『テイルズ オブ アライズ』富澤祐介Pインタビュー。今、このブランドに必要なものとは?

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 ついに発表された『テイルズ オブ』シリーズ最新マザーシップタイトル『テイルズ オブ アライズ』。2020年発売予定の本作は、シリーズらしさを継承しつつも、水彩画風のビジュアルやスピーディなアクションバトルなど、革新的進化を取り入れた意欲作です。

 E3 2019で第1報が公開されたのち、6月15・16日に開催された“テイルズ オブ フェスティバル 2019”では、主演声優やイラストレーター・岩本稔さん、アニメーション制作をufotableが手掛けるなどが追加発表され、会場は興奮に包まれました。そこで注目度急上昇中の本作の姿を、プロデューサーを務める富澤祐介さんへのインタビューでひも解いていきます(※このインタビューは6月15日に実施したものです)。

  • ▲『テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER』から『テイルズ オブ』シリーズのプロデューサーとして活動している富澤祐介さん。ほかには『GOD EATER』シリーズ、『CODE VEIN』のIP総合プロデューサーも務める。

世界同時発売を見据えたプロモーション戦略

――ついに待望のマザーシップタイトル最新作『テイルズ オブ アライズ』が発表されました。ファンから大きな反響があったと思いますが、その反応を見ての率直な感想をお願いします。

富澤さん:タイトルは先日のE3で発表させていただきましたが、海外にいながら日本のファンの方の反応も気になっていました。じつは今回から、テイルズチャンネル+ブログや私のTwitterなどでも情報を発信させていただく形をとっています。そういった形でいつでも情報を収集できるので、E3での発表後は朝までSNSでの反応などを見ていました。気がついたら朝の5時……という感じで、ずっと時差ボケの生活でしたね(笑)。

 そういったSNSを通した情報収集も含め、日欧米から幅広い反響をいただいたなというのが率直な感想です。PVをご覧いただいた純粋な反応としては、グラフィックの進化への反響ですね。『テイルズ オブ』らしさがありつつも、進化をしているとお伝えしたいという大きな狙いがあったので、ややほっとしている部分があります。

 PVではシリーズの伝統の継承と進化、この2つをしっかりやりますというメッセージを込めさせていただきました。「私の好きなこの部分はどうなるのか」という具体的な質問から、ゲームの概要からイメージにわたる部分まで、さまざまなご意見をいただいておりますが、今はまだ発表できない情報もたくさんありますので、これからの情報公開をお待ちいただければと思っています。

――E3での発表を優先したあたり、海外市場を強く意識して作られているのかなという印象を受けましたが?

富澤さん:まずはコミュニケーションの部分を変えるべきなのかなと考えています。これまではまず日本の媒体で発表して、同時に発売するタイトルなのに海外では1カ月後くらい遅れての発表でした。これはコミュニケーション設計の問題や情報の出し方、ローカライズなど細かい集積がある影響でもありますが、海外の方も含めて一緒に楽しめなかったんですね。『テイルズ オブ シンフォニア』の発売以降、海外にも熱いお客さんがいるのがわかっていました。

 とくに『テイルズ オブ ヴェスペリア(以下TOV)』のPS3版は海外では発売されていませんでしたので、彼らの声に応えようと考えまして、去年のE3のMicrosoftカンファレンスを皮切りに『TOV REMASTER』として、PS3版を含んだリマスター版として発表させていただきました。

 そこで大きな応援と反響をいただいたこともあり、今回の『テイルズ オブ アライズ』での発表の参考にしています。『テイルズ オブ アライズ』も世界同時発売を目指しますし、プロモーションを展開する場合も、ときには海外で先行したり、日本向けの情報は日本先行で公開したりと、世界中でバランスよく発表していきます。

 今やSNSを使って世界中で情報を共有できますし、今回のインタビューも即発信されていく状況が前提にはなりますが、お互いが情報を取り合うことで、それがコミュニティとして機能できることをイメージできるといいなという思いがあります。

 今回のPVでは、シリーズファンにとって、今までとは異なるアプローチをしていると感じられると思います。しかしながら、今までとガラっと変えてしまうことは求められていないのは承知していますので、キャラクター表現に特化したシェーダーを独自で開発しまして、Unreal Engine4を使用しながらも『テイルズ オブ』らしいキャラクター表現を感じさせる、しっかりファンの方が安心できる“延長上の進化”をお伝えできたと思います。

――日本も海外もファンが求めている要素にあまり差はない感じでしょうか?

