話題のラノベ『聖剣学院の魔剣使い』×『七つの魔剣が支配する』コラボ対談。お互いの作品の感想は?
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- カワチ
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MF文庫Jの『聖剣学院の魔剣使い』(著者:志瑞祐、イラスト:遠坂あさぎ)と、電撃文庫の『七つの魔剣が支配する』(著者:宇野朴人、イラスト:ミユキルリア)のコラボが実現しました。
●動画:【ボイスコミック】『聖剣学院の魔剣使い』0話+1話
このコラボは、少年エースで連載中の人気漫画の単行本2冊が10月26日に同時発売されたことを記念して行われたもの。蛍幻飛鳥先生が描くコミック『聖剣学院の魔剣使い』の最新2巻と、えすのサカエ先生が描くコミック『七つの魔剣が支配する』の最新3巻の発売にあわせて、限定リーフレットがもらえるキャンペーンが開催中です。
(配布対象となる店舗など、詳細は少年エース公式サイトでご確認ください)
このコラボの一環として、『聖剣学院の魔剣使い』の志瑞祐先生と『七つの魔剣が支配する』の宇野朴人先生とのスペシャル対談をお届けします。
なお、発売中の少年エース2020年12月号には異なるテーマでの対談を掲載しています。ぜひこちらもチェックしてみてください。
運命のカバー買い!? お互いの作品を読んだ感想は?
――同じく“魔剣”という言葉を含み、いくつかの共通点がありつつも、それぞれ異なる面白さを持つ2作品だと思いますが、お互いに作品を読んでみての感想はいかがですか?
宇野:『聖剣学院の魔剣使い』はダークファンタジーの要素が強く、自分好みの作品でした。
主人公のレオニス自身が、そもそもは世界を救った勇者で、そこから魔王となり、さらに転生に失敗して10歳の姿になってしまったという複雑な経緯の持ち主ですよね。かつての六英雄が今はヴォイド(人類に敵対する異形の存在)に侵食されているなど、善と悪が過去と現在を交えて逆転している様子も興味深いです。
キャラクターのなかでは大賢者アラキールがお気に入りで、「手段を選ばない結果、ああなってしまったんだろうな」と思います。あの容赦のない感じが好きです(笑)。
志瑞:ありがとうございます。主人公サイドで本当の悪を描いても読者の共感を得られないので、敵側の六英雄にはそのぶん暴れまわってもらった部分もあります。
『七つの魔剣が支配する』との出会いですが、実は自分は1巻のカバーを書店で見た瞬間に一目惚れして、一読者としてずっと読み続けてきたんですよ。伝統的なゴシック小説の系譜にある学園の中で、魔法使いたちが活躍する様子がすごくおもしろくて、たまらなかったです。
宇野:それはありがとうございます。本屋での表紙買いって自分にも経験はありますけど、自分の作品でしてもらえると本当にうれしいですね。
――『七つの魔剣が支配する』のカバーのどこに惹かれたのでしょうか?
志瑞:ライトノベルのカバーイラストって、メインキャラが1人だったり、主人公とヒロインの仲がよさそうなツーショットって多いじゃないですか。特に1巻だと、キャラ紹介も兼ねて、そういう構図が基本になる印象があったんですよね。
それに対して『七つの魔剣が支配する』は、主人公とヒロインらしき2人が激しく剣を交えて戦っているという構図で……とても新鮮でした。
そんな感じで読み始めたら、小説のなかのバトルシーンの描写も迫力があってゾクゾクしました。
そして、ヒロインのナナオがあまりに魅力的で、そこにも惹かれていきましたね。ヒロインが主人公と戦いたがるという考えにもしっかりとしたバックボーンがあって、面白いなあと。
――やはりお2人とも、カバーや作品タイトルが気になって本を読み始めた経験があるんですね。
宇野:そうですね。カバーやタイトルに気になる部分があれば、やっぱり手に取ってみたくなっちゃいますね。『七つの魔剣が支配する』も、カバーを見て手に取ってもらえるように工夫しました。
志瑞:カバーのイラストやデザインも大事ですが、自分は帯などのキャッチコピーも意識しますね。“見た目は子供、中身は魔王”とか“最強魔王×お姉さん”とか、パッと見のインパクトは大事だと思います。
新作小説=新たな世界や登場人物は、どのようなきっかけで生まれてくるのか?
