『FFXIV』ファンフェスはいかにして運営されるのか。”ファンフェス番長”室内俊夫氏インタビュー!【電撃PS】
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オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV(以下、FFXIV)』の魅力をさらに拡大してお伝えすべく、タイムリーな話題を追いながら展開する開発インタビュー連載企画も、本記事で第6回と相成りました。
今回お話をうかがったのは、『FFXIV』のグローバルコミュニティプロデューサーとして光の戦士たちから “モルボル”の愛称で親しまれる室内俊夫氏。『漆黒のヴィランズ』新情報が公開された各国のファンフェスを振り返りつつ、それらがどう企画・運営されたのかについていろいろと語っていただけました。コミュニティチームの普段のお仕事や規約取り締まりなどにも話題が及んでいるので、ぜひ最後までご覧ください!
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全世界の光の戦士たちが集った『FFXIV』ファンフェスティバル2018-2019を終えて――
――まずは一連の“FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2018-2019”お疲れ様でした! 直近の日本ファンフェス、光の戦士15,000人ぶんの熱気はものすごかったですね。
室内俊夫氏(以下、敬称略):すごかったですね。運営側の人間ではありつつも、当日目の当たりにしたときはかなりビックリしました。
――さっそくですが、“ファンフェス番長”室内さんに運営面の視点から感想をお聞きできるとありがたいです。
室内:ラスベガス、パリ、東京の3カ所でやってきましたが、総論としては無事に終えられて……成功できたと思えたので、そこはシンプルによかったなと考えています。直近ですと日本ファンフェスがありましたが、その来場者アンケートも“とてもよかった・よかった”にチェックを入れてくれた方が9割を超えていたので、まずは安心しました。ですが、運営面で見れば大なり小なり直さなくてはいけないところもいっぱいありました。
日本ファンフェスのアンケートも集計に入っていて、このあとチームでポストモーテム(事後検証)という反省会を開きます。そこで、よかったところ・悪かったところを話し合い、次のラウンドに活かしていきたいと思っています。
――今回の一連のファンフェスは、どれぐらい前から企画が進行していたのでしょうか? 昨今は会場を確保するのもかなり苦労がある気がしますが……。
室内:一番足が長いのは、ご推察のとおり、会場を押さえる段階ですね。とくに今回は日本の状況が特殊で、東京オリンピックに近かったために「その時期にはビッグサイトが使えません」という状況でした。そんな流れで代替となる大きな会場を探していたところ、「幕張メッセに空きがありますが、どうしますか?」という話がありました。それが2017年5月ぐらいですから、今からほぼ2年前ですね。「どうしますか、と言われても……」みたいな時期ではありましたが、そのタイミングで決めてしまわなければ今後空きが出るかどうかもわからない状況だったので、2017年7月の段階で、日本ファンフェスは2019年3月23~24日に幕張メッセで開催することが決まりました。
普段なら「日米欧のどの順番でやろうか」から欧米チームも含めたやり取りが始まるところなのですが、今回は「東京決まっちゃったわ」というところからスタートでしたね(笑)。欧米も実施1年前くらいには会場が決まり、その後、2017年12月のプロデューサーレターLIVE(以下、PLL)での「来年ファンフェスやります」という発表につながっていった感じです。
――なんと。『紅蓮のリベレーター』にまつわるファンフェスが終わってわずか数カ月後には今回の企画が動いていたわけですね。
室内:そうですね。2016年12月に日本ファンフェス、2017年2月にフランクフルトファンフェスがありましたから、そのすぐあとには「次回なんですけど……」という話をしていました。じつを言うと、イベント会場探しという観点では、すでに「次回なんですけど……」というジャブが打たれてきている状況なので、「怖えーなぁ」という状態です(笑)。
――会場規模に関しては、前回と比較してどれぐらいのものを探すのでしょうか?
室内:実際にやってみてどうだったかと、その会場に対しての応募倍率がどれぐらいだったかを考慮して決めます。今回の場合は、“前回と比べて倍の広さではあるものの、空きがそこしかない”ことと、“需要も十分見込めるだろう”ということで、打診があった際、そのまま幕張メッセに決めてしまいました。しかし結果としてはそれでも倍率4倍ということで、申し訳ない気持ちがかなりあります。
――チケットの当落の抽選は、どのように行われているのでしょう?
室内:何度も応募してもらうのはわかりにくいところもあったので、今回は最初に申し込んでもらった巨大なプールを最後まで使い続けました。抽選自体は、本当にシンプルなランダムですね。抽選し、当選者の方に連絡して……そのときに購入されなかったチケットを次回抽選用に回し、大元のプールに残っている方々に対して再抽選を行う……というのを何度か続けた形です。
――チケットトレードに関しても、「これのおかげでファンフェスに行けた」という声が見られて、かなり好評だった印象です。
室内:EMTGという、チケット販売を委託していた会社さんが持っていた仕組みを使わせていただきました。やむを得ない事情で行けなくなったときの需要として、正規の値段で公式にやり取りできるのであれば、安全・安心かなと。結果、1,000件強のトレードが行われていたので、個人的には対応してよかったかなと思っています。本当によくできてますよね、あのシステム。
――ちなみに、メインの舞台が今回センターステージでしたが、これはコミュニティチームからの発案だったのでしょうか?
