『けものフレンズ3』1周年記念企画 1章~5章の注目ポイントを解説っ!【ネタバレあり】

原常樹
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 どうもこんにちは、フリーライターの原 常樹です。

 セガから配信中のiOS/Android用アプリ『けものフレンズ3』がいよいよ1周年を迎えます!

 『けものフレンズ3』の魅力といえば、やはりそのストーリー。かわいらしいフレンズたちが紡ぎ出す物語は癒しに満ちあふれている一方で、そこに内包されたテーマはかなり重厚……。とくに最新章である第8章の物語は、SNSを中心に衝撃を巻き起こしました。

 せっかくなので、この機会に現在配信済みのストーリーの中から第5章までのストーリーを、筆者の個人的なオススメポイントを交えつつ、振り返っていきたいと思います!

 なお、ネタバレを含みますので、未プレイの方はご注意ください。

1章~5章のストーリープレイバックっ!

 本作の舞台は、世界のどこかに造られた超巨大総合動物園“ジャパリパーク”。ジャパリパークではヒトの形へと姿を変えたアニマルガール──つまりは“フレンズ”がなかよく暮らす一方で、そんなフレンズたちから輝き(かけがえのない大切なモノ)を奪おうとする謎の生命体・セルリアンの活動が報告されていました。

 プレイヤーはセルリアンからパークの平和を守る保安調査隊──「通称:探検隊」に志願し、アンインチホーの港へとやってきます。

 港でプレイヤーは、探検隊の副隊長であるサーバルに憧れるドール(アカオオカミ)と彼女の家庭教師であるミーアキャットに出会います。課外学習として近隣のセルリアンを退治するドールたちでしたが、そこに“サーバルが巨大セルリアンに輝きを奪われた”という最悪の報せが飛び込んできました。

 心の中の大切な何かが消えてしまったというサーバルに代わってドールが探検隊の副隊長に、そしてプレイヤーも探検隊の隊長に正式に就任。サーバルの輝きを奪った巨大セルリアンの行方を追うことになります。

 先に言ってしまうと、この巨大セルリアンは探検隊にとって宿敵のような存在。ストーリーを通じて対峙していく相手となります。逆説的に言えば、この“巨大セルリアンを打倒する”という目標があるがゆえに『けものフレンズ3』のストーリーはわかりやすいのかもしれません。

第1章のストーリー

 アンインチホーのジャングルエリアで、ドールたちがまず出会ったのはミナミコアリクイ。彼女の話ではパーク内に“密猟者”とそれに協力する“闇のフレンズ”、さらには“首の無い馬”や“怪物のフレンズ”がいるという不穏な噂が流れているのだとか……。

 途中で出会った警備隊のハクトウワシの誤解も解きつつ、歩を進めた一行はキャンプの痕跡を見つけます。そして、その道中でパークガイドロボットのラッキービーストとも出会いました。ラッキービーストの情報で“怪物のフレンズ”の正体はマレーバクだとピンと来たミナミコアリクイでしたが、同時に“マレーバクとともに巨大なセルリアンに襲われた”という大事なことを思い出します。

 さらには“闇のフレンズ”と関連性がありそうな真っ黒なフレンズ・ブラックジャガーがこちらの様子をじっとうかがっていることにも気づきました(マレーバクがセルリアンに襲われたと聞いて彼女はどこかに行ってしまいますが)。

  • ▲「そんな大事なことを忘れているなんて、ミナミコアリクイちゃんはポンコツ過ぎるのでは!?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これも実は大きな伏線なんですよね……。

 闇の中で視認しづらいマレーバクやブラックジャガーのことは後回しにしつつ、探検隊は大量発生しているセルリアンをパッカーンしながら巨大セルリアンの痕跡を追い続けます。その結果、一行は巨大セルリアンこそがセルリアンを大量発生させている原因だということに気づきました。

 一行は無事だったマレーバクを見つけますが、そこにブラックジャガーもやってきて……。

 第1章は世界観の説明も兼ねているために、ストーリーの構成もわりとストレート。むしろ“フレンズたちがいかにかわいいか”というところをダイレクトに出すような構造になっています。実際、筆者もプレイしていてミナミコアリクイたちのかわいさにほっこりしてしまいました。

