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『FF14』“YoRHa: Dark Apocalypse”グラフィックインタビュー前編・職人技で新たに構築された『ニーア』世界

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 冒険者数が全世界で二千万人を突破した(※)、スクウェア・エニックスのMMORPG『ファイナルファンタジーXIV(以下FFXIV)』。その最新拡張パッケージ『漆黒のヴィランズ』では、『FFXIV』と『ニーア』シリーズとのクロスオーバーコンテンツ“YoRHa: Dark Apocalypse”が展開中です。

※日本・北米・欧州・中国・韓国の5リージョンの累計アカウント数。フリートライアル版のアカウントを含む。

 このコンテンツには『ニーア』シリーズのプロデューサーである齊藤陽介氏、『ニーア』シリーズの生みの親であるヨコオタロウ氏の両名が脚本から監修までガッツリ参加。『FFXIV』の世界観で味付けされた『ニーア』に触れられるというだけあり、『FFXIV』を未プレイだった『ニーア』ファンも巻き込むほどの盛り上がりを見せています。

 そこで本企画では、ファンも納得の再現度で『ニーア』シリーズが持つ独特の世界観を表現しているグラフィックに注目。“YoRHa: Dark Apocalypse”におけるデザインコンセプトや制作過程などを、グラフィック担当の開発スタッフへのインタビューから探ります。なお、後日公開の後編では、現在パッチ5.3時点でプレイできる“複製サレタ工場廃墟”“人形タチノ軍事基地”の各ボスの注目ポイントなどを個別に掘り下げる予定です。

  • ▲インタビューに参加いただいたのは、左から高梨佳樹氏(リードバックグラウンドアーティスト)、市田真也氏(リードアーティスト)、三石祐次氏(リードキャラクターアーティスト)の3名。

『FFXIV』のなかで『ニーア』世界を表現するための工夫・苦労とは?

――“YoRHa: Dark Apocalypse”を掘り下げるインタビューは今回初となりますので、まずはみなさんが本コンテンツでどのような部分を担当されているのか教えてください。

市田真也氏(以下、敬称略):私は“YoRHa: Dark Apocalypse”のグラフィック全体を監修しています。ですので、とくにココというように何か1つを担当しているわけではなく、絵作りの方向性やクオリティ全般のチェックを行っています。

三石祐次氏(以下、敬称略):キャラクターの制作を担当しています。“YoRHa: Dark Apocalypse”では主にエネミーモデルの制作進行とグラフィックの監修を行いました。

高梨佳樹氏(以下、敬称略):バックグラウンド(BG)全般のグラフィック周りの監修と、制作進行の管理も担当しております。“YoRHa: Dark Apocalypse”の第1弾“複製サレタ工場廃墟“では、実際に制作にも参加しました。

――現在はおそらく第3弾の制作にとりかかっているタイミングと思いますが、最初に『ニーア』シリーズとのクロスオーバーコンテンツが実装されると聞いたとき、どのような感想を持たれましたか?

市田:最初に聞いたときは「これは大変なコンテンツになるな」という感じでしたね。みんな大変な思いをすることは間違いないなと(笑)。『ニーア』は弊社の看板タイトルの1つであり、コアなファンをたくさん抱えているタイトルでもあります。そのため、求められている水準が高いというのはわかっていたので、けっこうプレッシャーを感じる部分がありました。

 ですが、『FFXIV』チームは長く運営してきてスタッフの力もどんどん付いてきていましたので、今までの仕様以上のものを作ってくれるだろうなという思いもありました。ドキドキとワクワクとともに、いいものを作ろうというポジティブな方向で「やってやるぞ!」となった感じです。

三石:世界的な評価を得ているコンテンツとのクロスオーバーとなり、ビジュアル面でファンやプレイヤーのみなさんを裏切れない、というプレッシャーはありました。ただ、自分のプレッシャーとは関係なく、現場のテンションがけっこう高かったのは覚えています。どんなコンテンツに発展していくのか、スタッフ一同期待しながら開発にあたっていきました。