室内:最初の発案は、コミュニティチームの望月(一善氏。“もっちー”の愛称でお馴染み)からでした。レイアウトのパターンをいくつか想定しているときに、長方形の会場の、長辺の端っこに置くパターンや、短辺の真ん中あたりに置くパターン、今回のサブステージのように角に置くパターンなどなどいろいろ考えていたんです。そんななかで「せっかくだから、真ん中置きっていうのもアリなのでは」といった話題が盛り上がった結果、センターステージに行き着きました。
――さながら、武道館のライブみたいでした。個人的には、写真が撮りやすくてありがたかったです。
室内:引きの画で見たら、頭上のモニターの置き方といい、武道館や後楽園ホールでプロレスを見ているような感覚でしたよね(笑)。写真の撮りやすさはセンターステージのメリットかもしれません。初めての試みでしたが、結果的にはいろいろな角度から見やすかったので、よかったと思います。ただ、そのぶん周辺の人の流れがうまくいかなかったという反省点もありました。
――センターステージならではというところで、花道を使った演出もおもしろかったです。
室内:開催時は、花道の裏に通路があってファンアートが飾られていましたよね。ですが、当初の案では花道が会場の壁まで伸びていて、距離が倍ぐらいあったんですよ。さすがにこの距離だとMCが呼んでから出演者がステージにたどり着くまでの間が持たないという意見が出て、議論の結果、あの長さに落ち着いたのですが……大正解でした(笑)。
――たしかに(笑)。
室内:ちなみに図面で花道の幅を見ると、実際に立ったときの印象の3分の1ぐらいに思えたんですよ。関係者の誰もが図面で受ける印象のまま前日の建込みを迎えて、実際に見たときに「太ッ! 広ッ!!」と(笑)。なにぶん初めてだったので、そんな驚きの連続でした。
――あれより長かったら、人力車の演出は大変だったでしょうね。
室内:人力車の案が出たときには、「こんな花道の幅では、人力車がUターンなんてできないかもしれない。どうしよう」という話が出たのですが、実際に見てみたら何のことはない、余裕だったという(笑)。グルグル回れるぐらい太い道で、ビックリしました。
――過去のPLLでも触れられていましたが、あらためて『FFXIV』でファンフェスを開催しようと決まったきっかけを教えてください。
室内:吉田が思っていたところでもあると思うのですが、グローバルに展開している大型MMORPGでは、プレイヤーのみなさんと開発チームとで節目ごとに「この世界をお祝いしようじゃないか!」という意味でのお祭り……つまりファンフェスは、あってしかるべきだという考えでした。
――『FFXI』の頃にも、公式リアルイベントとして“ヴァナ★フェス”がありましたよね。
室内:発想としては同じですね。『FFXIV』に関しては、『旧FFXIV』ローンチから1年後に初めて行われた第1回PLL(⇒動画はコチラ)の冒頭で、吉田が「無事1周年を迎えられたので、本来であればみなさんと顔をあわせたイベントでもできればと思うんですけれど……」的なことを話しています。当時はまだ『新生FFXIV』が発表される前のことなので、我々はとてもそんな状況ではなかったんですね。
そんななか、せめて……という思いで、直接みなさんとやり取りできる生放送をやってみようと実施したのが、第1回PLLなんです。その後も“どうやってプレイヤーのみなさんとコミュニケーションを図りながら節目をお祝いしていくか”というのが1つのテーマだったんですが、新生してうまいこと軌道に乗せていただいて、満を持して「ファンフェスをやろうか!」と。そんな感じで今にいたるわけですね。
――『蒼天のイシュガルド』時に行われた最初のファンフェスは、そんな積年の想いが詰まったものだったんですね。
室内:そうですね。「ついにファンフェスをやれるところまできたぞ!」という感じではありました(笑)。
――ちなみに、『紅蓮のリベレーター』時や今回の『漆黒のヴィランズ』時は「今回はこういうところに力を入れよう」というような特別なコンセプトはあったのでしょうか?
室内:内容的なテーマという意味からは少し逸れてしまうかもしれませんが、先ほどもお話ししたとおり“ファンフェスは、あるべきもの”なので、絶対にやろうという大元の意志は変わらずにあります。そこからさらに、吉田が打ち立てた“ファンフェスを続けるために、これだけは守ろう”という目標があるんです。これは第1回から今にいたるまでずっと守っていることなのですが、リージョンごとに“各ファンフェス単体で見たときのチケットやグッズ販売を含めた総売上と、ファンフェス用の支出を比べたときに、必ずトントン~ちょっと黒字になるぐらいにしよう”というものです。
要は、ただの広告宣伝費としてたくさんお金を投下すれば1回はやれると思いますが、それでは“財政的に次はやれない”という日がいつかくるかもしれません。なので、自分たちの丈に合ったものをやるということは守ろうと。幸い、今のところ拡大路線を続けていけていますし、今回もなんとか守れそうなので、安心しています(笑)。
また、ファンフェスそのものとしては、会場のチケット数にはどうしても上限がありますし、入りたくても入れない方も少なくありません。そんななかで新情報をどうやって世界中に届けようか、参加できない人も楽しめるようにするにはどうしたらいいかといったことを考えたときに、以前とは違うアプローチをするなどの挑戦はしています。今回でいえば、生放送を無料にしてみたり、グッズ販売で事前販売に力を入れてみたり……といった部分ですね。仕組みとして新しいことにチャレンジしてみて、またそれに対しての反省点を次回に活かし、次へとつないでいくという感じです。
――グッズの事前販売はすごくありがたかったです。
室内:それでもグッズ販売コーナーの列が大変なことになってしまったので、もうちょっとやりようがあるんだろうなと反省しました。反面、事前販売がもしなかったら恐ろしいことになっていたはずですので、やってよかったとは思っています。とくに、日本ではご自宅に配達することもできたので、みなさん現地で大きな荷物を持つ必要もなくなりましたしね。
――事前販売で購入した際の梱包の中に、開発/運営チームからのメッセージが付いていたのは、驚きました。
室内:あれはわりとギリギリのタイミングで、ストアチームから「入れられますけど、どうしますか?」という話があって実現しました。……いろんなチームがいろんな協力をしてくれています。
――ファンフェスとなると、アクティビティ、バトルチャレンジ、ステージといったイベントの柱となるコンテンツがありますが、その大元の企画構成はどのように動かしているのでしょうか?