 改めて振り返ってみると、『けものフレンズ3』はかわいいという一言で片づけられるような浅いシナリオではまったくないのですが、つかみに関してはライト。しかし、全体のバランスを考えるとこれがまた功を奏していた気がします。

第1章のオススメポイント

 第1章を通じてひとつ言えるのは、フレンズたちは尊いということ。

 とくにミナミコアリクイ、マレーバク、ブラックジャガーという三人のフレンズの関係性は、第1章のみならず、『けものフレンズ3』全体を通してみても非常に完成された尊さです。見ているだけでどれだけ和むことか……。

 三人の関係性は、イベント『ブラックジャガーパーク建設中!』でも深く掘り下げがなされました。あの「ブラックジャガーパーク(そんなものはない)」というハイパワーなミームが生まれたのもここからでしたね……。

 イベントはもう終了していますが、期間限定のイベントも“思い出”から振り返れるというのが『けものフレンズ3』の大きな魅力のひとつ。イベントを遊んでおらず、「なんだよ、ブラックジャガーパークって……」と気になった方は、ぜひともこちらを読んでみることをオススメします。

 そして、“続・ブラックジャガーパーク建設中!”にも期待を!(現時点でそんなものはない)

第2章のストーリー

 警備隊に所属していたハクトウワシを探検隊に迎え(警備隊をやめたわけではなく兼任)、一行は巨大セルリアンの痕跡を求めて、キョウシュウチホーのサバンナエリアへとやってきます。

 ここで出会ったのがオオフラミンゴとアフリカゾウ。彼女たちに占いが得意なダチョウを紹介されますが、なんとダチョウはセルリアンに襲われたことで“占い”の能力を失っていました。一行は先のことを占ってもらうため、そして悲嘆に暮れるダチョウ自身のためにも、奪われた輝きを取り戻そうと申し出ます。

 一方で、CARSCに所属する客員研究員のカレンダと、相棒のロボット・フリッキー、彼女に同行するジャパリ団(ブラックバック、タスマニアデビル、オーストラリアデビル)も少しずつ表に出てきます。“密猟者”や“首の無い馬”、“闇のフレンズ”は彼女たちを示していました。単純に噂に尾ひれがついてとんでもないことになっていたわけですね……。

 しかし、多くのフレンズは不穏な噂を未だに信じています。暴走するフリッキーを目撃したチャップマンシマウマは「首の無い馬だ!」とパニックに陥り、なおかつ3匹同時に現れたセルリアンに大切な帽子を奪われてしまいます。

 しかも、その場にいたオジロヌーやオグロヌーも“雨の匂いを嗅ぎ取れる”という能力を気づかないうちにセルリアンに奪われていた模様。ダチョウの輝きを奪ったセルリアンも同一個体の可能性があるということで、一行はすぐに3匹のセルリアンの行方を追うことになります。

 このセルリアンは雨の降る場所に現れるという性質がある模様で、雨が降りやすい場所(水場になっている場所)を熟知したアフリカゾウが案内を買って出ます。そこでドールはフリッキーと遭遇。さらに1体のセルリアンをパッカーンし、チャップマンシマウマのオシャレな帽子とダチョウが占いに使うタマゴを取り戻すことには成功しました。

 ここで自信をつけたアフリカゾウは巨大セルリアンの行方を追うだけではなく、みんなで協力して倒せないかと言い出します。「誰かの輝きが奪われるかもしれないのに黙ってみているのはいやだ」というアフリカゾウに、ドールも戦うべきだと主張します。

 しかし、オオフラミンゴやハクトウワシ、ミーアキャットは「今は無理だ」と冷静にたしなめます。ただし、それはあくまで現時点の戦力を分析して出た結論。今できることを積み重ねていつか倒すという考えは全員に共通していました。

 気を取り直してセルリアンを追う一行。ドールは「ばーちゃんのような立派な群れのリーダーになるのが夢だ」と言いつつ、違う動物でまとまって一緒にいる今の状況も群れみたいなものだというアフリカゾウの言葉に感動します。

