『新サクラ大戦』×『チェンクロ3』コラボ特別対談。T隊長と松永ディレクターがこだわったポイントは?

マスクド・イマイチ
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 セガのiOS/Android用RPG『チェインクロニクル3(チェンクロ3)』において、6月18日11:00~29日10:59の期間、TVアニメ『新サクラ大戦 the Animation』とのコラボが開催されます。

 このコラボでは隊長の神山誠十郎をはじめ、“帝国華撃団・花組”のメンバー6人がSSRでコラボフェスに登場。『チェンクロ3』の舞台であるユグドに飛ばされてしまった花組と義勇軍のストーリーが展開します。

 今回のコラボ開催を記念して、『サクラ大戦』シリーズディレクターであるT隊長こと寺田貴治さん、『チェインクロニクル』シリーズ総合ディレクターの松永純さん、開発プロデューサーの井上周祐さんの3名にお話を伺いました。

 コラボに至った経緯からコラボストーリーの制作秘話、そして『チェインクロニクル』のこれからについても語っていただきましたので、ぜひご覧ください!(※インタビュー中は敬称略)

  • ▲今回はリモートでの対談となりました。

 なお、『チェンクロ』では『サクラ大戦』シリーズ20周年の2016年にもコラボを実施。その際も寺田さんと松永さんには対談をしていただき、セガでの2人の出会いやシリーズに対する想いについてお話していただきましたので、そちらの記事もぜひチェックしてください。

3年8カ月ぶりの対談が実現! 今回のコラボの経緯は?

――前回の『チェンクロ』と『サクラ大戦』のコラボが2016年9月ということで、約3年8カ月ぶりのコラボ対談となります。まずは、今回のコラボの経緯を教えてください。

寺田:前回のコラボでは、松永君のほうから非常に熱いメールが届いたんですよ。『サクラ大戦』とのコラボをするなら、作った人たちに参加してもらわないと意味がないんだ! と、心動かされるメールが届いたんです。今回は、僕の知る限りではメールは来ていないですね。

松永:いきなり後輩いじりからスタートですか! はい、今回は送ってないです(笑)。今回はゲーム発売前に、社内で『新サクラ大戦』とコラボしたいタイトルはありますか? という募集があったので、ふつうにそれにエントリーしました(笑)。

 でも実はそれよりかなり前にきっかけがあって。『新サクラ大戦』の開発ブースに遊びに行かせてもらったことがあったじゃないですか。もうだいぶできたという話だったので、フランクにふらふら~と。

寺田:ふらふら~と来たのはたしかに。ちょうど東京ゲームショウ2019に出展するものを作っていた頃ですね。思い出した!

松永:超カッコよく動いているゲームを見せてもらって「これ、完成したらコラボさせてくださいね!」と、お願いしたのが大元のきっかけですかね。

寺田:『新サクラ大戦』もコラボのスケジュールが埋まっていたので、どこのタイミングでやるかというラインナップの中に早い段階から『チェンクロ』の名前はありましたね。

松永:今ちょうどアニメをやっていますが、そのタイミングに合わせさせてもらいました。あとでまた話に挙がると思いますが、『チェンクロ』のアニメ(『チェインクロニクル ~ヘクセイタスの閃~』)の監督をやってくださった工藤昌史さんが『新サクラ大戦』のアニメにも参加されていたので、せっかくならアニメのタイミングでやらせてもらおうという話にしたんです。

――ではこのタイミングは、ゲームの発売に合わせてというよりも、アニメでさらに盛り上がっているタイミングを狙ってのことなんですね。

松永:そうですね。せっかくならご縁のある方が活躍されているタイミングがいいなとチームのなかで話していました。ゲーム発売直後のタイミングは他のタイトルと取り合う形になってしまうというのもありましたね。

寺田:僕は『チェンクロ』からまたコラボの依頼が来ていたのを見て、また大変なことになるんだろうなと思ったんですよ(笑)。前回もストーリーとかのボリュームが非常に多かったので、監修が大変でしたね。今回も物量があるんだろうなぁと思いながら、「どのキャラクターをSSRにしましょう」という相談には「全員でお願いできないですか?」と答えました。自分で物量を増やしていくスタイルです(笑)

――今回の花組全員SSRは、寺田さんからの要望だったんですね。

寺田:最初は全員という話ではなかったと思いますね。

井上:アニメのキャラクターも想定に入っていたり、華撃団のなかから「このキャラとこのキャラでどうでしょう」と相談をしていたのですが、寺田さんのほうから「全員で! 最強に!」というオーダーがありまして。それなら僕ら開発チームも全部“無限”も作って、全員SSRで全力の『新サクラ大戦』にしようと張り切りました。

寺田:『チェンクロ』でいうと、花組が5人とかだとSSR3人、SR2人という風にバランスを取ることもできたと思うんですよ。でも『サクラ大戦』シリーズのキャラ平等理論みたいな部分で「俺にはSRキャラ選べないな……」となりまして。

――前回のコラボも前半・後半2回に分けて全員SSRになりましたよね。

松永:あのときも寺田さんに選んでもらおうと思ったんですよ。正直、我々が選ぶのもおこがましいなと思って。

寺田:そうだったけど、あれは松永君の熱意があって後半が生まれたような気がするけどなぁ。最初は全員やる予定ではなかった気がします。

松永:そうでしたっけ。寺田さんも平等理論をされてた気が……過去すぎて思い出せないですね(苦笑)。

――たしか「すみれさんがSSRじゃないのは納得いかない……!」と松永さんが言い出したという話があったと思います。

松永:あ……それは言った記憶があります。ちょっと恥ずかしい(笑)。

――松永さんが『新サクラ大戦』開発室に遊びに行っていたというのは、結構頻繁にだったんですか?