富澤さん:キャラクターIPという部分での“ファン”という意味では同じですね。常々海外イベントなどにも行かせていただいていますが、どんな人種であれ言語であれ、源泉は一緒だなと感じています。それこそアニメ・エキスポに行くと、『テイルズ オブ』シリーズのコスプレをされている方もいますし、キャラクターへの愛情は同じ目線だったり、同じ目の輝きだったりと、そこにエリアでの違いはないですね。ただ、ゲーム性という部分での見方は少し違います。

――今回“テイルズ オブ フェスティバル 2019(以下テイフェス)”で声優さんを発表することにしたのは、やはり日本のファンが声優さんの情報を待っていると考えたからでしょうか?

富澤さん:そうですね。毎年この時期はE3があり“テイフェス”があるという流れがあるのがわかっていたので、E3ではまず世界観とゲーム性を紹介しつつ、“テイフェス”では具体的なキャラクターの詳細を発表と、二段構えでいこうと最初から考えていました。

 日本のユーザーさんはキャラクター情報を待ち望んでいるのはわかっていたので、盛り上がってほしいという思いもあって、この場での発表を選んだ形です。ゲームが発売されたら、今後の“テイフェス”にも本作のキャラクターが登場するでしょうし、E3で発表されたビジュアルのキャラクターたちがはたして“ファミリー”になることができるのか、そういった感覚でみなさんも期待と不安を持って今日を迎えられたのではないでしょうか。

――たしかに会場でキャラクター名と声優さんが発表されたときは、会場からは悲鳴に近い歓声が上がっていましたので、そこは狙い通りだと感じました。主人公のアルフェンを佐藤拓也さん、ヒロインのシオンを下地紫野さんが担当されますが、キャスティングの基準や狙いなどがあれば教えてください。


富澤さん:今回もこれまで同様に、相当な数の候補からオーディションを行いました。チームの総意として選びましたが、そのキャラクターで表現したいことを表現しきってくださる方という視点でという点は、今までのスタンスと変わらないと思います。あとは“テイフェス”でのステージを見据えて、という面もあります。声優さん含めてキャラクターを愛せるということが、ユーザーさんから求められていますし。ここも今までと同じですね。

――ちなみに、海外での販売比率はそれこそ日本と同じくらい、またはそれ以上となってきています。そのなかで、例えばLGBTのような表現など、その基準が日本とは少し違うと思います。そういった部分で、ワールドワイドでの販売を考えた表現の配慮などはいかがでしょうか?

富澤さん:文化の違いのように、前提となる部分をケアしなくてはいけない時代になってきているのは、『テイルズ オブ』だからではなく、すべてのゲームがワールドワイドになるにあたって取り組まなくてはいけないことだと認識しています。だからといって、これまでのデザインからガラッと変わってしまう、『テイルズ オブ』シリーズのよさがなくなってしまうことにはならないつもりです。

ブランドの“新生”を意識したからこそのタイトル

――これまでにない形で発表された本作ですが、『テイルズ オブ アライズ』というタイトルでまず驚いたのが、アルファベットの被りだと思います。

富澤さん:そうですね。我々も当然“A”が被ることは意識していまして、すでに24年、マザーシップタイトル以外にも多くのタイトルが発売され、数えると残っているアルファベットの数も少ないんですよね(笑)。もちろん、本作でもアルファベットを被らせない方向での選択肢もいろいろと考えました。

