで注目してほしいポイントなどをお聞きしました。

挿入歌に合わせて細部までこだわった演出

――本作には個性的な“殺意の世界(井戸)”が多数登場します。演出で苦労されたところや、楽しかったところなどありますか?

 基本的には、どうしようかの連続でした。

 特に大変だったのは第1、2話の“JIGSAWED”で描いたバラバラの世界と、第4話“EXTENDED”の燃えさかるビルの世界です。両方とも初期の話数だったので、時間をかけて3DCGで表現出来てよかったなと思います。

  • ▲第1、2話の犯人“穴空き”の“殺意の世界(井戸)”。人も街もすべてがブロックのパーツのように、バラバラになっている。
  • ▲被害者を密室に閉じ込める犯人“墓掘り”の“殺意の世界(井戸)”に潜ったはずが、何故そこは炎上するビルの世界という矛盾を抱えた事件。それには、ある理由が……。

――第1話の“JIGSAWED”は、ビジュアル的にもかなりインパクトがありました。あの世界の仕掛けが、終盤に生きる展開もファンとしてはニヤリとします。

 あれは、熱くていいですよね。

――物語を彩った挿入歌もとても印象的だったのですが、アニメ作品には珍しい演出ですよね。

 制作段階での須田さんとの雑談で、ハリウッド映画は盛り上がるシーンにイイ感じの挿入歌が入るのにアニメでは何故あれが出来ないのかという話をしたんです。そしたら須田さんが「やりましょう!」と言ってくれて、書く話にぴったりな作曲家さんを集めてくれました。

――最初に聴いたときの感想はいかがでしたか?

 どれもかっこいいですよね。それだけにどうやって本編にマッチさせるか悩みましたし、今日の盛り上がりに映像が気持ちよく合うように細かく編集しました。

 大変な作業でしたが、完成した映像を見て苦労しただけのことはあったと思いましたね。

芝居や音楽がすべてプラスに

――あおき監督ご自身が印象に残っている、または思い入れがあるシーンはありますか?

 いくつかあるんですが印象的なのは、第6話“CIRCLED”のラストで見せた酒井戸役の津田健次郎さんの泣きの芝居。カエルちゃんの死体を見て、酒井戸の想いがこぼれる場面ですね。

 突然想いが出てくる場面で、シナリオの理屈でいけば何故泣くのか酒井戸的にも、視聴者的にもわからないんです。そのため絵コンテや脚本の段階では、シーンとして成立するのか不安でした。

 津田さんの芝居があり、Kenmochi Hidefumi(水曜日のカンパネラ)さんの挿入歌がハマり、ようやくいけそうな気がしました。それでも放送まで不安でしたが、全部がプラスの方向にいっていてくれてよかったです。このシーンだけじゃなく、そういう場面が本作は多かったですね。

――あのシーンを見て、酒井戸=鳴瓢なんだなとしっくりきた感じがしました。

 津田さんがインタビューで言っていた「列車が悲しみに満ちていて、素直に泣ける」という言葉も印象的でした。

 あの“殺意の世界(井戸)”が持つ、世界観がまさにそうですよね。どこにも到着しない列車に、死体だけが乗っているという物悲しい空気感が出ていると思います。

 映像としてもシナリオの段階から、ミニシアターで上映する作品のようになるといいねと話していました。

  • ▲酒井戸が何度も生き直さなければいけないほかの“殺意の世界(井戸)”とは異なり、第6話“CIRCLED”で彼が訪れたのは円環の列車がただ走り続ける世界だった。酒井戸はカエルちゃんの死の意味を知り、感情がこらえられなくなる。

――本作は海外展開も同時におこなわれました。言葉遊びが多い作品だけに、翻訳は大変だったのでは?

 井戸は英語だとwellのため、当たり前なんですがIDと井戸がかかっているということが伝わらないんですよ。北米から、どういうことですかと質問されました。

 また驚いたのは、中国で配信されたことです。この作品に限らず、中国は規制が厳しいので、暴力的な表現のある作品は難しいと言われているんです。しかしbilibiliで配信され、たくさんの反響をいただいたのがうれしかったですね。

 こういう作品が海外、アジア圏で受けるのが意外でしたし、国は違っても面白いと感じるものは同じなんだと勇気をもらいました。

  • ▲“殺意の世界(井戸)”を形成するシステム“ミズハノエ”や殺意を感知する装置“ワクムスビ”など日本神話、日本語ならではの言葉遊びが多数取り入れられている。

――国内でも上映会が多数行われました。その反響はいかがでしたか?

 オリジナル作品を周知するにはどうしようとみんなで考えて、見てもらうのが1番だろうと先行上映会を行いました。何度も足を運んでくれる方もいて、濃いファンがついてくれたなと感じます。

 本当は3月にも追加のイベントを予定していたのですが、昨今の情勢から中止になってしまって残念です。いろいろと落ち着いたら、何かイベントをやりたいと思っています。

――イベントに参加して津田さんたち声優陣の芝居と音、映像が融合したインスタレーションショーを見たのですが、本当に素晴らしかったです。

 僕も見てびっくりしました。特に2月2日に東京メディアシティ TMCスタジオでおこなわれた、津田さんと百貴船太郎役の細谷佳正さん、若鹿一雄役の榎木淳弥さんによる2回目が素晴らしかったです。

 イベントでは10分ほどのものでしたが、完全新作で30分のショーが出来ると思うほど面白く、表現の新しい可能性を感じました。あの装置で2.5次元の舞台を上演したら、絶対いいものができると思います。

セリフや背景にも注目

――4月24日にいよいよBlu-ray BOX上巻が発売されます。これから見る方、または見直す方に注目してほしい伏線、演出はありますか?

