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『どろろ』百鬼丸を演じた鈴木拡樹さんにインタビュー。アニメと舞台を担当したからこそできたこととは!?

kbj
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 TVアニメ『どろろ』で百鬼丸を演じる鈴木拡樹さんへのインタビューを掲載する。

 『どろろ』は、マンガの神様・手塚治虫さんが描いた未完の傑作をTVアニメ化&舞台化したもの。2.5次元俳優として人気の鈴木拡樹さんが、アニメ・舞台両作品の主役・百鬼丸を務める。

 鈴木さんには、『どろろ』という作品の感想や演技する際に意識していること、アニメと舞台で共通していることや違うことなどをお聞きした。『どろろ』のファンだけでなく、鈴木さんのファンもぜひご覧いただきたい。

鈴木拡樹さん プロフィール

 舞台や映画など、さまざまな作品に出演する人気俳優。『どろろ』では、アニメと舞台の両方で百鬼丸を担当する。

百鬼丸はただ不幸なだけではない

――『どろろ』という作品について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

 小さいころに『ジャングル大帝』などを見ていたので、手塚治虫先生はもちろん知っていました。『どろろ』については、10年前に上映されていた映画を映画館に見に行った思い出があります。

 原作の『どろろ』は今回の話が決まってから読みました。情報として他の作品とテイストが違うことは知っていましたが、読んでみて「確かに」と思う部分が多かったです。なんでしょうね……ダークファンタジーの先駆けと言っていいタイトルだと思います。

――演じる百鬼丸を鈴木さんはどのように捉えられましたか?

 原作を読んだ時は百鬼丸の悲劇の物語が描かれると思っていました。ただ、この作品にたずさわり、収録を行ったり、舞台で稽古したりしていく中で、感じ方が変わってきました。

 寿海さんと出会ったり、琵琶丸に助けられたりするうえに、百鬼丸の側にはどろろがいる……奪われている分を、周りの人たちが埋めてくれている物語で、ただただ不幸なだけでないと思うようになりました。

――TVアニメ声優として挑戦する初めての役ということですが、これまでの芝居との違いはどこだと感じましたか?

 演じるうえでの役作りという意味では似ていますが、アプローチの仕方はまったく違います。さらに、声優としてのアプローチの仕方がわからないため、それこそ挑戦というイメージでした。

 アフレコ経験のある知り合いがいたので、気を付けることなどは軽く聞けましたが、事前に入れられた情報は初歩的なことばかりでした。

――具体的にはどういったことでしょう。

 本当に基礎的な部分ですが、台本を鳴らさないように静かにめくる方法や、収録時の諸注意などです。台本は片手でめくる人もいるが、音が出るならいっそ下げてめくるとか……ただ、一番吸収できるのは現場であることを改めて思いました。

――いろいろと学ぶことが多いと……。

 はい。新しい発見があるとそちらに集中しすぎて、以前のことを忘れてしまい「あ、やってしまった!」と思うこともありますが、収録のたびに新たな発見を持ち帰ることができているので、やりがいを感じています。

鈴木さんの好きな百鬼丸のセリフは!?

――序盤はセリフが少なかった百鬼丸ですが、演じる際にはどのようなことを意識しましたか?

 セリフが少ないからこそ大変でした。感情や表現力をどこまで出すのかは毎回自分なりに考えて現場に持っていき、「これくらいでいこう」や「このセリフはまだ会話にならないように」などを微調整していただき、作りながら演じています。

――台本のセリフと本番で違うこともあるのでしょうか?

 セリフ自体はそこまで変わらないのですが、どのように表現するかをつめていく感じです。「感情を爆発させてほしい」とか「ここは話し慣れていないから、平坦に読もう」など、指示をしていただいています。平坦にセリフを読むために、家では手で一語一語の高さを表現しながら本読みをしています。ちょっとカッコ悪いのですが(苦笑)。

――しゃべることができなかったキャラを演じたからこその苦労ですね。

 声を出せないだけでなく、さまざまな感覚がないキャラの表現することは、いつもの演技とは大きく異なりますね。感情は動いていても、それと同じレベルで声が出ていないこともあるので……。

――大変な芝居の中で、うまく表現できたセリフやお気に入りのセリフは?

