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『ロードス島戦記』の歴史~成長編。日本ファンタジー界の金字塔となった小説シリーズ

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 発表から30年を越えて愛される人気ファンタジー『ロードス島戦記』の魅力をお伝えする連載企画。第2回となる今回は、シリーズの根幹を成す小説シリーズを紹介していきます。

 前回紹介したとおり、テーブルトークRPGのリプレイとして誕生した『ロードス島』シリーズ。その設定や世界観をもとに、リプレイでGM役(※テーブルトークRPGにおける司会・進行・審判役)を務めた水野良氏が執筆したのが、小説版『ロードス島戦記』シリーズです。

 剣や魔法での争いが絶えない“呪われた島”ロードスを舞台に、英雄たちの冒険や戦いをダイナミックに描いた本シリーズは、リプレイ版からのファンに限らず幅広い読者層からの支持を獲得。1988年に第1巻『灰色の魔女』が刊行されるや大人気となり、前日譚や続編を合わせた全シリーズの累計発行部数が1000万部を超える大ベストセラーとなりました。

 今でこそライトノベルやオンライン小説などで数多くのファンタジー小説が発表されていますが、本作が発売された1980年代当時は、ファンタジー小説といえば海外作品の翻訳が主流で、日本発の作品は限られていました。そこに登場した『ロードス島戦記』が与えた影響は大きく、日本ファンタジー界の金字塔として、それ以降の小説に限らず、ファンタジー系のアニメやゲームの礎になったと言っても過言ではありません。

 また、2019年8月には久々の新作となる『ロードス島戦記 誓約の宝冠1』が発売され、新展開にも注目が集まっています。歴史ある名作にして、今なお発展を続ける小説版『ロードス島』シリーズ・3部作+αの魅力を、作品ごとに紹介していきます。

これぞ本家! 『ロードス島戦記』シリーズ

 “呪われた島”ロードスの辺境の村を旅立った若き戦士・パーンを主人公に、後に“英雄戦争”“邪神戦争”と呼ばれる戦いが展開されるヒロイック・ファンタジー小説。全7巻。パーンをはじめとする仲間たちの冒険に加えて、暗黒皇帝ベルドに率いられたマーモ帝国や至高神を奉じる神聖王国ヴァリスといった国々の興亡も描かれ、やがてロードス島全土を巻き込む壮大なストーリーに発展していきます。

 原点がテーブルトークRPGだけあって、ダンジョンでの冒険や剣での戦いはもちろん、魔法や盗賊のスキルなども重要な役割を果たし、ゲーム好きの読者にとって親しみのある世界観です。また、物語は主にパーンの視点で展開していきますが(第6巻・第7巻はフレイムの騎士見習い・スパークがメインに)、冒険の仲間たちや、暗黒皇帝ベルド、傭兵王カシュー、黒衣の騎士アシュラムといった歴戦の英雄たちが多数登場し、それぞれの戦いや想いが描かれる群像劇となっています。

《各巻のあらすじ》

ロードス島戦記 1 灰色の魔女

  • ▲魔神との戦いから30年、“呪われた島ロードス”に、再び戦乱の兆しが見え始めていた。武者修行の旅に出た若き戦士・パーンは、仲間たちと冒険を続けるうちに、戦乱の影で暗躍する“謎の魔女”の存在を知る。やがて戦いは各国の英雄たちを巻き込み、ロードス島全土の運命を左右することに――。

ロードス島戦記 2 炎の魔神

  • ▲“英雄戦争”から2年、カーラの行方を求めて旅を続けるパーンとディードリットは、強力な魔法を操る魔術師の噂を聞き、砂漠の国・フレイムを訪れる。そんな彼の前に、恐るべき力を持つ“魔神”が立ちはだかる!

ロードス島戦記 3 火竜山の魔竜(上)

  • ▲暗黒皇帝ベルドの志を継いだ黒衣の騎士・アシュラムが、絶対的な権力を与えるという秘宝“支配の王錫”を求めて暗躍する。その野望を阻止すべく、パーンはディードリットやスレインたちと旅に出るが……!?

ロードス島戦記 4 火竜山の魔竜(下)

  • ▲パーンたちと別れ、“支配の王錫”を求めて自由都市ライデンを訪れたオルソン一行。盗賊ギルドと手を組んで海賊退治に向かうが、そこに思わぬ強敵が……!? いっぽうパーンやカシュー王たちも、魔竜との決着をつけるべくライデンを目指す!

