印象的で心に残る世界を。 『ゴースト・オブ・ツシマ』発売直前インタビュー

電撃オンライン
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 7月17日に発売されるSIEのPS4『Ghost of Tsushima』(ゴースト・オブ・ツシマ)。いよいよ発売を迎える本作の見どころなどについて、サッカーパンチ・プロダクションズのアート/クリエイティブ・ディレクターJason Connell(ジェイソン・コーネル)氏に、こだわりや制作秘話などをうかがってみました。

Jason Connell(ジェイソン・コーネル)
サッカーパンチ・プロダクションズ
PS4用ソフトウェア『Ghost of Tsushima』(ゴースト・オブ・ツシマ)
アート/クリエイティブ・ディレクター
(照明、撮影、コンセプトディレクション、音楽)

 ――日本の歴史や生活様式などへの理解や確認は大変だったのではないでしょうか?

 Jason Connell:確かにとても難しい取り組みでした。何よりも中世の日本を再現するのに必要な歴史的資料が古すぎて、ほとんど残っていないという点です。貴重な史料はあるにはあるのですが、どれも基本的に文字での記録のみで、写真のような資料は当然ながらありません。

 そのため当時描かれた絵を解読して、立体的にした際には、こう見えるんじゃないかと想像して作っています。とはいえ、それでは不完全な部分もあるので、皆さんのイメージにより近付けるため、多くの人気時代劇を参考にしました。

 ――非常に美しい風景描写が印象的でした。日本の“対馬”を表現するうえでのこだわりポイントは何かありますか?

 Jason Connell:中世の物語を作っていますが、完璧な鎌倉時代を目指したわけではありませんでした。むしろ時代劇を見た時に感じる雰囲気を作ることにこだわりました。昔の日本だな、という感覚や懐かしさですね。

 ポイントとしては単に史実を再現するだけではなく、印象的であって覚えやすい、心に残る、そういう風景を作るように心がけていました。

 例えば一面のススキを見た時に心に残る、感銘を受ける……そんな圧倒的な光景を目指しました。イチョウを生やすにしても1本だけでなく、一面のイチョウで、地面が黄金色に照らされているような場面に心を動かされるのではないかと。

 ――イチョウやアジサイなど、色とりどりの花は四季を感じさせる狙いがあったのでしょうか?

 Jason Connell:史実では、侵攻が起こったのが秋から初冬にかけてでしたので、季節としては秋を中心にしようと思っていました。ただ、我々が作った“ツシマ”は大きいので、すべて同じ景色にするよりはプレイヤーの感覚に訴えるために、一部ズレた景色や植物を取り入れていますが、これは意図的に行っています。

 全体的には秋の植物を中心にしていますが、一部の植物には伝説や逸話が残されています。墓地の周りにヒガンバナが咲いているのを見かけたとき、ヒガンバナがなぜそう呼ばれているのかの伝説が非常に興味深いと思い、それらについては季節をズラしてでも使いました。

 また当時の“ツシマ”にどんな動物がいたのかの記録は見つかりませんでした。生息しなかったかもしれないクマやシカも登場しますが、彼らの本来の生息地は本土や北海道かもしれません。ただ、それらが登場することで、日本の中世にあったかもしれない雰囲気を伝えられるのでは? そんな意図を持っています。

――“和歌”はどのような経緯で思い付いたのですか?

 Jason Connell:日本では和歌ですが、海外は“Haiku”(俳句)としています。これは、海外では俳句は知られていますが、和歌はほぼ知られていません。そういった一般的な認知や親しみを考慮して、日本以外では“Haiku”になっています。

 本作が目指した体験として、史実に100%ではないにしても、プレイヤーを中世の日本をいるような体験にさせることが目的にあります。

 自然もそうですが、人間の活動様式や文化もそうで、とくに日本ならではの文化を取り入れたかった。中世の日本で何かをしているという感覚を与えたかったのです。しかしそれをプレイヤーに押し付けて、ストーリーに進めるためにやらなければいけない要素にはしたくありませんでした。

 旅をしているなかで、美しい自然や苦しい戦いのなかで、小川を見たり、景色を見て心を動かされた時に表現できるように、戦いやストーリーに直接関係しない、日本らしさを感じてもらうために和歌を入れています。

 ――お辞儀によるリアクションの数々はどのように思い付いたのでしょうか?

 Jason Connell:まず我々は、ゲームにありがちなファンタジーというよりは、地に足のついた人間の物語、比較的リアルな話を追求しました。そのなかでも主人公である境井仁は、その時代に生きているキャラなので、“ツシマ”に対する深い精神的なつながりがあると思っています。

 “ツシマ”という自然を含めた、もっと大きな精神性と仁との繋がりを表現するために、例えば動物が導いて重要な場所に連れて行く機能を持たせることで、人々と“ツシマ”の繋がりを表現したかったのです。

 そしてお辞儀を通して、ある種の敬意を表現したくもありました。プレイヤーが敬意を払うべきだと感じた時に、それらを示すことができる。それに対してゲーム内でもインタラクションがあるようにしたかったのです。

 仏像に敬意を払ったり、死者を悼む気持ちは持つだろうし、仁になっているプレイヤーも、それを表現したいだろうと。それによって“ツシマ”という島や人々との仁の繋がりを感じてもらえるではないかと思いました。

 ――仁の刀や鍔に嵐の意匠が取り入れられてますが、どのような意味がありますか? また境井家の家紋にはどのような意味が込められているのでしょうか?