 ドールは自分が探検隊の副隊長になったのは偶然だと考えていて、彼女自身は「サーバルと同じぐらい立派な探検隊の隊員になる」という夢を持っていました。しかし、アフリカゾウには「サーバルと同じぐらいもう立派な探検隊の副隊長だよ」、「その次の夢ってある?」と問いかけられて言葉に詰まってしまいます。

 一行は遭難しかけていたジャパリ団のメンバーと邂逅を果たしながらもセルリアンの探索を継続します。そんな矢先、占いの能力を取り戻しつつあるダチョウが怯え始めます。そして、その予測のとおり、アフリカゾウがセルリアンにさらわれてしまいました。アフリカゾウがさらわれたのも、オオフラミンゴにとって彼女こそがキョウシュウチホーで初めてできた友だちであり、かけがえのない“輝き”だったから。

 頼みの綱のアフリカゾウがいなくなったことで雨雲の場所がわからず、ダチョウも未来を見ることに恐怖感を覚えてしまいます。なぜ自分が巨大セルリアンに襲われた際に逃げなかったのか──それは「きっとどうしようもないと悟って諦めてしまった」からだと。そして、占いの結果として覆しようのない未来が出たときに受け止めきれる勇気も伝える言葉もなくなってしまったのだと。

 セルリアンの行方を追うことができなくなり八方ふさがりとなった一行ですが、ここで思わぬ人物たちと合流することになり……!?

 第2章は“セルリアンの奪う輝きとは何か”というところを、さらに深く掘り進めている章です。これは『けものフレンズ3』のストーリーを語る上でも、非常に大切なベースとなる部分。危険察知能力も高いダチョウが「なぜ輝きを奪われてしまったのか」というのも大きなカギになってきます。

第2章のオススメポイント

 第2章で、ポイントになるのは“未来”という概念。はたして、未来に思い描く夢はあるのか? 絶望的な未来が待っているとわかっていて先に進むことができるのか? フレンズたちを通してそんな哲学的なテーマを投げかけてくる──少年マンガのような熱さとカタルシスにあふれています。

 そう、『けものフレンズ3』はストーリーがとにかく熱い!

 フレンズたちが、少年マンガで語られてきたような普遍的なテーマを次々と突きつけてきます。彼女たちはただかわいいだけのマスコットではなく、熱を帯びて日々をたくましく生きているアニマルガールたちなんだなぁと肌で感じられるんですよね……。

 第1章でまだまだ未熟だったドールが“夢”を持つようになり、ひとつの“未来”を見据えるようになるという描写はとくに印象的だったと思います。

 余談ですが、第2章で活躍したダチョウは、冷静に眺めてみるとメチャクチャかわいいです。ダチョウという動物の性質もありますが、身長も非常に高くてスタイルはバツグン。ただ、彼女はストーリーの端々や、けものミラクルの最中の“ぶっ飛んだ表情”からどこか残念美人感も漂っているという……。まぁ、そんなところも彼女の大きな魅力なんですけど。

第3章のストーリー

 リウキウチホーにやってきた探検隊の一行は、マイルカやカリフォルニアアシカ、カリフォルニアラッコと出会います。しかも、そこにカレンダやジャパリ団のメンバーもやってきて大騒ぎに(探検隊の面々と遊びたい一心だけでここまでついてきたジャパリ団の行動力もすごいものがあります……)。リウキウチホーのセルリアンは過去にサーバルがほとんど倒してしまったということで平和な空気が漂っています。

 しばらくワチャワチャと遊んでいる一行でしたが、“みんなのおかーさん”ことシロナガスクジラが戻らないことを心配して海に潜ったマイルカは、そこで大量のセルリアンと遭遇。探検隊と力を合わせつつシロナガスクジラの救出に成功します。

 ドールたちとすっかり仲よくなったマイルカは各地を旅する探検隊の活動に憧れを抱き、ミーアキャットの「なら、探検隊に入りますか?」という問いかけにビックリ。ただ、探検隊のお仕事はつらいことや悲しいこともあるという言葉に考え込んでしまいます。

 一方でシロナガスクジラも「旅がしたい」と言い出すようになったマイルカに思うところがある様子。どんなに離れてもきっとお母さんと呼んでくれるに違いないし、そのことが「とぉーっても嬉しい」という絆は確固たるもの。一方でだからこそ離れるのが寂しいという感情を覗かせます。