松永:そんなことはないですよ。やっぱり忙しい現場なのでお邪魔になってしまいますし。

寺田:そうですね。結構、邪険に扱っていました(笑)。

松永:まだプレイというよりは、見せてもらうという段階でしたね。ただ、ムービーやゲームの画面を見せてもらって「おお……これは!」と思いました。そのとき「ぜひコラボを!」と言いつつ、“光武”じゃなくなってメカの頭身とかも変わっているのを見て、コラボキャラを作る際の恐怖のようなものは、その時点で感じていましたね(笑)。

 というか、どれを見ても、個人的に早く遊びたいという気持ちと、コラボすると大変そうだなぁという気持ちがごちゃまぜになりました。おお、この技かっこいい! プレイしてみたい! 『チェンクロ』でやるの大変そう! みたいな。

気になるコラボの内容は? 『サクラ大戦』と『チェンクロ』に流れる共通の血

――今回のコラボのストーリーはどんな内容になるのでしょうか。前回のコラボでは、『サクラ大戦』シリーズスタッフの後藤功士(ごとうかつひと)さんがシナリオを書かれたと伺いましたが。

松永:はい。前回は後藤さんに書いていただいたというのもあり、『サクラ大戦』の世界である銀座にユグドから義勇軍の面々が行くという内容がメインになっていました。今回は花組のメンバーにユグドに来てもらう形になっています。義勇軍と協力しながら帝都への帰還を目指すという王道のコラボストーリーとなっています。

――今回は『チェンクロ3』とのコラボというところで、主人公の誰かが迎えるホスト役だったりするのでしょうか?

松永:前回のサクラ大戦コラボと同じく、フィーナ・ピリカたちとともに主人公の視点でお送りします。

寺田:今回はいろんな『チェンクロ』キャラとロードムービー的にふれあっていくというのでしょうか。そんな感じの読後感のいいストーリーになっていると思います。そういえば、ストーリーが概ね完成してセリフとかを細かく直していた時に感じたのですが、『チェンクロ』と『サクラ大戦』はほぼほぼ「同じテーマ」だなと思いました。

――「同じ」ですか。それはどういったところがですか?

寺田:フィーナと天宮さくらを取り換えてやっていても、ユーザーは半年ぐらい気付かないんじゃないだろうかと思いますよ(笑)。同じ佐倉綾音さんがキャラを演じているからというだけではなくて、「私たちは平和のため、未来のために悪い奴をやっつけていくんだ」とか。そういう、作品に根本的に流れるスピリッツがほぼ一緒なんです。

 キャラクターが近いんですよね。普段はほわほわしていたりもするんですけど、熱いときには熱く「ここは退かない」みたいな。そういうところは松永君にも僕にもある、昔の“オーバーワークス”スピリッツみたいなものがあるのかなと思いました。

松永:それで育ったというのは正直なところありますね。王道ヒロインといえば、迷いなくこういうものだっていう。

寺田:『檄!帝国華撃団』のなかのセリフでも、「わたしたち 正義のために戦います たとえ それが 命をかける戦いであっても わたしたちは一歩も引きません」と言うんですが、それをフィーナが言っていてもまったく違和感がないという。『チェンクロ』の挿入歌としてあっても違和感がないんじゃないかなと。コアとなる要素が似ているんだなと思いました。

――なるほど。では、主人公についてもお話をうかがえますか?

寺田:主人公も精神性が似ているんじゃないですかね。でも『チェンクロ』のほうが見えないところが大きいのかな。

松永:そうですね、主人公も王道の勇者を目指してますが、そこにある熱さは近しいかなと。たしかに大神さんや神山さんほど、自ら前には出ませんが(笑)。前回のコラボの際に寺田さんが話してくれましたが、プレイヤーが選択肢を選んでいくなかで、自分自身を投影して自分だけの勇者・主人公感に向かっていくという。そこの本質は一緒かもしれませんね。

――『新サクラ大戦』では神山という新主人公が出てきますが、大神との違いはどのようなところにあるんでしょうか。

寺田:大神ってちょっと前に流行った主人公像なんですよ。女の子に囲まれながら朴念仁がいろいろって感じなんですけど、神山は今っぽいというか。今の若者がやることを考えて、柔らかい要素も取り入れつつ、より付き合いやすい身近なキャラクター像を目指しました。ゲームをやってもらうと伝わる部分も大きいと思いますが、親しみやすさが増していると思います。

 大神だと選択肢とかももっと固いものがあったかと思うんですが、今回はある程度弾けさせてもらいました。PS4で動きもついたので、そういうところを付けていかないと表現しづらかったというのもありますね。

松永:神山のよさは親しみやすさだったんですね。見た目がすごくイケメンだから、最初はかなり遠いなってむしろ感じました。

寺田:基本は熱血で真面目なんですが、選択肢によっては色々とおもしろい動きを見せるところも親近感のわく魅力の一つだと思います。

松永:プレイしていて、彼が3Dのモーションを存分に見せ始めたあたりから、たしかに親近感が増していきました。シュッとしてるけど、隙がある感じで。

寺田:風呂場に泳いで入っていったりしますからね(笑)。

松永:あの顔で大神さんと同じことするので笑いました(笑)。

『新サクラ大戦』コラボを遊ぶ前にやっておきたいこと

寺田:コラボのストーリーを監修していて思ったのですが、フィーナが主人公のことを好きという感じを出すんですが、この2人ってまだこの関係が続いているんだ! って思いました(笑)。よく3年も4年ももったな……と。これは決着を付ける気はないんですか?