室内:いくつか系統があります。例えば、基調講演や開発パネルといった全リージョンでやるステージは、実施するために開発チームのコストが必要だったり、日本の運営チームでの準備が必要だったりするため、全ファンフェスが始まる前に、吉田主導の下で開催地ごとの大まかな概要を決めてしまいます。バトルチャレンジに関しても、わりと企画初期に“今回は8人向けのバトルコンテンツを用意しよう”というところまで決めています。あとはそれぞれのリージョンのファンフェスが近づいてくるにつれ、各地のコミュニティチームや宣伝チームで構成されるファンフェス委員たちがその他コンテンツを企画して埋めていく感じですね。
――バトルチャレンジでは、前回はプロトアルテマ、今回はヨウジンボウと戦うことができました。どちらものちにゲーム内に実装されるとはいえ、ファンフェス用の特別バージョンになっていましたが、特別バージョンを作るコストは予め用意してもらっているものなのでしょうか?
室内:開発サイクルに入れてもらえないとどうにもならないので、そこは予めお願いしています。今回でいえば、パッチ4.56で真ヨウジンボウ討滅戦が入ることを前提に作ってもらいつつ、北米ファンフェスの段階でプレイヤーが触れる状態にするために、そこだけ切り出された状態で特別バージョンをイベント専用の仕組みとして用意してもらっていました。
――そのような調整がいろいろとあるなかで、あらためて、ファンフェスにおいてのコミュニティチームの具体的な役割を教えてください。
室内:コミュニティチームとしては、基本的にステージの内容と進行を考えるところから始まり、それに必要な台本やパワーポイント、ビデオ素材を作り、ゲストのスケジュール調整を行うなど、多岐にわたります。アクティビティにしても、『FFXIV』っぽい中身がともなっているものには、だいたいコミュニティチームが絡んでいるので、みなさんが想像できるおおよそすべてのことをやっていると思います。見えないところでいえば、試遊台やバトルチャレンジのアカウント&キャラクターを用意したり、現場のスタッフがどう動けばいいかの資料を作ったり、といった部分もそうですね。一方で、今回でいうとお面などの販売物やクレーンゲームなどの景品の制作・選定にはかかわっていますが、現場での運用は、原則としてイベント会社やパートナーの皆さんにお願いしています。
――運用自体は、イベント会社さんなどにアテンドをお願いしている感じですか?
室内:そうですね。メインとしては広告代理店と、その先にいるイベント運営会社の方々にお願いします。アクティビティの説明をするスタッフなどなど圧倒的な人員が必要になりますので……。ですが、日本がほかのリージョンと比べて特殊なのは、スクウェア・エニックスという大きい会社が近くにあることです(笑)。普段開発/運営チームとして『FFXIV』の仕事をしている人に協力してもらって、イベント運営をヘルプしてもらうということもやってもらいました。
――ちなみに今回のファンフェスで、室内さんは光の戦士のみなさんとお話する時間はありましたか?
室内:今回は残念ながらあまりその機会がなかったんです。1日目はステージ繰りの都合上ほぼ壇上にいたもので……。2日目はちょっとウロウロして会場を眺めたり、光の戦士の皆さんと交流を図ったりするタイミングが何度かありました。幸いにして、みなさん楽しそうにしてくれていたので、よかったなぁと。
こういった開発スタッフとの交流に関して、前回は明確にコーナーを設けていたのですが、今回は場所としては用意せず、開発チームがランダムに会場内に現れる形で交流するようにしました。これはあくまで現時点での個人的な感想なのですが、開発チームとのコミュニケーションに重きを置いている方が想像以上に多かった印象なので、次があればもうちょっと開発チームと交流できる仕組み作りに力を入れたほうがいいかもなと思いました。
――すごい列になるでしょうし、塩梅が難しそうですね。
室内:そうなんですよね。今回の開発スタッフとの交流でも、存在に気づいたときには受付終了の紙が出ている状況を申し訳なく思っているので、そこはキチンと考えたいと思います。
――偶発的な出会いという意味では、Twitterで「○○さんに会った!」といったツイートが話題になっていたりしたので、今回のようなやり方も面白いなと思っていました。アクティビティに関してですが、今回はグループポーズ用の専用スペースやAR体験、エアホッケー、クレーンゲームなどなど、大掛かりな機材が多かった印象ですが、何かしら意図した部分なのでしょうか?