 このシーンでは、シロナガスクジラの(別の動物でありながら)マイルカを子どもとして見守る親の気持ちと、家庭教師としてずっとドールを見守ってきたミーアキャットの気持ちがどこかリンクする部分でもありました。ほら、動物のミーアキャットが教育する対象ももともとは自分の子どもですし……。

 ミーアキャットは前のシーンでマイルカに「本当に探検隊に加わりたいならしっかり悩んで、考えなさい」、「それでも探検隊に入りたいというなら自分は止めない」というメッセージを送っていましたが、実はドールもまったく同じことをアンインチホーで言われています。

 両者の関係性で大きな違いがあるのはまさにここだと筆者は感じました。どちらも家族のように深い絆で結びついているものですが、心配しながらも“信じて送り出せるかどうか”という点においては差異がある。少なくともこの時点では、シロナガスクジラはマイルカから完全に子離れできていないというのが伝わってきました。

 さて、平和だったはずのリウキウチホーですが、誰も巨大セルリアンを目撃していないことに一行は疑問を覚えます。その結果、一行は巨大セルリアンは輝きとして“記憶”を奪うのではないかという結論にたどり着きます。実はシロナガスクジラも巨大セルリアンに襲われたことで記憶を失っており、戦う力を失っていました。

 さらに目に見えない海中にはセルリアンがびっしりと発生しており、リウキウチホーは実際には危機に瀕していたという事実が明るみに出ます。探検隊だけでなく、リウキウチホーのフレンズやジャパリ団も協力して彼らは襲い来るセルリアンを迎え撃つことに。

 その過程で油断したハクトウワシはセルリアンによって海中に引きずり込まれます。そこで彼女を救ったのは他ならぬマイルカでした。彼女は力を失ったシロナガスクジラや、家族のようなカリフォルニアアシカ、カリフォルニアラッコを始めとするみんなのことを大切に想い、だからこそ「今まで心配してもらってばかりだったけれどこれからはみんなのことを心配したい」という決意のもと「探検隊に入れて!!」と懇願します。ここはマイルカが本格的に親離れをしたシーンとも言えます。

 絶望的な状況の中、正式に探検隊の一員となったマイルカは再びセルリアンたちと対峙します。

 さらにそこに手を貸したのはリウキウチホーにいる多くのフレンズたち。自分たちだけでは勝てなくても群れならば勝てるはず──このアイデアを出したのはほかならぬドールでした。

 おそらく、このシーンで垣間見えたドールの成長に心惹かれた隊長さんは多かったんじゃないでしょうか。群れという概念を学習し、そこに夢を持ち、大局的な視点も身につけている。彼女は旅を通じて少しずつ変化していっているわけです。それもドンドン前に、真っすぐに。

 そんな彼女の姿を見ていると我々も自然と元気をもらえるというか……。本当にこの辺りの展開は、心を熱くさせてくれるものがあるんですよね。

 そう、『けものフレンズ3』はストーリーがとにかく熱い!

 ……えっ、第2章の振り返りでも言った? あっ、はい。大事なことなんで2度言わせてもらいました。

第3章のオススメポイント

 第3章では、フレンズ同士の特別な関係性もより深掘りされているイメージです。とくにドールとミーア先生と、シロナガスクジラとマイルカというふたつの親子の対比はストーリーのひとつの軸に。ミーア先生とシロナガスクジラが通じ合ったように語るシーンは、言葉数こそ少ないものの“ふたりの母親”の通じ合う感じがたまりません……。

 “家族”というのはアニメやゲームでもよく扱われる普遍的なテーマではありますが、『けものフレンズ3』も真っ正面からそこに切り込んでいくことで、老若男女関係なく刺さる内容に仕上げているのはさすがだなぁ……と。きっと、第3章を最後まで追って家族サービスをしたくなった隊長さんも多いと思います。

 あと、重要なポイントとして、ジャパリ団の面々と探検隊との絆が強くなっているというのも忘れてはなりません。ジャスティスを掲げるハクトウワシと、悪を貫くブラックバックとの、これまた別ベクトルから通じ合う感じは、今後の伏線にもなっているかと思います。正義と悪は紙一重(どっちもかわいい)。

