“漆黒編”のクライマックスは圧巻のボリューム! 『FFXIV』パッチ5.3の見どころを吉田P/Dにインタビュー!!

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 まもなく8月27日に新生サービス7周年となり、今や世界を代表するオンラインRPGとして盤石の人気を誇るスクウェア・エニックスの『ファイナルファンタジーXIV(以下FFXIV)』。その最新拡張パッケージ『漆黒のヴィランズ』の大型アップデートとなるパッチ5.3“クリスタルの残光”が、8月11日(火)に公開される。

 そこで公開を目前に控えた今回は、本作のプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏に、パッチ5.3の注目ポイントをインタビュー。ぜひこれらを読み込んで、7月22日に開催予定のプロデューサーレターLIVE(PLL)の予習に役立ててほしい。(インタビューはオンライン上でのリモート形式で6月29日に実施)

“漆黒編”はキッチリ完結し、さらにその先が気になる仕掛けも!?

――パッチ5.3はタイトルが“クリスタルの残光”となり、イメージアートには水晶公が描かれるなど、クリスタルタワーを軸に展開した“漆黒編”の物語の完結にふさわしい印象を受けました。今回の物語で注目してほしい部分を教えてください。

吉田直樹氏(以下、敬称略):いろいろありますが、まず注目なのはオリジナルと呼ばれるアシエンが、いよいよ残りあと1人……アシエン・エリディブスのみになってしまっている状況です。パッチ5.2はそのエリディブスがゾディアーク召喚のコアになったという話が出たところで終わっていますが、それってどういうことなの? という疑問に対する答えが出ることになります。

 そもそもエリディブスは、光(ハイデリン)側にいたり、闇(ゾディアーク)側にいたりと、状況によって立場が変わっているように見えてきたはずで、「彼はいったいなんだったのだろう?」と疑問に思っている方も多いと思います。それに対し、今回の物語ではエリディブスの中心にある想いが思いっきり前面に出てきます。アシエンという存在のまとめでもあるので、そこがまず大きな注目点ですね。

 エリディブスは描き方が難しかったキャラクターだったと、作っている僕ら自身も思っています。長いエピソードのなかで、パッチ単位で見れば、本当にどっちつかずのキャラクターでしたし、誰かの体を乗っ取ったはいいけれども追い出されて……みたいな展開が多くて(苦笑)。これ以上は詳しく語れませんが、うまくまとめられたのではないかなと思いますので、その結末はぜひ見ていただきたいです。

 そしてもう1つの注目点は暁のメンバーたちです。今回闇の戦士となったヒカセン(光の戦士)、および暁のメンバーたちは、あくまで原初世界という自分たちのホームがあって、そこから異邦人のように第一世界に来ています。ヒカセンだけは魂も肉体もそろった状態で第一世界にやって来ていますが、暁のメンバーたちはそうではないので、異邦人である以上は原初世界に帰らなければなりません。

 その“帰る”ということに際して、いろいろな意味で多くの人とお別れをしなくてはならないんです。今回の『漆黒のヴィランズ』は、あらためて“暁のメンバーをヒカセンの仲間にしよう”という想いがあって作った物語でもありました。

 きちんと暁の1人1人を描けた拡張パッケージでもあったので、彼らと第一世界との別れについては、しっかり今回のパッチ5.3で描いたつもりでいます。別れにもいろいろな形があると思いますが、そこもぜひ見ていただきたいです。ただ人数が多いので、丁寧に描いたぶん、シーンが長くなってしまいましたが……。

――じっくり楽しめるボリュームになっているということですね。“漆黒編”は物語の人気が高いだけに、そこに期待している人も多いと思うので問題ないです!

吉田:いつも言っていることではありますが、とくに今回のパッチ公開の初日は、メインストーリーをプレイする以外の予定を入れないほうが良いと思います。映画作品1本ぶんくらいでは全然足りないボリュームになっていますし、ボイスのボリュームもこれまでのパッチで一番多いです。

 クエストとクエストの間にあるヒントトークも丁寧に作っているので、じっくり見て回ろうとすると3~4時間はあっという間かもしれません。ぜひたっぷりと楽しんでいただければと思います。