松永:まだゲームとして7年なので、早いかなと(苦笑)。

――お父さんの意見ですね(笑)。前回はヴォルグとアルドラが銀座にいくという形でしたが、今回は花組を迎え入れるメンバーはいろいろなキャラクターになるのでしょうか。

松永:こっちに来てもらっているので、かなり多彩なキャラクターに登場してもらっています。

寺田:めちゃくちゃ出ますね。たとえば“あざみ”とかって忍者じゃないですか、忍者的なキャラクターをユグドで探すとたくさんいるんですよね。そんなエピソードが展開したり、意外な組み合わせで「なるほど、こう絡むんだ」みたいな納得感はあります。

松永:ロードムービー的に、ユグドの各地を花組がめぐっていく内容になりますね。

――今回のコラボを楽しむにあたって、ユーザーは何を履修しておくとよいというのはありますか? ゲームやアニメと展開している『新サクラ大戦』で、時系列もアニメがゲーム後の時間だったりしますが。

井上:もちろん、サクラ大戦シリーズが初めての方でも楽しめるように企画しておりますが、前回の『サクラ大戦』コラボをプレイされた方は振り返り機能で読んでおくと、シナリオが更に楽しめます!。前回コラボでは、魔神“タブリス”というキャラが出てきたんですが、そことのつながりもあったりしますので。3年越しのストーリー展開にニヤリとできると思います。

 『新サクラ大戦』のネタも盛りだくさんです。たとえば神山隊長の食レポとか、何かが勝手に動いてしまうシーンとかもあるので、プレイしていたら一層楽しめるのは間違いありません。ただ、このへんのネタは知らなくても爆笑できるおもしろさなので、初見の人もぜひ笑ってもらえればと思います。

寺田:神山の食レポをメッセージで書いてきたコラボは初めてだったので、私も気合入れてメッセージ監修しました(笑)

 アニメに関しては、今回のコラボストーリーが原作ゲーム後の、アニメの時系列となっておりますので、アニメを見ておいていただけるとキャラを更に楽しむことができると思います。コラボはアニメの最終回の時期にスタートするので、アニメを見終わったあとに「もっと『新サクラ大戦』の世界に触れたいな」と思った方にもプレイしてもらいたいですね。

――もちろん『チェンクロ』でコラボをプレイしてから、ゲームの『新サクラ大戦』に触れるというのもありでしょうか。

寺田:そうなってくれると僕的にはうれしいですね。『チェンクロ』のなかでは仲よくやっている花組のメンバーですが、ゲームの序盤はそうでもないので(苦笑)。それがどうやってここまで仲よくなれたのかが気になる人は、ぜひゲームをプレイして体験してもらいたいところです。一癖も二癖もあるキャラたちが、神山という自分、主人公を通じて絆で結ばれていくというのが一番おもしろいところなので。

――コラボストーリーの花組は一致団結している状態になりますか?

寺田:そうですね。でも、一致団結しているからこそ描けるエピソードというのを今回のコラボでは盛り込んでいます。そういう意味では『新サクラ大戦』のゲームをやった人も楽しめるコラボになっていますよ。

井上:「華撃団のヒロインたちの魅力が伝わるようにしたい」とシナリオ班で方針を決め、ライターさんとストーリーを詰めていただきました。『チェンクロ』コラボをやった方にも、楽しんでいただけるように、試行錯誤があり……例えば、前回コラボでは、天宮さくらの憧れの人である真宮寺さくらが出ていたり、義勇軍が帝都までお邪魔していたりするので、まったく触れないわけにもいかないよなぁ、と……。ただ、前回のコラボを読んでいないと楽しめない内容にはしたくなかったので、その辺の塩梅については、事前に細かく話をさせていただきました。

シナリオはクオリアが担当! 寺田さんも納得の出来に

――今回、シナリオは『チェンクロ』初期から参加されているクオリアの原山燐太郎さんにお願いしたとお聞きしました。

松永:はい。ユグドを舞台に、主人公やフィーナが軸となる物語になるので、『チェンクロ』第1部から書いてもらっている原山さんにお願いしました。前回のコラボでは、帝都が舞台ということもあり、サクラ大戦スタッフである後藤さんに書いていただくのがベストだと思いましたが、今回もベストな方に執筆をお願いできたと思います。

 元々、『新サクラ大戦』の発表前から、クオリアのみなさんとは『サクラ大戦』の話で盛り上がるということが多々あったんです。前回、後藤さんに書いてもらったときも「それすごいいいですね!」とうらやましがられたりして。そういう話もあり、今回は原山さんにお願いしようと。

 クオリアにお願いしたのは、『新サクラ大戦』のメンバーにユグドに来てもらったうえで『チェンクロ』という舞台を使って、どっちのタイトルのキャラのよさも引き出してもらいたいですとお伝えして、あとはお任せしました。キャラとキャラがどうかみ合うかというところだけを気を付けてもらいました。

――逆に原山さんからのオーダーや質問などはありましたか?

寺田:「こういうことがやりたい」というのは、すぐにプロットが来たので、そこに提示されたものがやりたかったことなのかなと思いました。それがおもしろいものだったので、基本それに沿って進行しています。直しは多くはなかったのですが、ユグドに帰ろうとするあるシーンは少し大きく直させてもらっています。

 ネタバレになるのであまり深くは言えないのですが、仲間がピンチになっているところで「急いで扉に!」「はい、さよなら!」というのは嫌だなあとそれがどういう形になったかは、ゲームで楽しみにしてもらいたい部分です。

――『新サクラ大戦』のメンバーを、オリジナルスタッフではない方が書かれたということで、その出来はいかがでしたか?