室内:とくにそういうことではないと思います。我々がやりたいことをイベント会社さんやタイトーさんに依頼して用意してもらうもののほか、逆にイベント会社さんから提案を受けることもあって。その中から総合的に選ばれたのが、今回のラインナップになっています。意図的に機材を多めにしようという議論はなかったので、おもしろそうなものを抽出していったら結果的に、そういうものが増えていったのかなと。
――海外のアクティビティについては、基本的に向こうにまかせているのでしょうか?
室内:何をやるのかという報告はしてもらいますが、基本的にはそのとおりです。ちなみに、そういう意味では今回、じつは私は日本のアクティビティの選定作業にはあまり関与していないんです。もちろん何が起こるかの報告は聞きますし、意見を求められれば言うんですけれど、どちらかというと今回は海外ファンフェスの一次承認役といった位置に立った感じです。前回の反省点に拠っているところでもあるのですが、いかに欧米チームとのやり取りをスムーズにするかという課題がありまして。ある程度の判断ができる立場で、英語でやり取りができたほうが早いであろうということで、私に白羽の矢が立った感じです。翻訳する作業を省いたことでスピードアップを図ったのと、私が困ったものだけ吉田やアシスタントプロデューサーのジャッジを仰ぐ形を取りましたが、思ったよりスムーズにいったかと思います。
――完全に“統括”という立場だったんですね。……今回はメインステージ裏などに展示されていたファンアートの量に驚きましたが、応募総数はどれぐらいになったのでしょう。
室内:正確な数は覚えていませんが、とてつもない数でしたよ。とくに、日本がずば抜けて増えた印象があります。各アート部門もさることながら、クラフト部門の応募数が世界的に見ても飛び抜けて多くて、前回と比べてもすごく増えています。一時期、会社の私たちの席の周りがダンボールの山に囲まれている状況になっていました(笑)。
――会場にあったのは、その一部なのでしょうか?
室内:一部も一部ですね! 当初想定していたよりも大幅に増えていたので、少しでも多く持っていけないかという話を最後の最後までしていました。ですが、さすがにすべては無理だったので、多くの開発スタッフにも見てもらい、美術館の展示品を眺めるように並べて投票していく形で一次選考を行いました。どれもクオリティが非常に高いだけではなく、FFXIVへの情熱もたっぷりな作品ばかりで、投票にきた開発スタッフは何往復もしながらじっくり見ていました。
――各地のファンフェスを見させてもらいましたが、贔屓目を抜きにしても、日本のリアルクラフターのみなさんのクオリティはとてつもないものでした。
室内:すごいですよね。
――ここまで凝った作品が多いのはお国柄なんでしょうかね。
室内:それもあるかもしれないですね。欧米でも、応募は来るには来ますが、日本ほど点数は多くないですし。向かっている方向性も、お国柄でトレンドが違うのかなという感じがして面白いですね。
――たしかに、よりキャラクターに対する思い入れが強い印象を受けました。日本ファンフェスでは、チケット上限に対して4倍もの応募があったそうですが、海外もそれぐらいの競争率だったのでしょうか?
室内:じつは、欧米のチケット販売方法は抽選ではなく先着順なので、総数がわからないんです。これは、昔から議論があるのですが、文化的に“何をもって公平と見るか”という違いで、欧米は早く並んだ人に優先的に提供するのが一般的なんですね。
総数は不明ながら、ヨーロッパのほうは数日かけて売り切れたので、「どうしても行きたい!」という人には行き渡ったかなと。逆に、北米はたしか2分ぐらいで完売してしまって。サーバーがクラッシュしかける危機を経ての2分だったので、気づいたときには完売していたと感じる人も多かったと思います。アメリカ側の課題としては、規模をどう広げるかというところが明確にありますね。アメリカはそれぐらいプレイ人口が増えていて、我々のキャパシティが追いついていない感じでした。
――そこまでのアクセス集中に、サーバーを落とさずに対応できたのはすごいですね。
室内:それなりにトラブルはありましたが、チケット販売代行業者さんにがんばっていただいて、“すべてのサーバーが落ちて大変なことになる”ということは避けられました。
――海外のファンフェスに対して、初めてパックツアーが用意されましたが、どういうきっかけで企画が立ち上がったのでしょうか?
室内:あれは「やれたらいいね」が本当にやれた感じです(笑)。日本から海外のファンフェスに行くことの難しさがあるなかで、アメリカならでは、そしてファンフェス1発目ならではの、あの独特の空気感をどうにか感じてもらいたかったんです。
たしかに、ラスベガスまでの旅費込みなのでなかなかいいお値段になってしまうのですが、もしそれでも行ってみたいという方が一定数いらっしゃるのであればやってみようというところから話が始まって、ツアーを主催してくれる旅行代理店も見つかり、無事に最低催行人数をクリアするぐらいは応募していただけました。その流れで、パリも“やれるのならやっていいんじゃないか”ということになり、実施できた感じです。
――参加されたみなさんも、かなり楽しんでいたようですね。ちなみに、今回のファンフェスを振り返ってみて、とくに室内さんの記憶に残っていることはなんですか?
