『三國志14 with パワーアップキット』越後谷Pインタビュー。ユーラシア諸外国の登場意図などをお聞きした
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- うどん
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コーエーテクモゲームスから発売中の『三國志14』において、同作における『パワーアップキット(以下14PK)』の登場が発表された。
高い評価を得ている『14』がさらにどんな進化を遂げるのか、今回は現在公開されている『14PK』のあれこれについて、本作をこよなく愛するライター“うどん”が、プロデューサーの越後谷氏にお聞きしてみた!
コーエーテクモゲームス『三國志14』プロデューサー
越後谷 和広 氏
聞いた人
ライターうどん
『14PK』は知力と政治を重視した拡張に
――『三國志14 with パワーアップキット』が12月10日発売で発表されました。今回の『PK』を一言で表すと?
“知力と政治を重視した拡張”ですね。『14』は土地の色塗りというところにフォーカスして作ったわけですが、行軍が色塗りでもあることから軍事力に依存しがちなシステムでもありました。そのため、武将の能力では、知力政治に比較して統率武力の影響力が大きいことは我々も作っていて思っていたことでした。
――そうですね。とくに知力と政治を本来使うべき場所である、計略と外交面の要素が薄かったと思います。
今のシステムで文官タイプの武将が色塗りで目立てるのは個性「名声」を使ったときと、「駆虎呑狼」や「地域懐柔」を使ったときぐらいですよね。今回の拡張は「外交(=政治力)でも色塗りできたらいいよね」という意見が発端になっていまして、文官でも色塗りのシステムのなかでさまざまな活躍ができる拡張をしていきます。それが“知力と政治を重視した拡張”という今回の趣旨ですね。
――外交での色塗りというと、いよいよ舌戦が来ますか!
いえ、残念ながらそれは来ないですけど(笑)。舌戦はあくまで交渉のバトル部分に過ぎず、そういったミニゲームではなく、その結果となる直接的な色塗りを重視しています。そもそも「三国志演義」で、いかにも舌戦と言える場面って諸葛亮の赤壁前の論陣くらいで、今のところはそこまでフォーカスしなくてもいいのではないかなと。勢力プレイですし。
また、もし舌戦を入れることがあるなら、中途半端なものを入れたくない、という気持ちもあります。それもあって舌戦に関して今回はまだ時期じゃないなという判断になります。
『14PK』新要素①:5つの異民族都市が辺境に登場
――では『14PK』の具体的な追加要素について、まずは異民族勢力の登場についてお聞きします! これは一言で『Ⅸ』のような異民族都市が辺境に現れると考えていいのでしょうか?
そうです。烏桓や山越といった5つの異民族勢力の都市が新しくマップの端に登場します。いずれも強力な軍事力を有しており、中華圏を脅かすだけの大きなパワーを持った勢力です。彼らは隣国に侵攻して領地を荒らしてきますので、辺境の維持はかなり大変になるかもしれませんね。とくに今まで安全であったはずのマップの端に、強力な異民族勢力が現れることで端っこの小勢力は舵取りが難しくなるかもしれません。
――『Ⅸ』での5つの異民族勢力というと烏桓、羌、南蛮、山越、倭の5つでしたが、今回再び倭が登場することに……?
いえ。今回登場させる異民族都市は、中華圏を脅かせるほどの勢力であるべきだと思っているので、倭は登場しません。確かに倭はあの「魏志倭人伝」で三国志とも絡みはあるのですが、実際に戦っていたわけでもないですし。なので異民族としては、烏桓、鮮卑、羌、南蛮、山越の5つとなります。
――ちなみに所属武将はどうなるのでしょうか? 『12』では異民族に武将が配されていたこともありましたよね。
基本的には『Ⅸ』のパターンで、「山越武将」など統一されたノーネームになります。既存の異民族武将は従来通りの武将として登場します。
――異民族勢力との外交はどのような形になるのでしょう?