 じつは、この“アライズ”という言葉は開発コードでした。もちろん、ストーリーに対して意味を持つ言葉でもありますが、『テイルズ オブ』シリーズがこれからも継続していくために、プロジェクトとして立ち向かおうという思いを、このコードネームに込めていたという裏の経緯もあります。

 今回は世界中にマーケティングチームがいるので、それこそ何百案も考えましたが、最終的にはこの『テイルズ オブ アライズ』という言葉が、我々が目指していくべき方向と、新生していくという意志を伝えられるタイトルとして一番ピッタリだろうと決めました。本当に喧々諤々、いろいろ考えたんですよ(笑)。

 ただ、我々も言葉のパズルをやっているわけではないので、アルファベットにこだわること、我々の思いを伝えることのどちらが大事かと真剣に議論しました。それをしてでも込めた思いを伝えたいというのが、開発チーム内にはありました。私自身も議論をするなかで、その思いを強めた形です。

 あとは「アルファベットを使い切ったら、新作を作るのを辞めるんですか?」ということもありますよね(笑)。私はこの作品から本格的にブランドをまかせられたのですが、25周年がすぐ来てその先30周年、35周年と続けていくにあたり、残りを数えてつぶす作り方はしたくありませんでした。いつか被ることはあるならば、意味のある被り方をしたいし、意図をしっかりお伝えしたいなと。もちろん、今後はアルファベットを被らせない付け方をしないというわけではありません。あくまでタイトルの意味を考えて、今回はこの形をとっています。

――となると、タイトルの公式的な略称はどうなるのでしょうか? 『TOA』では『テイルズ オブ ジ アビス』と被る形になりますが。

富澤さん:タイトルの略称ですが、公式ブログやハッシュタグでもお伝えしているように、今回はタイトルを略さない『TOARISE』という形で発信させていただいています。その理由は既存のユーザーさんだけでなく、世界中のRPGファンにも新たに目を向けてもらいたいと強く感じているので、より"アライズ"という言葉を強く伝えて、定着させたいなと。

『テイルズ オブ』の略称が“TO”なのは変わりませんが、“TOA”や“TOAR”と略してしまうと新規の方に作品の意味が伝わらないんですよ。なので『TOARISE』という表記はプロデューサーとしての思いであり、狙いでもあります。「略していないじゃん」と言われるかもしれませんが(苦笑)。

――ファンにも積極的に『TOARISE』の呼び方を使ってほしいと?

富澤さん:はい。使えるときにはこの呼び方を意識していただけるとうれしいですね。もちろん、『TOARISE』と略さないとダメというわけではありません。あくまで誰にどう思いを伝えるかという部分で、今回、プロジェクトとしてはこの形をとっています。

“継承と進化”の両立を意識したゲーム作り

――そんな強い思いが込められた『TOARISE』ですが、開発を進めるにあたり共有しされているコンセプトなどがあれば教えてください。

富澤さん:本作で『テイルズ オブ』シリーズを全然別の物に変えようというわけではありません。1つはマーケティング的視点からですが、ブランドをこれから25周年、その後も続けていくにあたり、ユーザーさんも成長して、年代もどんどん変わっていきますよね。ひょっとしたら親子二世代で楽しんでくださっているかもしれない。そういったことも含めると、コミュニケーションを変えていかなくてはいけないなと考えました。

 つまり、新規のユーザーさんが入りやすい大きな窓口を、このブランドに持たせなくてはいけないと。それは私のなかでも強い意志として根源にあり、スタートラインにありました。『TOARISE』はビジュアルの雰囲気が違ったり、バトルがガラッと変わっていそうに見えたりと、何かしら変化を感じ取れるような見せ方をしています。とはいえ、どこまで変えていいのかというのは、ずっと議論していました。"継承と進化"はどちらか一方だけではダメだろうと、そこは最初に決めましたね。


――ここまでガラッと変えるのは勇気がいることだと思いますが、そこは富澤さんの判断で決められたことでしょうか?