――ちなみに“希望の園エデン:共鳴編”で、サンクレッドとウリエンジェが無の大地の復興から身を引くという流れは、原初世界への帰還を見越してのことだったんですね。

吉田:彼らはあまりにも魂と肉体が離れ過ぎているがゆえに、原初世界に残された肉体の持つエーテルが衰弱し始めています。暁のメンバーは、光の戦士から伝え聞く、タタルやクルルからの情報により、いずれにせよ早く帰る必要があると認識はしていました。

 となると、永遠にリーンを導いているわけにはいきません。“エデン”の先がどうなるかはわかりませんが、リーンはガイアという友だちを見つけたうえで、自分の足で歩いていけるだけの成長を遂げました。

 それをサンクレッドとウリエンジェという2人の大人が、“あとは次世代の、第一世界の住人たちにまかせても大丈夫だろう”と、ある程度区切りをつけたわけです。前々から開発チームでも“パッチ5.3は第一世界との別れを丁寧に描く”というコンセンサスは取れていて、パッチ5.1や5.2でもその事前準備として意識していたつもりです。

――パッチ5.3で“漆黒編”は完結となりますが、その後の物語……パッチ5.4以降の片鱗は、今回のストーリーのなかで見えてくるのでしょうか?

吉田:見えは……しますよ。「なんだかこの後、大変なことになりそう……」というのはわかると思います。全体の流れで言えば、『漆黒のヴィランズ』も“ハイデリン&ゾディアーク編”の一部で、いよいよここから“ハイデリン&ゾディアーク編”のクライマックスへ突入という形になります。その前哨戦として、このパッチ5.3でいったん区切りがつくと思っていただければいいかなと。

 当然ですが、ハイデリン&ゾディアーク……最古にして最強の蛮神と呼ばれたこの2体がどうなるかは、パッチ5.3だけで終わるわけではありません。あくまでそれらを召喚した人たちの気持ちなどが理解できたうえで、さあその先に向かって……というお話が見えてくると思います。物語自体は九分九厘くらいが“漆黒編”側なので、漆黒編としては気持ちよく区切りがつくと思います。

遊び応えも見どころも満載な新コンテンツ

――新たなインスタンスダンジョン(ID)として“漆黒決戦 ノルヴラント”が登場します。この“ノルヴラント”は第一世界全体を意味する言葉で、先日のプロデューサーレターLIVE(PLL)で「レイクランドっぽい」というお話もありました。こちらはいわば、第一世界のエリアの見どころが集結するようなイメージでしょうか?

吉田:パッチ4.5の“境界戦線 ギムリトダーク”では、これまで光の戦士が解放者として戦ってきたところに全軍で突入、というようなイメージの展開になりました。それにちょっと印象は近く、第一世界の人たちが「闇の戦士たちのために道を切り拓くぞ!」みたいな流れになっていくので、“第一世界の総決算”という感じではあります。

「じゃあ、何から道を切り拓くのか?」というところは、ぜひその目で確かめていただきたいです。今まで出会ったいろいろな人たちが出てきますよ。ちょっとした小ネタも仕込んであります。確率でしか見られないような演出もあります(笑)。一度クリアしたあとでもいいので、落ち着いたら小ネタ探しもしてみてください。

  • ▲インスタンスダンジョンのボスは、かなりセクシーな衣装に身を包んだ謎の女性?

――そのあたりをじっくり見るという意味でも、最初はフェイスと一緒に突入したほうがよさそうですか?

吉田:このダンジョンは怒涛の展開となるメインシナリオの一部なので、今回はシナリオがものすごく楽しみだと思ってくださる方であれば、初見プレイはフェイスと一緒に進めたほうが、より想い入れが強くなると思います。

  • ▲こちらはインスタンスダンジョンの報酬装備。仮面が印象的なデザインだ。

――ID以外では“漆黒編”で3つ目となる蛮族クエストについてもお聞かせください。ドワーフ族の蛮族クエストはクラフター向けの内容とのことですが、こちらは“紅蓮編”のナマズオに近い感じでしょうか?

吉田:そうですね。ナマズオの蛮族クエストから、ギャザラーを除いた感じになります。ちなみにその拠点については、開発の都合ではありますが、コルシア島が“YoRHa: Dark Apocalypse”もあってマップメモリが限界に来ていまして……あそこにドワーフ族の蛮族デイリー集落を作ることができなかったんです。

 それもあって、彼らはレイクランドに来ることになります。もちろんレイクランドに来る理由付けもちゃんとされていて、とてもよくできていると思います。ドワーフ族らしいというか、ちょっと僕ら世代の“男の子たちの夢”みたいなものが詰まっているお話なんです。当然おもしろいマウントなども用意していますので、ぜひドワーフ族を愛でたい方は遊んでいただけるとうれしいですね。

――ドワーフ族のいるトメラの村ではララフェルのみ入れる建物がありましたが、蛮族クエストにもそのような特殊な仕掛けはあるのでしょうか?

