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もう一度見たくなる『映画クレヨンしんちゃん』京極監督ネタバレありインタビュー

長雨
公開日時

 野原しんのすけ(声優:小林由美子)ことしんちゃんと、家族や友だちとの賑やかな日々を描く国民的TVアニメ『クレヨンしんちゃん』。

 しんちゃんと、選ばれし勇者のみが使えるラクガキングダムの秘宝“ミラクルクレヨン”を手にしんちゃんが描いた個性的なラクガキたちが大冒険を繰り広げる劇場版最新作『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』が9月11日より全国東宝系にて公開されています。

 本作の監督・脚本を務める京極尚彦さんのインタビューを、前後編にわたってお届け! 物語の見どころなどをお聞きした前編に続き、後編ではキャラクターの魅力など、より作品に踏み込んだお話をうかがいます。

子どもの象徴・しんのすけと、現代の子ユウマ

――タイトルにも登場する“ほぼ四人の勇者”たちのことを教えてください。

 ぶりぶりざえもんは、神谷浩史さんの演技も含めていつも通りですね。ちょっと下品でわがままでヒーローっぽくない部分がありつつ、でも憎めないという。

 そして、勇者として仲間を引っ張っていくタイプじゃないしんちゃんの代わりに、先導役になってイライラしたりするのがブリーフです。2日目のおパンツでちょっと匂いますが、見た目も中身も真っ白です(笑)。

 ニセななこは、原作漫画(コミックス23巻に収録された外伝『ミラクル・マーカーしんのすけ』に登場)にも登場していますが、しんちゃんを愛する心優しいキャラクター。感情がないかのように見えて、助けるときは一生懸命動きますし、しんちゃんが他の人と仲良くしているときはそちらの方を見つめています。

 直接的な表現はしていませんが、寂しい気持ちとかしんちゃんへの母性本能的なピュアな気持ちがあるのかなと思います。

――仲間たちは本当に個性的ですよね。

 ユウマに出会うまで、まともな子がいないのが面白いですよね(笑)。

――ユウマくんは予告でも紹介されていなかったので、本編を見てもう1人仲間がいたことに驚きました。彼に込めた想いを教えてください。

 しんちゃんが子どもの象徴なのに対して、ユウマはクールで頭がよく、ちょっと寂しいところのある現代の子どもの象徴。もちろん、今の子が皆彼のようにクールなわけじゃないですけどね。

 現代の要素が混じることで生まれる違和感が、よりしんちゃんの存在を引き立てています。

 またラクガキとは必ず別れが訪れるので、しんちゃんが1人になったときに残るものが何もないのは悲しい。

 しんちゃんの頑張りを見守っている人間の友だちであり、成長させてくれる存在として彼を登場させました。

 あくまでも主役はしんちゃんとラクガキたちですが、ユウマは物語に余韻や重層感を与えてくれる子です。

――タイトルには、彼の存在も隠されていたのかと見たあとに納得しました。

 しんちゃんにとっては、ユウマも含めての“四人”なんですよね。

 僕がつけたタイトルじゃないんですが、いい名前をもらったなと思いました。しんちゃん、ブリーフ、ニセななこ、ぶりぶりざえもんが“四人の勇者”というようにも読めますし、しんちゃんと四人の勇者という風にも感じられますよね。

 しんちゃんを中心にという部分は気を付けましたが、誰かを強調しようという意図はなく、ヘンテコ桃太郎のようなイメージでしたね。ユウマを含めて全員がいないと、成り立たない作品です。

キャラクターらしい仕草に注目

――繰り返し見ることで、新たな発見があるのも劇場版の楽しさです。注目してほしい場面などありますか?

 戦いの場面なども派手で楽しめると思いますが、自分としては日常的な旅の道中の部分にこそ、しんちゃんたちの“らしさ”を感じられるはずです。最初に見るときはどうしても物語の流れを追って見ると思いますが、もし見直すことがあれば、そういう部分にも目を向けてもらえると新しい発見があると思います。

 小ネタは散りばめています。普通のアニメは話している人以外は動きを省略していることも多いですが、本作では会議しているときにぶりぶりざえもんが鼻をほじったり、お尻をかいていたり、いろいろ動きをつけています。

 ブリーフはまじめなので話す人をちゃんと見ますし、ニセななこは派手に動いてこそいませんが、いつもじっとしんちゃんを見つめているんですよ。

 あとニセななこは表情こそ変わりませんがカーチェイスで楽しそうにしていますし、みさえとしんちゃんが再会したときに寂しそうに椅子を直すなんて仕草も入っています。

 マサオくんなんかも、物語と関係がない場面での動きにかなり凝(こ)っていますし、その人物なりの動きを盛り込んでいます。これが地味に大変で、メインキャラクターを絞ったからこそ出来たことだと思います(笑)。

 ニセななこについては、伊藤静さんの声の演技にも注目してほしいですね。セリフは「しんちゃん、好きよ」しかないんですが、不気味やコミカルに感じる部分もあれば、ちょっとグッとくる演技もあります。かなり演技の幅が広いので、繰り返し見るときは場面ごとの声優の演技にも注目すると、より楽しめると思います。

――物語終盤にある「やっちゃえば! やっちゃえば!」という街全体の大合唱のシーンがかなり印象的でした。この歌の作詞は、監督がされたとか?

 そうです。祭囃子というか、テンションの上がる歌にしています。日本人ならではの感覚なのか、祭りや文化祭のときに皆で歌う高揚感って忘れがたいものですよね。楽しい気持ちを体現すると言うか。

 難しいと子どもは歌えないので、お風呂や家で鼻歌を歌ってしまうような同じことを繰り返し耳にこびりつく歌詞にしています。子どもは、同じことを何度もやることってありますしね。

 こういう子どもの理屈で説得力を持たせる歌、演出って、しんちゃん以外ではあまり出来ないと思います。

――映画を見終わったあとも、しばらく頭から離れませんでした(笑)。

 願わくば、映画を見たお子さんたちには、ぜひ家でも歌ってほしいですね。

 今の時代は道路や壁へのラクガキをおすすめするわけにはいきませんけど、紙にラクガキするのも楽しいと思います。親子で映画を見た方は、家で一緒に歌ったり、ラクガキをしたりして楽しんでもらえるとうれしいですね。

©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

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