室内:特別に今回だから……というわけではなく毎回そうなのですが、ステージの上から見渡したり、フロアを歩いたりした際に、みなさんがすごく楽しそうにしてくださっているシーンに出会うことが多くて。そういうシーンを拝見すると、「ファンフェスをやってよかったな」という気持ちになりますね。毎回思い返すと、いつもその気持ちにたどり着いている気がします。
――『FFXIV』は、ゲームはもちろんですが、リアルイベントも含めて『FFXIV』だというイメージが強いので、これからも楽しみです。
室内:そういう意味では「地方F.A.T.E.の様式をとてつもなく巨大にしたのが“ファンフェス”だね」と今回の振り返りの中でもコメントがあったんですけれど、これ以上同じ比率で大きくしていくのは無理だろうというのは、今回でちょっと見えてきました。お客様の規模を増やすにせよ、会場の規模を大きくするにせよ、“何を大事にするか”ではありますが、反省会をふまえて、今後のスタイルを考えていかないとなと思っています。
――次のスタイルが注目点になりそうですね。
室内:少なくとも、同じままではいけないだろうな、というところもありましたので。特に今回は、ステージ外周の人の流れが上手くいかなかったのは反省点です。ステージを中心として、ずっとその周辺にいた方々はけっこう幸せな空間だったのかなとは思っているのですが……。
用意する我々のメンタリティ的に、「来ていただいて2日間過ごしていただく以上、隙間なくこの中で何でもかんでもできなくちゃダメだろう」みたいな想いもありました。
1人の人が2日間を過ごすシミュレーションとして、このアクティビティを触って、ご飯を食べて、グッズ販売に行って、サブステージを見たり……フルコースを用意した上で、更にたくさんのアクティビティを回ってもらえるようにスタンプラリーなんかも用意して……と極力、会場内を動き回るようにと考えて作った結果、“15,000人が同じように動くには、さすがに無理があったな……”と。そこの考え方を変えるか、会場を大きくすればいいのか、来場者数を抑えればいいのか、それともレイアウトの問題なのか、アクティビティの置き方を変えればいいのか……要素はいろいろあるので、よりよくするための方法は、チームのみんなで議論していく必要があると思います。とにかく各アクティビティの導線管理だとか、要所要所で非常に混雑が発生してしまいましたし、グッズ販売も今回の事前販売形式ではまだ足りなかったのかとか、そういうところを含めてもっと考えていく必要があるかなと。反面、ステージは概ね思っていたとおりに上手くいったかなと思っています。
――ステージの満足度は……光の戦士たちの大歓声が、すべてを物語っていたように思います。
室内:あの人数で歓声が起こると、「ワー!」ではなく「ザワー……!」と広がっていくんですよね。客観的に「なんだこれすげぇ」と思いました(笑)。
コミュニティチームと室内さんの、普段のお仕事――アカウントペナルティポリシー変更についてなど
――室内さんは司会という役割的にも運営サイドという立場的にもこれまであまり直接お話を聞く機会がなかったように思いますが、過去3度のファンフェスを経た今だからこその感慨などがございましたら、ぜひうかがいたいです。
室内:「よくここまできたよな」というか、ファンフェスを何度も開催して、ここまでの大人数に囲まれるようになっている事実を感慨深く感じることはあります。ふと、「なんでこの役割は自分なんだっけ」とか「いつの間に、こんな表に出る仕事をやるようになってしまったんだろう」と思うこともありますね(笑)。もうすっかり慣れちゃいましたけど、気づけばこんな役回りになっていました。
――もはや、プレイヤーのなかでは「MCといえばモルボルさん」というのが定番になっていますしね。ちなみに、PLLなどでMCを担当されるようになったきっかけは何だったのでしょう?
室内:第1回PLLを放送する前に、「進行は誰がやるか」を決める会議がありました。私は、その会議に参加することができなかったのですが、その結果「室内がやればいい」という話になったらしく(笑)。
――欠席裁判だったんですか!?(笑)
室内:そうです、そうです。“こんなにわかりやすい欠席裁判があろうか”という会議が行われ、結果だけ聞き、「おめでとうございます」と言われました(笑)。そんな感じなので、現状がより感慨深いです。
――PLLの顔になる以前から、室内さんはこういった表に出る仕事には慣れていらしたのですか?
室内:いえ、それまで表立って出演する仕事はほとんどしたことがありませんでした。『FFXI』のときは、ヴァナ★フェスのサブステージがあったときに、コンポーザーの谷岡久美さんと一緒にワーワーにぎやかしをやっていたぐらいですね。とくに出ないと決めていたわけではないですが、単にそういう役回りだった感じです。
――第1回PLLの時点でこなれていたので、司会の経験が豊富なのかと思っていました。たしか、以前にどこかでバトルの実況もされてましたよね?
室内:東京ゲームショウの“吉P散歩 in 幕張”での極朱雀征魂戦ですね。
――実況自体は、あのときが初めてだったのでしょうか?
室内:初めてですよ(笑)。あのときは、ものすごく予習しました。実装直後のコンテンツなのでプレイヤーの皆さんの解説動画もまだあまり作られていなかったですし、私自身も開発期間中にテストプレイをガッツリするような仕事をしているわけではないので、調べるのは大変でした……。みなさんがアップしている数少ない動画を見ながら、敵のアクションの名前や効果、順番といったものを「なるほどなぁ」と思いながら必死に覚えましたね(笑)。
――話題は変わって、『FFXIV』の取り締まりについて聞かせてください。先日、“禁止事項とペナルティポリシーの変更”が行われましたが、これはどういう流れで変更するにいたったのでしょうか?