寺田:とてもよくできていたと思います。僕は監修するとき、セリフとかほとんど元の文章を塗りつぶして直してしまうことが多いんですが、今回はそのまま使わせてもらうところが多かったですね。今話したシーン以外では、本当にキモとなるセリフとかに、少しキャラっぽく手を入れさせてもらったぐらいです。

松永:よかったです。僕らからは、前回の『サクラ大戦』コラボや『新サクラ大戦』を知ってる人が楽しいのはもちろん、知らない人も楽しめるものにしてほしいという、難しいお願いを同時にさせてもらっていたので。そういうものはおもしろく書くのが難しいと思うんです。

寺田:それはさっきも言ったように、花組と義勇軍のスタンスが同じなので話を絡ませやすいというのはあったかもしれないですね。目指すところが一緒なので、話がおもしろくふくらみやすいという。プラスとマイナスの物をかけあわせるのは難しいところなのですが、今回はそうではなかったので。いいように伸びてくれたのかなと。

 「あいつを助けるんだ!」ってなったときに、「嫌だよ俺」というキャラがいないので。そういうキャラがいるとまた話がややこしくなりますから。純粋に人助けをする熱さだったりというのが、義勇軍と花組の共通点としてあったのはよかったと思います。

――前作のコラボからかなり時間も経ち、『チェンクロ3』になり、コラボの作り方も変わったのでは?

松永:そう……ですね、どうでしょう? たしかに『チェンクロ3』になってからは、コラボをやるときは、新主人公5人の誰にゲストをお迎えさせてもらおうかっていうのを考えるようになり、コラボの作り方は変わりました。『チェンクロ』の世界観が膨大になりすぎたので、なんというかコラボする作品と「一番合う部分」を探して、マッチさせるというか。

 ですが今回は、やっぱり主人公とフィーナたちで行こう、舞台はユグド全土を巡ろうってなったので、「合う部分」を探してないんですよね。全部ぶち当ててるというか。昔の作り方と一緒な気がします。これもやっぱり、サクラ大戦というシリーズと『チェンクロ』が近しいっていうことなんでしょうね。

寺田:風呂も仲よくのぞきに行くからね。隊長同士で(笑)。

松永:普段うちの隊長はそこまでしないんですが、今回は引っ張られました(笑)。

寺田:僕、今回の風呂のシーンは神山がキレイにまとめようとするのを突っ込まれるのが最高に好きなんですよね。そこをぜひみなさんにも見てもらいたいです。

『チェンクロ』のキャラの多さをどうコラボに生かすか

――寺田さんは改めて『チェンクロ』のキャラの多さを見てどう思われましたか?

寺田:忍者と言えば忍者が出てくる、力自慢と言えば力自慢が出てくる、剣術と言えば……二刀流といえば……という風に、どんなキャラも出てきてくれるんですよね。これだけ長く運営が続いているタイトルなので、星の数ほどキャラクターがいるんだろうなと思いました。いない要素というのがないぐらいなんじゃないですか? 異星人とかになっちゃう?

松永:その辺については、ぜひ提案をいただけると、まだやっていないことを模索している我々も助かります……。

寺田:この前は「ロボット出してよ」みたいな話をした記憶がありますね。

松永:ロボット、『チェンクロ3』になって出ました。SF的なストーリー展開もやって、ほぼほぼその要素もやってしまいました。

寺田:ネタを探すの大変だろうなと思っているんですけど、どうやってキャラクターとか作ってるの?

松永:……。

寺田:あれ、これ企業秘密だった?(笑)

松永:いや、どうやってるんだろうなあと自分でも考えてしまいました(笑)。なんかもう、そういうのを考える場とかスケジュールを設けても、なかなか出ないですね。ふと誰かが思いついたものをそっと持ってきてくれて、それが転がって、気づいたらできてるみたいなのが、最近は多いような気がします

開発チームの『新サクラ大戦』熱がすごい!

――今回は、搭乗機体・無限への変身もあるとのことで。3Dモデリングの進化について聞かせてください。

井上:モデル班の頑張りです!前回のコラボから今回までの間に蓄積した、キレイなグラデーションのテクスチャを利用して、3Dモデルを魅力的に見せる技術を、存分に生かしていただきました。

寺田:このコラボがまだ正式に決まっていない時期に、井上君と企画の内容を軽く話していたら、次の日いきなり「無限のモデリングができたので見てください」って持ってきてくれたのには驚きました。そういう気が早すぎるところも進化していましたね(笑)。

井上:前回のコラボで全キャラの光武を出してしまっているので、今回も無限に全キャラ乗せないといけないなとユーザーさんの期待はそこにもあるだろうと!ちなみにコラボに登場する無限は特別で、原作ゲーム本編だとさくらは無限に乗っていないんです。アニメで初登場する無限のさくら機を、アニメの時期なので~、とお願いして特別に使用させていただきました。コラボでは全員無限に乗っています!

 すごいアニメの無限の設定がかっこよかったので、『チェンクロ』の3Dモデリングに置き換えたときに、かっこいい要素をどう落とし込むかということをモデル班が苦労していました。そのままモデル化すると、霊子戦闘機らしさが失われたり認識しづらくなったりもしたので、余分な情報は削って、残す部分は残して、モデルを最適化しました。寺田さんに教えていただいたんですが、無限って各キャラによってちょっとずつ違いがあるので、そのちょっとの違いも再現しました。

――上がってきたモデリングを見たときの、寺田さんの反応は?

寺田:すごいよくできているなと思ったので、すぐにデザインのリーダーに渡して確認してもらったのですが、即OKの返事が戻ってきました。武器とかも刀に開いている穴など、実際のモデルの細かなところをきっちり再現してもらえたので。

――前回の『サクラ大戦』コラボより資料が多かったということもあるのでは?