 Jason Connell:鍔の嵐の意匠は、歴史的に元寇の時にあったという伝説が残っている嵐とも関係がありますが、仁自身が“ツシマ”にとって嵐である。動乱を巻き起こすというメタファーでもあります。

 ちなみに英語では境井家の刀をサカイストーム(嵐丸)と呼んでいます。

 ゲーム内では大々的に見せてはいませんが、境井家の家紋は“ツシマ”にある特徴的な2つの山を表現しています。これは“ツシマ”のある地方を治める家であることに由来しています。仁の故郷へ行けば、その2つの山を見ることができますよ。

 ――刀による攻撃やモーションがスーパーヒーロー(斬撃を飛ばす、刀からビームを出すなど)にならないように気を付けた点はどこでしょうか?

 Jason Connell:まず我々の中で“血と鋼と泥”の3点をキーワードによく使っていました。敵に囲まれたら泥まみれで逃げる。汚いがリアルな、そんな戦いを表現したかったのです。

 戦いに関してはとくに映画“十三人の刺客”を参考にしましたが、これは非常に戦闘が速い。バイキングの戦闘と比べると刀を何度も打ち合うことはなく、2、3回打ち合った後に敵か味方かが必ず死んでしまう。このバトルの動きの速さと展開の早さを表現したかったのです。

 実際にゲーム内でもプレイヤーが攻撃を行うと、敵も何らかのリアクションをして打ち合ってこようとします。これらは戦いの中でのアーケード感、ゲーム感をなくすのに役立っていると思います。より人間らしい戦いであり、プレイヤーにとっても敵にとっても戦いは危険だということを表現したかったのです。

 ――侍としてのアクションに限定せず、冥人(くろうど)のアクションを取り入れたのには、どのような意味がありますか?

 Jason Connell:本作は侍の話ではあるんですが、同時に描きたかったのは生涯信じてきたある信念が、敵の侵略によって崩れ去る……そうなった主人公の姿を描きたかった。ですが、これを説得力を持って見せるには、侍側もしっかり描かなければいけません。

 仁は信念を積んできた立派な侍であり、実力がある。同時にそんな彼がそこから変化していく姿が物語のキーとなります。

 侍の戦い方と異なるやり方は身内から蔑まれるものではあるかもしれないけど、人々のため故郷のためにやらなければいけない、そういう姿を大切にしています。

 これを支えるためにも、ゲームシステム側でもそれなりのものがなければいけません。そして侍だけ、あるいは冥人だけをやらなければいけないと、ストーリー上で押し付けたくはなかったので、プレイヤーの好みでどちらに偏っても楽しんでもらえるようにしました。

 侍にこだわりを持っているのはストーリーの展開を描くためであり、冥人のアクションを身につけるのもストーリー上必要なこと。かつ仁が元々持っていた侍の技と、新たに身に着けた冥人の技どちらも使えるのが我々には重要でした。

 ――構えの中に居合いは入れていませんでしたね?

 Jason Connell:居合いを特別なものにしたかった狙いがあります。ゲーム内には一騎打ちのほか、特定のキャラとの対決シーンや決闘がありますが、この対決の導入部が大好きで、刀を構えたり、鍔がアップになったりと、西部劇の決闘のような感じすらある演出になっています。

 この一騎打ち、居合いをどこでも使えるようにしなかったのは、それらの決闘や一騎打ちを特別なものにしたかったからです。

 普段の戦いで気軽に居合いを出して一撃で倒すのではなく、一騎打ちもタイミングを誤ればこちらがやられるのも含め、戦いの緊張感を高めるためにも、ある程度特別なものにしたかったのです。

 ちなみに余談ですが、天心流という武術の方々を我々のモーションキャプチャーの施設で撮影させてもらった際、彼らの刀を抜く動きがあまりに早すぎて、モーションキャプチャーでは捉えられませんでした。そのため、ゆっくり抜刀したり、型を見せてもらう必要があったこともエピソードの1つとして挙げられます。それらの動きが素晴らしかったので、いろいろな場面で取り入れています。

 ――映画や時代劇の影響を至るところに感じましたが、アニメなどを参考にした部分はありますか?

 Jason Connell:総合的にはいくつか参考にしています。このアニメを、といったような特定の参照元はなく、基本的には実際の歴史と時代劇の映画やドラマを参照しています。日系人の方が描かれている“Usagi Yojimbo(ウサギ用心棒)”という漫画がありまして、それを参考にしている部分もありますね。

 ターゲットにしたい人が時代劇が好きな方、侍が好きな方だけではなく、それらに興味があまりなく、侍になりたいなどとは思っていなかったが、アニメが好き、日本が好きという方々はいる。それらの人にも喜んでもらうために、エッセンスとしてアニメ的な要素を取り入れたところもあります。

(C)Sony Interactive Entertainment LLC.

Ghost of Tsushima(ゴースト オブ ツシマ)

  • メーカー: SIE
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: アクションADV
  • 発売日: 2020年7月17日
  • 希望小売価格: 6,900円+税

Ghost of Tsushima(ゴースト オブ ツシマ) デジタルデラックスエディション

  • メーカー: SIE
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: アクションADV
  • 配信日: 2020年7月17日
  • 価格: 8,690円(税込)

Ghost of Tsushima(ゴースト オブ ツシマ)(ダウンロード版)

  • メーカー: SIE
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: アクションADV
  • 配信日: 2020年7月17日
  • 価格: 7,590円(税込)

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