吉田:いえ、コルシア島は彼らが古くから住んでいる場所なのでそういった仕掛けがありますが、今回はそこから離れて来ているので、そういった要素はありません。

――ちなみに、現在は“イシュガルド復興”のコンテンツがあり、クラフターのレベル上げもしやすくなっていると思います。そうなると、レベルを上げきった人の割合も多くなると思いますが、そのような人はストーリー面でのおもしろさや、マウントなどの交換品が目的になるのでしょうか?

吉田:それももちろんそうですが、じつはデータを見てみると“イシュガルド復興”が登場したからといって、みんながクラフターのレベル上げをしているわけでもありません。“ガッチリとしたお話のある蛮族クエストが入ったら上げる”というプレイスタイルもあり、意外と「復興には参加していたけれども、復興共同作業が始まるまでは特に何もしていない」という方も多いのです。

 やはりこれは(さまざまなプレイヤーに対する)役割分担だと思っていて、ギャザラーをパッチ5.2のキタリ族の蛮族デイリークエストでコツコツ上げたという人が多いように、ドワーフ族の蛮族デイリークエストでクラフターを上げる人の割合は依然として多いと思います。

 もちろんこれまでよりはクラフターを上げきっている人も多いと思うので、そういう方たちはお話や、獣人貨幣で得られるものや、報酬のマウントを目的にしてぜひプレイしてほしいと思っています。

――ちなみにキタリ族の蛮族クエストでは、プレイヤーの選択で展開が変わる仕掛けがありましたが、あの結果は統計など取っているのでしょうか?

吉田:もちろん統計はとっていますが、それを使って何かをするという気はとくにないです。

――みんなが何を選んだのかが気になるところですが……(笑)。

吉田:統計だけで判断できない要素として、ゲームにおける選択肢は“デフォルトの選択をどこに置くか”が影響してしまうんです。アンカーが最初に置いてあるところを連打する方もいるので、その人たちの割合をどう考えるかというのがありまして。

――ああ! なるほど。

吉田:例えば、最初は何もない空欄の選択肢にアンカーを置いておき、あらためて「どっち?」というような作りにしないと、選択によってプレイヤーの傾向を判断するには乱暴になってしまいます。たまたまバーッと読み飛ばしていたら押してしまったという人もいるでしょうし、「どっちでもいいや」と思って押す人もいるんです。

 この「どっちでもいいや」という声をどうカウントすべきかを考えなくてはいけないんです。選択のデータとしては蓄積していますが、それの結果によって「こちらを正史にします」といったことは考えていません。

『NieR:Automata』らしさがグイグイ出てくるアライアンスレイド第2弾!!

――待望のアライアンスレイド“YoRHa: Dark Apocalypse”の第2弾“人形タチノ軍事基地”ですが、前回以上に『NieR:Automata』らしさが出てくるというお話でした。これは世界観的な演出や、プレイ後の考察のしがいがあるなど、どのあたりで最も感じられそうでしょうか?

吉田:今まさに、この取材の直前にバトルチェックをやっていました。『NieR:Automata』の世界と物語が好きという人にとっては、クリアしたあとに「あれってどういう意味なんだろうね」「○○ってこうだから、きっとこういう解釈なのでは?」など、考察する要素がすごく多くあると思います。けっこう深くまで突っ込んでいますよ。バトルについてもだんだん『FFXIV』のルールからはみ出て、『NieR:Automata』のルールが入っている部分がありますね。

――第1弾“複製サレタ工場廃墟”の時点でも、従来の『FFXIV』のアライアンスレイド以上にダイナミックなバトルがありましたが、今回もそういったところが見どころでしょうか?