室内:端的にいうと、“今の時代に合ったサポートポリシーにするにはどうしたらいいか”を議論した末に変更が行われました。この“時代に合わせる”部分がなかなか難しいと言いますか、MMOのサポートポリシーは歴史のある話なんです。今、我々が脈々と受け継いできたカスタマーサポート用のポリシーは、欧米のMMOが商業化されて大きくなってきた頃から、連綿とつながっているんですね。
なぜつながりがあるかというと、サポートの中核にいる人たちが、なんやかんやでかかわりがあるからなんですが……ルーツを遡ると、エレクトロニック・アーツさんの『ウルティマオンライン』の時代まで遡ります。当時は、“トラストイシュー(trust issues)”という考え方に基づいてゲームが成立していました。trust issuesを日本語に直訳すると、“信用問題”ですね。
これがどういうものかというと、例えばゲーム内にAさんとBさんの2人がいたとします。AさんがBさんを信用したとすると、そこにtrust issuesが発生し……“AさんがBさんを信用したのだから、信用した責任はAさんが負う”という考え方です。つまり、Bさんがゲームルールに違反をしない前提で、言葉巧みにAさんを騙して金品を奪ったとしても、運営サイドのスタンスは“Bさんを信用したのだから、その結果はAさんに責任があるもの”になります。
――なるほどなるほど。仮にアイテムを取り逃げされたとして、その人物を信用した側の責任になると。
室内:よく言えば、自治にまかせていた時代ですね。そんな民事不介入の極みみたいな状態で、MMOのサービスは始まっています。そこから年月が進み、初心者支援の導入に力を入れ始めた時期が訪れて、ゲーム内に見た目にもわかりやすい初心者がたくさん登場するようになりました。
運営サイドとしては、「ベテランの方々は、初心者をケアしてあげてくださいね」という考えだったわけですが、詐欺師からすれば鴨が葱を背負ってやってきたようなものです。そして攻撃が始まった結果、初心者の方がそれに疲れてどんどん止めていく状態になってしまいました。
――カオスで楽しそうではありつつも……そうなっちゃいますよね。
室内:そういう状況になって、ついにtrust issuesの考え方に手が入って“初心者を騙す行為”がルールとして禁止されるようになります。「新人さんを騙すとか、やめてもらえませんかね」と。そういったポリシーが転じていき……「ゲームを楽しんでいるなかで間違えた・ミスをした・ちょっとしたケンカになった程度は問題ないけれど、そもそも騙すためにゲームを遊ぶのはダメでしょ」という話に、いつしか変化していきました。
ここでポイントとなるのが、“悪意”です。成り行き上でトラブルが起きたのではなく、そもそも騙す目的で近づくのはダメ。つまり“悪意をもってゲームをプレイするのは間違っている”というスタンスに、運営サイドも舵切りを行ったんです。この時点から、運営サイドは悪意を認定しようとします。
――ですが、それはけっこう証明が難しいですよね?
室内:そうですね。そこは客観的にキャラクターの言動で判断しつつ、ジャッジは“攻撃者が悪意をもってやっていたと客観的妥当性をもって言えるか”に重きを置くようなスタンスになります。その流れが生まれたころに『FFXI』が立ち上がり、そういった大元のサポートポリシーを踏襲しつつも、それを『FFXI』にあわせてカスタマイズしながら運営されていきました。そんな流れのなかで、ついに『FFXIV』が生まれたわけです。
――『FFXIV』も、最近まではそのサポートポリシーが大元にあったわけですね。
室内:そうですね。そして、ここでやっと本題になります。先日の変更を行うまでは、“攻撃者に悪意があるかどうか”に重きを置いていました。そのポリシーに照らすと、被害者を救済することももちろん重要でありつつ、規約違反に問うことに関しては“攻撃者と運営サイドの問題”なので、“この行為に悪意があったかどうかを運営サイドが認定するか否か”が重要だったんです。もちろんそれがすべてではないですが、重きを置いていたのはあくまで“悪意があったかどうか”でした。
これを先日の変更により、“経緯や悪意の有無はどうあれ「あなたは被害を訴えている人に少なからず不快な思いをさせています」という事実に対して注意喚起やペナルティを与える”というスタンスにしました。そうしないとたぶん“ダメなんだ”と気づかないだろうし、ゲーム社会全体がよくなっていかないだろうと。
現実社会一般でもハラスメントに対する意識が変わってきている時代ですし、それに合わせて、我々のサポートポリシーもそこに重きを置く形にシフトしました。
――より言葉の1つ1つにも気を配る時代になったわけですね。
室内:それだけではありませんが、1つの要素としてはありますね。言葉狩りをするわけではないので、会話の流れで口から出てしまった言葉1つでNGとはなりませんが、これまでよりかは重要視するようにしています。
これも現実世界のハラスメントの議論でよく出る例ですが、「ノリで言ってしまったことかもしれませんが、それを後で文字にして読んでみて。たぶん引くから」みたいな言葉は、基本的にNGですよね。そういった、公の場で“ノリでも言わないほうがいい言葉”は、ゲーム内でもアウトですよという話ですね。
ニュアンスとか温度感とかに左右されすぎず、その言動に問題があった場合は指摘していく感じの構成にしていこうという感じです。
――ネットでは「一発BANくらった!」みたいなカキコミを見たような気がします。
室内:具体的な事例についてはこちらからは言えないのですが、基本的に、一発BANはほぼないです。一発BANになるのは、それこそゲームを破壊するレベルのチート行為ぐらいなもので、プレイヤー間の揉めごとではよほどのことがない限り発生しません。
実際にBANされた人に何が起こっているのかというと、その手前にいろいろと警告を受けアカウント停止期間を経て、それでも同じような行動を行ったのでBANになった……という流れです。もし、一発BANだと言っている人がいるとすれば、我々にとってのBANは永久停止を指しますが、アカウントの一時停止をBANという人もいるので、そこを混同されているのかもしれません。もしくは、自分の過去を伏せた状態で言っているかのどちらかかなと思います。
――こういう話は、普段関わらないですし、なかなかお話を聞く機会もないのでとても興味深いです。
室内:たしかに変更としては大きいことですし、ペナルティの文言も強く見えてしまいますので、もしかしたら「恐怖政治がやってくるのか!? 秘密警察が暗躍する時代が来るのか!?」という印象を与えてしまうかもしれませんが、そんなことはなく、普通にゲームを楽しんでいる99%の人には無関係な話です。
この話は、キャッチーなので話題になりがちですが、いきなり追い出されることは今後もまずないです。ただし、わりと今までよりも軽い段階で警告がくることもあるので、そこでしっかり省みてもらえればと思います。
――そういう観点も踏まえたうえで、『FFXI』なり昔のMMO時代からけっこう変わったなと室内さんご自身が感じているところはありますか?