富澤さん:そうですね。私の意見というよりは代表して「こういう声があるよね」という話はしました。ただ、モノづくりをする場合は、1つ1つの判断が必要なときも、トータルでバランスを取っていかなくてはいけないときもあると思います。個別に変えればよくても、そこを変えたからこちらを変えなくてはいけないなど、さまざまな要素を含んでのジャッジが必要です。

 実際は複雑に要素が絡み合っているので、その結果変えられないことも実際に存在しました。各要素がシリーズの歴史的にどんな状況を踏まえて、ここにいたったのか。また同時にユーザーさんの目線で見たときに、どのようにこの要素が受け入れられたから変えてはいけないのか、逆にどこを変えても大丈夫なのかと、開発チームと詳細にマッピングしています。

――ちなみに、開発スタッフを一新するからこその“アライズ”なのか、これまでシリーズにかかわれてきたスタッフはいながらも、新しいものを作ろうとされているのでしょうか?

富澤さん:新旧スタッフが総力して作っている形ですね。まだ明確に誰と誰が参加してとは、岩本以外にはお話しできませんが、『テイルズ オブ ベルセリア』のスタッフも参加していますし、じつは『テイルズ オブ ファンタジア』以来の、レジェンド級のスタッフも参加しています。

 『テイルズ オブ』シリーズをいろいろな視点から見続けてきた人が集まるだけに、「ここは変えてもいいんだよ」「ここは変えたいと思っていたんだ」など、現場にもさまざまな意見がありました。ときには意見を戦わせなければいけないこともありましたね。スタッフ全員の経験値が一緒というわけではありませんが、そういう意味では“『テイルズ オブ』はどうあるべきなのか”という部分については、それぞれが継承なり進化なりをしっかり議論して存在していると思います。そのうえで、各自の経験をしっかり形にしていくつもりです。

――富澤さんは『TOV REMASTER』でプロデューサーを務められましたが、そこでの経験が本作に生かされているのでしょうか?

富澤さん:個人的に最初に遊んだシリーズが『TOV』でして、あらためて制作側としてユーザーさんの反応を見たときに、アニメなど、まさにシリーズの伝統、ゲームデザインが今この時代でもしっかり楽しんでいただけていることは、制作するうえでの自信になりました。と同時に「これはリマスターだから」ということも意識していて、ならば新作ではどうだろうと図りながら『TOARISE』の制作を進めていたんですね。両極端なラインを走らせながら、ユーザーさんの反応を想像しつつ進めていました。

絵作りでは“らしさ”を残した進化を追及

――前作の『テイルズ オブ ベルセリア』はPS3、PS4での発売でしたが、本作ではPS4とXbox One、Steamハードになり、どこまでグラフィックを進化させるのか相当悩まれたと思いますが、そのあたりはいかがですか?

富澤さん:PS3からPS4というスペックの問題もありますし、今回はUnreal Engine4を使うという判断もあります。それまでは専用エンジンを活用していましたが、これまでに鍛え上げてきた技術と、Unreal Engine4で表現できることを天秤にかけたときに、結果としてUnreal Engine4のよさは空気感、光の表現などを表現しやすいと考えました。

 ただ、そのまま使うとリアルだけどどこかで見たような表現になってしまいますし、『テイルズ オブ』らしさを出せずに、ほかの作品と差別化ができないだろうとわかっていました。だからUnreal Engine4を使いつつも、前述したとおり、独自のシェーダー(※陰影やグラデーションを付けるプログラム)を開発しています。例えば遠景の表現はあえてつぶすような感じにして、逆に近景はディテールを増して、動画になるとより自然に変化して見えるようにしているんです。

