『MS Flight Simulator』満を持して発進! 圧倒的に美しい地球の全空域を思いのままに飛び回る──

アツゴロウ
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 多彩な航空機のパイロットとなり、大空や大地、天候といったすべてがリアルに表現された世界を自由に飛行できる『Microsoft Fligh tSimulator』。MicrosoftよりPC版がいよいよ8月18日(火)に発売され、XboxOne版も今後の発売が予定されています。

 今回は、本作の発売に先駆けて催された、オンライン上でのプレス向けプレゼンテーションの内容をレポート。最先端の技術の粋を尽くして作られた本作の魅力や、今後の展開についてお伝えしていきます。

そもそも『Microsoft Flight Simulator』とは?

 『Microsoft Flight Simulator』は、PCのエンタメ市場における最長のフランチャイズの1つで、なんとWindows OSやofficeよりも先行して開発が進められてきたもの。第1作の1982年度版が発売されて以降、さまざまな面をパワーアップさせた新バージョンが作られており、本作はその第11作目にあたる2020年度版です。

 最新版である本作は、地球全土を3Dの地形モデルとしてゲーム内に再現。そこには3万7000の空港、15億棟の建物、2兆本の木々が存在しており、すべてリアルなグラフィックで表現されています。

 そんな世界を飛び回る航空機は20種類、手作業で精密に作られた空港も30と、バラエティに富んだものが登場(航空機、空港ともにスタンダード版の数。デラックス版は各+5、プレミアムデラックス版は各+10追加)。

 プレゼンテーションではさまざまな航空機の飛ぶ姿や、眼下に広がる雄大な自然とビル群、一人称のパイロット視点などの動画が公開され、その映像美は思わず息の飲むほど美しいものでした。そのクオリティは、まさしくフライトシミュレーターの極致といっても過言ではないでしょう。


開発のキーマン3人によるプレゼンテーションがスタート

 プレゼンテーションに登檀したのは、本作の開発のヘッドを務めたMicrosoftのJorg Neumann氏、開発を担当したフランスのデベロッパー・AsoboStudioのチーフエグゼクティブオフィサーのSebastian Wloch氏、同じくAsobo Studioの共同創業者兼リードソフトウェアエンジニアのMartial Bossard氏の3人。最初にJorg氏が本作の概要について語り、そのあとでSebastian氏とMartial氏が交代で4つのプレゼンを行いました。

 Jorg氏は前作にあたる2006年版が出たあと、14年経った今になってなぜ最新版がリリースされるのか? という質問を周囲からよく受けたといいます。その問いに対する答えは「今が最適なタイミングだから」とのこと。

「『Microsoft Flight Simulator』というフランチャイズを定義する4つの柱、“リアル感”“正確性”“飛行の真実性”“自由”。これらを高いレベルで実現できるだけの状況が今ここにある」とJorg氏は続けます。

 これは、ハードウェア・ソフトウェアを含めたテクノロジーの向上だったり、以前は不可能だったことを実現可能にするツールの充実であったり、多種多様なデータを提供してくれた飛行機メーカーやデータプロバイダーとの提携関係だったりと、いろいろな状況が本作の開発に適しているということ。そして、いざ新しい『Microsoft Flight Simulator』を作ろうとしたとき、肝心のゲームエンジンをどうするか検討したといいます。

 そこで白羽の矢が立ったのは、動作や音声認識で操作を行う『Kinect』や、ヘッドマウントディスプレイ『HoloLens』の開発に協力した、フランス・ボルドーのAsobo Studio。以前から革新的な技術を扱う評判と願望を持っていたデベロッパーで、彼らのゲームエンジンが使われたPC用のレースゲーム『Fuel』は、“世界で最も広いプレイ環境を持つ家庭用ゲーム”としてギネス記録に認定されており、そのあたりの実績も選ばれた理由でした。

 こうしてAsobo Studioをパートナーに、本作の開発は本格始動していったわけですが、そこにはさまざまな新技術の開発や思考錯誤があったようです。詳細についてはこのあとの4つのプレゼンで語られました。

2つのサービスが可能にしたリアルな地球の再現

 今は、数百機の人工衛星が地球を回り、数千機の航空機が頭上を飛び回る世界です。人工衛星から地球の地形はスキャンされ、航空機からは空中写真や天候といったさまざまな情報が抽出され、本作の開発に生かされているとSebastian氏は語ります。その要となるのが、Microsoftが提供するクラウドサービスの集合体“Azure”や、地図情報サービス“Bing Maps”とのこと。

 “Bing Maps”には地球を精密に再現するのに役立つ2ペタバイトものデータが保存されており、これが“Azure”によって低レイテンシー(少ない遅延)で世界中のユーザーのもとに届けられ、地形やグラフィックの更新を実行。

 さらに“Azure”は、AIによる地形の特徴の検出や、それをもとにした地形の自動生成プロセッサの実行にも使用されます。これによりゲーム内の地球は、何度も更新を重ねて、地形も建物も自然も、より現実の地球に近いものになっていくのだと語られました。

 ほかの新技術では、世界中の照明光源の色温を細部に渡って調整。町の中心地の光は明るく、木々に隠れた街灯の証明はやや暗くするなど、状況にあった調整を行うことで、パイロットが視覚情報を得られやすくしているとのことです。ほかにも水際の表現や空港の滑走路の凹凸など、あらゆる部分をリアルに近づけることで、飛行への没入感がアップ!