吉田:そうですね。前回やったことは当たり前のように踏襲しています。『FFXIV』のルールは基本的に、予兆でお知らせして二次元的に動く形がベースですが、『NieR:Automata』のようなアクションゲームの場合は、より敵の動きや周囲の環境を見ながら遊ぶ形になっています。そういった意味で、今回はさらに『NieR:Automata』寄りになっているので、周りをよく見たり、ボスをよく見たりといった点は意識したほうがいいですね。周囲の状況もけっこう目まぐるしく変わるので、よくこんなものをオンメモリ(ハードディスクを介さないデータの読み込み手法)で作ったなと思います(笑)。

――ボスの対処法などは『NieR:Automata』をプレイしていると、ちょっとは有利になるようなことはありますか?

吉田:わかっていても実際に動けるかは別ですが、プレイ済みの方ならば「ああ、なるほど。そういうことね」といったように、ピンとくるんじゃないでしょうか。

――そういった再現度の確認という部分でも、前回以上にファンは楽しめそうですね。

吉田:そうですね。今回もヨコオ(タロウ氏/『NieR:Automata』ディレクター)さんたちに完全監修してもらいつつ、オリジナルのデータもプラチナゲームズさんにかなりご提供いただき、それを『FFXIV』仕様に調整して使用していますので、見どころはいっぱいあるのではないでしょうか。

 遊びとしても今までやっていないようなことに挑戦しました。例えばトラッシュ、いわゆるザコ戦についても後半では「こんな? なるほどね!」みたいなことがありますので、けっこうおもしろくなっていると思います。とにかく周りとボスをよく見ましょう!

――今はほぼ完成状態まで進んでいるのでしょうか?

吉田:そうですね。バトルは組み上がっていて、24人で何度も遊べる状態までなっています。来週ヨコオさんと齊藤(陽介氏/『NieR:Automata』プロデューサー)が参加して、初見24人による最後のバトルチェックが予定されています。それまでにもう一段わかりやすくというか、アンフェアにならない調整を入れてこのテストを迎えようと話していました。

――チェック前はお2人に「こういうギミックですよ」とお話されるのですか?

吉田:しないです。一般プレイヤーと同じくノーヒントで入ってもらって、初見でどれくらい戦闘不能になるのか、どれくらい対応力があるのかなどを確認します。戦闘不能になったときに"納得性"があるかという点の確認ですね。まあ、戦闘不能が前提で申し訳ないのですが……。

――最初はそうなりますよね(笑)。

吉田:とくにヨコオさんの意見は貴重で、『FFXIV』のレイドコンテンツに染まっているわけではないため、単純にゲームに触れた時にヨコオさん的に納得できるかは、けっこう大きいポイントです。でもヨコオさん的には「もう蘇生しないでくれ」となるかもしれません……第1弾でもそうだったので。すみません(苦笑)。

現在の『FFXIV』に合わせた装備強化となる“セイブ・ザ・クイーン”

――“セイブ・ザ・クイーン”による装備強化や、“スカイスチールツール”の主道具強化も予定されています。こちらはパッチ5.3より少しあとになるとのことですが、具体的にはどれくらいの時期になりそうですか?

吉田:“スカイスチールツール”と“セイブ・ザ・クイーン”の第2章はパッチ5.35になりますので、2カ月弱空けてからのリリース予定です。まもなく僕も入っての最終チェックがあるなど、開発自体はパッチ5.3の開発ラインで作ってほぼ終了していますが、あまりにもパッチ5.3のコンテンツが多いため、みなさんがひととおりのコンテンツを遊び終えてから公開するという段取りになっています。

――ちなみに“セイブ・ザ・クイーン”の第1章は、武器獲得の難度がやさしめで、全ジョブの武器を獲得した人も多いかと思います。それに比べて第2章の難度はどれくらいになるでしょうか?

吉田:今回もそんなにハードにはしていません。かつてはメインジョブだけでプレイしている方も多く、作成難度をけっこう重めにしていました。ただ、最近は『FFXIV』のゲームデザインに皆さんが慣れてきたこともあり、複数ジョブを育てている方が標準的に多くなってきています。

 ですので、開発内でも「2ジョブ~3ジョブぶんくらい手を出してもちょうどいい塩梅にしたほうがいいのでは?」と話をしているんです。これまでの武器強化シリーズと比べると、「1本あたりを作る難度はけっこうカンタンだと思いますので、2本、3本と作ってください」という方向に、今の『FFXIV』は舵を切っています。