――『聖剣学院の魔剣使い』と『七つの魔剣が支配する』という作品を手掛けようと思ったきっかけについて教えてください。
志瑞:前作『精霊使いの剣舞』がバトルモノで楽しく書けたので、今回もバトルモノで強い主人公が活躍するストーリーにしようとは思っていました。もちろん、かわいい女の子をたくさん登場させたいというのは大前提として、ですね。
また、なろう系の小説が流行していた時期で、『精霊使いの剣舞』が終わったら、次は自分も転生した魔王が活躍するようなストーリーを作りたいなと考えていたんです。
ただ、魔王が転生する作品には先達が多く、『魔王学院の不適合者』などの人気作もあるので、そこは自分なりのオリジナリティは必要だなと。そこで思い付いたのが、“見た目は子供、中身は魔王”という某探偵マンガにヒントを得た設定でした。
本筋としては魔王転生もののファンタジー作品としながら、主人公が子供という設定にすると、シチューションや人間関係に変化が生じて、別軸の面白みも出てくるんですよね。
宇野:ギャップの魅力も出てきますよね。中身は強力な魔王のレオニスなのに、作中の女性陣にはお子様扱いされるという。
志瑞:というわけで、『聖剣学院の魔剣使い』も子供なのに強大な力を持っている部分や、魔王がお姉ちゃんに可愛がられる姿がおもしろく描けたらいいなと思いました。
あと、主人公が10歳だとお姉さんと一緒にお風呂に入ってもセーフというのもポイントですね(笑)。
ただ、基本的にはラノベの主人公って中学生や高校生くらいの年齢設定が多くて、10歳は低すぎるとは感じていました。さすがに子供過ぎて、これが読者の皆さんに受け入れてもらえるかは読めませんでしたので、そこは賭けでしたね。
宇野:結果的にその設定が作品の特徴となり、『聖剣学院の魔剣使い』が人気になった大きな要因になったと感じます。とても魅力的な設定だと思いますしね。
――宇野先生も、新作を考える際に前作を意識した部分はあったのでしょうか?
宇野:ええ、前作は意識しましたが、志瑞先生とはちょっと逆の部分が多かったですね。
自分の場合は前作の『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』が戦記物の集団戦でして……とにかく大規模な戦いの描写が大変だったんですよ。戦いを考える際に地形や敵味方の布陣も考えないといけないし、勢力ごとの文化や状況も踏まえて歴史物語的にも成立させないといけないし……もう大変でして!
志瑞:ああ(苦笑)。『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』は戦記物としてリアリティがある作品だったので、特に大変だったでしょうね。
宇野:なのでもう、「こんな複雑な戦いはもう書きたくない! 次は1対1の斬り合いが書きたい!」というモチベーションがあがってきて、『七つの魔剣が支配する』になりました(笑)。
また、戦記物はキャラクターの行動範囲が独特で、軍のなかだったり部隊のなかだったりと限られるんですよね。それに対して『七つの魔剣が支配する』は7年制の大きな学校で、同じ環境のなかに先輩や後輩、先生など、いろいろな世代の人がいるので、さまざまな関係性を描くことができるんです。
――魔法の学園が舞台ということで『ハリー・ポッター』シリーズのような雰囲気もありますね。
宇野:偉大な名作で、作品を読んで大きな影響は受けてますので、特に意識をしなくても魔法学校の設定に影響している部分は多々あると思います。
ただ、影響を受けすぎないように、『七つの魔剣が支配する』を書き始めてからは、あえて読み直してません(笑)。
作家にとって、2作品の同時進行は当たり前!?
――お2人とも、前シリーズを手掛けながら新作のアイデアを練っていたのでしょうか?
宇野:はい。ひとつの作品を書いていると、逃避エネルギーが働いて別の作品を考え始めるんです(笑)。
『天鏡のアルデラミン』が書き終わる頃にはだいたいの内容ができていましたね。それもあって、『天鏡のアルデラミン』の最終巻には『七つの魔剣が支配する』のお試し版的に序盤を掲載するという試みも実現できました。
――新作小説の序盤が数十ページの大ボリュームで掲載されていて、とても驚きました! 志瑞先生はいかがでしょうか?
志瑞:自分も『精霊使いの剣舞』を書きながら、なんだかんだ1年間ぐらい構想を練っていました。自分もやっぱり、後半は2作品同時に書いていましたね。
――1つの作品が終わった段階で休んだりはしないんですね。
宇野:そうですね。間を置かずに作品を手掛けたいタイプです。
志瑞:自分は……本当は1年ぐらい休みたいです(苦笑)。
宇野:それはもう、自分も本音ですね。書きたいものを書いているときは楽しいんですけど、書けないときはツライので。当たり前か(笑)。
志瑞:自分も本が出たときはうれしいのですが、書いているときは苦しいです(笑)。
――書き下ろし小説の場合は連載のように細かい締切ではないと思うのですが、執筆するときにノルマを決めていたりするのでしょうか?
