第3巻までがプロローグ? 『探偵はもう、死んでいる。』の魅力とは
- 文
- タニグチリウイチ
- 公開日時
MF文庫J(KADOKAWA)より発売中の『探偵はもう、死んでいる。(たんもし)』(著:二語十、イラスト:うみぼうず)のレビューをお届けします。
本作は現在3巻まで発売中、第15回MF文庫Jライトノベル新人賞《最優秀賞》受賞、ラノベ好き書店員大賞2020[文庫]&好きラノ2019下期新作第1位を獲得した注目作品です。
『探偵はもう、死んでいる。』レビュー
ミステリーでラブコメでSFで異能バトル。第15回MF文庫Jライトノベル新人賞で《最優秀賞》を獲得した二語十の『探偵はもう、死んでいる。』(たんもし)について聞かれれば、答えはこんな感じになる。
ジャンルをどれと絞れない、とっちらかった物語なのかというとまるで逆。
ミステリーならではの謎解きと、ラブコメとしての美少女たちとの愉快な交流、そしてSF的な設定の上で繰り広げられる異能力者との壮絶な戦いが、絡み合って独特な世界を作り出す。
言うなればこれは、『たんもし』というジャンルの物語だ。
死んだ美少女探偵の遺志が少女を動かし少年を立ち上がらせる
読み始めから驚かされる。中学生の君塚君彦が乗り合わせた飛行機で、キャビンアテンダントが「お客様の中に、探偵の方はいらっしゃいませんか?」と呼びかける。
すると、君塚の隣に座っていた、シエスタという白銀色の髪と青い瞳を持った少女が、「はい、私は探偵です」と立ち上がる。
美少女探偵が難事件に挑むミステリーだねと誰もが思うシチュエーション。ところが、シエスタは君塚を助手に使命して、そのまま3年にわたって世界中を連れ回した挙げ句、数ページ後にタイトル通りに死んでしまう。
物語は、バディを失い抜け殻のようになった君塚が、通い始めた高校で夏凪渚という少女から、指を口に突っ込まれ、胸に頭を抱きかかえられるという学園ラブコメのような状況に流れていく。
元気な少女が落ち込んでいた君塚を奮い立たせ、探偵業の第一線へと連れ戻す展開になるんだなと思わせたところに、《人造人間》というパワーワードが突っ込まれて来るから何だと誰もが驚く。
《人造人間》は世界征服を狙う《SPES》なる組織が送り込んできた異能力者。シエスタも《人造人間》によって殺害されたが、その遺志はとある方法によって夏凪という少女に引き継がれていた……。
そんな内容の第1巻を読み終えて、だいたいの世界観が把握できた。続編となる『探偵はもう、死んでいる。2』では、シエスタの遺志と力を受け継いだ夏凪と君塚が、《SPES》を相手に壮絶な戦いを繰り広げるという、起承転結で言うなら“承”の物語が描かれるのだろう。そう思ったら甘かった。甘々だった。
続く『探偵はもう、死んでいる2。』で時間は過去へと巻戻り、まだ死んでいないシエスタと君塚が、ロンドンに現れる《ジャック・ザ・デビル》と呼ばれる連続殺人鬼と対峙する。
正体はヘルという《SPES》から送り出された少女だが、そのヘルとの戦いの中で《SPES》を率いる存在に絡んで、異能バトルから宇宙スケールの侵略SFへとエスカレートしていく。
第3巻までがひとつのプロローグとなって壮絶な戦いに突き進む
6月25日発売の第3巻『探偵はもう、死んでいる。3』では、さらに急変する事態に巻き込まれる。
ネタバレになるから詳細は言えないが、夏凪は偶然シエスタの遺志を受け継いだのではなく、ずっと以前からシエスタと関わりがあったし、《SPES》を相手に戦っていたシエスタには、所属する組織があって、そこにいる他のメンバーのそれぞれが世界の敵を相手に戦っていた。
そうした展開が後付けではなく、実は最初から仕込まれていたのかもしれないと思わせるところに、『たんもし』シリーズの凄みがある。
大きく広がっていく物語と、深く掘り下げられていくキャラクター設定を戸惑いながらも味わっていくうちに、どっぷり『たんもし』の世界に取り込まれているはずだ。
第1巻から第3巻までの3冊は、3段構成を表す“序”“破”“急”のテンポを持ったひとかたまりのエンターテイメントとして読む人を魅了する。なおかつ、この3冊自体がひとつの大きな“序”になっている。
『探偵はもう、死んでいる。3』の最終章に付けられている題は【プロローグ】。
内容については、シリーズを追って読んできた人のお楽しみとしたいが、ひとつ言えるのは、タイトルの“探偵はもう、死んでいる”状況を甘受することなく、次へと続く道を君塚が本気で開こうと決意したことだ。
『序』『破』『Q』の次に来る『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』で完結となるエヴァンゲリオンの映画とは違って、『たんもし』は次で完結とは行きそうもない。
この後にひとかたまりの『破』が来て、クライマックスへと突き進む『急』の部が来るかもしれない。いったい何が描かれるのか。破天荒なエスカレーションを経て、急旋回するストーリーに翻弄されるのか。
長い長い物語が始まろうとしている。着いて行くしかない。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります
『探偵はもう、死んでいる。』
- 発行:MF文庫J(KADOKAWA)
- 発売日:2019年11月25日
- ページ数:328ページ
- 定価:640円+税
■『探偵はもう、死んでいる。』購入はこちら(Amazon)
■『探偵はもう、死んでいる。』購入はこちら(カドカワストア)
■『探偵はもう、死んでいる。』購入はこちら(BOOK☆WALKER)
■『探偵はもう、死んでいる。』購入はこちら(楽天ブックス)
『探偵はもう、死んでいる。2』
- 発行:MF文庫J(KADOKAWA)
- 発売日:2020年1月24日
- ページ数:328ページ
- 定価:640円+税
■『探偵はもう、死んでいる。2』購入はこちら(Amazon)
■『探偵はもう、死んでいる。2』購入はこちら(カドカワストア)
■『探偵はもう、死んでいる。2』購入はこちら(BOOK☆WALKER)
■『探偵はもう、死んでいる。2』購入はこちら(楽天ブックス)
『探偵はもう、死んでいる。3』
- 発行:MF文庫J(KADOKAWA)
- 発売日:2020年6月25日
- ページ数:328ページ
- 定価:640円+税
■『探偵はもう、死んでいる。3』購入はこちら(Amazon)
■『探偵はもう、死んでいる。3』購入はこちら(カドカワストア)
■『探偵はもう、死んでいる。3』購入はこちら(BOOK☆WALKER)
■『探偵はもう、死んでいる。3』購入はこちら(楽天ブックス)