ほかの勢力と同じように外交感情を高めていく形になります。ただし同盟は結べず、友好関係を維持するのにとどまります。また、すべての勢力が自由に外交できるわけではなく、対応した“地の利”(後述)を得た勢力だけがその異民族勢力との外交が可能になります。
――『12』では異民族に他勢力への襲撃を依頼できました。仲良くなると、他勢力にぶつけるような外交も……?
そこまで単純なものではないですね。異民族と仲良くなることには安全保障だけに留まらない、別のメリットも用意されています。先ほど端っこの勢力が難しくなるかもと言いましたが、上手く仲良くなれば逆に……といったところで、今後の続報にご期待ください。
『14PK』新要素②:孔明がローマに旅立つ!? ユーラシア諸外国との交易
――では次に、シリーズ初となるユーラシア諸外国との交易についてですが、まずはどんな国が登場しますか?
インド、クシャーナ、パルティア、ローマの4カ国になります。これらに対して「交易」コマンドから「使節団」を派遣することで実行します。
――使節団というと、武将を送るのでしょうか?
はい、武将も使いますし兵士も使います。
――ローマに諸葛亮を派遣する……という形なのですね。めっちゃロマンのあるところですが、その交易でどんな恩恵があるのでしょうか?
武将を強くする名品や、強力な戦法などさまざまですが、基本的には交易でしか手に入らない素晴らしい何かです。1つの国に対して恩恵は1つではなく、段階を踏んでさらに大きな恩恵を得られるようになっていきます。異文化の新しいものをどんどん取り入れていく……という形です。
――ユーラシア諸外国が登場するとなると、それらとの戦争も期待してしまいますが……?
残念ながらそこまでは(笑)。遥か彼方の国なので、使節団がせいいっぱいですね。
――ちなみに交易はどの勢力でも自由に行えるのでしょうか?
こちらも異民族都市との外交と同じく、“地の利”が必要になります。例えば、インドと交易したければ交州の地の利を得る必要があるわけです。
『14PK』新要素③:州を巡る攻防が熱くなる“地の利”
――では異民族との外交、ユーラシア諸外国との交易でもそれぞれ話が出てきた“地の利”は、そもそもどのようなシステムなのでしょうか?
大陸には17の州が存在するのですが、各州を制することで州ごとの“地の利”が得られます。先ほどのユーラシア諸外国との交易や、異民族都市との外交が可能になることも地の利の1つで、ほかにも例えば青州を制することで“自動占領の範囲が広がる”などの州ごとの特典が得られるわけです。
――州の攻防が大きな要素になりそうですが、一都市で1州になる場所もあれば、4都市で1州になる場所もあります。複数都市を擁する州の方が地の利の効果は大きいものでしょうか? また、地の利の実装に伴いマップ自体の改定は?
地の利の効果に関しては、都市が多い州であれば効果が強いといったものではなく、それぞれ個別にまったく別の利点が得られるようになっています。マップの変化で言うと、異民族都市が追加される分が改定されますが、マップ全体や都市の数に変化はありません。
――ちなみに青州では“自動占領の範囲が広がる”とありますが、何かその州に根差したイメージ的なものと関連しているのでしょうか?
イメージによるところもありますが、基本はゲーム的な都合です。そこは「この効果を奪い合うと面白そうだよね」という戦略的な効果を優先していて、実際に『14PK』では強力な地の利をいかに得ていくか、その観点で侵攻ルートを考えることも多くなると思います。
――一度得た地の利も、条件を満たせなくなると消えてしまうのでしょうか。
そうなります。それと地の利は各州でそれぞれ獲得する条件が少し違っていて、たとえば荊南であれば4都市のうち3都市を確保すれば地の利を得られます。敵勢力が持っている地の利をどう崩していくかの戦略も必要になるかもしれませんね。
――地の利の攻防はかなり重要そうですが、それに伴ってAIの戦略志向は変化するのでしょうか?