宇野:自分は毎日のノルマのページ数を決めて、そこまで書くようにしています。そうしないとなかなか進まないですからね。
志瑞:自分は「ああでもない、こうでもない」と考える時間が長くて、だんだん締切が近づいてきて焦って書く感じです(笑)。
宇野:その気持ち、わかります(笑)。
――コメディシーンとバトルシーンではどちらが描きやすいですか?
宇野:バトルシーンはカロリーが高いですね。書きづらいというよりは、書くのにエネルギーが必要です。
コメディシーンはそのシーンの属性によって変わってきて、サラッと書けることもあれば悩むこともあります。1巻のコメディシーンは、一度書いたものをボツにして書き直しました(笑)。
――キャラクターたちが次々に一発芸を披露する“地獄の一発芸大会”は、作中世界の中でもハードルが上がっていて、大変そうだなと思いました(笑)。
宇野:作中設定的に“その出来事が面白い”という結論にしてしまえば、物語的には問題ないわけですが……やっぱり読んでいる方のことも考えると、作者的にも納得できる面白さにしないといけないので、大変ですね(笑)。
志瑞:そういう部分をごまかすこともできますけど、作家としてこだわりたい部分ですし、その描写のよしあしが小説のおもしろさにもつながりますしね。
自分の場合、バトルシーンは比較的書きやすいのですが、説明シーンのほうが大変です。バトルって自分が読んでいても楽しいのですが、説明だけしてもつまらないじゃないですか。長々と説明をするのも退屈ですし、いかに短くまとめるか、もしくは少し長くなっても興味を持ってもらえるように描写するか。そのバランスを考えたりするのには、時間がかかりますね。
両作品について、注目してほしいポイントは?
――それぞれの作品について、力を入れている部分、注目してもらいたい部分をお聞かせください。
宇野:『七つの魔剣が支配する』はシビアで、どんどん人が死んでいく世界なのですが、敵味方は問わず、そのキャラクターがどのようなものを大切にして、どのようなものを抱いて死んでいくのかは、しっかり描くようにしています。
あの世界には“お迎え”という慣習があり、これは魔法を極めて魔に呑まれ、人間ではなくなってしまった魔法使いの最期を、関わりの深かった魔法使いが看取るという慣わしです。そういったシビアな倫理観のなかでの人間ドラマは、すごく大事に書いています。
――毎回、物語のなかで死んでしまうキャラクターに驚かされるのですが、最初からストーリーの流れは決まっているのでしょうか?
宇野:そうですね。すべてではありませんが、キャラクターを配置していくなかで、この学年ではこのキャラクターが魔に呑まれる番だなというのはだいたい決まっています。6巻での流れも決まっていました。
――前作が戦記物だったこともあり、死に関してシビアに描くのは慣れているのかなと思いました。ちょっとネタバレになるので伏せますが、オリバーが学園に入学した真の目的にも驚かされました。
宇野:端的にいうと“復讐劇”ですからね。『七つの魔剣が支配する』は1巻の段階で、先を予想した時にかなりハッピーエンドが見えづらい内容になっていると思います。
――それでも、ある程度の救いがある結末は期待してしまいますが……『天鏡のアルデラミン』での前例もありますからね。いち読者としては誰が命を落とすのか、どんな結末になるのか目が離せません! 志瑞先生は『聖剣学院の魔剣使い』のどこを楽しんでほしいですか?
志瑞:お姉ちゃんとのイチャイチャを楽しんでもらいたいです(笑)。
あとは主人公のレオニスの内面と外面のギャップの違いはこだわっているので、そこも注目してみてもらいたいですね。
コミック版ならではの魅力についてもトーク!
――今回のコラボのきっかけとなったように、『聖剣学院の魔剣使い』と『七つの魔剣が支配する』は少年エースでコミカライズされていますが、こちらの感想はいかがでしょうか?
宇野:コミック1巻のコメントにも書きましたが、『七つの魔剣が支配する』の漫画家候補リストのなかにえすのサカエ先生の名前があって、思わず二度見して、本当にあの『未来日記』のえすのサカエ先生なのか担当に連絡をしてしまいました(笑)。
その時点で究極のコミカライズになる予感がありましたが、えすのサカエ先生は実力派ということで、すごく迫力のある作品に仕上げてもらっています。
原作小説をもとにマンガのネームに直してもらっているのですが、その過程でスピーディさが出ています。本来は1巻だけでも尺が長い『七つの魔剣が支配する』について、展開をシャープにして読みやすくしてもらえていることにベテランの上手さを感じています。
個人的にはキンバリー魔法学校やモンスター、地下迷宮が絵になったところがすごくうれしいです。
志瑞:小説の挿絵はキャラクターが主体なので、漫画になった際に背景がつくと、世界観がすごくわかりやすくなってうれしいんですよね。
『聖剣学院の魔剣使い』の漫画を担当していただいた蛍幻飛鳥先生は商業コミカライズは初めてだとお聞きしたのですが、まったくそうとは思えないぐらい素晴らしい作品を手掛けてくださっています。
自分でも口を出せる部分は出そうかと思っていたのですが、仕上がりを見たときにこれはお任せしたほうがいいなと感じました。
原作を大事にしてくれていますし、ダイナミックな構図で迫力のあるシーンを取り入れてくれて、おねショタのシーンも可愛く描いてくれているので安心してお任せできています!
