『KH メロディ オブ メモリー』インタビュー! 『シアトリズム』のノウハウを生かしたリズムアクションとは!?

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 スクウェア・エニックスから11月11日(水)発売予定のPS4/Nintendo Switch/Xbox one用ソフト『キングダム ハーツ メロディ オブ メモリー(以下、KH MoM)』。その開発者インタビューをお届けします。

 『KH MoM』は、『シアトリズム』シリーズを手掛けたインディーズゼロが制作する、『KH』シリーズ初のリズムアクションゲーム。140曲以上の収録楽曲とともに、爽快感あふれるリズムアクションが楽しめます。

 インタビューのお相手は、スクウェア・エニックスの野村哲也氏と間一朗氏、そしてインディーズゼロの鈴井匡伸氏。発売まであと2カ月となる本作の魅力をたっぷりうかがったので、シリーズファンはお見逃しなく!

出発点は『KH』15周年記念サイト

――6月のトレーラーで発表された『KH MoM』ですが、本作の制作経緯からお聞かせください。

間一朗氏(以下、敬称略):もともと『KH』を扱った『シアトリズム』作品を作りたいという話を、僕と鈴井さんの間でしていました。もちろん野村にもその話を持ち掛け、けっこう前から構想は練っていたのですが、やはり『KH』が題材となるとクリアしなければならないハードルがいろいろとありまして……。

 こうして『KH MoM』の発売日を発表できた今でも、よく実現できたなと感じるくらい苦労しました。

――『シアトリズム KH』ではなく、あくまで本作は“『KH』シリーズの新作”という位置づけなのですね。

鈴井匡伸氏(以下、敬称略):そうです。“思い入れのある作品を音楽と一緒に振り返れる”“シリーズ全体を深く愛しているファンでも楽しめる”という『シアトリズム』シリーズ共通の思想はそのままに、まったく新しいリズムアクションを生み出していこうというのが野村さんから提案されたコンセプトだったので。

 システムの内部設計やリズムアクションのレベルデザインなどは、従来の作品のスタッフが携わっていますので、『シアトリズム』シリーズのファンは今回も楽しんでいただけるかと思います。

 『KH MoM』では、『シアトリズム』シリーズを作り続けて蓄積したノウハウを生かして、いろいろな挑戦をしています。例えば、各楽曲の譜面を作るツールを本作用に新しく作り、エネミーの動きを細かく調整する試みをしたり。こうした作り方は、ゼロからのスタートでは難しかったですね。

野村哲也氏(以下、敬称略):過去に作った『シアトリズム ファイナルファンタジー』と『シアトリズム ドラゴンクエスト』では、それぞれ元作品を意識したサイドビューとフロントビューの画面にしていたので、もし『KH』で作るなら3Dでやらないとダメだなと思っていました。最初なんとなく想像していたゲーム像は、完全3D空間でソラたちの周りにいる敵をリズムアクションしながら倒していくというものだったんです。

 でも『KH』15周年の記念サイトで、“音で視るメモリアルサイト”というソラが譜面の上を移動するものが作られたのを見て、「こっちだな」と。そのイメージを鈴井さんたちに伝えたのが、『KH MoM』の制作の始まりでした。

  • ▲こちらが“音で視るメモリアルサイト”。曲を選択すると音楽が流れると同時に、ソラが五線譜の上を移動する演出が楽しめます。

鈴井:5年ほど前に作った最初の企画書では、従来の『シアトリズム』作品に近い絵柄・キャラを立体的に見せる方向にしていたのですが、野村さんから“音で視るメモリアルサイト”の件を伝えられてから、キャラクターもエネミーもまったく違う雰囲気で作り直す方向に舵を切りました。

――発売日は『KHIII』のサウンドトラックと同じ11月11日ですが、これは意識して同じ日にしたのでしょうか?