 なお、そんなリアルな風景を自由に撮影する“ショーモード”も存在するとのこと。ただ世界を飛ぶだけでなく、美しい風景を楽しみ、撮影し、ほかのユーザーと共有することもできるようです。

リアルな飛行体験を可能にする空と天候へのこだわり

 次に語られたのは、空の表現へのこだわりです。空が正確で現実的でなければ、パイロットは飛行のリアル感を味わえない、というのがこだわった理由とのこと。そのために、まったく新しい大気シミュレーションと気象システムが構築されました。

 Martial氏が言うには、天候はリアルタイムで変更でき、細かい情報もプリセットで調整可能。何も手を加えず、時間とともに変化していく空の様子を楽しむこともできるとのことです。

 もちろん、雲や雨の様子はリアルに再現され、雨などは周囲の風やプロペラの動きの影響まで計算されて地表に降ります。また、降雨時間に応じて地表は濡れ、乾くまでそのままに。雨のあとに虹が自動生成されたりすることも明かされました。


 風は高度によって向きはもちろん風力も異なり、それによって飛行状況も変化。風になびく草原や波の様子も見ることができるとのことです。また、天候だけでなく昼夜や季節の概念もあり、太陽の位置で影の付き方も変化。夜になりライトアップされた街並を上空から眺める、といった楽しみもありそうです。

気流や衝突時の状況もシミュレートして航空機の挙動がよりリアルに!

 航空機は外装が本物と同じであることはもちろん、挙動までリアルに再現されてこそユーザーの納得する飛行体験になります。そのため、新しい空気力学のシステムをAsobo Studioが構築。航空機の表層に1,000以上もシミュレート可能な部分を作り、それぞれの箇所に働く力を計算することで、リアルな挙動を再現したとSebastian氏は語りました。

 曲技用の航空機も、実際に曲技ができるよう、翼にかかる揚力などを個別に計算。すべての航空機が100%物理的に正しくなるように設定したとのことです。また、空中でのリアルな挙動を極めるべく、気流のシミュレートも実行。

 山や谷などの複雑な地形に際して気流がどう流れ、それによって航空機にどんな影響が出るかを計算。乱気流に入るとどんな挙動になるのかも、リアルに体験できるようです。

 乱気流に巻き込まれるときもそうですが、何かに衝突したときなど、トラブル発生時の状況もリアルにシミュレート。機体が破損するような表現はないものの、パイロットの視界は暗転し、衝突時の挙動に対処することになるようです。そんな状況での胴体着陸や着水、離水といったアクションも行えるとのこと。

コックピットはデザインから計器類に至るすべてを再現!

 次はコックピットについて、Martial氏が語りました。本作ではパイロットの頭の動きの計算を実装し、慣性による影響も取り入れたことでカメラがパイロットの視点に近付く仕様に。コックピットのレイアウトは機体ごとのものを再現するのはもちろん、1つ1つの計器の指針の挙動までシミュレート。日光などが当たって計器が読み取りにくくなるなどのリアルさも表現しているとのことです。

 計器類は対気速度、高度系、鉛直速度計、油温計、油圧計など、すべてが装飾品ではなく、実際の数値を計測した信頼に足る計器そのもの。自動航行システムを制御するモッドコントロールパネルなど、多機能な制御装置も再現しているとのことです。ほかにも、レーダーコリジョンなどの最新機器や無線機、3D気象レーダーなど、あらゆる計器類を再現。

 プレゼンの終わりには、自動操縦によるフライトシーンの動画が公開されました。静かなフライトでも機首からの微妙な動きがあり、風景を見るだけでも楽しめそうな感じ。フライトシミュレーターとしての可能性を見せられた思いでした。

進化を続けるフライトシミュレーターのプラットフォームとして要注目!

 最後にJorg氏が、本作の今後の展望について語ってくれました。それは、本作がただのゲームではなく、今後も拡張していくプラットフォームであるということ。これまでデータ提供などをしてくれた人々とのパートナーシップを継続することはもちろん、コミュニティとも連携し、何か情報があれば素早く公開していくとのことです。

 またJorg氏は、サードパーティやクリエイターの参加も歓迎。そのための3つのSDK(ソフトウェア開発キット)もゲーム内で提供していくとのことです。具体的には航空機エディッタ、風景エディッタ、ミッションエディッタの3つで、航空機も風景もミッションも自由に作り、本作のコンテンツとして追加することができるようです。

 ほかにも没入感がさらに増すVRへの対応など、フライトシミュレーターファンの心をくすぐる発表が続出。進化を続けるプラットフォームとして、本作のプレイを楽しむことはもちろん、今後の展開からも目が離せません!

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Microsoft Flight Simulator

  • メーカー:Microsoft
  • 対応機種:PC
  • ジャンル:フライトシミュレーター
  • 発売日:2020年8月18日
  • 価格:スタンダードエディション7,450円+税、デラックスエディション10,700円(税込)、プレミアムデラックスエディション13,100円(税込)

Microsoft Flight Simulator

  • メーカー:Microsoft
  • 対応機種:XboxOne
  • ジャンル:フライトシミュレーター
  • 発売日: 発売日未定
  • 価格:価格未定

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