童話のような物語体験を……。異種族交流譚『嘘つき姫と盲目王子』アプリ版レビュー

電撃オンライン
公開日時

 日本一ソフトウェアは2020年5月21日(木)より、買い切り型アプリブランド“ゲームバラエティー”の新タイトルとして、iOS/Android版『嘘つき姫と盲目王子』の事前登録を開始しています。

 本タイトルは、2018年にPS Vita、PS4、Nintendo Switch用タイトルとして発売されたもの。iOS/Android版は、諸般の事情でサウンドトラックに収録されていなかった楽曲を収録したサウンドルームを追加し、操作システムをスマホ向けに変更、かつプライスダウンしたものになっています。

 絵本のような温かみのあるグラフィックが特徴的な本作は、もともとは日本一ソフトウェアが年に一度、全社あげて開催する企画コンペ“日本一企画祭”から誕生。企画立案当初から、提案者の小田沙耶佳さんのイラストは製品版のものからほぼ変わりなく、高い完成度でした。当時の審査員を務めた電撃PlayStation3代目編集長の西岡美道も、その絵作りに魅了され、本作のゲーム開発を強く推した1人です。

 本記事では、さまざまなデバイスで展開される『嘘つき姫と盲目王子』の魅力、そしてiOS/Android版の魅力をご紹介していきます。

本当のわたしではあなたに触れられない――温かみのあるグラフィックで描かれる童話のような物語

 本作は“狼”と呼ばれる化け物と人間の王子による、異種族間の交流を描く、2D横スクロールアクションアドベンチャー。

 その中でも高い評価を得たのが、グラフィックと物語です。少し長いですが、物語の冒頭を引用してみます。

導入のストーリー

 ある森に、狼によく似た人食いの化け物が住んでいました。その化け物は恐ろしい姿に似合わぬ美しい歌声を持ち、月夜の晩には誇らしげにその歌声を響かせていました。

 しかし、その夜はいつもと様子が違いました。狼の化け物が小高い岩の上で歌を歌い終えると、どこからともなく拍手が聞こえてきます。

 狼がそっと岩の下をのぞくと、身なりの良い少年がこちらを見上げていました。森のそばにある小国の王子が、狼の歌を聴きに来ていたのです。岩が邪魔で、王子からは狼の姿が見えていないようでした。

 普段の狼ならば、すぐに王子を捕らえて食べてしまっていたことでしょう。しかし、狼は王子を見逃しました。それは単なる気まぐれでした。

 それからというもの王子は毎晩、狼の歌を聴きにやって来ました。ふたりが言葉を交わすことはありません。けれども、いつしか狼は王子を食べようという気持ちを失っていました。

 その夜も狼は王子に歌を聴かせていました。しかし、狼が歌い終えても拍手が聞こえてきません。不思議に思い足元をのぞくと、なんと王子が岩を登ってきているではありませんか。きっと歌声の主に会おうと思ったのでしょう。

 自分の正体を知ったら、王子はもう歌を聴きに来なくなってしまう――そう思った狼は王子の 顔に手を伸ばしました。目を覆い、姿を見られないようにするつもりでした。

 しかし大きな爪がついた狼の手は、誰かに優しく触れるにはあまりにも不向きでした。狼の意に反して、鋭い爪が王子の顔を切り裂きます。突然の痛みと化け物の大きな手に驚き、王子は地面に落下し気を失ってしまいました。

 王子の叫び声を聞きつけたのでしょう。お城の兵士たちが王子を助けにやって来ました。兵士たちに矢を射かけられ、狼は森の奥へと逃げ込むしかありませんでした。

 王子はもう、狼の歌を聴きに来ません。狼の歌を褒めてくれる者など、この森にはひとりもいませんでした。きっと、そんな変わり者はこの先もいないでしょう。

 やがて狼は、王子が盲目となったこと、顔の傷を忌み嫌った王族によってお城の塔に幽閉されていることを知りました。狼はいてもたってもいられず塔に忍び込むことにしました。

 薄暗い牢の前で狼が目にしたのは、ぼろぼろの服をまとった王子の姿でした。醜い傷を隠すためでしょうか。顔には粗末な布が巻かれています。

 狼の胸は痛みました。しかし王子の目を切り裂いたのは自分です。今更どう声をかければ良いのでしょう。

 聡明な王子は、牢の前にたたずんでいるのが、あの美しい声の主であることに気が付きました。ですが、それが自分を傷つけた化け物だとは知りません。

 王子の目が見えないのをいいことに、狼はとっさに嘘をつきました。「わたしは隣国の姫。あなたのお見舞いに来たの。その目、森の魔女に治してもらおうよ。」

 狼は知っていました。森の奥には恐ろしい魔女が住んでいることを。代償を支払えば、彼女はどんな願いも叶えてくれるのです。

 そう。王子を魔女のもとへ連れて行けば、彼の目を元通りに治してくれるはずです。

 けれども自分は化け物です。こんな体で王子に触れれば、きっとまた傷つけてしまうに違いありません。狼は後で迎えに来ることを王子に約束し、森の奥にある魔女の館へと走りました。