野村:いろいろ考えた末、11月11日にしました。本当はもっと早く発売することもできたんですけど、新型コロナウイルスの影響もあって前倒しが難しくなってしまい、先に決まっていたサウンドトラックの発売日に合わせる形にしました。

――今年の1月には『KHIII Re Mind』、6月には『KH ユニオン クロス ダーク ロード』が配信され、それから間を置かずに新作が出るということでファンの方々には嬉しい流れですね。

野村:僕もこの開発スピードは『KH』シリーズにしては早いと思うんですけど、鈴井さんはそうでもないみたいで(笑)。

鈴井:これまでの『シアトリズム』シリーズはだいたい1年半ほどで開発してきたのですが、『KH MoM』は2年半ぐらいかかりましたから……(笑)。ゲームの規模や新型コロナウイルスで開発が遅れたこと、あとは10カ国の言語に対応しているなど作業が多岐にわたったことも影響していますね。

間:たしかに、複数言語のローカライズは苦労したね。とくにアラビア語とか。

鈴井:RPGなどに比べたらリズムアクションのテキスト量は多くないのですが、ゲーム内のGOODやEXCELLENTなどの表記、カイリのナレーションなどもすべてその言語に変換しないといけませんからね。アラビア語などはまったく読めないので、ローカライズしてもそれが正しいか自分には判断できないのもツラかったです。

リズムアクションのおもしろさと同時にキャラクターのモーションにも注力!

――ゲーム内容について伺っていきます。まず本作にはストーリーがあるようですが、これは『KHIII Re Mind』からつながるお話なのでしょうか?

野村:時系列的には『KHIII Re Mind』のあとの物語ですが、今までの作品ほどストーリーがガッツリ描かれるわけではありません。ですが、きちんとシリーズにひもづく見ごたえのあるものが用意されています。

 「なぜリズムアクションにまでストーリーを入れるのか」と疑問に感じる方がいるかもしれませんが、昔ガラケーで『モバイルキングダム』というタイトルがあり、そこで遊べたミニゲームの大富豪にすら専用のストーリーが存在していました。

鈴井:今回はカイリのナレーションと合わせた、総集編的なムービーがたっぷり入っています。そのムービーを見ながらダークシーカー編全体を振り返っていくなかに、新たなカットシーンも含まれています。これらの要素は、楽曲を解放しながら音楽と共に物語を振り返る『KH MoM』のメインモードであるワールドトリップというモードに収録されていますね。

――本作のパッケージイラストもカイリが飾っており、彼女が重要キャラクターだということが感じられます。

鈴井:『KHIII』のキーアートのなかに、王冠をかぶったソラがイスに座っているものがありましたが、『KH MoM』のパッケージイラストはそれと対になっています。初めて野村さんからこのイラストを見せてもらったときは、めちゃくちゃ感動しましたね!

  • ▲『KH MoM』のパッケージイラスト。眠りにつくようにイスに座るカイリと、キズナで結ばれた仲間たちの絵が描かれており、ファンにとっては目頭が熱くなる1枚!

野村:ソラが座ってるキーアートは15周年記念のときに初めて公開したものですね。今回の『KH MoM』のパッケージは思いついたのはいいものの、描くのはなかなかしんどかったですね。

  • ▲こちらは本作のスクウェア・エニックスe-STORE購入特典“野村哲也氏からのメッセージ付きグリーティングカード”のサンプル画像。この画像の左側が『KHIII』のときに描かれたキーアート。構図や背景の色合いを見れば、このキーアートと『KH MoM』のパッケージイラスト(画像右側)が対になっているのがすぐにわかります。

鈴井:額の中のキャラクターもきちんと描き込まれてますよね。

野村:額の絵自体にも意味があるので、時間がない中で描ききるのはたいへんでした。『KHIII』のパッケージイラストを描いたときも思ったんですが、キャラクターがどんどん増えていってしまっているので、この方向性は一度リセットしたいですね(笑)。

――ゲーム内のキャラクターはソラ、ドナルド、グーフィーのおなじみメンバーを中心に、ロクサスたちも選択できるようですね。

鈴井:3人パーティが4つぶんと、ゲストとしてディズニーのキャラクターが登場します。

――ソラはシリーズ1作目のときの姿ですが、これは記憶世界のソラ……なのでしょうか?

