【おすすめDLゲーム】『シロナガス島への帰還』はスゴ腕探偵とコミュ症少女が挑むミステリーアドベンチャー

　ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回はPCで配信されている『シロナガス島への帰還』をお届けします。

傑作アドベンチャーが、またひとつ生まれた！

　TABINOMICHIから配信中の『シロナガス島への帰還』。アドベンチャーゲームをプレイしていると、数年に1度、先が気になりすぎて寝るのも忘れて遊んでしまう作品に出会います。本作はまさにそんな作品でした。

　500円という低価格で発売されているため、サックリと終わる短編を想像されるかもしれません。しかし、しっかり10時間ぐらいのボリュームがあり、シナリオの完成度も非常に高いです。自分はフルプライスのゲームをプレイした満足感、もしくはそれ以上に感じました。正直、これで500円という値段はおかしいと思います（苦笑）。

　本作は絶海の孤島“シロナガス島”を舞台にしたミステリーアドベンチャー。ニューヨークで探偵業を営む男・池田戦（いけだ せん）と、一度見たものは絶対に忘れない能力を持つ少女・出雲崎ねね子（いずもざき ねねこ）が、孤島の洋館で起きる殺人事件の謎を解いていく内容になっています。

　殺人事件は生きながらに全身を燃やされて殺されているものなど、かなり凄惨。閉鎖された逃げ場のない洋館というシチュエーションも重なって、かなり怖いです。まさに夏にプレイするにはピッタリ。

　本作は作者の鬼虫兵庫さんが個人で制作しているアドベンチャーゲームですが、鬼虫さん自身が小説家ということもあり、シナリオ部分は秀逸に感じました。プレイヤーが自然と違和感を覚えるようなシーンを作っておき、それを後からキレイに回収するテクニックや、緊張感を演出するテキスト、キレのいいギャグシーン、シナリオにさりげなく入る雑学の圧倒的な多さなど、飽きせず読ませるための工夫がしっかり仕込まれています。

池田とねね子のテンポのいい会話にハマる！

　主人公・池田は過去に何度も修羅場をくぐっている探偵で、その頭脳や経験で不測の事態に冷静に対処していきます。世の中にはさまざまな名探偵が存在しますが、池田もそんな名探偵に負けない魅力を持ったキャラクターになっています。

　また、それ以上に魅力的なのがヒロインのねね子。不健康でコミュ症で天才と、特定のユーザー層に見事にぶっ刺さりそうなキャラクターですが、もともと、この属性に興味がなかった人でもハマってしまうぐらいにいいキャラクターをしています。

　そして、このふたりの会話がかなりおもしろい！　無理して強がったねね子に対して池田さんがそっけないことを言い、すぐにねね子が謝る展開など、会話のテンポがよく、思わず笑ってしまいます。

　その他のキャラクターに関しては、推理ミステリーなのであまり深くは語りませんが、いわゆる“捨てキャラ”みたいなものはいません。物語に登場する意味を全員が持っています。物語が進むと意外な一面が明かされるキャラクターが多く、そういったギャップも注目です。

　物語についてネタバレなしで紹介すると、本作は連続殺人の謎を解く、いわゆるオーソドックスなミステリーではありません。後半はかなり壮大なストーリーとなり、超常的な展開にもなっていきます。ここはもしかしたら評価の分かれるポイントかもしれませんが、推理ミステリー部分とエンタメ部分は切り離されているので、その点は安心してください。

　後半はホラー要素も強く、ビックリさせて驚かせるようなものも増えるので夜にプレイしないほうがいいかも（苦笑）。

ただ読むだけではない、緊張感のある展開も

　ゲームはテキストを読みながら選択肢を選んだり画面をクリックして気になるところを調べたりするオーソドックスなタイプ。

　ただ、蛇に噛まれたキャラクターのために解毒を見つけたり、爆弾を解除したりと制限時間付きのイベントもあり、プレイヤーを飽きさせない工夫がされています。バッドエンドも多いのでマメにセーブしておくことをオススメします。

　本編クリア後にはエクストラシナリオがプレイ可能に。女の子の水着シーンやオカルト風味のホラーなど、本編とは違った雰囲気の物語を楽しめるようになっています。

　本編以上に作者が好きなものを詰め込んだことがわかる内容。特に、ねね子の水着シーンは必見です。ヒロインのワキ毛とか新しすぎる……。

　個人的に本作は数年にあるかないかの傑作ノベルアドベンチャーだと感じました。500円という価格も魅力ですが、それとは関係なく多くの人にプレイしてもらいたい作品です。そして、ぜひとも本作をシリーズ化してほしい……！