寺田:資料に関しては前回コラボのほうがあったんじゃないかな?

井上:『新サクラ大戦』コラボでは、アニメの設定イラストや、PS4のときの無限の資料などをもとに作らせていただきました。

寺田:ああいうアニメのモデルを普通にアプリ用にモデリングするのも多いと思うんですが、雰囲気を出すモデリングというのがうまいと思いました。無限は光武と違うベクトルのかっこよさがあると思うのですが、光武のときと同じぐらいのサイズでそれがちゃんと出ているというか。言うほど簡単なことではないですよ。グラフィッカーの技術の進化あってこそだと思います。

井上:今回の無限はとてもリッチな作りになってまして、移動モーションもPS4のエフェクトを参考にしました。細かい所にも、チームのこだわりが詰まっていて、光武の時は蒸気の出る向きが下だったのが、今回は原作にあわせ上に無限用に作り直したりとか。

寺田:ローラーダッシュの火花もちゃんと再現してくれています!

井上:PS4では華麗な必殺技エフェクトが広範囲にバリバリに出ていますが、これをスマホの『チェンクロ』で表現するのに寺田さんのアドバイスのもと試行錯誤を繰り返し出来たものなのでぜひゲーム内で確認して欲しいです。

松永:今回は難易度の高いオーダーだったと思うんですけど、チームがそれ以上のものを上げてくれたと思います。前回の光武って頭身がほぼ同じだったので、『サクラ大戦』の光武がそのまま『チェンクロ』に登場した! って感覚だったと思うんですが、今回はデフォルメがすごい。当たり前ですが、そのまま再現するより、デフォルメするほうが難しいので。ああいうデフォルメの無限ってそんなに世に出てないですよね。

寺田:あの形でゲームとして動いているのは『チェンクロ』が初めてじゃないかな。

――チーム内でも『新サクラ大戦』をプレイしている方は多かったのですか?

松永:井上も含めて会社でも遊んでいる人は多かったですね。

井上:発売後にチームのあちこちで、みんな自然と買っている!という感じでしたね。今回ステータスを決めるのが大変だったのですが、バトル班のメンバーがPS4を自分の席スペースに持ち込んで、プレイしながら決めていったというのもありました。気合の入り方が違うなと。

松永:めずらしい光景でしたね。うちはスマホのゲームを作ってる部隊なので、ふだんブースにゲーム機とかないので。

井上:必殺技はヒット数から演出まで、実機を何度も見ながら、各班でチェックして、細部までこだわって制作をおこなっていました。

寺田:スキル発動時のセリフをゲームから引用しているじゃないですか。ああいうのもなかなか愛のあるセレクトだなと思いました。「このボイスお願いします」っていうのが開発チームから具体的に来たので、僕は渡しただけですね。

井上:運営班もバトル班もプレイしていて「これがいい」っていうのを持ち寄って決めたので、原作者からもお墨付きのボイスセレクトと言ってもらえて今ほんとうれしいです。

寺田:チームに愛があるんですね。それは間違いないです。

――ステータスの話が出ましたが、『新サクラ大戦』コラボだけのキャラだけでパーティを組んでも十分強いですか?

井上:はい。コラボでパーティを組んでもらうと、キャラ同士の能力が上手くかみ合って、クエストをスムーズに攻略できるはずです!

寺田:僕からも「最強にしておいて!」とは言っておいたので(笑)。それなりに強いんじゃないですかね!

井上:今回戦士がメインで、あとは弓使いと魔法使いというパーティになります。性能的なところもですが、個人的には無限搭乗時のポーズとかも見てほしいポイントですね。PS4の「華撃団参上!」のところのポーズを取らせようと思い、尺とかを試行錯誤して作りました。それぞれの戦闘開始時の決めポーズを再現してるので実際にゲームをプレイした人なら「おおっ!」ってなると思います。

寺田:必殺技のモーションとかはダメ出しもさせてもらいました。「剣での斬り技なのに振るエフェクトがモヤモヤしてたら剣閃としてダメだろう」とか。おそらく普通の監修ではそこまで言われないと思うので、言われる側はうっとうしかったと思うんですけど(笑)。その分、クオリティはバッチリですよ。

井上:スマホだとPS4より画面が小さいので、技がくっきりハッキリ出る方がユーザーさんに伝わりやすいのかなというモバイルゲームとしてのエフェクトの考えと、PS4である原作の、透過を利用して美麗に見せるエフェクトの考えを、戦わせて、寺田さんとすり合わせ落とし込んでもらいました。

 今回待機モーションや通常攻撃も気合を入れて作っていて。無限5体の待機と攻撃はオリジナルを意識した演出にすべく作成した贅沢な対応です! コラボで待機モーションを分けるとかまではなかなかやらないんですけど、今回無限の待機モーションはキャラごとに個別で作りました。

 ちなみに、神山さんは、個別ではないのですが、前回コラボの大神さんの動きを利用していたりしまして……個人的には熱いポイントだなと思ってます。

 今回のフェスは2つに分かれていて、それぞれ20回、40回、60回引くと、花組のメンバーがランダムではなく、確定で手に入るガチャボーナスも有りますので、いつものコラボより全キャラを集めるチャンスが広がっていると思います。開発チームがこだわり抜いた6キャラをぜひお手に取って、愛でていただけるとうれしいです!