第4章のストーリー

 探検隊は警備隊の拠点があるというゴコクチホーへとやってきます。リウキウチホーで出会ったコノハ博士(アフリカオオコノハズク)とミミちゃん助手(ワシミミズク)が巨大セルリアンにまつわる情報を持っているということでわざわざやってきた一行でしたが、コノハ博士たちは“信頼できない仲間に背中は預けられない”ということで、実力を試すべく“入隊テスト”を受けるように言い出します。

 これは警備隊の中では恒例の行事になっているようで、線路を辿りながら警備隊の拠点(使われていないトロッコ列車の駅舎)へと歩いていくというもの。ただし、その途中には警備隊の精鋭が待ち受けており、さまざまな試練を用意していると言います。

 しかもコノハ博士たちはラッキービーストやスタッフカーを走り去らせる(正確には隊長に命令させるように仕向け)、早々に離脱させるという策士っぷりを発揮。どうにもならなくなった一行は、しょうがなく入隊テストを受けることに決めました。

 こんな手の込んだことをコノハ博士たちが仕掛けたのは、リウキウチホーで激辛のシマトウガラシを食べるのを探検隊が止めてくれなかった(さらに追い打ちでドールにゴーヤを与えられた)から……という、つまりは私怨。憂さ晴らしのようなものでした。

 そうとは知らない警備隊のメンバーは総出で探検隊を待ち構えます。

 そのメンバーは『チーム姫騎士』(シロサイ、クロサイ)、『チームダブルスフィア』(オオセンザンコウ、オオアルマジロ)、ハクトウワシを除く『チームジャスティス』(ハシビロコウ、オオタカ)、『チームがおがおコンコン』(ギンギツネ、ホワイトライオン)、そして『チームさいきょー』(アイアイ、ヒグマ、キンシコウ)。

 しかし、それに先駆けて探検隊は、警備隊のリーダー・ライオンに出会ってしまいます。ライオン自身は目の前でともにセルリアンを討伐したことで探検隊の実力をすぐに把握しますが、コノハ博士たちの意向も汲むためにテストに同行することを申し出て「(大型セルリアンを止めるべく)急いでいる理由もわかるからテストが長引きそうなら私が何とかしてあげるよ」と言い出します。

 その道中でドールは大きな群れを作るのが夢だとライオンに告げました。しかし、ライオンは「大きな群れになったからといってなんでもこなせる完ぺきなチームにはならない」と厳しい現実を突きつけます。ただ、その一方で群れだからこそできることもある……というメリットも提示しつつ。この辺りは、ライオンがいかに視野の広い優れたリーダーなのかということを示唆しています。

 最初に出会った『チーム姫騎士』は、朝までかかりそうな試練内容を言い出しますが、ライオンの介入によって見事に“ちからくらべ”を1回するだけの簡単な試練に……。

 目論見が外れたコノハ博士たちは、宿命のライバルである探検隊を追ってゴコクチホーへとやってきたジャパリ団を差し向けることで探検隊とライオンを引きはがそうと計画します。さすがに誘拐はよくないことだと難色を示すジャパリ団ですが、「探検隊のためだったと分かればきっと許してくれるはずです」と言われ、博士たちに手を貸すことになります。

 一方の探検隊は次々と試練を突破していきます。その途中でマイルカが“柔軟な発想力”でなぞなぞを解いたり、道中のセルリアンを撃破したりと快進撃を続けていきます。

 ハクトウワシに至ってはジャパリ団の動向にも気づきつつ、何か事情があるのだろうと寛大に見逃していましたが、ジャパリ団は寝静まったところを見計らってライオンの誘拐を決行! トンネルの中へとライオンを引きはがした……つもりが、誤ってホワイトライオンを連れてきてしまって……。

 なんだかんだで交流を深める彼女たちでしたが、やってきた場所は大量のセルリアンが救うトンネルの中。もはや試練どころではない緊急事態に陥ってしまいます。

 大型セルリアンに関してはとくに新たな情報が出てきたわけでもなく、一見すると遠回りのように見えたゴコクチホーでの冒険ですが、この出来事は探検隊を……とりわけドールをさらにリーダーとして成長させることになりました。また、大型セルリアンというひとつの目標に向けて、探検隊、警備隊、ジャパリ団が共闘体制を築くというきっかけにもなったわけです。クセモノぞろいの警備隊のメンバーも絡んできたことで、『けものフレンズ3』の物語が横軸に大きく広がりを見せた章でもありました。

第4章のオススメポイント

 第4章のポイントは、ドールの成長が熱い!

