【男性目線の『アイナナ』レポ】帰ってきたモンジェネおじさんが語る『アイドリッシュセブン』の魅力♪ 第8回
- 文
- 原常樹
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みなさん、こんにちは! 自称“モンジェネおじさん”ことフリーライターの原 常樹です。
すっかり『アイドリッシュセブン』にハマってしまったひとりの男性マネージャーが「アイナナはここが素晴らしい!」ととりとめもなく語りつつ、【男性のマネージャー】、また【男性に布教しようとしているマネージャー】を応援するというのがこの連載のコンセプトです。
祝! IDOLiSH7記念日!
6月10日で『アイドリッシュセブン』はプロジェクト発表から4周年を迎えたそうです! 僕はこの連載からスタートした立場なので偉そうなことは言えませんが、きっと発表当初から追いかけているマネージャーさんにとっては思い入れの強い記念日になったのではないでしょうか。
『アイドリッシュセブン』というコンテンツも立ち止まることなく、日に日に輝きを増しています。アニメのスピンオフシリーズ『アイドリッシュセブンVibrato』が制作されたり、7月6日~7日には『アイドリッシュセブン 2nd LIVE「REUNION」』の開催が予定されていたりとプロジェクトの勢いがまったく衰えないのはすごいことですよね!
そして、その輝きは着々と僕らの日常にも光を与えてくれています。つい先日、取材帰りにクタクタになりながら山手線で帰っていたときに、ふと車内モニターに映ったアイドルたちと目が合って「アイエエエ!?」という変な声が出ました(OFF/旅の広告でした)。いやー、まばゆいオーラで疲れが一気に吹っ飛びましたよ!
『アイドリッシュセブン』の最近の展開といえば……そう、第4部の配信がついに始まりましたね!
きっとマネージャーのみなさんも日々の更新を心待ちにされていることだと思います。
とはいえ、この記事で語るにはまだまだ早すぎる──ということで、まずは第3部について男性マネージャー目線で振り返っていきたいと思います。第4部をプレイされているという方も、おさらいも兼ねてお付き合いいただけると幸いです。
第2部では、紆余曲折ありながらもゼロアリーナのこけら落としを完遂させたアイドルたち。重圧に悩まされていた百さんも見事に歌声を取り戻し、“現在”のRe:valeも完全な形でステージを成し遂げます。
ゼロの代わりを追い求めるという妄執に取りつかれた九条鷹匡と彼をかばった天くん、そして未だ明かされないゼロの素性が物語に複雑な後味を残していたことも印象的でしたが、サスペンス部分が解決しなかったことを差し引いてもひとまず彼らが“成功”にたどり着いたことは事実です。
しかし、第3部はそこからの急展開。冒頭のムービーの中では、モニターの中で光り輝くIDOLiSH7、そしてそれとは対照的に真っ暗なリムジンカーの中で無言でたたずむTRIGGERの姿が……。冷たく雨が降り注ぐ屋外ステージでずぶ濡れになりながらも「こんばんは、TRIGGERです!」と声を振り絞る天くんの姿を見れば、彼らがただならぬ状況に置かれているということは容易に想像がつきます。
はたして何があったのか──衝撃的なムービーから物語は少しさかのぼります。
メディアに引っ張りだこのIDOLiSH7、Re:vale、TRIGGERの描写に。こけら落としの前ぐらいから三グループのアイドルたちの仲の良さも世間には知れ渡っているようです。ほかのグループのアイドルといるときには、同じグループのメンバーには見せない一面を覗かせているアイドルもいるようで良い相乗効果を生み出しているみたいですね。
これまで明らかに人手が足りていなかった小鳥遊事務所もついに人員を拡充! 事務員が五名、営業が二名、マネージャーアシスタントも二名増えました。千さんたちに再会したことでコソコソする理由がなくなった万理さんも主にMEZZO"のマネージャーとして現場に立つという順風満帆な展開ですが、物語の陰では不穏な影もちらほら……。
第3部を紐解くうえで重要になるのが、『アイドリッシュセブン』が在籍する芸能界全体の構造です。
作中には日本芸能界の二大巨頭と呼ばれる事務所、「星影芸能」(千葉志津男などが所属)と「ツクモプロダクション」(ミスター下岡などが所属)の名前が出てきました。
これまで物語の中心にあったアイドル事務所は決して大きい事務所ではなかったわけですね。あの八乙女プロですら、前述のふたつの事務所に比べると小物。まして、やっと人員を拡充できた小鳥遊プロダクションとは比べるべくもありません。スタッフの弁当のランクを下げて手作業でがんばればいいという小鳥遊プロの姿勢は夢があって素敵なのですが、それではどうにもならない流れがあるんだなと……現実を突きつけられる感じもありますね。