 また、今回の強化は少し特殊な仕様でして“セイブ・ザ・クイーン”の第2章のストーリーの序盤から、並行して武器強化クエストが開放されます。今回のシナリオは単純にクエストラインだけではなく、“南方ボズヤ戦線”という大きなコンテンツのなかを貫いています。

 ちなみに“禁断の地 エウレカ”でのシナリオの貫き方は、“エウレカ”のクエストを1つ1つクリアしていかないとその先が遊べないというものでした。エレメンタルレベルを上げて、特定の場所に行って……と、けっこう面倒なものでしたし、クエストの目的地もめちゃくちゃモンスターに絡まれるような場所でした。

 今回の“南方ボズヤ戦線”は、ソロ+αで気軽に遊べる作りになっており、大規模戦闘にも簡単に参加可能です。やり込み要素も用意されていますが、シナリオクリアにはこのやり込み要素は必須となっていません。ですので、シナリオクリアで身構える必要はないようになっています。

 “エウレカ”のときにあったフィードバックとして、武器強化という新コンテンツはうれしいけれども、“エウレカ”があまり好きではない人にとっては、「やりたくないことをやらないと武器強化ができない」というお声を頂戴しました。

 僕らはどちらかといえば、輝き集め(アニマウェポン強化)とかアートマ集め(ゾディアックウェポン強化)に飽きただろうなと思って、新しいコンテンツに付随した武器強化コンテンツを実装したのです。しかし、一方で「前の方が良かった」というフィードバックもいただいたわけです。

 そのため、今回は強化の方法を大きく2つに分けていて、まずは“セイブ・ザ・クイーン”の序盤をプレイして武器強化クエストを開放。その後“セイブ・ザ・クイーン”のシナリオをプレイしつつ強化が可能です。

 そしてストーリーを終えたあとの強化ですが、“南方ボズヤ戦線”の中で手に入るもので強化していくこともできるし、このコンテンツとはまったく関係ない、外で手に入れたアイテムで強化することもできます。ですから「ボズヤはクリアした!」という人は、ほかのコンテンツを遊びながら強化することも可能となっています。

 逆に“南方ボズヤ戦線”をドップリ遊びたいという人にとっては、武器強化のためにほかのことをやらなくて済むように、このコンテンツだけで強化できるようにもなっています。それぞれの強化スタイルでの効率は、意図的に少し差を付けてはいますが、どちらにしても大きくは変わらないので、お好きなほうで強化を進めていただければと思います。

――“スカイスチールツール”についても、前回と同じような作成難度になるでしょうか?

吉田:そうですね。そこも“かつてのイメージのような難度ではない”、という前提でそんなに難しくはないです。

――なお、差し支えなければパッチ5.3の公開日を教えてください。

吉田:なんとか7月中には出したかったのですが、8月11日予定で進めています。こちらは7月1日に第64回プロデューサーレターで僕の想いなどをお伝えしようと思います。

◆現在公開済みのプロデューサーレターはコチラ

“新生編”の改修で新たな冒険者のモチベーションアップに!

――パッチ5.3では、新コンテンツのほかに“新生編”のメインクエスト改修も実施されますが、どういった点に一番注力されたのでしょうか?

吉田:先日のPLLでもお伝えしたのですが、“新生編”のときは、僕らにとってコンテンツ消費型のMMORPGの開発は初めてでした。もちろん、プレイヤーとしての知識はあるし、ゲーム開発の経験自体はありますが、この2つを合致させたことが初めてでした。

 それもあって、多くの人間で制作し、かつブレを少なくするために、じつは“新生編”のパッチ2.2くらいまでの開発では、1クエストあたりのプレイ時間を、ものすごく厳密に決めていたのです。「テキストを連打して飛ばしたとしても、その“To Do”を終わらせて経験値をもらうまでに9分を必須とする」などです。

 しかし、これを小さなお話で実現しようとすると、もうクエストステップ数を増やすしかない。結果、1クエストのなかに“To Do”がメチャクチャ多くなってしまったクエストがあったのです。

――たしかに「あれをやって、これをやって~」というクエストが多かった印象があります(笑)。

吉田:例えば記憶喪失のマルケズ(シド)関連のクエストですが、丁寧に描き過ぎたが故に、神父に会ってお墓に行って戻ってきて……というように恐ろしく過程が細かいわけです。先ほど言った9分縛りは『蒼天のイシュガルド』あたりでもう撤廃しているので、今回は今のルールで作りつつ、もっと経験値を多くしてサクサク進められるように直しています。「“To Do”が多すぎるものはいらないからはずしていこう」と、クエスト自体を縮めているものも多いです。

 だから、クエストが消滅しているものだけをカウントすると全体の13%くらいですが、“To Do”を抜いているものを含めると、結果的にかなりの数に手を入れたことになります。お話の筋は変わっていませんが、カンタンにサクサク進むようになりました。

 行って戻って、また同じところに行ってという「最初から言ってくれれば1回で済んだじゃん」というようなことが1回で済むようになっています。すみませんでした!