 これまでも如実に成長が描かれていたドールですが、ここに来て今まで以上にリーダーとしての素質を発揮するようになります。中でもライオンとの出会いは彼女にとって、非常に大きなターニングポイントとなりました。歴史の分水嶺といっても過言ではないでしょう。

 それにしても、昼あんどんって男子のロマンですよね……。刑事ドラマとかでも冴えない中間管理職のおじさんが、いざというときに鋭い眼光を発揮して活躍する~みたいな展開がありますが、ああいう存在は最高に魂をくすぐられます。つまり、ライオンちゃんにも非常に魂をくすぐられました。というか、物理的にもくすぐってほしい。かわいい。

 ドールと並行する形でマイルカやミーア先生、ハクトウワシ、そしてジャパリ団の面々の成長が描かれているのも大きなポイント。繰り返しになりますが、フレンズたちは記号ではありません。彼女たちは経験を糧にしながら日々前に進み続けている生きたアニマルガールたちなんです。かわいい。

第5章のストーリー

 セルリアンが急激に増えたというナカベチホーの水辺エリアへとやってきた一行。ここではパーク内で爆発的な人気を誇る4人組のペンギンアイドルユニット・PIP(ジェーン、イワビー、フルル、コウテイ)がライブの準備をしていると言います。しかもライブでは重大発表があるとか……。

 一行は道端でジャイアントペンギンとロイヤルペンギンに出会います。ジャイアントペンギンはPIPの手助けをするプロデューサーのような存在で、一方のロイヤルペンギンは次のライブからPIPに新たに加わる予定だったメンバー! しかし、肝心のPIPのメンバーは全員が行方不明になっていました。

 痕跡を辿り、ジェーン、イワビー、フルルを発見する一行でしたが、3人は大型セルリアンに“輝き”を奪われ、アイドルとして活動していた記憶はもちろん、ほかのメンバーの記憶すらも失っていました。残るコウテイはサンカイチホーの砂漠地帯まで大型セルリアンを追いかけて輝きを取り戻そうとしていましたが、まったく歯が立ちません。

  • ▲大型セルリアンと対峙したドールたち。しかし、そのあまりの大きさと、セルリアンを次から次へと生み出す能力を前に打つ手がない状況でした。

 一行はどうにかコウテイの救出に成功するものの、彼女は自分が何者なのかすらもわからなくなっていました。大型セルリアンを追いかけていたのも、ひたすら輝きを取り戻そうとする強い意志がなせる業だったようで……。

 こうしてライブを翌日に控えながら、もはやステージに立つ術を失ってしまったPIPのメンバーたち。ジャイアントペンギンも無期限の活動休止、もしくは解散を考えていると打ち明けます。

 しかし、ロイヤルペンギンは「きっと思い出してくれるはず!」と諦めません。そして、そのきっかけを作るために探検隊やジャパリ団はライブに協力することになります。

 ドール、ミーア、マイルカは即席ながらも「はなまるアニマル」を結成。ジャパリ団の面々による「×(バッテン)ジャパリ団」とともにアイドルとしてステージに立つことになりました。

 とはいえ、あくまで彼女たちは素人。それを引っ張れるのはロイヤルペンギンだけでした。在りし日のPIPに憧れ、アイドルとして夢を追い、そして今はPIPが戻ってきてくれると信じるロイヤルペンギン。この姿には胸を打たれるものがあります……。

 いよいよライブはスタート。依然としてメンバーたちの記憶は戻りませんが、前座として輝くロイヤルペンギンを前に、努力家で負けず嫌いだったジェーンは一抹の悔しさを感じます。また、闇のフレンズを名乗る“×ジャパリ団”のロックなステージにイワビーも魂を揺さぶられ、少しずつ変化が。