 難しい質問ですね(笑)。……『ばんもんの巻』を見ていただいた人は知っていると思うのですが、徐々に「どろろ」と呼べるようになっていきました。

 「どろろ」というセリフにはその段階での百鬼丸の感情や状況を込めているので、どの場面でも「どろろ」というセリフはお気に入りです。呼ぶたびに毎回うれしくなりますね!

――アニメで描かれたエピソードから好きなものを教えてください。

 つらい話ではありますが、ミオとのエピソードは好きです。あふれ出た第一声を表現できたという芝居の面でもお気に入りです。

 個人的に原作の段階から大好きだったエピソードは、どろろの父母の話。お粥を手に注いでもらうというのを見て「母の愛はすごいな」とすごく心に刺さりました。母の愛は、百鬼丸の母親である“縫の方”にも感じるところでもありますが。

――放送をご覧になられた方からはどのような反応がありました?

 毎週楽しみにしているという意見は、たくさんいただけるのですが、どれを見てもありがたいと感じます。

 あと、親子で見てほしいというのはひそかな目標にしていました。百鬼丸やどろろが動いたりしゃべったりしているのを見て、お子様が喜んでいるというのを聞くと、個人的にはすごくうれしいです。

――本作のシリーズ構成を担当されている小林靖子さんと鈴木さんは、別の作品でもご一緒されています。小林さんについてどのようなイメージを抱いていますか?

 実は自分がかかわっていないけど見ているアニメで、小林さんが脚本をやられている作品があるんです。外してほしくないところはしっかり描かれているのに、進行がスムーズになっていたり、わかりやすくなっていたりする構成に、ファンの1人として驚きます。

 アニメはいろいろな都合でカットする場面や、変更する場面がある中で、世界観を壊さず、それでいてファンの気持ちを崩さない……これが1つの作品だけでなく、他の作品でも行われているので、毎回狙っているのだと思います。リサーチ力など、調べる能力に長けているのだろうといつも感動していますね。

 『どろろ』が受けている要因の1つにオリジナルの物語がありますが、原作を好きな人がアニメのシナリオを評価くださっているのには小林さんの力が間違いなくあると思います!

 執筆される際、作品が好きだからファンの気持ちがわかるのか、毎回ポイントを調べてこのバランスにしているのか、いつかお聞きしてみたいですね。

アニメと舞台があったからこそできた百鬼丸

――アニメと舞台で同時期に展開するのは、本作ならではの試み。スケジュールを含め、稽古は大変だったのでは?

 僕もやる前は「大変じゃないのかな」とか、「アニメと舞台で百鬼丸を演じるうえで、それぞれの魅力をうまく出せるのか」などの不安がありました。ただ、自分の力ではないのですが、周りが環境を作ってくれました。その結果として、アニメと舞台で違う百鬼丸を出せたと僕は思っています。

 物語の部分では、百鬼丸が取り戻す部位の流れが違うため、それも影響していると思うのですが、特にひと言目を話すところの感じ方が異なりました。

――東京、大阪、福岡、三重で公演が行われましたが、会場ごとの違いはありましたか?

 ステージの大きさや環境が違うために演じている我々も調整するので、場所が変わるたびに新鮮さを味わえました。

 あと、各地方を回るたびに入っている人のノリが違うなと感じました。最初は静かに見ているけど、最後には感情移入して泣いている人が多くいた場所もありましたね。

――一緒に回られているメンバーの雰囲気も場所によって異なりましたか?