鈴井:そこは……秘密です(笑)。

――従来の『シアトリズム』作品はフィールド、バトル、イベントの3つのミュージックステージで構成されていましたが、『KH MoM』ではどうなりますか?

鈴井:ゲーム部分は『シアトリズム』から大きく作り直していて、『KH MoM』では楽曲の大半がフィールドバトルとなっています。『KH』シリーズといえば、広大なフィールドを駆け抜けながら敵と戦っていくスピード感・爽快感が重要だと考え、このような構成にしました。それ以外に、思い出の映像を背景にして進むメモリーダイブ、数は多くありませんが要所で登場するボスとのバトルに焦点を当てたボスバトルの3つのステージがあります。

 従来の『シアトリズム』作品と照らし合わせると、フィールドステージとバトルステージがフィールドバトルという1つの形に統合されたようなものです。

――3Dになってキャラクターの動きが派手になることで、肝心のリズムアクションへの集中が削がれる恐れもあったと思いますが、そのあたりのバランスのとり方には苦労したのでは?

鈴井:おっしゃる通りで、譜面が見づらくなったりプレイしづらくなったりしないように最後まで調整を重ねました。リズムアクションとしてのおもしろさはそのままに、キャラクターの動きをいかに気持ちよく見せるかにも注力していて、本作用の新規モーションも作っています。エフェクトや効果音についても、『KH』チームの監修のもとで制作していて、新規の効果音や収録音源の調整はすべて『KH』サウンドチームにお願いすることができました。こういった深い取り組みを重ねて、シリーズファンの思い出を損なわないことを重視しました。

 操作方法に関しては、『KHIII』などを遊んだユーザーがすんなり入り込めることを意識していて、例えばPS4版だと◎ボタンで武器攻撃、×ボタンでジャンプ、△ボタンでアビリティなどが発動します。ジャンプのタイミング1つをとっても、楽曲のリズムに合わせて調整していますので、うまくプレイするとノリノリで気持ちよく遊べますよ。

――携帯機の『シアトリズム』作品では主にタッチペンを使っていたので、ボタン入力中心の本作は違った操作感になりそうですね。

鈴井:入力も単に1つのボタンを押すだけではなく、最大で3つのボタン同時押しが求められます。例えば、◎ボタン入力が必要なところは◎、R1、L1ボタンのいずれかを押せばいいのですが、2つ同時押しの場面ではそのなかから2つ、3つ同時押しでは全部のボタン入力が必要です。

 さらに、開発の後半で野村さんから上級者向けの内容を入れたいと提案されまして、パフォーマースタイルという操作方法を実装しました。これは普通の操作に加えてR2、L2、□ボタン、さらにスティック操作も要求されるテクニカルなモードになっています。逆に、音ゲーが苦手な人の心理的な負担を減らすためにワンボタンスタイルというのもありまして、この操作方法だと1つのボタンで全部の入力ができるのでかなりラクです。

間口は広く、やり込み要素は盛りだくさんに!

――『シアトリズム』シリーズではキャラクターの育成やカスタマイズなども凝っていましたが、本作ではこれらの要素はありますか?

鈴井:キャラクターのレベルや成長要素などは今作にも存在します。レベルが上がって攻撃力が上がると、一部のエネミーを気絶状態にできますし、HPが増えれば入力をミスしてもゲームオーバーになりにくくなります。あと、楽曲をプレイする時に使用する回復アイテム等を設定することもできます。

 『KH』シリーズおなじみのアイテム合成をするシステムもありまして、合成をすることで一部の楽曲開放やアイテム、コレクションカードをゲットできます。リズムアクション部分はもちろんですが、それ以外のやり込み要素も入念に作り込んでいますので楽しみにしていてください!

――音ゲーというと、やはり収録楽曲が重要なポイントだと思います。『KH MoM』では140曲以上の楽曲が収録されているようですが、どういう基準でチョイスしていったのでしょうか?