【CHECK!】開発チームのコメント付きで全コラボキャラクターを紹介

神山誠十郎/戦士(斬)

攻撃も味方の強化も任せられる花組の隊長

同所属の味方を強化するパーティアビリティやWAVEが進むごとに味方全体をパワーアップ! パーティの主軸として活躍することができます。

天宮さくら/戦士(斬)

特殊なクリティカル攻撃で敵を殲滅! 前線でとても頼りに

クリティカル攻撃が一定確率で威力が上がり範囲攻撃に変化! 必殺技の大ダメージで強敵を打ち破ることができます。

東雲初穂/戦士(打)

クリティカル時の追撃効果で敵を圧倒! 上限を超えたHPで耐久も兼ね備える

 WAVEが進むごとに自身の防御力が上がり、HPが上限を超えて回復します。さらに敵陣と自陣に応じて味方の能力を上げるアビリティも!

望月あざみ/戦士(拳)

敵を倒してマナをGET! 必殺技をたくさん発動しよう

 敵を倒したときに、一定確率でマナを獲得! さらに自身が敵を倒すたび、味方全体を強化しHPが回復します。

アナスタシア・パルマ/弓使い(銃)

多段ヒットの銃使い! さらに追撃効果で敵を一定確率で凍結に!

 マナスロットで複数マナが出やすくなり、マナスロットのマナ数が多いほど、味方全体を強化! 攻撃だけでなく、パーティのサポート役としても活躍します。

クラリス/魔法使い(魔)

貫通魔法で敵を撃破!アビリティでみんなをサポート!

 発動した必殺技に応じて、味方を強化&HPや毒/衰弱を回復! パーティにいるだけで味方をサポートします。

アルカナは工藤昌史さんのイラストを使用! 『ヘクセイタスの閃』との関係も?

――コラボキャラのアルカナイラストは、工藤昌史さんのイラストを使用していますよね。

井上:『新サクラ大戦』アニメーションのキャラクターデザインを担当しているのが『ヘクセイタスの閃』で監督をしていただいた工藤さんでしたので、これはぜひ今回工藤さんのイラストを!と思ってお願いしました。

寺田:『新サクラ大戦』はCGモデルがあって、アニメ版モデルがあって、工藤さんのキャラクターデザインの絵があって、どれを使えばいいんだというのは井上君も悩んだところかと思います。どれが一番魅力的に映るんだろうと。

 『チェンクロ』と関係のある工藤さんのイラストを選んだことで、見事に『チェンクロ』の他のイラストともなじんでいると思いますね。違和感がない。いいチョイスだったと思います。

――工藤さんが『新サクラ大戦』のアニメを担当された理由に『チェンクロ』は関係あったのでしょうか?

寺田:『チェンクロ』がすべてではなかったんですけど、それもつながりやすさの一因としてはありました。今回、久保帯人先生がキャラクターデザインをされたので、アニメ版『BLEACH』でもキャラクターデザインを担当されていた工藤さんに、ゲーム版『新サクラ大戦』のキャラクタービジュアルをお願いしました。

 それが一番親和性があるだろうというところですね。セガでも以前から『BLEACH』のゲームを作っていたので、そういうところのつながりをたどってお願いしたという感じです。

松永:僕らとしても、工藤さんの絵を使わせてもらえて、非常にモチベーションが高かったですね。クオリティが高いのはもちろんですが、すごいゲームになじむなあと思って。やってもらってよかったです。アラムと並べて使いたい(笑)。

 それと工藤さんが、描きおろしで応援イラストを描いてくださいました。主人公と、『ヘクセイタスの閃』主人公のアラム、そしてさくらが並んでいるという、超貴重な1枚です! 非常にうれしかったです。

井上:『チェンクロ』を代表して主人公、アニメ『チェンクロ』を代表してアラム、そして天宮さくらの3人を描いてもらいました。工藤さんにアニメ版のユーリの衣装ではなく、『チェンクロ3』時系列の主人公を描いてもらうのが初だったので、貴重な一枚になったと思います。

寺田:僕、あのコラボ記念色紙のイラストは、ぜひ必殺技などでゲーム中にも出してもらいたかったんですよね。それぐらいいいものだったので。『チェンクロ』コラボでブロマイドで殴るんだから、あれで殴りかかってもいいのでは、と(笑)。

井上:補足しますと、今回コラボ武器として、ブロマイドが武器として出ます。武器錬金で、一定確率で作ることができまして、通例の組み合わせ錬金ではなく、どんな素材をいれても一定確率で作ることができる、という新しい遊び方ですので、ぜひプレイしてみてください!

 監修を出すときも「ブロマイドが武器ってどういうことですかそれ!?」と寺田さんに驚かれました。『チェンクロ』コラボでは毎回ユニークな武器を開発チームで制作しているので、なんの疑いもなく、普通に「武器案です」と監修に出してしまって…

松永:主旨としては、サクラ大戦名物の『ブロマイド集め』がコラボで楽しめるという内容になっています。武器なので、それで戦えてもしまうんですが、どちらかというと集める過程を楽しんでもらえればと思います(笑)。

井上:その他にも、運営班が考え出した珠玉のおもしろ武器が登場しますので、イベント情報をチェックしてみてください。特に、原作でも不可能だった、あの“れいけん あたらか”を『チェンクロ』では装備して戦えます! 世界初です!

 それとゲーム中には、花組の戦闘服の絵も工藤さんのイラストで出てきます。会話シーンなどでは戦闘服の花組も見られるので。これも貴重なドラマパートになるかなと。

寺田:そうそう、シナリオ部分の演出もなかなかこだわりが深くて。無限がシナリオ中に絵として出てくるところがあるんですよ。『新サクラ大戦』チームとしてはCGモデルしかないのでそれを渡していたんですけど、「なじまないんで、こういうイラスト調にしてもいいですか」と専用に制作されたイラストの監修が来たんです。そのままでもまあ、問題はないんですよ。でもそういう提案を聞いて、違和感なく楽しめるというところに、相当気を配っているんだなと感じました。

『新サクラ大戦』をプレイした松永さんの感想。成長したすみれさんは……

――『新サクラ大戦』のゲームについて、松永さんにプレイした感想などをお聞きしたいのですが、制作決定を知ったときはいかがでしたか?