とはいえ大手の事務所だからといって、タレントにとっての環境まで優れているのかというと決してそうではありません。これに関しては岡崎さんの「タレントに執着しすぎてタレントを完璧のコントロールしようとする、マネージャーや事務所が生まれます」という言葉がすべてを象徴しているといっていいでしょう。
その代表格であるのが前述の二大事務所。星影は愛情や恩義による仁義を重んじる「恩を受けたら抜けられない星影一座」で、正反対にツクモはタレントを商品としてしか考えない「人も消耗品のタレントメーカー」と呼ばれており、どちらも問題点を抱えているようです。
しかし、これは『アイドリッシュセブン』の中に限った話ではなく、我々の身近にある社会に置き換えてもリアリティのある話ですよね。人のつながりも大切だけど組織がそれを重視しすぎると悪い癒着が生まれるものですし、かといって人を消耗品扱いするブラックな環境では働く側は幸せになれません。適度なバランスがあってこそ健全な組織なんでしょうが、理想はあくまで理想なんですよね……。
IDOLiSH7たちががんばっている芸能界には“さまざまなオトナの思惑がうごめいている”ということが伝わってきましたが、そんな世界の住人たちが集うパーティー会場でいよいよ話が動きます。
まず現れたのはツクモプロダクションの月雲了。百さんとは何やら親しげに会話をしていますが、見た目からしてうさんくさいですし、実際、言動の端々からも危険な香りが……。とくにIDOLiSH7、TRIGGER、Re:valeをツクモの傘下にするという話は尋常ではありません。表向き和やかに接していた百さんも、彼が立ち去ったあとにひっそりと不快感をあらわにしていました。
一方、千さんは星影芸能の関係者、そして彼が連れ歩く棗巳波と苛烈な腹の探り合い。こちらはこちらで一触即発の空気が漂っています。キーとなりそうな巳波がナギの故郷であるノースメイアに留学をしていたというのも引っかかるポイントですね。
第1部で“スポ根展開”で夢をかなえる姿を見せてくれた『アイドリッシュセブン』ですが、このように物語が進むごとに理想論だけではどうにもならない不条理がアイドルたちの前に立ちふさがるようになっていきます。第2部の九条さんの異質な存在ではありましたが、第3部ではこれまでとは別の“ドス黒いもの”が出てきた印象。そして、このドス黒いモノは、“実在する不条理の象徴”でもあるのかなと思わされます。
スポ根からサスペンス、サスペンスからリアリティショー──という物語の変化に戸惑う方もいらっしゃるかもしれませんが、この変化も『アイナナ』の魅力。もし、これが“漠然とキラキラした世界”の話だったら僕の心には響かなかったことでしょう。
今まで以上に鋭い切れ味の第3部ですが、まだまだこれでは終わりません。パーティー会場ではそれぞれの家族についての話も飛び出しました。
まずは環くんと天くんとの会話。「なぜ九条をかばうのか」と詰め寄られた天くんは答えを濁しつつも、しっかりとした理由をにじませます。ぼんやりとした返答ではありましたが、他者にはうかがいしれない深い結びつきが九条さんと天くん、理ちゃんの間にはあるということはハッキリと伝わってきます。
家族を重んじる龍くんは壮五くんの家庭事情に切り込みます。しかし、壮五くんは家族との仲を取り持たれることを拒否。尊敬の念を抱いているであろう龍くんの申し出であってもハッキリ断るだけの確執がある、そう受け取ることもできるシーンでした。
こういった「家族」も『アイナナ』の深いテーマのひとつ。どんな人間であっても例外なく自分を産んでくれた両親は存在するわけで、必ずそこには何らかの感情が存在します。そして、『アイドリッシュセブン』に登場するアイドルたちは多くが家族に関係して“一筋縄ではいかない生い立ち”を抱えている。
比較的幸せそうな龍くんや三月くんであっても、実の父親の借金を肩代わりしていたり優秀な弟にコンプレックスをいだいていたり。環くんのように一家離散の原因となった父親を持つアイドルもいますし、中には一般人としては到底背負いきれない宿命を背負ったアイドルも……。きれいごとでは決して片づけられません。
どんな人間であっても生い立ちだけは後からは変えることはできないわけですが、この作品のアイドルたちは決してそこで立ち止まらない。仲間と血よりも濃い“絆”を育み、宿命に抗っていくというのが『アイドリッシュセブン』というドラマの大きな魅力ではないかと僕は感じています。
そんな中、第3部の序盤ではついに、家族について多くを語ってこなかった二階堂大和にもスポットライトが当たります。一見、精神的に大人びている、男性マネージャー陣の座談会で「こんな上司がいたら頼れそう」という評価も上がった彼ですが、秘められた過去が明らかになったときにまた少し印象が変わりました。
それについてはまた今度……ということで、第8回の連載はここまで。
また次回の連載でお会いしましょう!
(C)アイドリッシュセブン
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