ロードス島戦記 5 王たちの聖戦

  • ▲“支配の王錫”を巡る決戦の後、膠着状態に陥ったマーモとの戦い。王位を巡って戦乱が続くモスのハイランド公国を訪れたパーンたちは、最強を誇る公国の竜騎士団をも脅かす存在、いにしえの混沌の力を秘めた“炎の巨人”と対決する。

ロードス島戦記 6 ロードスの聖騎士(上)

  • ▲フレイムの王城から秘宝“魂の水晶球”が盗まれた。賊を取り逃がした騎士見習いのスパークは、自由騎士パーンの助言を受け、秘宝奪還の使命に燃える。追跡の途上、美しきマーファの司祭・ニースと出会ったスパークは、彼女が背負う恐るべき運命とロードス島に迫る破滅の危機を知り……。

ロードス島戦記 7 ロードスの聖騎士(下)

  • ▲いよいよ最終局面を迎えたフレイム・ヴァリス連合軍とマーモとの戦い。パーンとディードリットは“灰色の魔女”と決着を付けるべく、連合軍に参加する。そしてスパークは、邪神復活を防ぐべく、ニースや仲間たちとともに“黒の導師”バグナードに挑もうとしていた。

《注目キャラクター》

・パーン
 『ロードス島』シリーズを代表するキャラクター。アラニア王国・ザクソンの村出身で、仲間たちと一緒に武者修行の旅に出た若き戦士。冒険のなかで傭兵王カシューといった英雄たちとの交流や、灰色の魔女カーラとの戦いを経て大きく成長。やがて“ロードスの騎士”と呼ばれる伝説的な存在となっていきます。
 『ロードス島戦記』全7巻はパーンの成長物語であり、最初は英雄願望のある未熟な剣士だった彼が、巻を追うごとに成長・活躍し、英雄たちにも認められていく姿に一喜一憂するという読者も多いと思います。

・ディードリット
 『ロードス島』シリーズを代表するヒロインにして、日本におけるエルフのビジュアルイメージを決定付けた大人気キャラクター。“帰らずの森”に住む長寿の妖精・ハイエルフの一員ですが、閉鎖的な一族の中で例外的に好奇心旺盛な性格をしており、森を飛び出してパーンの旅に同行し、やがて彼に惹かれて生涯のパートナーとなります。
 優れた精霊使いで、作中でも何度も強大な精霊を使役し、パーンの偉業を助けることになります。パーンとの間に“大恋愛”が描かれるわけではありませんが、ふとした際に描写される2人の信頼関係の深まりは見逃せません。

・アシュラム
 パーンの最大のライバルにして、『ロードス島』の“影の主人公”とも言える暗黒騎士。六英雄の1人・暗黒皇帝ベルドに心酔しており、彼が討たれてからはその志と魔剣“魂砕き(ソウルクラッシュ)”を受け継ぎ、“黒衣の騎士”“黒衣の将軍”と呼ばれるようになります。
 最初はパーンなど眼中になかったアシュラムが、やがてパーンの成長と活躍に伴って敵ながら彼を認め、好敵手として執着するようになっていく展開が熱い! パーンにディードリットがいるように、アシュラムにもダークエルフの腹心・ピロテースが寄り添っているのも注目ポイントです。

英雄たちの原点となる戦い――『ロードス島伝説』シリーズ

 『ロードス島戦記』の大ヒットを受けて発表された、同作の前日譚が『ロードス島伝説』シリーズです。全5巻+短編集1巻。パーンたちが活躍した“英雄戦争”から約30年前、若かりし頃のベルドやファーン、ウォートといった“六英雄”たちが“魔神”と戦った“魔神戦争”が舞台となります。

 本作の主人公は、モスの小国・スカード王国の王子・ナシェル。文武両道に優れ、勇気と聡明さ、そして優しさまで兼ね備えた麒麟児です。あのベルドやウォートたちですら彼の才能を認め、将来のロードスの“統一王”になるであろうと期待していましたが、後の“六英雄”には彼の名前は入っていません。

 なぜナシェルの存在は歴史の闇に消えてしまったのか? なぜ“六英雄”の仲間だったファーンとベルドが袂を分かち、後に“英雄戦争”で戦うことになるのか? そして、『ロードス島戦記』では断片的にしか語られなかった“魔神”たちとの戦いの真実とは――? 『ロードス島戦記』ファンの興味をかき立てる見どころ満載なので、“伝説”を未体験の方はぜひ読んで欲しいと思います。