高梨:まずは『FFXIV』の世界観と『ニーア』の世界観が全然違うので「どう融合させるのかな」と思いました。最初はどういう風にお話が進むのかもまったく聞いていなかったので、そこがまず自分の頭のなかでパニックで(笑)。

一同:(笑)

高梨:いったいどういう風にSF的な感じを出していくんだろうとか、楽しみでもありドキドキした部分です。

――プレイヤーが発表を聞いて受けた衝撃を、開発のみなさんも受けていたわけですね。

高梨:そうなんですよ。それでまずは『ニーア』をプレイしなきゃと。自分はそのときまだプレイをしていなかったんです。

――これまで他タイトルとクロスオーバーした24人レイドとしては、クリスタルタワー(『FFⅢ』)、リターン・トゥ・イヴァリース(『ファイナルファンタジータクティクス』『FFXII』)がありまして、それらはどこかに『FF』シリーズの匂いがあったと思います。ですが、今回はまったく違うシリーズで、しかもアクションゲームとのクロスオーバーということで、これまでとはグラフィック作りの面でも勝手が違ったのではと思うのですが。

市田:『ニーア』シリーズは世界観をしっかり持っている作品ですので、『FFXIV』とうまく融合できるのかという点は自分もすごく気にはしていました。基本的な方向性としては「原作をすごく尊重してしっかり再現していこう」という方針のもと、バトルやイベントなどのコンテンツを作っていきました。そこはかなり難しかったです。

――印象的だったのは、エネミーとなる機械生命体のデザインもそうですが、『ニーア』シリーズならではのエフェクトがそのまま再現されているのに驚かされました。

市田:エフェクトについては、いわゆる『FF』シリーズ特有の“ファイア”や“サンダー”の表現などはまったく使えません。ですから、『ニーア』のエフェクトの資料を見ながら、さらにプレイをしながら“目コピ“して、1つ1つ再現していくという感じでした。

――当然同社内ということで、グラフィックのデータ提供などはあったうえでしょうか?

市田:そうですね。

――そのうえで、実際の作業の流れはどういう形になったのでしょうか?

市田:まずはプランナー側の方から「こういったコンテンツを作りたい」という話を受け、そのなかから必要となるものを『ニーア』のリソースデータから洗い出して、そのデータをいただいて……という形です。ですが、そのままでは『FFXIV』の仕様の関係で使えないことがほとんどですので、そこから『FFXIV』の仕様に落とし込んで、手作業でブラッシュアップをかけてというのが、基本的な流れになります。

――キャラクターについても当然モデリングなどのデータ提供があったと思いますが、頭身をはじめ『FFXIV』に落とし込むうえでの調整はどのようなものでしたか?

三石:キャラクターについては『FFXIV』の世界観になじませるということと、原作に忠実に作り上げるということを最優先に進めました。『FFXIV』の世界観に馴染むよう既存骨格にキャラクターを当てはめて制作を行っています。造形でプレイヤーに違和感を与えたり、洗練された『ニーア』のグラフィックイメージを崩したりしないよう、忠実に再現することに苦労しました。

――『ニーア』のモデルの骨格と、『FFXIV』の骨格ではアクションゲームとRPGということで、造り自体が大きく違うということはあるのでしょうか?

市田:『FFXIV』もキャラクター自体にさまざまなアクションが用意されているので、動き自体を再現することは比較的スムーズにできるんです。ただ、『FFXIV』はMMORPGという仕様上、プレイヤーが入力したアクションに対して、必ずサーバー側の応答が必要になり、その反応がプレイヤー側に返ってきてはじめて反映されます。アクションの1つ1つに、少しだけ“間”があるんですね。『ニーア』はコンソールでアクションゲームですから、ボタンを押せばダイレクトにアクションに反映されます。この違いを違和感がないように『FFXIV』側に落とし込むことが、けっこう大変な部分でした。

――キャラクター以外にも“複製サレタ工場廃墟”“人形タチノ軍事基地”に突入した際に、プレイしていた人ならば「あ、『ニーア』だ」とすぐに感じる“空気感“の再現も印象的でした。このあたりは相当工夫をされたのではないかと思いますが。