 王子を、あの冷たく寂しい牢屋から連れ出す"姫"となるために。


 しかしながら、もとを正せば2人は化け物と人間。そこには文化どころか生き物としてのさまざまな差異が、さらに狼のついた“嘘”が、2人の間に溝として存在します。そして森の魔女は、王子の目を治すためにどんな代償を要求するのでしょうか……?

 また、森のなかには危険がたくさん。プレイヤーは化け物に対してはほぼ無敵の力を発揮するが王子には触れられない、または非力だが王子を手をつないで歩くことができるとして、ときに目が見えないが重いものを持ち運ぶことができる王子に指示を出しながら、2人で先へ進んでいくことになります。


 謎解き要素もある2D横スクロールアクション、というのが本作のジャンルですが、やはり目を惹くのは、絵本のような温かみを感じるグラフィック。姫と王子が可愛くて、動かしているうちにだんだんと愛着を感じられるようになるでしょう。


  • ▲手を繋ぐとお互いニッコリ、という仕草も細かいながら重要なポイント。

  • ▲物語を進めると、花畑で花を摘み、王子に渡す事ができるように。ここでも姫と王子がとても可愛い!

 さらに、謎解きやアクション要素が難しすぎて進めなくなっても、ステージスキップ機能を活用すれば先に進むことが可能になっています(※使用にはそのステージを一定時間プレイすることが必要)。また、スキップ機能を使うことによってエンディングの内容が変化することもありません。ヤル気さえあれば、アクションが苦手な方も問題なく物語の結末を見届けられるでしょう。

大幅なプライスダウンによって、人にもオススメしやすいタイトルに!

 ここからはiOS/Android版を触った感触をご紹介していきます。まず、iOS/Android版ならではの特徴は以下の通り。

・サウンドトラック未収録の楽曲を収録した、サウンドルームの実装
・操作をスマホに対応。PS4コントローラにも対応(一部のOSのみ)
・価格は1,960円と大幅にプライスダウン

 ファンとして見過ごせないのはサウンドルームの実装でしょう。このサウンドルームには、志方あきこ氏とのタイアップ曲“月夜の音楽会”も収録。プレイした方にとって、本楽曲は非常に印象深い楽曲であることは想像に難くありませんが、タイアップ曲ということで、残念ながらサウンドトラックには収録されませんでした。しかし今回はサウンドルームの機能を駆使すればヘビロテも可能に!

 また、当然ながら操作はスマホ向けに変更。デジタルスティックでキャラやカメラを操作するにあたり、若干のやりづらさを感じたものの、これはさすがに仕方ないか……。OSがAndroid10、またはiOS13のみ機能とはいえ、PS4コントローラでの操作に対応しているのは、コンシューマゲームを遊びなれている方にとってはうれしい点です。

 そして、価格が1,960円と大幅にプライスダウンしているのはありがたい。コンシューマ版をプレイしたときは、物語的な意味で「ゲームボリュームが少ないのは仕方ない」という気持ちもありましたが、物足りなさを感じたのも事実。今回のプライスダウンで、かなり人にも勧めやすいタイトルになったという印象です。

  • ▲トロフィーや花びらと言った収集要素も健在。

 未プレイの方はもちろん、コンシューマ版をプレイ済みのファンの方も、注目ポイントが存在する、iOS/Android版『嘘つき姫と盲目王子』。本作ならではのビジュアル表現にグッと来た方は、ほかのゲームでは味わえない物語をぜひ体験してみてください。

(c)2018-2020 Nippon Ichi Software, Inc.

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

嘘つき姫と盲目王子

  • メーカー:日本一ソフトウェア
  • 対応端末:iOS
  • ジャンル:アクションアドベンチャー
  • 配信日:近日配信予定
  • 価格:1,960円(税込)

嘘つき姫と盲目王子

  • メーカー:日本一ソフトウェア
  • 対応端末:Android
  • ジャンル:アクションアドベンチャー
  • 配信日:近日配信予定
  • 価格:1,960円(税込)

関連する記事一覧はこちら