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女性ライター目線で選ぶ電撃文庫『豚のレバーは加熱しろ』名場面11選

イナヤ マギ
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 第26回電撃小説大賞の金賞受賞作『豚のレバーは加熱しろ』(著者:逆井卓馬、イラスト:遠坂あさぎ)が現在発売中です。
※2巻が8月に発売されることも発表されました!

 本作は、豚のレバーを生で食べたせいで豚に転生してしまった理系オタクの大学生が、人の心が読めるイェスマと呼ばれる種族の少女で過酷な運命を背負っている“ジェス”を、知恵と機転と嗅覚で助ける異世界転生ファンタジーです!

 美少女と豚という異色の組み合わせでいちゃラブ(!?)することでも知られる本作の名場面を、女性ライター目線で選んでみましたのでお届けします!

 ちなみにキミラノカクヨムでは、本作のショートストーリー『豚の王子様』が無料公開されています。

 公開されたショートストーリーでは、ジェスと豚が街へ買い物に行きながら話をしているのですが、ジェスには憧れているものがあって……。本作が気になった方は、こちらもぜひ!

※名場面は、大きなネタバレがないような個所を選んだり、表現をぼかしたりして記載していますが、何も知らずに読みたいという方はご注意ください。

そもそも『豚のレバーは加熱しろ』のあらすじは?

 豚のレバーを生で食べて意識を失った、冴えないオタクの俺。異世界に転生したと思ったら、ただの豚になっていた!

 豚小屋で転がる俺を助けてくれたのは、人の心を読み取れるという少女ジェス。

 ブヒッ! かわいい! 豚の目線なら、スカートの裾からチラリと純白の……。

「あの、心の声が聞こえていますが……」

 まずい! 欲望がだだ漏れだ!

「もしお望みでしたら、ちょっとだけなら」

 え、ちょっ……!?

 まるで獣のような俺の欲望も(ちょっぴり引き気味ながら)受け入れてくれる、純真な少女にお世話される生活。う~ん、豚でいるのも悪くないな?

 これはそんな俺たちのブヒブヒな大冒険……のはずだったんだが、なあジェス、なんでお前、命を狙われているんだ?

 さあ魔法もスキルも持たぬブタよ、過酷な運命に囚われた少女を、知恵と機転と嗅覚で救い出せ!

 第26回電撃小説大賞《金賞》受賞作、豚転生ファンタジー!

ベッドで目覚めると側に美少女が!

「お目覚めになりましたか?」

 首を巡らせて声の方を向くと、少女が一人立っていた。

「あの……お具合の方はいかがでしょうか」

 さらさらとした金髪が、肩まで伸びている。白のブラウスに紺のスカートを合わせた、線の細い少女だった。歳は一六、七だろうか。顔立ちは欧風だが、鼻はちょこんと小さく、和の雰囲気もどことなく感じる。黒ずんだ銀の太い首輪が、一つだけ異様な雰囲気を放っている。

 人間から豚に転生したことへの違和感のせいか、急な眠気に襲われてしまう豚さん。

 目覚めると、ベッドの上におり、側には金髪美少女が! 女性でもドキッとする展開ですね!

 ここでジェスがイェスマという種族で、心が読めることを聞かされます。もちろん、豚さんの邪な妄想も全部筒抜けです! 恥ずかしい!!

美少女と豚の出会いは運命!?

「実は私、しばらくの間お暇(いとま)をいただいて、王都へ行く予定なんです」

 なんと。王にしか治せない状態となった俺が現れたときに、ジェスは王都へ行く予定になっていたのか。下手なプロットのように都合のいい話である。俺の夢よ、しっかりしてくれ。

 ジェスが困ったような顔で口を笑わせた。

「……運命、かもしれませんね」

 ブヒ。それを美少女に言わせるためだったのなら許そう。むしろ許してくれ、我が無意識よ。

 人間に戻るべく、この世界の唯一の魔法使いである王が住むという王都に行く必要が出てきたのですが、なんとジェスも偶然同じく王都へ行く予定があるとのこと。

 これは運命だなんて美少女から言われたら、否が応でもドキドキとしてしまいますね!

ジェスがメイドさんに!

――ああ、もう心配しました。間違えて串焼きになっていたらどうしようかと……

〈何言ってんだ。大丈夫だから安心しろ〉

 そう言ったところでいいにおいがしてきたので風上を見ると、どうも大きな焚き火の上で豚を調理しているようだった。なるほど。腹が減ったな。

――そう思って、果物を持ってきました、召し上がってください。ご、ごしゅじんさま

 ブヒィ! ブッッヒィ!

 いや、そんなサービス精神をはたらかせて毎度フラグを回収してくれなくていいんだが……。

 とある事情で、祭りの見世物にされることになった豚に、ジェスが果物を持ってきてくれるシーン。

 ジェスは祭りで給仕をするので、フリルのついたウェートレス姿でやってくるのですが、その姿をみた豚さんは「ご主人様と言われた日には~」などと妄想したため、優しいジェスはその要望に恥ずかしがりながら応えてくれます。かわいすぎでしょ!

ジェスに抱きしめられちゃった!