鈴井:一番重視したのは、ワールドトリップで物語を振り返るうえではずせない曲です。ワールドの構成上、絶対に入れるべき曲をまずは固めて、あとはメモリーダイブで使う印象的な曲などを順番に吟味していきました。過去に行われていたさまざまなアンケートや調査結果、コンサートのセットリストなども曲選びの参考にしています。

 収録楽曲は140曲以上とありますが、あくまで譜面として遊べる曲がその数字であって、ゲーム中に少しでも流れる曲をすべて数えるとさらにそれ以上はあると思います。

――曲選びなどに関して、『KH』シリーズのコンポーザーの方々と何かやり取りはしたのでしょうか?

鈴井:我々のほうから、こういう曲を使いたいというリストを作成して情報共有はさせてもらいましたが、コンポーザーの方々と何か特別なやり取りをしたわけではありません。ある意味そこは、コンポーザーの方々にとってもゲームを遊んでのお楽しみとさせてもらっています。

 ただ、タイトル画面で流れるおなじみの“Dearly Beloved”とスタッフロールの曲は本作用のアレンジを下村陽子(『KH』シリーズのメインコンポーザー)さんにお願いしましたので、そのやり取りはありました。

――携帯機の『シアトリズム』作品は毎日少しずつ遊ぶことを狙った作りになっていましたが、『KH MoM』はどうでしょうか?

鈴井:作り方としては同じですね。毎日遊ぶことでボーナスを獲得できますし、コレクション要素が膨大なので、ちょこちょこ遊びながら満喫してほしいです。

 きっと、ゲームを買った人はまずワールドトリップを集中して遊んでエンディングまで進めると思うんですが、『KH MoM』はそこからが本番だと思ってください。各楽曲を難易度ごとにプレイするだけでも相当遊べますし、コレクションカードの収集や他プレイヤーとの対戦も含めればかなり長く楽しめますよ。

――本作はPS4、Nintendo Switch、Xbox oneの3機種で発売されますが、機種による違いはありますか?

鈴井:基本的なゲーム内容は3機種とも同じですが、Nintendo Switchのみローカル通信によるフレンドバーサスと、最大8人で遊べるフレンドバトルロイヤルというモードがあります。

――発売後にDLCで楽曲を配信する予定はありますか?

間:その予定は今のところありません。今回は1本のタイトルのなかで最初から最後まで遊んでもらえるよう詰め込もうと、当初から話し合っていましたから。

――では、発売を待つユーザーの方々に向けてメッセージをお願いします。

間:楽曲ごとにシリーズおなじみのビギナー、スタンダード、プラウドの難易度がある以外に、操作スタイルの切り替えもあって、遊び方の幅はだいぶ広いです。回復アイテムを活用したりレベルアップをすることでクリアが難しいところも乗り越えることができ、きっと皆さまがエンディングまで到達できると思いますので、『KH』シリーズの楽曲が好きな人はどうぞ手に取ってみてください。

鈴井:これまでの『シアトリズム』作品で培ったノウハウはたくさんありますが、それらを『KH』にどう落とし込めば楽しくなるか1つ1つ考えました。『KH』らしい雰囲気とリズムアクションの爽快感の両立は骨が折れましたが、苦労したぶんプレイしていて気持ちのいい出来に仕上がっています。携わったスタッフのなかにも『KH』が大好きな人間が多く、愛情込めて制作しましたので、最高の音楽とともに心ゆくまで味わってください!

野村:『KH MoM』は、これまでの『KH』作品の総まとめという側面もあります。カイリのナレーションとともに今までの物語がわかりやすくまとまっているので、『KH』ファンはもちろんですが、シリーズ未経験の人たちにもオススメしたいです。機種や海外での対応言語数などの間口を広げていく方向性なので、シリーズに触れてこなかった人たちも、この機会に『KH』の世界を体験してみてください。

(C) Disney. (C) Disney/Pixar. Developed by SQUARE ENIX
※画像は開発中のものです。

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