そこは影響します。AIも自分で地の利を得よう、敵の地の利を崩そうと、そういう観点での戦略を持つようになります。
――最初から複数の州を有する、後期の曹操はかなり強くなりますよね。
そうなります。もともと強い曹操がさらに強くなるはずです。持っている州の数が違うので、魏呉蜀では魏が強さで1つ抜けると思います。それと、地の利で冀州を取ったあとの袁紹もだいぶ強くなると思いますよ。
――逆に中央に対抗する地方勢も、地の利で異民族都市やユーラシア諸外国を利用できれば今までとは異なる戦略を取れそうですね。
そうですね。中原には人口の多さや財力というわかりやすいパワーがあり、僻地の勢力がそれに対抗するには異民族をはじめ中原にない地の利を利用するしかないわけです。
――まるで三国時代後の八王の乱のような展開ですね……。その後の歴史が大変そうです!
中央に対抗するために外の力を使う、というのは歴史的にあることで、『14PK』では地の利、異民族都市、交易といった要素でそういう場面を作れたのではないかなと思っています。
『14PK』新要素④:さまざまなシチュエーションを描くショートシナリオ「戦記制覇」
――では次に「戦記制覇」についてお聞きしますが、これは名前的にも『11』の「決戦制覇」のような限定戦場のシナリオバトルと考えていいのでしょうか?
いわゆるキャンペーンモードなので、『Ⅸ』や『Ⅹ』のショートシナリオの方が近いです。“制覇”という言葉が被っただけで、『11』のように狭い範囲の戦場ではなく、もう少し広い範囲、長い期間での戦いになります。
――実例としてはどれくらいの規模でしょう?
官渡の戦いであれば、ギョウ、陳留、濮陽、小沛、下ヒあたりを区切ったマップで、クリアまでの時間は2~3年、勢力は曹操、袁紹、劉備の3つから……といった感じです。あとは勢力ごとにそれぞれ勝利条件が異なっており、例えば曹操であれば袁紹さえ倒せばOKです。
――シナリオ数はどれくらいの数に?
初期数は5本です。『Ⅸ』のように流れがあるわけではなくて、最初からすべてのシナリオが選択可能で、好きに選んで遊ぶことができます。また、シーズンパス第2弾にも含まれる有料DLCでも増やしていこうと思っています。
――シーズンパス第2弾! その話も聞きたいところですが先に「戦記制覇」のことを聞くとして、シナリオ中には専用のイベントが発生するのでしょうか?
はい。官渡で言うと烏巣急襲イベントなどが用意されています。各シナリオにはそれぞれイベントが用意されており、それをどう利用するかも攻略のポイントになりますね。
『14PK』新要素⑤:新施設や戦法追加など、深みを増すさらなる変化
――『14PK』では他にどんな新要素があるんでしょうか?
新しい建物が建設可能になります。例えば山岳地帯に置ける「射台」、これは山の弓櫓のようなもので、他にも水上での移動を妨害する「鉄索」などが登場します。山や大河に建設物を置けるようになるだけで、進行ルートや戦略はけっこう変わってくると思います。当然これまで使ってきたルートが使えなくなるわけで、新しい攻略方法を考える必要が出てきます。
今回の拡張ではどの要素もゲーム性や戦略の変化に繋がるものになっていて、地の利で戦略が変わるように、新しい建物では進行ルートが変わります。『三國志14』のときの勝利の法則や鉄板の戦略も変わっていくと思います。
――武将の個性や戦法も新しいものが追加されるとか?
はい。個性は汎用がいくつか増えますが、戦法は固有のものを大きく増やします。例えば破竹のあの人や、三尖刀のあの人とか……。
――それは蜂蜜好きの陛下もニッコリですねえ。
各勢力でもできるだけ1人くらいは固有戦法持ちがいるような配分を目指しました。
――ということは、厳白虎は固有戦法“東呉の徳王”で確定じゃないですか!