 なお、設定的には本作が一番古い時代が舞台ですが、読む順番は、発売順どおり『ロードス島戦記』⇒『ロードス島伝説』⇒『新ロードス島戦記』がオススメです。

《各巻のあらすじ》

ロードス島伝説 亡国の王子

  • ▲“英雄戦争”から遡ること30年、突如復活した“魔神”の大群により“呪われた島ロードス”は未曾有の危機に瀕していた。モスの小国・スカードの王子ナシェルは、不在の国王に代わって全権を掌握し、ベルド、ウォートといった英雄たちの助けを得て、国難に立ち向かう。

ロードス島伝説 2 天空の騎士

  • ▲“魔神”を率いるのがスカード王ブルークであることが判明し、大混乱に陥るモス諸国。外敵への結束を定めた“竜の盟約”が破棄され、“魔神”との戦いの最前線にいたナシェルは苦境に立たされる。いっぽう、ファーンとともにライデンを訪れた“ファリスの聖女”フラウスは、ベルドとの運命的な出会いを果たす。

ロードス島伝説 3 栄光の勇者

  • ▲竜騎士となったナシェルの活躍で、モス諸国は再び結束を取り戻す。しかし、人に成りすます鏡像魔神(ドッペルゲンガー)の暗躍でファーンはヴァリスの聖騎士隊長の地位を追われ、ベルドの武勇により決起した“百の勇者”たちにも不穏な空気が流れ始める。

ロードス島伝説 4 伝説の英雄

  • ▲ついに最終局面を迎えた“魔神戦争”。ナシェルは“勇者隊”を率いて次々と都市を開放していき、その旗の下にロードス島の結束が高まっていく。そしてベルド、ファーン、ウォート、フラウス、ニース……稀代の英雄たちの活躍により、戦いの趨勢は決まったかに見えたが……!?

ロードス島伝説 永遠の帰還者

  • ▲モスの小国・スカードの王ブルークは、自らの余命がいくばくもないと知った時、1つの決断を下す――。“魔神戦争”のプロローグとなる『ロードス島伝説 序章』2編に加えて、最終決戦直前に舞台を去ったナシェルのその後を描いた『ロードス島伝説 終章』を収録した短編集。

ロードス島伝説 5 至高神の聖女

  • ▲最終局面を迎えた“魔神”との戦い。“百の勇者”の活躍により追い詰められた“魔神”たちは、始まりの地・スカードの迷宮に立てこもる。ロードス島の未来は“百の勇者”を率いる7人に委ねられようとしていた――。“魔神戦争”の結末を聖女フラウスの視点で描く『伝説』の完結編。

《注目キャラクター》

・ナシェル
 “英雄を率いる英雄”として活躍していく本作の主人公。後に“六英雄”となるベルドとウォートに剣と知識を学び、ファーンやニース(大ニース)、フレーベを助けて友誼を結び、名も無き魔法戦士(カーラ)にもその才(カーラにとってはロードス島のバランスを崩しかねない危険性)を認めさせたという、なんともすさまじい人物。
 やがて風竜を駆る竜騎士へと成長した彼は、“魔神”の復活するというロードス島最大の危機に際し、ベルドやファーンたちの協力を得て“百の勇者”を率い、“魔神”を討つべく奔走します。しかし、“魔神”復活の真実が明らかになったとき、一転して窮地に追い込まれ……!?
 作中でも仲間たちが何度も嘆いていますが、とにかく惜しい、せめてこうなっていれば……と思わずにはいられない悲劇の主人公。後の歴史(『ロードス島戦記』の時代)では生き残った“六英雄”ばかりが喧伝されていますが、彼を始めとする“無名の英雄”たちの活躍こそ、『ロードス島伝説』の醍醐味であると言っても過言ではないでしょう。

・ベルド
 『ロードス島戦記』では“英雄戦争”を巻き起こした“暗黒皇帝”と呼ばれる悪役ながら、アシュラムを始めとする敵役たちを心酔させた“悪のカリスマ”を持つ人物。その若かりし頃の活躍が、本作では存分に描かれています。
 ロードス屈指の剣の腕を持ちながら、地位や名誉にはまったく興味を示さず、ただ強敵と戦い勝利することだけを望んでいた彼が、いかにロードスの覇権を目指すようになったのか? ナシェルへの親愛、ファーンやウォートとの友情、そして“ファリスの聖女”フラウスとの交流を通じて明かされていきます。
 ナシェルを“表の主人公”とするなら、“裏の主人公”ともいえる重要な役割を果たすベルド。後に繋がる他の“六英雄”たちの活躍を含めて、ぜひ注目したいところです。