 キャラクターはしっかり見える形で、それがあたかも被写界深度(※ピントを合わせた箇所の、前後のピントが合っているように見える範囲)のように見えるようにしています。目の前はリッチに、遠くの背景は絵画的に見えるような感じですね。そのバランスにたどり着くまでは、じつはものすごく時間がかかっています。

 最初は全体に手描き感のあるシェーダーをかけていたのですが、そうするとキャラクターがぼけて見えてしまって(笑)。開発でも「これはローディテールに見えちゃうね」「ゲーマーが見ると解像度が低いと言われるよね」などの意見が出まして、そう言われてしまうのは本意ではないなと。キャラクターを見せる方法論と、背景を見せる方法論のバランスはセンシティブでした。

 モーションを含めたこのバランスは、作りながら調整しました。そこは岩本(※岩本稔さん。本作のキャラクターデザイン、アートディレクター)を含めた描画プログラマーとビジュアルのチームが、がんばってくれていますので、自信をもって自分たちの絵作りだと言えます。

――本作は岩本さんがお1人でキャラクターデザインを担当されていますが、その狙いを教えてください。

富澤さん:世界観全体の統一性を取ることが一番の理由です。そのための方法論の1つとして、世界に合わせてキャラクターを統一するべきと考えました。キャラクターと世界観の親和性が高く、より文化レベルで語れるほうが没入感を演出できます。

 あと、岩本はキャラクターデザイナーでありながら、アートディレクションも担当しているので、常にゲームの中身をいじりながらアップデートができる点も大きいですね。そこは内部制作のメリットでもあるので、どれだけ突き詰められるかにも挑戦しています。

 このやり方はこれまでの一度完成したイラストに調整をかける方法とは違うアプローチで、実際のゲームとなじみが悪ければ「ここの色を変えよう」のような調整にもすぐに対応できます。なので、1本化して指揮をとることで、できることが増えたと思います。

――となると、今回発表されたイラストが完成するまで、内部でも相当変更があったのでしょうか?

富澤さん:そうですね。一度3Dモデルとして完成させたものも、ゲーム内に立たせてみたら「やはりここはこうしたほうがいい」など調整しています。例えばフィールドでは、キャラクターの背中を見て移動することが多いですよね。アルフェンが持つ炎の剣も、3Dモデルで剣がピカッと光って出てきたときに「あ、これはデザインとして勝ったね」と思ったのですが、「それならばこんな背負わせ方にしよう」などですね。

 ゲームに3Dモデルを載せてみて、初めてキャラクターデザインの魅力が見えてくる部分もあるんです。そのような突き詰める議論が、日常的に行われています。まあ、究極な話で言えば、岩本は両方を担当しているので、自身のなかでそれができますし(笑)。

――ちなみに、岩本さんに今回はお1人でやってもらうことをお伝えしたときの反応はいかがでしたか?

富澤さん:相当なプレッシャーだったと思います。しかも、アートディレクションも担当して、整合性を取るために世界を全部見なくてはいけませんからね。そんなプレッシャーのなか、日々監修をしてくれていますから。助かっていると言うのは変かもしれませんが、支えられていると思います。

公開情報から『TOARISE』のシステムを探る

――物語の序文には“ふたつの星の運命を揺るがす”という言葉がありますが、こちらはイメージアートの上空に浮かんでいる2つの星を差すのでしょうか?

富澤さん:いえ、違います。このイメージアートは、地表であるダナから見たレナのイメージになります。

――かなり設定的に対照的な星が舞台となるようですが、フィールドなどのデザインもそういったイメージになるのでしょうか?

富澤さん:2つの星の文化レベルはまったく違うものになっています。ダナは中世レベルの文化で魔法も使えない世界で、方やレナは魔法も科学も発達していて、文化レベルが全然違います。実際にゲーム内でどう表現されるかとなると、まったく違うものになると思います。

――PVで公開されているフィールドは、溶岩のエリアと草原のエリアがありますが、両方ともダナでしょうか?