 ハクトウワシたちによるヒーローショーのような演出もうまく作用し、自然な流れでステージに登場した「はなまるアニマル」は熱いステージを繰り広げます。その甲斐もあって、ついにジェーン、イワビー、フルルは記憶を取り戻します。あれほどまでに何も思い出せなかった彼女たちの記憶をよみがえらせたのは、やはりステージだったと……。

 合わせてリーダーのコウテイも歌やダンスの記憶を取り戻します。しかし、彼女は“ファンの記憶”についてだけは思い出せません。そう彼女が、自我を失ってでも巨大セルリアンに死ぬ気で向かっていったのは、何よりも大切にしていたファンとの記憶を是が非でも取り戻したかったから。

 「ファンとの記憶を失った自分はもはやアイドルの資格はない」と彼女はステージに立つことを拒否するのですが……。

  • ▲記憶を失ったとしても、誰よりも強くファンのことを想っている時点でコウテイ。いやいや、彼女がアイドルじゃなかったら誰がアイドルを名乗れるんでしょうか……。

 アイドルを形作るのは何か、そして何をもってアイドルというのか──第5章はそこに踏み込んだ、感動必至のストーリーでした。

第5章のオススメポイント

 筆者も職業柄、ほかにもさまざまなアイドルという題材を扱ったゲームをプレイしていますし、またアーティストや声優、俳優に年間100本近くインタビューをする立場であります。

 (ここでは便宜上、それらのエンタメに携わる職業をまとめてアイドルと呼称しますが)、日常的に「アイドルとはどんな存在なのか」、「何をもってアイドルを名乗るべきなのか」、「アイドルに資格はあるのか」、「アイドルとファンとはどのような関係性が理想なのか」といったこともインタビューの中でよく話しています。

 そんな筆者の視点からも、『けものフレンズ3』で描かれているアイドルというのは、ひとつの理想形なのだなと言わざるをえません。ファンからPIPに向けた想い、逆にステージからファンに向けたアイドルたちの想い、それらのすべてがひとつに循環して、どんなに風雨にさらされようとも“戻ってくるステージ”がそこにあるのだなと。

 この第5章のストーリーは、2020年1月でした。いわゆるコロナ禍の前に当たる時期ではありますが、今苦境に立たされているエンタメ業界にこそ、この第5章のような“起こるべくして起こった奇跡”が訪れてほしいと願っています。真摯にファンに向き合ってきたコンテンツには必ず奇跡が訪れる、そう信じたいですね……。

 なんだか抽象的な感想になってしまいましたが、言いたいことはひとつ。

 “『けものフレンズ3』はストーリーがとにかく熱い!” これはもう、何度だって言いましょう。とくに、アイドルという文化が好きな方なら第5章は必読です!

 難しいことを考える必要はありません。おそらくマーゲイが我々の気持ちを自然と代弁してくれるはずですから……。考えるんじゃない。宇宙のような尊さを感じるんだ。

 ──ということで、第5章までのシナリオを振り返って参りましたが、いかがでしたでしょうか? 改めて振り返ってみると、本当に鮮烈で心を動かされる展開の連続なんですよね。

 巨大セルリアンという圧倒的な敵に対して、現時点では明確な対策が取れていないフレンズたちですが、いよいよここからは攻勢に出ます。

 そして物語と並行しつつ、何やらこそこそと動くカレンダの動きもポイント。ラッキービーストを通じて彼女と連絡を取り合っている“何者か”の存在も物語の大きなカギに。

 ただかわいいだけじゃなく、とにかく骨太なストーリーの『けものフレンズ3』。続きが気になったという方は、ぜひとも第6章以降も遊んでみてください!

©けものフレンズプロジェクト2G ©SEGA

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けものフレンズ3

  • メーカー: セガ
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: フレンズたちと“わくわくどきどき探検”するRPG
  • 配信日: 2019年9月24日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

けものフレンズ3

  • メーカー: セガ
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: フレンズたちと“わくわくどきどき探検”するRPG
  • 配信日: 2019年9月24日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

けものフレンズ3 プラネットツアーズ

  • メーカー: セガ・インタラクティブ
  • 対応端末: AC
  • ジャンル: カードゲーム
  • 稼動日: 2019年9月26日

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