松永:社内で聞いたのはかなり早い段階でしたね。何より「本当に早く遊びたい、待ち遠しい」という気持ちになりました。自分が制作にかかわるものではないのですが、自分がセガという会社に入る大きなきっかけになったシリーズの1つなので。いつ出るんだろういつ出るんだろうと、遠くのほうから様子をうかがってました。

寺田:ちょうど前回のインタビューが『新サクラ大戦』作り始めたころだったと思うんですよねえ。

――キャラクターデザインが久保帯人さんと聞いたときは、どう思われましたか?

松永:すごいおもしろい組み合わせだなと思いました。『BLEACH』と毛色が違う『サクラ大戦』というシリーズに参加される形になったわけですが、『チェンクロ』でキャラの設定を書いている身からすると、サクラ大戦シリーズって、キャラクター性の枠が超王道バランスでそろえられていて。正統派ヒロイン、クールキャラ、体育会系キャラ……という感じで。

 個人的に、久保先生はクールなキャラクターデザインをされる印象だったので、どのようにこの王道バランスのキャラクターたちを作り上げていくのだろう、というのが興味深かったです。

 ちなみにプレイしてみて“初穂”がすごく好きになったんですけど……。個人的に、これまでゲームでいわゆる脳筋娘の枠の子がが推しになったこと、一度もなかったんですよ。だからすごい新鮮でした。これまでの体育会系のキャラと違う魅力があって。そして、それはキャラクターデザインから来ている部分が大きいなと思いました。

 キャラデザの点だけでなく、新しいアプローチを取り入れて、今までの『サクラ大戦』という王道のキャラクターゲームに対して、新しい魅力を加えようとする熱量を、いろんなところから感じました。

――初穂のどういうところが好きになりましたか?

松永:なんというか、猪突猛進キャラじゃないんですよ。単純じゃないというか。きちんと体育会系の枠なんですけど、主人公に気遣いがあるというか、なんだろう? あと、『サクラ大戦』のカンナの枠だろうっていう先入観から入っていったので、そのギャップが強かったというのはあるかもしれませんが(笑)。

寺田:まあ昔で言うとカンナとかは「こいつ男じゃないのか」っていうぐらい極端にしていたんです。初穂はそういうところもありつつ、実は女の子らしいんです。そこを重視したので、時々見せるかわいらしさみたいのにコロッと行く人は多いんじゃないかなと。あ、そうだ松永君、今回のすみれはどうだったの?

松永:すみれさんですよねぇ……。こういう言い方すると、怒られるかもしれないんですが、少しお年を召されたなという印象を受けました。でも純粋に出てきてくれたことがファンとしてはうれしく、大人になったなぁと。

 今回コラボをするにあたって資料を見て気づいたんですが、前作までの『サクラ大戦』シリーズが一度幕を閉じてから復活するまでの期間と、ゲーム中の『サクラ大戦』と『新サクラ大戦』の間に経った時間って、ほぼ同じなんですね。おそらく10数年ぐらい。

寺田:うん、それぐらいになるかな?

松永:なので、僕が『サクラ大戦』をユーザーとしてプレイさせてもらって、それが一度閉じて経過したのと同じぐらいの時間を、すみれさんも過ごしていたことになるんですよね。自分も歳をとっていて、すみれさんも歳をとっていて、それがリンクする不思議な感覚があるなあと。一緒に歳を重ねた、みたいな。

――今回のすみれさんは支配人になったことで、高飛車というよりもリーダーシップを持ったキャラになった印象でした。

松永:そうですね。自分が前に出るよりも、そういう風に大人になったんだなあと。

寺田:やっぱりそういう風格というところは意識してつけましたね。昔のようなみずみずしい暴れ方とかはなくなったかもしれないです。彼女を取り巻く周りのキャラが変わったというのもあると思いますが。

松永:メンバーの前では大人ぶろうとしていますけど、そうでない場所では昔のすみれさんの感じが出るとか。完全に大人になってしまったわけではないというのが、すごく共感できましたね。自分自身も歳をとってもガキみたいだなと思うところもすごくいっぱいあるので。歳のとり方に対して共感できるなと。それがすごいよかったです。

寺田:僕らも歳をとって、地位に対して無理に生きていくところとかが出てくると思うんです。そういうところが見えたのかもしれないですね。自分がやりたいことがあっても、そうじゃないことも頑張ってる、というのが。

松永:いわゆるちゃんとした大人の司令官というイメージではなく、当時すごく青春してた人が大人になってもこうなんだという。今の30代40代って……というか自分が実際そういう歳になってみると、自分が子どもの頃に想像していた30代40代と違うじゃないですか。

寺田:僕もそれはありますね。『サクラ大戦』のなかのキャラたちは楽しく自分らしく歳をとっている感じはあるなあ。そうありたいよね。

松永:そういう歳をとっても中身で変わらないところはあるんだなぁというのがしっくりきました。

シリーズの時間軸を進めることで残すところと変えるところ

――『サクラ大戦』のシリーズの時間軸を進めることは、どのように決まったのでしょうか。

寺田:それは本当に決断に勇気がいることでしたね。どこかでシリーズのイメージを一新するきっかけは必要なんです。『サクラ大戦』が『3』で舞台が巴里になったのはハードがドリームキャストになったからということがあって。