富澤さん:このエリアがどちらの世界というのは、まだちょっとお答えしにくいですね(苦笑)。お答えできるとすれば、ダナはレナに隷属して300年の歴史がありまして、じつは文化自体も浸透している部分があります。なので、そうなると建造物であったりがダナにも移植されていることもあるのかなと。こちらのイメージアート(※草原で2人が並ぶ)も、どちらの惑星から見たイラストなのかは、いろいろご想像いただければなと。

――かなり奥行きを感じさせるフィールドの作りで、エリアはオープンワールドになるのかなという印象もありますが、本作でのワールドデザインはどんな形になりますか?

富澤さん:本作はオープンワールドではありません。マップを踏破しながら時折ダンジョンを踏破していくという、レガシーなRPGの作りを踏襲しています。ただ、オープンワールドらしいという印象を受けるような、世界の広さを感じられるという部分は、やはり世界観設定をしっかり作り込んでいるからこそ実現できていると思います。

 じつは広いマップを一度作るというアプローチも途中で試しているんですよ。そういったこともあり、目の前に広がる場所にいつか行けるというというような、ドラマ上での作りは実現できています。あとは今回のポイントとしては、フィールドの高低差をしっかり表現できている点ですね。

――今までは高台に登って宝箱を取る、というような高さでした。

富澤さん:そういったワンギミックレベルの高台とは、かなりレベルが違うものを用意できています。フィールドもこのイメージアートと変わらない形で作り込んでいます。

――例えば見上げるようなシチュエーションで、世界の広さを実感できると?

富澤さん:そうですね。あとは「あそこに城があるけれども行けるのだろうか」など、フィールド踏破に伴う発見であったり、感情だったりはすごく大事にしたいと考えています。もともと『テイルズ オブ』シリーズはそこを大事にしていると思いますが、より表現力やフィールドの作りがリッチになることで、それをさらにユーザーさんに実感していただけるのではないでしょうか。それは今回力を入れているところです。

――そういう意味では、ひょっとしたらバトルはエンカウント式でないとも予想もされていますが、こちらはいかがでしょうか?

富澤さん:どっこいエンカウント式です(笑)。PVを見るとまさに「どちらかな?」と思われたことでしょうが、本作ではエンカウント式となっています。いろいろトライアルをしたのですが、フィールドの起伏をしっかり作りたいという部分と、『テイルズ オブ』シリーズ的なパーティバトルを気持ちよく遊んでいただくという部分が、なかなかうまくかみ合わないんですね。ただ、やはり「どちらも楽しみたいよ」というユーザーさんのニーズに応えるために、今回はエンカウントを採用しています。

 レガシーのよさは持ちつつ、このバトルならではの爽快感、達成感などを味わえます。あとは『テイルズ オブ』シリーズはアクション戦闘がウリですが、アクションゲームの文法をより1歩推し進めたいなという思いがありました。

 そこでより状況に合わせたリアルタイムの選択で、自分が状況に合わせてレスポンスして戦う感覚をより強く感じられるバトルデザインになりました。より脅威感が増した敵と、ド派手になったエフェクトで、レガシー(伝統的な)のよさを感じつつ、オート戦闘にする人はオートで、やり込みたい人はリアルタイムの選択でより強く自分が倒したという実感を得られます。これはけっこういい形になったのではないでしょうか。

――『テイルズ オブ』シリーズのバトルは、バトル後のリザルトでの掛け合いも人気です。そのあたりもあると思ってもよいのでしょうか?

富澤さん:フィールドの移動とバトルを、どう気持ちよく繰り返していくのか、全体的な議論は今も続けています。最終的にどうなるかはまだお答えできませんが、キャラクターの魅力を感じたいという部分と、次々と気持ちよく目的を達成していきたいという部分は、多少合わない部分があると思います。そこはさまざまな検討を重ねている感じですね。

――富澤さんは『GOD EATER』『CODE VEIN』など、アクションゲームのプロデューサーも担当されていますが、そちらの経験がバトルにフィードバックされていることはありますか?