――どちらの作品も設定が複雑な作品ですが、漫画家さんから質問を求められたりすることはありましたか?
宇野:キャラクターのデザインについて聞かれることが多いですね。本編で描写が少ないキャラクターは、設定資料をお渡しするようにしています。
また、まだ本編で明かされていない主人公の生い立ちや設定などについても、えすのサカエ先生には伝えています。
その一方で、学校の造形などはえすのサカエ先生がオリジナルでしっかり描き込んでくれているので、こちらは確認してOKするだけですね。
志瑞:『聖剣学院の魔剣使い』では、ビジュアルに関する質問が多いですね。完全なファンタジーというより機械的な近未来な文化を備えた世界観なので、「これはどういう造形なんですか?」と聞かれることが多いです。
――そういったビジュアルは、志瑞先生の頭の中にしっかりとしたイメージがあるものなのでしょうか?
志瑞:ある程度は考えていますが、なかには質問されてから考えることもありますね。頭のなかでぼんやりと考えていたことを改めて練り直して、設定がしっかり固まることも多いです。
こういう部分もコミカライズがなかったら具体化していない場合がありますし、そういう意味でも蛍幻飛鳥先生に感謝していますね。
宇野:たしかにコミカライズをきっかけにイメージが固まっていく部分もあるので、本当にありがたいですね。読者の方にとっても、漫画を読んだ後に小説を読むと、その世界をより視覚的にイメージしやすくなるはずです。
――お互いの作品のコミック版を読んで、気になったシーンはありますか?
志瑞:小説の時点でも好きでしたが、コミック版『七つの魔剣が支配する』でのナナオの登場シーンはとくに印象に残っています。
1ページぶち抜きでドンと存在感がありながら、その隣のページの小さいコマでもかわいい動きをしていたり。ナナオ自身のセリフがなくても、十分に存在感があるんですよね。こういう緩急の付け方って、小説では難しくて、漫画ならではのとてもいい演出だなと感じました。
宇野:バトルシーンの迫力なんかも、文字だけで描写する小説と、絵で動きを含めて見せられる漫画とで大きく異なる部分ですよね。
『七つの魔剣が支配する』のオリバーが強敵に対して知恵を駆使して立ち向かい“いぶし銀”の渋い戦い方なので、『聖剣学院の魔剣使い』のレオニスが派手な魔法を使うシーンは、漫画で読むとうらやましいですね。
見開きでド派手な攻撃が決まった時なんかは、やっぱりかっこいいなあと楽しく感じます。
スペシャル対談の後編は近日公開
対談の後編では、“魔剣”、“学園”などのキーワードをもとに各作品の制作秘話に迫ります。両先生の好きなゲームの話題も!? 後編もお楽しみに!
『聖剣学院の魔剣使い』×『七つの魔剣が支配する』コラボについて
10月26日にコミック版『聖剣学院の魔剣使い』2巻と『七つの魔剣が支配する』3巻が同時発売されたことを記念して、どちらのコミックを購入すると、両作品が掲載された特別な限定リーフレットがもらえるキャンペーンが開催中です。
片方の作品しか読んでいなかった方も、この機会にもう1つの作品を楽しんでみてはいかが? どちらもオンリーワンな魅力を持ちながら、王道ファンタジーとしてしっかり楽しめる作品という意味では共通しているので、両作品とも気にいるはず!
配布対象となる店舗など、詳細は少年エース公式サイトでご確認ください。
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『七つの魔剣が支配する』
- 発行:電撃文庫(KADOKAWA)
- 発売日:2018年9月7日
- ページ数:408ページ
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『七つの魔剣が支配する』(コミック)
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『聖剣学院の魔剣使い』
- 発行:MF文庫J(KADOKAWA)
- 発売日:2019年5月25日
- ページ数:296ページ
- 定価:682円(税込)
『聖剣学院の魔剣使い』(コミック)
- 発行:角川コミックス・エース(KADOKAWA)
- 発売日:2020年5月26日
- 定価:682円(税込)