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『A Fisherman's Tale』レビュー。3つの空間を使ったマトリョーシカパズルはVRならではの新感覚【電撃PS】

まさん
公開日時

 Vertigo Games B.V.から7月4日に配信されたPS VR専用タイトル『A Fisherman's Tale』

 本作は入れ子構造のようになった特殊な小屋で、アイテムを駆使しながら謎を解いていくチャプター形式のパズルアドベンチャーです。

 今年のはじめには海外のPS StoreやSteamなどで配信されていますが、各ストアとも評価は非常に高く、VRを利用したパズルとしても斬新なタイトルとなっています。
 
 今回は日本での配信を記念して、本作をプレイした担当ライターによるレビューをお届けします。

VRでしかできないマトリョーシカな空間

 VRゲーム担当としてさまざまなタイトルに触れてきましたが、本作は遊んでいて本当に驚くことばかり。VR慣れしていたと思っていたのに、まだまだ驚けることがあるんですね。

 VRのパズルはこれまでにも多数ありましたが、本作は“VRでしかできない”視点と演出を巧みに利用しており、空間を利用した謎解きがとにかく素晴らしいのです。見た目こそ普通の探索アドベンチャーやパズルに見えるかもしれませんが、まったく違います。

 何がすごいのかと言っても一口には伝えにくいのですが、一番に驚いたのは舞台そのもの。小屋のなかにあるミニチュアとフィギュアを見下ろす自分と、自分をさらに外側から見下ろしている巨大な自分。

 空間自体がマトリョーシカのように二重にも三重にも広がっていく構造は、現実だと絶対に体験できない感覚です。

 さらに、世界の構造が入れ子になっているだけではなく、そこに干渉できるのもポイント。本作ではプレイヤーがいる小屋と部屋の中にあるミニチュアが同じ構造をしており、どちらにある物体を動かしても連動して物が動きます。

 自分自身がいる世界を切り取って神の視点から干渉するようなプレイ感は、ほかに例えようがない新しさ。これだけで遊ぶ価値があるのではないでしょうか。

 もちろん、パズル作品としてもよくできています。ミニチュアと現実の空間が連動していることを利用して、謎を解いていくのは純粋にワクワクしますよ。

 ミニチュアの椅子を動かせば部屋の中の椅子も動き、逆に部屋の中の机を動かせばミニチュアの机も動く。現実では大きくて動かせないものでも、ミニチュアのほうを動かせば楽に移動できてしまうんです。

 違う空間を利用して、自分がいる空間に変化をもたらす。かなり突出したアイデアで構成されたパズルです。

  • ▲窓から見える海の風景など、ムービーとゲームの合わせ方にも感動。ちょっとした演出が効いています。

 また、チュートリアル部分も非常に親切です。操作説明の時点からパズルが始まっており、自分で動かしていきながら自然に本作のルールを覚えられます。

 ゲームの感動を損ないたくないのであまり言いたくはないのですが、この世界の構造に気付く瞬間が本当に秀逸なんですよ。

 操作を把握して窓を開き、外にいる巨大な自分を見つけた瞬間。振り返ってミニチュアの動きを見た瞬間。世界の構造を一瞬で理解して、VRの新たな可能性に気付かされました。 

 VRを被って世界に入り込んだはずなのに、窓の外を見れば巨大な存在が自分と同じ動きをしているし、小屋に視線を戻せば小さな自分がこれまた同じ動きをしていて、脳がだまされるような不思議な感覚が襲ってきます。

 試しにミニチュアの屋根をはずしてみると、外側にいる巨大な自分が屋根をはずしている……。自分がミニチュアに起こした行動を自分自身が体験するゾワゾワ感は、言葉では言い表せません。

 自分よりも小さいミニチュアを見降ろし、逆に自分自身がミニチュアのように見下ろされている奇妙な感覚。自分自身が入れ子のなかの1つであるという状況を体験できる貴重なゲームです。

 プレイヤー自身が巨大なパズルの中に組み込まれ、自分自身をギミックにして謎を解いていくというパズルとしても新しい体験なのですが、アイデアだけの1発勝負ではありません。外側、自分の空間、ミニチュアと3つの空間を利用したダイナミックな謎解きが本作のポイントですね。

 ……これ以上語ってしまうと本当に野暮になってしまうのですが、レビューなので語らせてもらいます。

 気になる人は、ここで引き返してすぐに自分で遊んだほうがより感動できると思います。それくらい、本作のギミックは斬新なんですよ。ただ、空間をまたぐだけではないのです。

 サイズ差を利用した謎解きの数々は、思わずうならされるものばかり。自分と外側、ミニチュアのサイズ差を利用してアイテムを動かすのが楽しいんですよ。

 たとえば、自分の空間では大きすぎる物体でもミニチュアのほうから取り出すと適切なサイズになっていたり、逆に小さすぎる物体を小屋に持ち込んで外側から取り出してみたりと、3つの空間を利用した解法はスゴイの一言。

 あまりにも新しすぎるパズルなので、最初は戸惑うかもしれません。しかし、これがVRと完全にマッチしているんですよ。

 3次元の世界をフルに使って謎を解く知的な喜びが味わえて、こういうパズルがあったのかとびっくり。悩むときは本当に悩みますが、解けたときのうれしさは最高です。

 あえて残念な点をあげるなら、現時点だと日本語化されてないこと。とはいえ、ゲーム自体はパズルなので感覚的に遊べます。コントローラーの動かし方も図で示されるので、英語がわからなくてもチャレンジしてみましょう!

広い場所を確保して没入しながら遊びたい1本!

 あと本作を遊ぶうえで注意したいのが、PS Move2本が必須なことと、スペースは広めに確保すること。

 PS Moveを両手に見立てて操作するので、通常のコントローラーでは遊べません。PS MoveはPS VRを遊ぶなら持っておいた方がいいのでこの機会に揃えてしまいましょう! 

 広い空間の確保も必須とまではいかないのですが推奨です。自分は編集部で遊んでいたのですが、気が付くと座っていた場所が大きくズレていました。ああでもない、こうでもないと熱中して謎を解くので周囲に気を付けて遊びましょう。

 本作では行きたい場所を指定するワープ移動になっているので、体自体を大きく動かすわけではありません。しかし、周囲を見渡すパズルの特性上、知らず知らずのうちに動くことが多いのです。

  • ▲高所にあるものを取ったり、アイテムを使ったりする場面も。見た目以上に、空間を広く使うゲームかもしれません。

 とはいえ、なるべく上下に動かないようにするためのフォローもあります。たとえば、アイテムを地面に落としてしまった場合でも、しばらく待つとその場で復活するので拾う必要はなし。

 カメラのトラッキングの関係上、コントローラーを下側に動かすのが厳しいときもあるので、これはありがたい配慮ですね。
 
 見どころはまだまだあるのですが、これ以上語ってしまうとネタバレになってしまうのが困りもの。パズルとしての新しさだけでも遊ぶ価値のある作品ですし、VRタイトルとしても挑戦的なので、ぜひ一度遊んでみてください!

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