富澤さん:さきほども話しましたが、ハイレスポンスという部分でしょうか。例えば状況に応じてたまるゲージをためるために、ゲージを見ながら戦うスタイルではなく、どんな敵がどんな攻撃・行動をしてきたかを見て、そこから自分でいくつか用意された対処方法を選んでいく。その結果として、気持ち良くコンボが決まったりする、という感じです。私は目の前の状況を見てどう判断するかがアクションの1つのポイントだと思いますし、気持ちよさの起点だと考えています。

 そういった部分でのこだわりは、バトルデザイナーとも話をしていますね。まだまだ詳細はお話しできないのでもどかしいですが、その“アクションゲームのらしさ”は出せているではないでしょうか。だからといって、バトルが難しくなるというわけではありません(笑)。やりこみたい方にはより直感的に動かせて、満足していただけるといいなと思っています。

――ちなみに、パーティバトルではあるんですよね?

富澤さん:はい。PVではアルフェンとシオンが出ていますが、まだまだキャラクターが追加されます。

  • ▲公開されているPVより。

――『テイルズ オブ』シリーズといえばアニメ、オープニング、スキットが欠かせない柱だと思います。その部分については期待してもいいのでしょうか?

富澤さん:アニメーションをどのタイミングで、どう使えば効果的なのかは初期からずっと議題にしています。アニメーション制作をufotableさんが担当されることは発表しましたので、みなさんが期待されている部分で十分楽しんでいただけると思います。

 その一方で今回の演出は3Dの演技力も圧倒的に増していることの片鱗を、今回のPVでも感じていただけたと思います。そのため、3Dの表現力が上がったとこでできることと、アニメとの関係性は多少変遷する余地があるのかなと考えています。どこをどちらの手法で表現していくのかなど、そこは開発初期から議論している形です。ひょっとしたら進化や変化がある余地があるのかなと。ですが、アニメがなくなることは絶対にありませんし、それが伝統のよさだと思います。

――桜庭統さんのサウンドも、シリーズのファンから支持されている要素の1つですが、そちらについては新しい血を入れることを考えているのでしょうか?

富澤さん:この段階ではどなたが担当されるというのはまだお伝えできませんが、“テイフェス”で公開したPVも、E3版とは違うサウンドを使わせていただいています。これだけのトータルでのクオリティアップに合わせて、サウンドの作り方についても今までにないアプローチでやっていこうと考えていまして、それはしっかり出ているなと思います。

 私は『テイルズ オブ』らしい曲の作り方があると思うんですね。壮大な世界を表現する部分もあれば、バトルの気持ちよさをあと押しする方法論もありますし。曲をあらためて聴きながら「どう進化させるのが一番気持ちいいんだろう。素晴らしく見えるんだろう」と話し合いながら、クオリティアップを図っているところです。

――物語という部分では、先日Twitterでのやり取りで「物語は読後感の気持ちよさを目指しています」と返答されていたのが印象的でした。

富澤さん:どの作品がどうだからという部分にあまりこだわりはありませんが、すっきりする結末の作品もあれば、違う結末の作品もあります。とはいえ、私自身はどちらがいい悪いということはないですね。滅茶苦茶真っ黒いエンドのゲームでも、受け入れてしまう人でもあるので(笑)。

 バットエンドが悪いといわけではなく、必然的にユーザーさんが受け止められる内容のものであることこそが一番大事なのかなと。そこに差が生まれてしまうと、どんなエンドであれ、やはり納得がいかないと思います。

 ストーリーというよりも、プレイヤーがそれまでやってきたことに対しての納得感を提供することが、ゲームでいうところの読後感のよさだと考えています。この作品に限りませんが、単に動画を見て「感動しました」とは言えない、トータルでの体験の価値を我々は作っていますので。

――オリジナルタイトルの統括役に原田勝弘さんが就任されましたが、原田さんから何か言われたことはありますか?