室内:いろいろ考えたのですが、本業のカスタマーサービスのことを思い起こすと“インターネット接続”の説明をしなくてよくなったことですね(笑)。なにげに『FFXI』の初期は、“このPS2をどうやってインターネットにつなぐか”、“ブロードバンドアダプタとは何か”みたいなところから話をする時代でしたから。今の人には想像できないのではないでしょうか(笑)。「壁にLANケーブルを刺す穴などないのだよ!」というところから始まりますから。
コミュニティチームという観点からすれば、昔はSNSがなかったというところですね。「みなさん、Twitterがない生活を想像できます?」みたいな。あとは、生放送が気軽に行えるようになったことで、ゲーム開発者・運営者側からプレイヤーのみなさんへの情報伝達の仕方や距離感が大きく変わったなと思います。そこに関しては、メディアのみなさんもより感じられるところではなかろうかと思いますが。
――そうですね。SNSの普及で“メディアの存在意義とは”と問われるような感覚もあったり。
室内:『FFXI』の時代は、次のバージョンアップをこうしますといった情報はホームページに載せるか、メディアのみなさんに取材にきていただいて、そこを経由するのが当たり前だったわけです。しかし、気づけば「このあと生放送やろうぜ」でやれてしまう時代になっちゃいますから。あ、ちなみに『FFXIV』は生放送のオペレーションもコミュニティチームや宣伝チームでやっています(笑)。
――室内さんはグローバルコミュニティプロデューサーとして、スクウェア・エニックス作品全般のお客様対応のトップという認識です。割合的には、『FFXIV』にかかわっている時間が長めなのかなという印象ですが……実際はどんな感じなのでしょう?
室内:イベントの開催時期など特殊な場合を除けば、1日の仕事量のうち『FFXIV』の割合は30%から50%までいかないぐらいですね。じつは、グローバルコミュニティプロデューサーという肩書きで仕事しているのは『FFXIV』だけなんですよ。それ以外は、カスタマーサービスを担っているコミュニティ&サービス部の部門長をやっているので、仕事の種類がまったく違うんです。
『FFXIV』のほうは現場仕事に近いことも自分でやりますが、部門長側の仕事は、全体のサービスがどうなっているかとか、新しい仕組みをどうしていこうか、といった“みんながやってくれる物事をうまくまとめる”ことと、”ややこしい問題のエスカレーション先”と、”海外チームを含めたグローバルポリシーの統括”に特化していますね。
――日本ファンフェスが終わって、開発的にはもちろん追い込みの時期だと思うのですが、コミュニティチーム的には一段落している感じですか?
室内:そうですね。イベント的にはひと段落していて……このあとはコミュニティチームとしての定常的な業務の一環でもあるのですが、5.0パッチノートに向けてのサイクルが走り出します。
――パッチノート関係もコミュニティチームが担当しているんですね。
室内:実際の文言草案は各開発セクションのリーダーたちにお願いしているのですが、あがってきたものを精査して、みなさんが見る“パッチノート”の形にまとめたり、その進行を管理する部分などはコミュニティチームが担当しています。
――チェックなども含めると、けっこうなボリュームですよね。
室内:大変ですね。今は次までに少し空きがある特別な時期ですけれど……3.5カ月周期でパッチがリリースされているときは、パッチが入ったあと、まずそれに対するグローバルのフィードバックを吉田に届けます。それを2~3週間ほど続けたら「じゃあそろそろ次のパッチに向けての項目集めを始めましょうか」と言い出すような感覚です(笑)。
――ほぼ途切れず次があるんですね……! ちなみに、コミュニティチームの方々も光の戦士という認識でよいのでしょうか?
室内: 100%そうですね。
――パッチノートといえば、生放送による朗読会は今や大人気コンテンツとなっています。そもそもの始まりはどなたの案だったのでしょうか?