・フラウス
 わずか13歳で“ファリス神の啓示”を受け、優れた才能と篤い信仰心から“ファリスの聖女”と呼ばれている女性。“六英雄”でこそないものの、ファーンやベルドに深く関わる重要人物として描かれるキャラクターです。
 ベルドと出会い、彼こそがファリス神の啓示にあった“闇に閉ざされし英雄”だと確信した彼女は、ベルドに付きそう形で“魔神戦争”に参戦し、やがて彼を愛するようになりますが……!?
 なお、小説版は1~4巻がナシェルの物語で、『永遠の帰還者』は物語のプロローグとエピローグを収めた短編集ですが、5巻は彼女の視点で描かれた“最終決戦”の追加エピソードとなっています。また、小説の挿絵を担当した山田章博氏によるコミック版『ロードス島戦記 ファリスの聖女』ではフラウスが主人公として描かれているので、こちらも要チェックです。

“邪神”復活の結末を描いた続編『新ロードス島戦記』

 文字通り『ロードス島戦記』の続編となる続編シリーズ。前作の第6巻・第7巻で活躍したスパークを主人公に、“邪神戦争後”のマーモ島に誕生したマーモ公国の興亡と、“破壊神カーディス”復活を巡る邪悪な勢力との戦いが描かれます。

 物語は“邪神戦争”から1年後、スパークがマーモ公国の公王となり、かつての仲間たちと共にマーモ島の統治に乗り出すところから始まります。マーモ帝国の残党をはじめとする“闇”の勢力に苦戦しつつも、数々の試練を乗り越えて、マーモ公国の地歩を固めていくスパーク。その過程でこの島では“闇”こそが自然なのだと実感した彼は、“闇”すらも受け入れた新たな統治を行うようになります。

 “ロードスの騎士”パーンや傭兵王カシューといったおなじみの面々も引き続き登場しますが、メインとなるのは、あくまで騎士見習い改めマーモ公王に即位したスパーク。統治者としてまだ未熟である彼が、聖女ニース(“六英雄”の1人である大ニースの孫、小ニース)を始めとする仲間たちの助けを借りて、不器用ながらも進み続け、成長していく姿が見どころとなっています。

 苦労して発展させたマーモ公国がいったん崩壊したり、最愛のニースが再び敵にさらわれたりと、本作でもスパークはさんざん“不幸”な目にあいますが、どんなに絶望的な状況からも泥臭く這い上がっていくのが彼の真骨頂。パーンやナシェルとはまた違ったタイプの英雄であるスパークの物語をぜひ見届けましょう。

《各巻のあらすじ》

新ロードス島戦記序章 炎を継ぐ者

  • ▲“邪神戦争”での活躍を経て、フレイム領となったマーモ島の公王に任命された若き騎士・スパーク。彼がそこへ至るまでには、多くの出会いや戦い、そして別れがあった──。『新ロードス島戦記』のプロローグとなる4編+αを収録した短編集。

新ロードス島戦記1 闇の森の魔獣

  • ▲忌まわしき“邪神戦争”から1年、ロードス島は平和を取り戻していたが、最南端にあるマーモ島にだけは未だ邪悪な炎がくすぶり続けていた。マーモ公王に即位したスパークは、治めがたきこの地を統治すべく、仲間たちと奮戦する!

新ロードス島戦記2 新生の魔帝国

  • ▲若き公王・スパークの統治を覆すべく、密かに暗躍してきたマーモ帝国の残党たち。彼らはスパークの油断を突き、ベルド皇帝時代の復活を目指して“新生マーモ帝国”の建国する。それを知ったスパークは、マーモから“闇”を払うべく全力を尽くすが……!?

新ロードス島戦記3 黒翼の邪竜

  • ▲突如マーモ公国に広まった不治の病“竜熱(ドラゴンフィーバー)”。それは、赤毛の少年皇帝・レイエスを戴く新生マーモ帝国の卑劣な罠だった。病の原因が、かつてこの島を縄張りとしていた邪竜ナースにあると知ったスパークは、事態解決のために動き出す!