富澤さん:海外でのアプローチの仕方では、原田から熱いアドバイスを受けています。作品がどうあるべきかだけでなく「作品をどう伝えていくべきか」「海外を目指すならば文脈が全然ちがうよね」などですね。あとはSNSを含めてのコミュニケーションのあり方でしょうか。通り一遍でもありませんし、ユーザーさんに対してのフィードバック方法など、どんなペースでどんなノリでやることがユーザーライクなのかという視点で、一緒に議論することもあります。

――発売が2020年という形で発表されていますが、今後はどんなタイミングで情報を発信されていく予定でしょうか?

富澤さん:まだハッキリとお伝えするのが難しいのですね。それこそユーザーさんからのフィードバックを受けて作り変えるところがあるかもしれませんし、どんなペースでお伝えするのか検討中です。ユーザさんの反応としっかり向き合いながら、開発としっかり話しながら進めていきたいと思います。
2020年までにと気長にお待ちください。

――来年はシリーズ25周年でもありますが、やはりそこは意識されているのでしょうか?

富澤さん:そうですね。25周年という意味ではもう前後に突入していますし、発売記念タイトルとして強く意識はしています。しっかり25周年としての盛り上げをすることがブランドとってもちろん大事ですし、そこで1つの土台となれる作品にならなければいけないので、責任があると思います。

――富澤さんはこれまでもユーザーさんとのコミュニケーションを大事にされてきたわけですが、今後Twitterでのコミュニケーションを含めて、『テイルズ オブ』シリーズでやっていないコミュニケーションの取り方など考えられていますか?

富澤さん:もちろん、『テイルズ オブ』シリーズでやっていないことを行う可能性はありますし、ユーザーさんが望むものならば、それに応えるべきだと思います。先日公式サイトでも開発ブログを立ち上げましたが、「こういう場所がほしかった」という声もいただいています。そこはネットコミュニケーションを含めて、ユーザーさんとの対話の方法論を模索していますが、今までやっていなかったからやらないということは考えてはいません。ユーザーさん目線でやりたいというのは、自分なりのスタンスです。

――最近のシリーズは『テイルズ オブ エクシリア』と『テイルズ オブ エクシリア2』、『テイルズ オブ ゼスティリア』と『テイルズ オブ ベルセリア』のように、世界観を共通とした連作が続いていましたが、本作は単独の作品になるのでしょうか?

富澤さん:そうですね。現状ではいわゆる連作という作りではないですね。また、過去作からの連作でもありません。やはり新たなユーザーさんにも遊んでもらう形に設計しています。

――では最後に発売を待つファンにメッセージをお願いします。

富澤さん:20年以上続く『テイルズ オブ』というブランドに新しく参加させていただきながら、このブランドを25周年、そしてその先と続けていくという視点で、この『TOARISE』を立ち上げています。大きくゲームが変化した理由は、よりよい未来を一緒に作らせていただくという、その1点への思いです。

 もちろん、短期的なギャップなどを気になされる方はいらっしゃると思いますが、ちゃんとそこへのご説明を1つ1つしていくことが大事だと考えていますし、お答えする機会を増やしていきたいと考えています。ゲームの新情報がなくても、そういったやり取りが日常的にできるくらいの思いだけは十分に宿っていますので、そこに価値を持たせていきたいです。引き続き応援をよろしくお願いいたします。

※画面は開発中のものです。
©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

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テイルズ オブ アライズ

  • メーカー: バンダイナムコエンターテインメント
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: RPG
  • 発売日: 2020年
  • 希望小売価格: 未定

テイルズ オブ アライズ

  • メーカー: バンダイナムコエンターテインメント
  • 対応機種: Xbox One
  • ジャンル: RPG
  • 発売日: 2020年
  • 希望小売価格: 未定

テイルズ オブ アライズ

  • メーカー: バンダイナムコエンターテインメント
  • 対応機種: Steam
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年
  • 価格: 未定

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