高梨:『ニーア』シリーズは、空気感や光の飽和に関して独特できれいな表現をしているのですが、エンジンや仕様の関係上、そのまま再現するのは難しいのです。なので、グラフィックリソースの提供以外にも、デバッグで『ニーア』をプレイできる環境を提供していただいて、何度もプレイをしながらちょっとずつ調整するという作業をしているんです。

 全体で一括にフィルターをかけるということが、『FFXIV』の仕様ではなかなか難しいんですね。ですから、それこそテクスチャー1枚ずつの色味をちょっとずつ調整して……というのを、個々の担当スタッフがじっくりていねいに作業していました。

――スゴい職人技ですよね……。事情を知らない側からすると『ニーア』用のカラーフィルターのようなものが用意されていると思うくらい、『ニーア』らしさが感じられる色味の調整がされていました。

高梨:それがあればどんなにラクだったことか。なかなか難しかったですね(笑)。

――それこそ場面ごとに、少しずつ調整されていったわけですね。

高梨:手作業で進めていきました。

――それは大変だ……。

市田:まさにマンパワーと言いますか(笑)。

――同社内でデータの提供があっても、最後は“目コピ”なんですね。あと、これはグラフィックだけに限らない話かもしれませんが、“YoRHa: Dark Apocalypse”をプレイすると“アクションゲームの動きをいかにMMOで再現するか”という試みを、随所から感じられます。それはグラフィックやキャラクター制作側にも指示があったり、意識されたりしたことなのでしょうか?

市田:そうですね。バトルであれば「『ニーア』のあの戦闘を再現したい」といったオーダーもありましたので、エフェクト1つ1つについても原作の雰囲気をできるだけ忠実に再現しています。また、先ほどのアクションの話であれば、連続性のある激しいアクションを再現できるように『FFXIV』の仕様を拡張するなどの工夫をして、アクションゲームをプレイしている雰囲気作りを心掛けたつもりです。

――ちなみに、プレイ感覚的には、これまでのアライアンスレイドよりも“YoRHa: Dark Apocalypse”のエリアは広い印象を受けたのですが。

高梨:プレイヤーが歩ける範囲の広さは、これまでとさほど変わってはいません。ただ、“複製サレタ工場廃墟”も“人形タチノ軍事基地”もそうですが、スタート地点からの風景になるべく広がりを見せたいという意図がありました。ですので、実際は広くはないのですがそう見えるような造りにしています。

――たしかに高低差が顕著なので、眼下に広がる景色が遠くまで見えてより広さを感じます。

高梨:あそこはBGとしても意識して作った部分です。

――これまでのアライアンスレイドの始まった瞬間を思い返しても、最初にドーンと視界を広げている感がありました。あとは絵作りという部分では『ニーア』世界を再現するにあたり、従来の『FFXIV』でよく使われるような記号的な装飾やエフェクトなどを加えることは極力避けた感じでしょうか?

市田:やはり『ニーア』の雰囲気をできるだけ大事にしたいという考えがありまして、あまりこちら側で何かを付け加えることはしませんでした。例えば『FFXIV』のアライアンスレイドですと、本来ならば24人の移動のために通路を広く取らないといけないんです。そのあたりはBG側でうまく加工して『ニーア』的に違和感なく落とし込むことにかなり苦労していました。

――ゲームプレイのストレスをなくしつつ、『ニーア』としての雰囲気も崩さず、ということですね。

市田:そうですね。

ヨコオタロウ氏も感嘆! 『ニーア』の設定をとことん掘り下げた映像

――先日の“吉P散歩”では、ヨコオさんがテストプレイ中にグラフィック周りの確認も行っていたと話題にしていましたが、ヨコオさんの監修はどういった流れで行われていったのでしょうか?

■【TGS2020】ファイナルファンタジーXIV“吉P散歩”

市田:最初にプランナーの方でヨコオさんとすり合わせをして「こういった方向で行きます」と決まってから、プランナー側から「今回こうなりました」と発注が来る形です。そして、アート担当がラフアートを起こして一度ヨコオさんに監修していただきます。

 そのあとは順次こちら側で作業を進めて実装していって、ひと通りプレイできる環境になったら、一度プレイをしていただいて確認も行うという流れです。イベントシーンであれば、撮影した動画をひと通り見ていただいています。

――アートの次は、もう実装状態での確認なのですね。

市田:そこまではこちら側にまかせていただいて、ゲームに落とし込んでから見ていただく形ですね。

――ちなみに、ゲームでヨコオさんが御覧になったときの反応はいかがでしたか?