 伏線は、序盤からさりげなく張り巡らされています。

 例えば第2話で松岡黒龍が殺人鬼“穴空き”の隠れ家の壁を叩いたとき、部屋全体が映るんですがそこに彼に関するヒントが描かれています。

 また名探偵・穴井戸に関しては第8話“DESERTIFIED”の発言を注意して聴いてみると、のちのちそういうことだったのかと楽しんでもらえると思います。

――初見の時は本筋を追ってしまうので、そういう細かい部分はなかなか拾いきれないですね。

 作り手としては音楽も含めて何度も繰り返して楽しめるように制作していますので、いろいろな部分を見てほしいですね。

 なかでも最終話は、特にそれを意識して作っています。最終回にあのセリフがあったら、また1話から見たくなるよねと(笑)。

――もしも続編を制作するとしたら、どんな内容になるでしょうか?

 酒井戸を含め、登場したキャラクターたちをどうやって発展させていくかですね。

 百貴と酒井戸は飛鳥井木記との約束を果たせていないので、そこを掘り下げるのがいいと思っています。

 ただ今となってはいい思い出ですが(笑)、冷静に考えると制作はかなり大変だったので、もう少し時間がかかってしまうと思います。のんびり、待っていただけると嬉しいです。

  • ▲物語の終盤、飛鳥井木記と会う百木はある言葉を投げかける。また彼女は“ミズハノメ”で、ある人物と出会い……。どこか物悲しくも救いのある印象深いシーンが用意されている。

――最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

 Blu-ray BOX上巻が24日に発売されます。内容的に大きなリテイクはなく、コメンタリーや舞城王太郎さんの小説など、特典も充実しています。

 またBOXは本作のグラフィックワーク・大竹俊介さんが担当していて、カフェにおいてあっても違和感のないシックでかっこいいものになっているので、デザイン面も楽しんでほしいです。

 まずは、何度も見ていただきたい。本作のような作品は一気見をすることで印象が変わるし、とっつきやすくなると思います。

 たまに感想を見たりするのですが、本作はハマる人にすごく刺さっているという印象があります。ハマった方は、周囲の人をぜひ『イド』の世界に引きずりこんでほしいですね(笑)。

 今のアニメ業界はストレスなく見られる1話完結型の日常系が主流で、『イド』はそこから外れた作品です。日常系も素晴らしいのですが、できればジャンルが偏ることなく、深夜アニメが60本あれば60ジャンルの作品があるのが健全な業界の流れだと僕は思っています。文化としての多様性が大事なんです。

 作り手としてはいろんな作品が作れる環境になるように、何より、続編やスピンオフなど、ファンの声なくしては作れないので、面白いと思ったら「よかった」と声を上げていただけると嬉しいです。

ID:INVADED イド:インヴェイデッド Blu-rayBOX 上巻

【BD2枚+CD3枚組】

収録内容:第1話~第6話
税抜価格:18,000円+税
発売日:2020年4月24日

Blu-rayBOX【毎回特典】

(1)キャラクターデザイン・碇谷敦描き下ろし三方背BOX
(2)監督・あおきえい絵コンテ集(第1話)
(3)脚本・舞城王太郎書き下ろし小説①(井波と数田の物語)
(4)設定資料集①
(5)オリジナルサウンドトラックCD Vol.1
(6)Making of ID:INVADED ①/メインスタッフオーディオコメンタリー(3話分予定)/OfficialTrailer01,02,03/ノンテロップOP/ノンテロップED

※店舗特典については別記事で紹介しています。

Blu-rayBOX下巻発売情報

ID:INVADED イド:インヴェイデッド Blu-ray BOX 下巻

【BD2枚+CD2枚4枚組】

収録内容:第7話~第13話
税抜価格:18,000円+税
発売日:2020年6月26日

Blu-rayBOX【毎回特典】

(1)キャラクターデザイン・碇谷敦描き下ろし三方背BOX
(2)監督・あおきえい絵コンテ集(第13話)
(3)脚本・舞城王太郎書き下ろし小説②(鳴瓢家の物語)
(4)設定資料集②
(5)オリジナルドラマCD
 (脚本・舞城王太郎書き下ろし小説②の内容を予定)
(6)オリジナルサウンドトラックCD Vol.2
(7)Making of ID:INVADED ②/メインスタッフオーディオコメンタリー(3話分予定)/他CM集収録予定

(C)IDDU
(C)2019「イド:インヴェイデッド」製作委員会

ID:INVADED Blu-ray BOX 上巻

  • メーカー: KADOKAWA アニメーション
  • 発売日: 2020年4月24日
  • 価格: 18,000円+税