候補リストにはあったのですが厳白虎は固有戦法持ちから外しました。
他にも拡張要素あり! 遊び方が大きく広がる『三國志14PK』
――さまざまな拡張がなされる『14PK』ですが、最初におっしゃっていた「知力と政治を重視した拡張」というのは、異民族との外交やユーラシア諸外国との交易を指すものでしょうか?
それもあります。ありますが、今回紹介しなかった新要素でもさらに武将の政治と知力が活きてきます。例えばまだ詳しくはお話できませんが、戦闘の仕様として知力がすごく役に立つ新しい何かが追加されます。
――舌戦……は今回追加されないと先ほどおっしゃっていましたから、何か別の。戦争で直接役に立つような。
行軍中での知力は、状態異常系の戦法や火計に関わっていたくらいですよね。それとは別に知力の高い武将が戦闘でとても役に立つ何かが登場しますので、そこはご期待ください。
それと外交では土地が選択肢として選べるようになりました。これも政治が色塗りに直結する新しい要素ですね、
――それは、例えば「合肥をよこせ」といった、敵対勢力から外交で奪ってくるようなものなのでしょうか?
いえ、それは逆で、友好的な勢力との交渉に使うものになります。「この土地をあげるからこれをやって」、「この土地とこの土地を交換して」といったものですね。これまで外交での色塗りというと降伏勧告しかなかったので、もっと細かいところで政治の高さを色塗りに影響を及ぼせるようになっています。
――なるほど、政治や知力が活きる場面がほかにも追加されているわけですね。
武将の質で言うと、呉の武将は魏や蜀に比べて統率武力で劣っていましたよね。でも呉は知力と政治が充実しているので、今回のさまざまな新要素で立ち回りやすく、そこを活かす形で魏や蜀に対抗していけるのではないでしょうか。
――先ほどシーズンパス第2弾では「戦記制覇」の新シナリオが追加されるという話が出ましたが、第2弾では『PK』が前提になるのでしょうか。
いえ、そういうわけではないです。「戦記制覇」以外はすべて『PK』がなくとも動かすことができるDLCになります。
もともとシーズンパス第1弾は編集機能を中心に出して、『PK』はそのぶん、拡張機能に特化していました。パス第1弾の有料DLCを入れてなくても『PK』を問題なく入れられるように、今後もそこは分けて出していきます。
――シーズンパスと『PK』という新しい形で展開を続ける『三國志14』ですが、うまく回れば『PK2』、次はパス第3弾、次は『PK3』と続けていかれるような構想はありますか?
さすがにそこまでの構想はないですが、続けられるなら続けてみたい、やらせてもらえるなら是非やらせてもらいたいですね。ただ、もう正直、今回の『14PK』の結果次第であることと、『14』続けるよりも『15』作ってよ、という声も当然出てきますよね(笑)。
――『三國志14』はベースがよくできている作品なので、1ユーザーとしては末永くアップデートが続いてくれることを願うばかりです!
ありがとうございます。シーズンパスはもともと期間内のアップデートも保障するもので、けっこう長い期間を取っています。第1弾当初のころには、社内的に「そんなに長い期間で大丈夫なのか」という声もあったのですが、長く遊んでもらう歴史SLG作品なのでそれくらいの期間は必要だろうと長期間で設定させていただきました。結果、思った以上にユーザーの皆さんに受け入れてもらえて、第2弾も第1弾同様に長期間で設定しています。
――では最後に『14PK』に期待しているユーザーのみなさんに一言お願いします。
今回、名前はいつもと同じ『パワーアップキット』ですが、遊びを大きく拡張するエキスパンションのつもりで作りました。是非新しい拡張を期待してお待ちいただければと思います。
それと言いそびれていましたが、12月10日にはNintendo Switch版の『14WPK』も登場します。先日開発中のものを実際さわってみたところ、かなりぬるぬる動くデキで直感的にも操作しやすく、個人的には乗り換えようかなあと思ったほどです(笑)。内容だけでなくプラットフォームまでも拡張しますので、こちらも是非ご期待いただければと思います。
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