――2つに別れていたクエストを、1つにまとめるというようなものもあると。

吉田:そうですね。取ってくるものを1つにしてしまうとか、倒すモンスターの数を2匹でいいようにするとかですね。

――となると“つよくてニューゲーム”で始めると、プレイ済みの人は印象もけっこう変わる感じでしょうか?

吉田:うーん、どうなんでしょう……。話の筋は変わっていませんから、物語の印象こそ変わらないものの「あれ? こんなにサクサク進むんだっけ?」といった感触はあるかもしれません。内容の理解度的な部分は変わりませんし、よく言われる“三大珍味”を集めるクエストも健在です。

 このクエストのキーマンであるゲゲルジュは、今やけっこうな人気キャラになってきていて、いろいろなクエストなどで顔を出しています。光の戦士のパトロンみたいな動きをしているんです。ですから彼自体を消すわけにはいかず、結果的に三大珍味を集めることにはなりますが、すぐに集められると思います(笑)。

――あとは“新生編”でのフライングマウントの開放は、パッチ2.0から始めたヒカセンたちにはかなり感慨深いものがあるのではないでしょうか。こちらの見どころをぜひ教えてください。

吉田:じつは僕の希望だけを言えば、本当は拡張パッケージの作業の1つとして入れておいて、ファンフェスなどで「次の拡張パッケージでは、ついに“新生編”エリアも飛べるようになります!」と発表したほうが、気持ちよかったのですが……(笑)。

一同:(笑)

吉田:拡張としての売りも1つ増えますしね。ただ、開発チームとしては、じつはあまりやりたくない作業なのです……。なぜかというと、もともと空を飛ぶ想定でエリアを作っていないからです。それでもその話を開発チームに切り出したところ、「吉田さん、いつかやるんだったら今やらないと、どこかの拡張で~という話をしていたら一生できないですよ。拡張は拡張でメッチャ大変なんですよ!」と言われまして。

 「じゃあ、短期間で一気に作業、という方法ではなく、年単位で少しずつ対応していき、準備が出来たら拡張で出す?」と提案したのですが、今度は「そもそもたくさんの新マップをQA(Quality Assurance)しなきゃならないので、新生エリアのフライングまで拡張で出すのは大変なんですって!」と。

 それを受けて僕が、「まさか通常パッチで出そうと言っているの?」と聞いたら「いや、アナタが出したいと言ってるんじゃないですか!」などと漫才みたいになり……(笑)。「ならばパッチ5.3でやる?」と聞いたら「よりによって5.3ですか」みたいな反応をされ……。

 そんなやり取りを経て5.0(漆黒のヴィランズ)の開発が終わった直後くらいから計画を立ててコツコツと進めてきました。やはり飛ばせてあげたかった大きな理由としては、新規で始めたプレイヤーたちが空を見上げたときに、先輩たちが飛んでいる姿を見ることで、よりやる気を出してもらいたいなと。「あ、この世界って飛べるんだ!」と思ってもらいたかったんです。

――なるほど。それはたしかに感動すると思います。

吉田:これまでは“蒼天編”エリアまで進めないと、飛ぶことができませんでしたからね。ですが“新生編”エリアでレディバグを狩っていたら先輩ヒカセンが空から舞い降りてきたり、急に空に舞い上がっていく姿を見たりすれば、「早くこの世界の空を自由に駆け巡ってみたい!」と強く意識されると思っています。

 あとはフライングマウントに慣れた先輩ヒカセンたちにとって“新生編”エリアのフィールドは移動が遅いので、どうしても足が遠のいてしまうんです。飛べるようになればスクリーンショットを撮りに行くなど頻繁に足を運べますし、いろいろな遊びができるようになると思います。

 制作の苦労はメチャクチャ多かったのですが、開発チームも覚悟を決めて対応してくれたおかげで、実際に飛べるようになるとやっぱりすごく気持ちいいですよ。ぜひ大空の旅を“新生編”エリアでもお楽しみください。

今後のアップデート間隔は従来のペースに戻る自信あり!