 ジェスはゆっくり目を開けた。こちらを見ると、何も言わず、目をもっと大きく見開いて、その茶色の瞳は俺のことを吸い込んで、そしてあっという間に潤って、ジェスは涙を流し始めた。

「……心配、したんですから」

 それだけ言って、ジェスは俺の首を抱きしめた。頭が真っ白になる。

 祭りから逃げてきた豚さんとジェスが再会するシーンなのですが、ここの挿絵がいい! 再会を喜んで涙するジェスはもちろん超可愛いのですが、個人的には豚さんもかわいいですよ!(中身は気にしてはいけない!)

シリアスなシーンのはずが……

〈ああ。短い間だったが、楽しかったよ〉

――そんな! 私と一緒に王都へ行くんじゃないんですか!

〈忘れてくれ。ジェスはジェスの用事を済ませればいい。俺の用事は気にするな〉

――違うんです……本当は、そういうことじゃないんです……

 何を言っているんだ。

――あの……私まだ、豚さんに裸だって見せてません。ここぞというときまで取っておけって、豚さんはそう言っていたのに……

 イェスマという小間使いの種族の特徴なのか、彼女の性格からなのか、できることは何でもしたいと思ってしまうジェスは、以前に豚さんがふと心の端に思った裸が見たいという願望にも応えようとしてしまいます。

 さすがの豚さんも断りましたが、同時に「裸もここぞというときまでとっておいてほしいかな」とも思っていました。

 それを受けてのこのシーン。とあることで、豚さんがピンチに陥るシリアスなシーンだったのに、この部分だけは「ジェスちゃん、そこじゃない!」とツッコんでしまいました!

頭をぶつけたジェスの声が天使!

 腹に重みを感じる。金髪の少女が、俺を枕にして寝ているのだ。

 ゆっくり四足で立ち上がる。ジェスの頭が俺の腹から滑り落ちて、木の板にごつんと当たった。遠出のためか、今までよりも軽やかな印象の、水色のワンピース姿だ

「にゃふん……」

 意味不明な声をあげて、ジェスが頭を手で押さえる。

 豚さんのお腹を枕に寝ている姿も天使だというのに、頭から落ちた声が「にゃふん……」だとは! もはや大天使ですよ!

あれ? どこかで聞いたセリフが……

「もしかすると豚さんが色々なことに気付いてくれるのは、そのミステリーというのを読んでいるおかげなんですか?」

〈そうかもしれないな。まあ、細かいことが気になってしまう悪い癖のせいでもあると思うが〉

 眼鏡クイッ。

 ジェスに趣味を聞かれて、読書、特にミステリーが好きと答えたあとのシーン。

 このセリフは、ミステリー好きじゃなくても知っている、某バディものに出てくる眼鏡のあのお方のセリフでは……?

 他にも小ネタがあるので、探してみるのも面白いですよ!

かっこいいセリフだと思ったのに!

〈そんな女の子を、誰が放っておくってんだ。こんな歪んだ世界で、ジェスみたいな優しい子が傷つくのを黙って見ていられるわけがないでだろう。一緒に王都まで行こう。俺はただの豚――剣も魔法も使えないが、知恵の限りを尽くしてジェスを守る。ずっと一緒だ。ジェスが王都に着くまで、こうやって股の下にぴったりくっついててやる〉

 ジェスから過酷な運命を背負って王都に向かう話を聞いて、それでも一緒に行ってくれるかと聞いてきたときの豚さんの返事です。

 途中までは「豚さん、かっこいい!!」ってなっていたのに、最後で台無しですよ!

豚さんの部位に注目!

 これまでにないほど、俺の血は使命感に燃えていた。肝臓もしっかり加熱されていることだろう。背中で眠っている罪のない少女のために、できることはすべてしてやる。

 考えろ豚。時間はまだある。

 ジェスの話を聞いた夜、彼女を守る使命感に燃えている豚さんのセリフです。“肝臓”だけでなく“豚バラ”や“ハツ”など、豚さんの部位を使った表現が他にも出てきますので、ぜひ注目して読んでみてくださいね!

ライバルのイケメン狩人参上!

 背の高い、金髪を短く切った若者が立っていた。歳は俺と変わらないか少し下だろう。きれいな二重の目で、鼻筋がすっと通っていて、目の覚めるようなイケメンだ。革のロングブーツ。薄手のベージュのズボンと胸元の開いた白いシャツに青磁色のチョッキ。腰には太いベルトを巻いていて、そこから短剣が二本ぶら下がっている。

「どこ行くんだセレス。女の子二人で、危ねえだろうが」

 ジェスと同じイェスマの少女“セレス”と共に、とある場所に向かおうとしていた豚さんたちを引き留めたのは、イケメン狩人の“ノット”。

 ジェスを見るなり、顔を赤くするノット。これは豚さんとの三角関係の予感!?

ジェスにベッドへ誘われた!?

――こっち、来てください

 ポンポンと、ジェスはすぐ隣のスペースを手で叩く。

 美少女にベッドへ誘われるという前代未聞の出来事に、俺の思考回路は容易くショートした。

 王都に向かう途中のとある旅籠で、ジェスから話がしたいとベッドに誘われた豚さん。美少女から誘われたら行くしかないでしょ! がんばれ、豚さん!

 これから豚さんたちの王都への道はどうなっていくのか? 気になった方は、ぜひ読んでみて下さいね!

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『豚のレバーは加熱しろ』

  • 発行:電撃文庫(KADOKAWA)
  • 発売日:2020年3月10日
  • ページ数:296ページ
  • 定価:630円+税

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