新ロードス島戦記4 運命の魔船

  • ▲ロードス本島とマーモ島を行き来する交易船が、謎の軍船により沈められる事件が発生。このまま放置すればマーモ公国は深刻な食糧不足に陥ってしまう。スパークは仲間たちとともに海上に向かうが、古代王国の魔法装置である軍船の圧倒的な火力に敗北。なんとか対岸に流れ着いた彼らの前に、意外な人物が現れ……!?

新ロードス島戦記5 終末の邪教(上)

  • ▲スパークたちの活躍により、ついに滅んだ新生マーモ帝国。だが、その影で暗躍していた“破壊の女神の教団”が姿を現し、新たな危機が訪れる。教団の目的は“亡者の女王”の魂を持つニース。かつての支配者を解き放ち、世界を滅ぼそうというのだ。ロードス島の未来を賭けて、スパークは最大の敵に挑む!

新ロードス島戦記6 終末の邪教(下)

  • ▲“破壊の女神の教団”にマーモ島とニースを奪われ、多くの仲間を失い、自身も瀕死の重傷を負ったスパーク。再起を図る彼は、かつてベルドのマーモ統一を助力したという最強の戦士たちを求めて、闇の森の奥へと向かう。“呪われた島ロードス”を巡る戦い、ついに完結!

《注目キャラクター》

・スパーク
 『ロードス島戦記』の6巻~7巻で活躍し、引き続き本作でも主人公となった元・フレイム王国の騎士見習い。
かつてフレイムで500年以上にわたって“風の部族”と争い続けた“炎の部族”の族長の血筋で、“邪神戦争”での活躍を認められ、フレイム領マーモ公国の公王に任命されました。
 若さ故に未熟で短気なところがあり、よく失敗しますが、仲間たちの協力を得て大きく成長し、1つ1つ問題を解決していきます。公王となってからはマーモ島の“闇”を払うだけでなく、彼らを受け入れて共に歩む度量の大きさを見せます。そのため、ロードス本土の諸国から非常に警戒されますが、体面に囚われず自国の主義を貫く堂々たる一面も兼ね備えています。
 本人の成長に加えて、本作ではギャラックやライナ、リーフ、グリーバスといったかつての冒険仲間たちがマーモ公国に参加し、スパークを支えていく点もファンにとってはうれしい展開ですね。“見習い王”であるスパークが、彼らの力を束ねて難問の数々を解決していくところも本作の見どころです。

・ニース
 スパークの冒険仲間の1人で、恋人でもある大地母神マーファの美しき侍祭。パーンの冒険仲間・スレインと、カーラに囚われていた大地母神マーファの司祭・レイリアの娘で、祖母である“六英雄”ニースの名前を受け継いでいます。
 “邪神戦争”では邪神復活の“扉”として狙われ、いったんは破壊神カーディスが降臨するも、それに対抗するために大地母神マーファをその身に降臨させ、邪神復活の企みを妨げました。その際、自分がかつての邪神教団の最高司祭・ナニールの生まれ変わり(転生体)であることを知るという、なかなかに壮絶な運命を背負ったヒロインです。
 マーファ神の敬虔な信者であり、慈しみ深い性格で幼少時から“聖女”と称えられてきましたが、(前世の影響か)ときに奔放な側面を見せることもあり、親しい者を振り回します。間違いなくロードス島最大の“闇”である彼女の存在を、いかにスパークが受け入れ、2人でその運命を克服していくのか? その点も『新ロードス島戦記』のテーマの1つといえるでしょう。

そして物語は最新作『誓約の宝冠』へ――

 こうして全3部作で描かれ、いったん完結した小説版『ロードス島』シリーズですが、待望の新作『ロードス島戦記 誓約の宝冠 1』が、2019年9月に発売されました。

 100年後のロードス島を舞台に、マーモ公王の末裔・ライルと“伝説のハイエルフ”が、新たな冒険に旅立ちます。

 100年後なので一部の“例外”を除けば状況や登場人物などは一新されており、従来のシリーズを知らなくても問題ない内容となっていますが、かつての英雄たちの活躍を知っておけば、より深くこの新作を楽しめることは間違いありません。

 『誓約の宝冠』シリーズは以下続巻予定なので、この機会にぜひ既刊の小説シリーズも読んで、『ロードス島戦記』シリーズの魅力にどっぷり漬かってください。

(C)KADOKAWA CORPORATION 2020 (C)水野良・グループSNE
イラスト:出渕裕

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