――パッチ5.3以降は新生7周年を迎え、“ファンフェスティバル2020-21”などのさまざまな展開が予定されていますが、『FFXIV』としての今年の展望などをお聞かせください。

吉田:今回の新型コロナウィルスの影響は開発チームにとっても大きく、世界中がそうだったようにぽっかりと失ってしまった期間にはなってしまっています。ただ、僕らとしては転んでもタダでは起きない精神でして、ならばこの2カ月をどう捉えるのかというと、強制的ではありますが“今のうちに進化しなさい”と言われた2カ月だと捉えています。具体的には、世界中のどこにいても『FFXIV』の開発・運営ができるということにチャレンジした2カ月だと思っています。

 事実、すでにそれが90%以上達成できていて、今日も在宅勤務が続いているためほとんどのスタッフが会社にいません。どうしてもリリースが当初の予定から2カ月弱遅れた形にはなりますが、今後のパッチ5.3以降のメジャーアップデートのパッチ間隔については、もともとの3.5カ月間隔……もしかするとQAの効率が落ちているのでプラス1週間くらいは延びるかもしれませんが、いつも通りの感覚でパッチをリリースできる自信はあります。

 「全体としては2カ月弱いろいろなものがズレるのか……」、と残念に思われる方もいらっしゃるでしょうが、そこはお待たせしたぶん、プレイヤーのみなさんに品質や内容で、しっかりお返ししていければと思っています。僕は“失ってしまった期間を取り戻そう”という考えはよくないと思っていて、この2カ月は今の在宅環境を作っていくためだったり、メンタリティを修正していくために使った期間でしたので、何もしていなかったわけではないんです。

 だからそれを無理やり元のタイムラインに戻そうとすると、どこかに絶対ひずみが生まれてしまいます。例えばパッチのボリュームを下げてメジャーアップデートの間隔を急ぐといったことをすると、コンテンツのボリュームは減ってしまいます。

 または、予定していたメジャーアップデートの回数を落とす、みたいなことをすると、それこそ本当は作る予定だったコンテンツをなくしてしまったり、本当は伝えなくてはいけない物語を端折ったりすることになってしまいます。

 それは長い目で見たときに、良いことではないと考えています。僕らは僕らなりに『FFXIV』の開発クオリティを上げるために転じた2カ月でした。それは今後のパッチでお返ししていけば良いので、取り戻そうとするのではなくて、そのまま全体をスライドするようにして、このあとの間隔・テンポをきっちり元に戻すことが大事じゃないかなと。

 だから未発表ではありますが、もし次の拡張パッケージがあるとしたら「いつも発売されているタイミングから2カ月くらいはズレるんだろうな」くらいにイメージしておいていただければなと。一方で、パッチ5.4がこれまで以上に実装まで4カ月半、5カ月空くといったことはもうないので、そこはご安心いただいて大丈夫だと思います。

 ファンフェスについては、北米のサンディエゴを一回中止というかバラして、「あらためて2021年に仕切り直します」とお話をさせていただきました。日本と欧州についてはまだギリギリ動静を見ているという状況です。ただ、もう判断の限界ギリギリなので、あと数週間のうちには決断しなくてはいけないくらいになってきています。

――となると次のPLLくらいには、何かしらの発表があると?

吉田:そうですね。お知らせするならばやはりそのタイミングがいいかなと考えていますので、それまでにはなんらかの結論を出す必要があると思っています。皆さんにとっては航空券などの予約がありますし、僕らもチケットの販売、抽選などがありますから。

 開催を年末と考えると準備期間の限界が近い。しかし、強引に発券してお金をいただいてしまってから中止になると、お互いにとってもダメージになるので、本当にギリギリのタイミングですね。

 ただ、大事なのはプレイヤーの皆さんと、僕ら開発・運営チームが『FFXIV』というコンテンツを使ったお祭りを一緒に楽しむことだと思っていて、安全に不安があるとか、心の底から楽しめないという状況下で開催するのはファンフェスじゃないよな、と思っています。

 だとすると、開発環境が強制的に進化を促された2カ月だったとすれば、やはりファンフェスのあり方とか、ファンフェスの見せ方とか、ファンフェスの楽しみ方も同じように進化する必要があるんだなと思っています。

