『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』京極監督インタビュー

長雨
公開日時

 野原しんのすけ(声優:小林由美子)ことしんちゃんと、家族や友だちとの賑やかな日々を描く国民的TVアニメ『クレヨンしんちゃん』。

 しんちゃんと、選ばれし勇者のみが使えるラクガキングダムの秘宝“ミラクルクレヨン”を手にしんちゃんが描いた個性的なラクガキたちが大冒険を繰り広げる劇場版最新作『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』が9月11日より全国東宝系にて公開されています。

 本作の監督・脚本を務める京極尚彦さんのインタビューを、前後編にわたってお届け! 前編は作品に込められた想いや収録のエピソードなどをうかがいました。

アイデアと原作が結びつき映画になる面白さ

――まずは、監督のオファーを受けたときのお気持ちから教えてください。

 まさか自分に来るとは思っていませんでした。ただ、最近はやや対象年齢が高めの作品に携わることも多かったのですが、そもそもは昔から子ども向けアニメに携わっていた人間なので、特に戸惑いはなく、本来の場所に戻ったという感じですね。

 もともと“皆が見て楽しめる作品”と“技術的に新しいことをする”の両方を大事にするスタンスなので、すでに皆が見るという目標を達成している『クレヨンしんちゃん』で自分が何を出来るのかワクワクしました。

――作品に込めたテーマを教えてください。

 “こうじゃなきゃいけない”という縛りは特になく、歴代の映画を観て自分が何をしたいか考えていきました。

 そのなかで『クレヨンしんちゃん』なのにクレヨンをモチーフにした映画が今までなく、絵に描いたものが出てくるというお話も昔からやってみたかったのでそれが結びついた形です。

 物語は脚本の高田 亮さんたちと話すなかで、膨らんでいきました。

――クレヨンがポイントになる物語は、監督のアイデアだったんですね。

 きっかけはそうですが、もともと原作漫画にどんな絵でも実体化するペンが登場する「ミラクル・マーカーしんのすけ」というお話があったので突飛な設定も採用できたんだと思います。

 マーカーをクレヨンにして、原作のぶりぶりざえもんとななこおねいさんをモデルにしたニセななこはそのまま登場させています。もう1人は映画だと描きにくいデザインだったので、ブリーフになってもらいました(笑)。

 数ページのマンガを映画にするのは面白かったですね。

――ちなみに監督は子どものころの落書きの思い出はありますか?

 子どものころから絵が好きで、小学生くらいから描いていました。

 でもちょっと変わっていて、上手な人の影響を受けてデッサンや立体的に描くなど綺麗な絵を描きたいという気持ちが強かったです。

 だからクレヨンでのびのび描くということは、出来ていなかったかもしれませんね。

ひと夏の冒険を子どもたちに感じてほしい

――原作漫画とアニメでそれぞれ違う魅力のある『クレヨンしんちゃん』ですが、監督の思う“らしさ”は?

 紋切型の作品ではないので、とても説明するのが難しいですね。

 しんちゃんを中心に野原家そのものが、誰もがいるよねって思うけど実際にはなかなかいない、リアリティのある家族や子どもの象徴なんだと思います。

――オファーの際に特に縛りはなかったというお話でしたが、自由度の高い作品だけに作りやすかった、逆に難しかったなどあるのでしょうか。

 しんちゃんに寄り添って、彼を知っている人なら作りやすいと思います。とらえどころがなくて、パッと触れ合ってすぐに人となりがわかる子じゃないじゃないですか。

 僕は彼から離れている期間があって最初は距離があったんですが、TVアニメに参加したり、映画で最初から最後まで自分で絵コンテを描いたりして、寄り添った感じはあります(笑)。

――監督が特にこだわった、または好きなシーンを教えてください。

 子どもたちの楽しい気持ちが世界を救うシーンが物語のピークになり、流れとしても説得力のあるものになるようにしました。

 また、冒険ものは移動中に友情が育まれていくのが楽しくて好きなので、ぶりぶりざえもんとチャンバラをさせるなど、それを映画で体験できるシーンを入れています。

 今年はなかなか夏の思い出を作れない方も多かったと思いますが、冒険の雰囲気が子どもたちに届くといいですね。

――劇場版は大人でも感動する作品ばかりです。制作で親世代を意識したことは?

 僕は、特に意識していません。子どもが楽しめればいいので、気取らず、難しくしようとは思いませんでした。

 一緒に映画を観る親は子どものころに『クレヨンしんちゃん』を見ていた世代なので、自然に親子で楽しめる作品になっているはずです。

収録には豪華声優陣が30人以上参加

――劇中にさまざまなラクガキが登場します。監督も描かれたんですか?

 僕は特に描いていないです。落書き的なものは、仲間の1人・ブリーフのデザインをこんな感じとさらっと描いたくらい(笑)。

 また、物語に出てくるラクガキングダムのキャラクターのある姿も、僕がホワイトボードにこんな風でって描いたものそのままです。アニメーターさんだとどうしても上手くなってしまうので、表現するのが大変そうでした。絵柄や声のおかげで、とてもお茶目なキャラになっていると思います。

――お話に出てきたブリーフなど、本作は魅力的なキャラがたくさん登場しますね。

 お城にいる人たちのドラマをもっと見せたかったですね。空中の“ラクガキングダム”にいる彼らが、地上に降りる案もあったのですがとても2時間に収まらず。

 でも味のある人がたくさんいるので、見ていてクスクス笑えると思います。

――“ラクガキングダム”のキャラと言えば“指導官リンゴ・イチゴ・メロン”でゲスト声優を務めたりんごちゃんがすごく存在感がありました。

 ものまねは、6種類くらいやってもらいました。普通のキャラもピッタリな演技をしてもらっておもしろかったです。

――ほかにも防衛大臣役の山田裕貴さんや、豪華な声優陣が参加しています。収録で印象に残っていることはありますか?

 ブリーフ役の冨永みーなさんに「ブリーフって何ですか?」っていう話から説明し、序盤はきょとんとされていましたが、上手い方なのですぐに役を掴まれていました。

 ニセななこは本物のななこおねいさんを演じている伊藤 静さんにお願いしたのですが、「しんちゃん好きよ」だけで感情のすべてを表現してくれています。

 ぶりぶりざえもんは劇場版では久しぶりの登場で、存在感があります。役との付き合いは僕よりも演じている神谷浩史さんの方が長いので、普通の場面は阿吽の呼吸、あとはシーンに合わせてという形でした。

 まだ集まって収録ができる時期だったので、そうそうたる声優陣が学校の1クラス分くらい集まる濃いアフレコになったんです。苦労はありませんでしたが、大御所ばかりで緊張したことを覚えています。

――収録のときにこだわった演出があったら教えてください。

 皆さん上手い方ばかりなので、大きな部分はお任せしています。

 ただ、あえて過剰に泣かせるような演出にはしていません。アニメらしい映画ですが、終盤はリアルさも大事にしています。

――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

 誰もが楽しめる冒険活劇を作りました。いろいろな人に携わっていただき、チャレンジングな作品に仕上がったと思います。

 長らく『クレヨンしんちゃん』を離れていたという人にも見てほしいし、毎年見ている方にも一風変わったテイストを楽しんでもらえるはずです。

 公開時期が遅くなってしまいましたが楽しみがある方がいい時代、ふらっと笑いに行こうという気軽な気持ちで見ていただけたら嬉しいです。

(インタビュー後編は近日掲載予定です)

©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020