 いいカンパニーだったと思いました。ストイックなメンバーが多く、稽古が終わっても殺陣(たて)や踊りの練習をしていたり、特殊なセットの動かし方を話し合っていたり……活気にあふれていました。

 一方でマジメな感じが強くあったので「固いカンパニーになるのかな?」とも思ったのですが、夜ごはんをみんなで食べに行ったり、時間ができたら「伊勢神宮に行こうよ」と話したり、仲のよさも出ていたかと。

――鈴木さんがアニメと舞台、どちらもで百鬼丸を演じているからこそ、できたところはありますか?

 これは僕自身が感じたことになるのですが、アニメ版が先にスタートしていたので、百鬼丸の動きやしぐさで感情が伝わってくるようになっていたので、そこは舞台に取り入れることがありました。

 舞台は千秋楽を迎えたのですが、アニメの収録はまだ続いています。アニメの収録を行うようになり、舞台で思い描いていた百鬼丸とリンクすることがあり、そこがすごくおもしろいんです。

――リンクというのは?

 アニメ版では演じていない場面を、先に舞台版で演じる場面がありました。その部分は自分の中で「正解はわからないのだが、こうだろう」と思い演じていました。

 その後、アフレコがあったのですが、アニメ版でも自分の役作りと同じ解釈で描かれていたことが、自分の思いと、舞台版、アニメ版それぞれの百鬼丸がリンクしたようで単純にうれしかったです。

――逆に大変だったことがあれば、お話いただけますか。

 一番の懸念は、アニメと舞台の百鬼丸で違いがなかったらどうしようと思っていたことでした。ただ、先ほど言っていたように、環境がどうにかしてくれました。
 百鬼丸は同じ僕が演じているのですが、周りのメンバーは異なりますし、物語も違えば、アニメと舞台でアプローチの仕方も違う。そのため、違う百鬼丸でいられましたね。

――百鬼丸は自分の身体を鬼神に奪われ、取り戻すことを目指します。鈴木さんが同じ状況になったとしたら、どの部位を最初に取り戻したいですか?

 原作を読んだ時は、「腎臓などの内臓を早く取り戻さないとどんどん不健康になるぞ!」と思っていました(笑)。ただ、アニメや舞台の設定では内臓はとられていないんですよね。それでいうと……迷います。
 ただやはり、目や耳、鼻、味覚などは重要だと思います。その中だと目! 見ることです。

――それはなぜですか?

 これは舞台で演じたからかもしれないのですが、目が見えた瞬間が一番うれしかったからです。目を取り戻して、一緒に旅をしてきたどろろを見て、素直な感想をポロッと言うのですが、それは自分の中でも感動がありました。

 見えていることは不自由ではないのですが、いいことばかりではなく、そこが怖い世界かもしれません。でも最初に見た景色が綺麗だったからこそ、この答えになったのだろうとと今は思います。

――『どろろ』の作品としての魅力はどこだと思われますか?

 百鬼丸は自分の身体を取り戻すたびに弱くなっていく……ダークヒーローを描いた作品は多数あるのですが、ただただ強くてカッコいい主人公ではなく、人間味を深く考えさせられるのは百鬼丸だからこそ。それは他のタイトルにはない魅力で、このような作品は今も出ていないと思います。
 そして、百鬼丸とどろろが旅をしているという、バディものであるところが本作の魅力だと思います。

――最後にまだ作品を見ていない人に、注目してほしいところをお願いします。

 放送前に第1話の上りを見せていただいた時、「この作品はメチャクチャおもしろい!」と作品に参加しながら思いました。放送後には思っていた以上の反響があり、多くの方に認められているのは本当にうれしい限り。「終わってほしくない」という声があり、勢いのすごさを感じています。

 今回のアニメ『どろろ』は、原作マンガの『どろろ』をこの時代によみがえらせて、新しくリメイクした作品。原作を読み返していただくと、順番や構成が変わっていることがわかると思います。

 新しく作品を知ってくれる人に見ていただけることはうれしいですが、原作ファンに認められることも大きな課題だと思います。今の時代にもう一度『どろろ』を広めたいという気持ちが込められた作品なので、まだ見ていない方にはぜひチェックしていただきたいです。

どろろ (C)手塚プロダクション/ツインエンジン
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