 これまでの『FFXIV』のファンフェスは、僕らも見ているだけというよりは参加してもらってこそのファンフェスだと思っているので、いろいろなアクティビティを置いて参加してもらうという形をとってきました。

 ですが今の状況ではソーシャル・ディスタンシングを守って並ぶとか、プレイしたあとにコントローラを消毒してからでないと渡せないとかなると、同じやり方ではまったくダメですよね。だから発想の転換で、やはり“新しいファンフェスの楽しみ方”を模索していく必要があると考えています。それらも踏まえて、今はギリギリの判断をしようとしているところです。

――どんな形になるにせよ、ファンとしては楽しみにしています。これからパッチ5.4、5.5とありますし、新たな拡張パッケージや新ハードに関する発表も期待したいです。そういえば、先日SIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)さんが発表したPlayStation 5の配信映像で、最後に吉田さんも映ってらっしゃいましたね(笑)。

吉田:あれは急遽ご依頼をいただきまして……。「ご協力はさせていただきますが、僕は何か発表しているわけじゃないし」とお返ししたら「それでも!」と仰るので。

――となるとPS5への対応については、追々わかってくるような感じでしょうか?

吉田:今言えることは何1つなくて……あ、でもPS4のときは……聞かれてもいないのに、いきなりE3(2013年)で発表したんだった(笑)。ローンチトレーラーのラストに“2014 PlayStation 4”って書いていましたね。

――でした(笑)。

吉田:僕としては全然変わっていなくて、いろいろなデバイスで『FFXIV』をプレイしていただきたいと思っています。ただ今の新型コロナウィルスへの対応の状況を考えると、開発のパッチラインをまず戻すことが最優先です。

 あとはやはり契約面も、当時『FFXIV』がPS3版で契約したときの状況とちょっと違いますし、市場を取り巻く状況ですとか、『FFXIV』が持っているパワーもまた違います。あのとき契約を結ばせていただいたSIEさんの考え方、トップも変わっているので、そこのすり合わせからしていかなくてはいけません。

 これはマイクロソフト(MS)さんも同じで、フィル・スペンサーさん(MS Gaming エグゼクティブ バイスプレジデント)とも、何年にもわたって話をしています。MSさん的には「バッチリ、いつでも明日にでもサービス開始して!」みたいなテンションなので、とてもありがたいことです。

 といったように、いろいろな方とお話は続けていて、次の世代に向けて『FFXIV』という遊びが、いろいろな場所で遊べるようにやっていこうと考えています。何かお知らせできる状況になったら、当然ながらまずはプレイヤーの皆さんにお知らせさせていただこうと思います。きっと何かあるんだろうな、とお待ちいただければと思います。

――最後にまったくの余談で恐縮ですが、吉田さんは今後ヒゲを伸ばされるんですか?

吉田:剃るのもめんどくさくなってしまい、ちょっと……迷走している感が(笑)。この前「吉P散歩」で披露したら、存外好不評が分かれていましたね……。でもSNSを見ていると「別にヒゲもいいじゃん」と言っている方もいて。女性かしら? という方からは、ヒゲの評判はそれなりによくて、男性陣からは「全然似合わねーから早く剃れよ」みたいな。

一同:(笑)

吉田:だから、気にして剃ったら剃ったで、何か負けた感もありますし……。なんかどうしようかなと迷走していますね。

――次のPLLでどうなっているか楽しみにしています(笑)。

吉田:右半分剃って左半分残すもありだし、上だけ剃って顎だけ残すもありだし……というのを考えていたら「何を考えているんだ俺は!?」となって、そのままにしています(笑)。

(C) 2010 - 2020 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
LOGO ILLUSTRATION: (C) 2018 YOSHITAKA AMANO
※ゲーム画面はPS4&PC版のものです。

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: MMORPG
  • 発売日: 2019年7月2日
  • 希望小売価格: 4,200円+税

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ(ダウンロード版)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: 4,200円+税

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Windows
  • ジャンル: MMORPG
  • 発売日: 2019年7月2日
  • 希望小売価格: オープン

ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ(ダウンロード版)

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Windows
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
  • 価格: オープン

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  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Mac
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
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  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応機種: Mac
  • ジャンル: MMORPG
  • 配信日: 2019年7月2日
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