 そんなきっかけとかもあったんですが、『新サクラ大戦』になるときは長い期間を空けてのリブートなので、大きいことをやってイメージを変えないと前のままだと古さが出てしまうのかなと。それで時代を飛ばしてみようかという話があがりました。ただ、時代を飛ばすことはやっぱり難しくて。どの程度残すか、どの程度新しくするかというのがどんなタイトルでも焦点になると思います。

松永:本当にそうだと思います。『チェンクロ』も第2部から『チェンクロ3』のタイミングで主人公を大きく変えたりしましたが、その変えるべきところと変えないところのバランスが難しくて。一言でバランスと言っても、こまかく調整できる話じゃなくて、こうすると一度決めてしまったら変えられないものなんですよね。それがすごく恐怖なんです。作り始めたら途中で戻しましょうってできないじゃないですか。

 『新サクラ大戦』なんてほぼゼロからもう一度いろいろなことを決めて、それを決めたらもう二度と引き返せないわけで。開発にかかる期間も予算も僕が経験したものなんかより大きいでしょうし、寺田さんたちにかかるプレッシャーは相当だったんじゃないかなと思います。

 たとえば今回、全体が3Dになったじゃないですか。すごい判断だなって。今まで『チェンクロ』のような2Dのドラマパートを見て『サクラ大戦』楽しいなと思っていた人たちに、ドラマ演出を3Dにしてモーションで魅力を伝えるって、すごい判断だと思うんです。

 基本的に何かのファンになったとき、その対象にはあまり変わってほしいとは思わないものだと思うんです。だってファンになるってことは「感動するくらいのよさ」がそこにあったわけで。それが変わるかもしれないのは嫌に決まっています。でも同時に、その「最初の感動」をもう一度味わいたいとも思っていて。

 でも、当時と同じことをやっても、絶対に「最初の感動」は得られないんですよね。それを感じてもらうには、進化しなくちゃいけないんですけど、進化するそこの塩梅が違うと「これじゃないんだ」ってなる。変えるのは難しいなって。

 僕も『新サクラ大戦』をプレイしたとき、やたらと神山さんが動き回るのに違和感がありましたけど(笑)。やっていくうちに神山さんや隊員のみんなの動きがかわいく見えてきて。「これすげーリッチなキャラクターゲームの作り」だなって感動したんです。で、そのときふと、一番最初に『サクラ大戦』をやったときに「これすげーリッチなキャラクターゲームだな」って思ったのと同じだなって思ったんですで。それが凄いことだなと思いました。

 2Dでやるのか3Dでやるのかって、まったく違う手法になっているのに、それでもう一度「すげーリッチなキャラクターゲームだ!」っていう最初の感動を作りだそうとしたのかと。その進化を決断した寺田さんたちのプレッシャーたるや、どんなだったんだろうって。だって、変えるって決めたら二度と引き返せませんけど、これはだいぶ手前から引き返せなくなるやつだなって。

寺田:いやあプレッシャーはすごかったですね。なかなかあの形、3Dになるまでが時間がかかりました。開発期間でも一番時間かかったところだと思います。ぶっちゃけると最初はアニメスタイルみたいなのも考えましたが、おおよそ2年後ぐらいに発売されるタイトルとしては、それに驚きがあるのかという。それを新しい魅力的なゲームとして受け取ってもらえるのかというところで、目指す方向を変えていこうと思い3DCGのリアルな方向に振っていった感じですね。

 キャラも背景もリアルと一言でいうのは簡単なんですが難しくて。技術の入れ具合やキャラクターの作り、かわいさ……天宮さくらなんて何回モデル作ったかわからないぐらい作りました。そういうチャレンジを重ねていったというのはありますね。素直にそういうところが刺さってくれてる人がいるなら僕はうれしいです。

新しいことへのチャレンジ。今度は『チェンクロ』の番……!?

――今、『チェンクロ』も第4部という新しいものを作っているので、松永さんも大変なのではないでしょうか。

松永:そうですね。変える変えないの部分、何を残して何を捨てるかというところを『チェンクロ3』を作ったとき以来になりますが、たくさん考えているところです。

 『チェンクロ』1部から2部、2部から『チェンクロ3』へと変えていったときにユーザーさんからいただいた意見、チームが得た経験が、本当にたくさんあるので、考えるべきことが多いですね。

 ですが、7年もやらせてもらっていますから、今までのよかった部分をどう生かすか、悪かった部分をどう直すかというのをキチンと反映できたものにできるんじゃないかと、今回改めて思っています。ユーザーさんにも期待してもらいたいです。

寺田:最初の時期が大変だというのはものすごく共感しますね。それを乗り越えた後の楽しさがあるというのも本当なので、なんとか乗り越えてやってほしいなと思います。いろいろ言われるかもしれないけど頑張って!

――各主人公のクライマックスと一緒に、その先を作っていくというのは大変なのでは?

松永:そうですね。チームのみんなも大変だと思います。とくにやっぱり運営のメンバーとかは、明日何やるかという話と、クライマックスに向けて何やるかという話と、第4部に向けて何をやるかという話が3つ同時に来ているので特に大変です。短・中・長期的な。

 でも運営開発に深く関わっているメンバーほど、強い想いがあって、『チェンクロ3』だとこういうことがうまくいかなかった、できなかったという部分、この7年間でできなかった「こういうことをやりたい」っていうアイデアはすごく出してくれて。でも同時に今の日々の『チェンクロ』もしっかり見ているから、慎重に考えてくれる部分もあって。すごく頼もしいです。ですので、第4部も、その先もすごくいいものにできると思っています。楽しみにしていてほしいです!

――本日はありがとうございました!

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