室内:これはたしか吉田が言い出したことですね。 『旧FFXIV』時代からパッチノートでは細かい点まで徹底してカバーしてきましたが、これが『新生FFXIV』になって爆発的にコンテンツが増えたときに、「これまでと同様に詳細な記述をするのは作業コストが膨大すぎでは?」という点と、「こんなに文字ばかりのパッチノートなんて、多くの人が細かいところまで読まないだろう」という感覚があり、費用対効果的なところでの悩みがありました。その前提に立ったときに、「じゃあ口で伝えればいいよね」というところから転じて、「どうせサーバーも落ちてるわけだし、だったらいっそ全部読んでしまおう」という流れになったんです。
私は、そこに“吉田が絡む”ことが大事だと思っています。吉田が絡む、すなわち見てくれる人も増えるという算段ですね。とくに、パッチノート前半のバトル面の調整などは黙っていてもみんな見てくれる“華やかなパート”だと思いますが、パッチノート後半にまとめている“かゆいところに手が届く系”のシステムアップデートは、吉田による朗読や解説などでちゃんとアピールしたほうがいいなと。せっかくあるのに誰も知らないなんてことも有り得そうですしね。とくに『FFXIV』はオプションがとても多いので。……そんなこんなで、「始めた以上は続けていこう」と今にいたっています。
――細かいところを解説付きで説明していただけるのは、すごく頭に入ってくるのでありがたいです。
室内:そうなんですよね。いろいろなコミュニティやまとめサイトなど、書き手の琴線に触れる部分がそれぞれで違ってくれれば、それだけさまざまな情報を拡散してくれますから。そういう効果も狙っていけるかと思っています。
――各パッチ後は、プレイヤーさんからのフィードバック把握とその集計がセットだと思いますが、このあたりにもコミュニティチームがかかわっているのでしょうか?
室内:フィードバックという意味では、コミュニティチームの業務は主に2つあります。1つは、メジャーアップデートやファンフェスなどの大きな事象に対する“プレイヤーのみなさんのリアクションはこんな印象だ”というフィードバックを、レポートにして提出すること。
そしてもう1つ、プレイヤーさんの関心が高い事項を全リージョンぶん集める“フォーラム朝会”というものを毎日開いています。これは、パッチ前後に限らず「今、これが話題になっています」「レス数がたくさん付いてホットなトピックです」といったものから、コミュニティチームのメンバー個人のセンスに依る「この項目は、なにか気になります」といった部分も含めた“直近の注目点”をレポートにして、各担当部署や吉田に伝えることが目的です。
――そういったレポートが、次のパッチにつながっていくんですね。
室内:とくに『FFXIV』には“プレイヤーが望むUI系の調整はドンドンやっていこう”というポリシーもあったりしますし、そういったものはこうした一連のレポートをふまえて開発側で検討を重ね、次パッチの項目に反映される……という流れですね。
――フォーラムでの盛り上がり具合とリアルなプレイヤーの温度感はイコールでない場合も多いと思います。議題として取り上げる際の基準はあるのでしょうか?
室内:“フォーラム朝会”と命名してはいますが、公式フォーラムだけでなくTwitterなどのSNS、また海外であればReddit、日本であればいわゆるまとめサイト、そしてそのコメント欄など、いろいろなものを見るようにしています。判断基準となるのは、件数と、量と、温度感。各担当言語を見ているコミュニティチームのメンバーが「公式的なコメントを出すくらいホットな話題かどうか」といった判断をしながらまとめてきたレポートを見て、最終的に吉田がジャッジする形になっていますね。
――サービスリージョンごとに関心のある要素・熱量はバラバラだと思いますが、それらすべてを日本でのフォーラム朝会で管理・ジャッジしているのでしょうか?
室内:そうですね、ジャッジはすべて日本で行います。吉田や開発チームは日本にしかいませんので。ただ、我々運営チームがレポートを作るときに気をつけているのが“まとめないこと”です。
つまり、「結果的にこうでした」と全体の総括だけを持っていくのではなく、日本ではこう、英語コミュニティではこう、フランス語では、ドイツ語では……というように別々にまとめるんです。リージョンごとに微妙な違いがあるので、ヘタに総括せずにそれぞれで別のレポートにします。それを受けて、「日本では話題になっていないけど、英語ではホットなトピックなのでコメントをしよう」「ここは開発チームに言って調査してもらおう」といった判断ができるようにしています。
――では最後に、ファンフェスに訪れたプレイヤーさんたちや、普段『FFXIV』を楽しんでいる人たちに向けてメッセージをお願いできるとありがたいです。
室内:まずは来てくださったみなさんもストリーミング放送でご覧になったみなさんも、本当にありがとうございました。みなさんのご支援あって、無事に成功させることができたので、チーム一同本当にありがたく思っています。先ほどもちょっと話にありましたが、そうこうしているうちに次のラウンドを考えなければいけない時期が迫ってきたので、みなさんからのフィードバックを踏まえたうえで、次もまたハデにいろんなことができるように……。……どんどん自分の首が締まっていくので怖いコメントですけど、まぁいいんです。規模が拡大するかはお約束できませんが、精一杯、気持ちのうえでは次も倍にしてやるぜぐらいの勢いでがんばりたいと思いますので、どうぞご期待ください!
――ありがとうございました!
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