市田:ほめていただくことがすごく多かったですね。

高梨:そうですね。「よくできている」とおっしゃっていただきました。実際のプレイでチェックしていただくのですが、その際は背後にいっぱい人がいて「緊張する」っておっしゃっていました(笑)。

一同:(笑)

――同じく“吉P散歩”では、もともと『ニーア』の設定にはあったけれども、ゲームには落とし込んでいなかった要素も、今回細かく映像化されているというお話がありました。配信では具体的にソーラーパネルを挙げられていましたが、それ以外にもそのような要素があれば教えてください。

高梨:BG周りではちょこちょこありますね。実際『ニーア』ではカットシーンにのみ出てくるものなどですね。ソーラーパネルについては、もともとバトルプランナーから「ソーラーパネルの上でバトルがしたい」というオーダーがありましたので作りました。いろいろなセクションと話し合いながら「原作で出ているコレをオマージュして作ろう」ということは、BG側でけっこうやっています。

 また、『ニーア』は場所によってカメラがサイドビューで固定されています。一方『FFXIV』ではカメラを自由に動かせますし、カメラの距離も違うんですね。『ニーア』はけっこうカメラが近いのに対して、『FFXIV』は遠くまでカメラを離すことができるため、そこでも原作の雰囲気をどう表現するのかが大変でした。あまり広く見せてしまうと、原作のイメージとは合わなくなってしまいますので、そこをどう『FFXIV』に落とし込むのかを試行錯誤しました。

――次に2B(2P)、9Sなど原作で人気の高いキャラクターは、その再現度にも注目が集まり、制作するうえでプレッシャーもあったと思われますが、こちらはいかがでしたか?

三石:原作のイメージを崩さないように、『FFXIV』の既存骨格に合わせていくわけですが、やはりファンやプレイヤーのみなさんに違和感を抱かれないようにというのが前提で、全体のバランスについては、担当者が時間をかけて慎重に調整を行いました。

 この『FFXIV』の既存骨格に当てはめるということにはメリットもありまして、多彩なモーションが使用可能になり、豊かな表現ができるようになります。2Bと2Pはヒューラン女性の既存骨格を使用しています。ハイヒールなどを履いているので、頭身のバランスを取る必要はありましたが、違和感がないように移植が完了できたと手ごたえを感じています。


 また、9Sについては本来ならば男性の既存骨格に当てはめるのが普通だと思いますが、肩幅が『FFXIV』の男性骨格とまったく違いますので、こちらもヒューラン女性の既存骨格に当てはめて制作をしています。とはいえ女性のモーションで動くわけではなく、モーションについてはオリジナルのものが用意されていますので、違和感なく移植することができたと思います。もちろん、装備だけでなく顔や髪もまったくモデル仕様が異なるので、『FFXIV』のほうで新規に作り直しています。

 あとは先ほど高梨が話したように『ニーア』特有の色使いがありますので、そこの調整も行っています。例えば2Bの衣装について『ニーア オートマタ(以下、オートマタ)』ではみなさんおそらく“黒”と認識されていると思いますが、実際にデバッグでプレイをして色を拾ってみると、だいぶ緑色かかった黒なんですよ。

 ですから、制作担当者がそれぞれのシーンから色を拾って、どれくらいの緑色を入れ、かつ黒として認識させるかということに注意して作業していました。

――それはイベントのシーンで当たる光の量に合わせて、細かい調整が必要だったということでしょうか?

三石:そうですね。『ニーア』ではおおよそ緑色のフィルターがかかっているのですが、とはいえ緑色にし過ぎてしまうと『FFXIV』ではちょっと違う色として認識されてしまうんです。

――たしかに『ニーア』でも水に濡れたときなどに独特の色味の印象を受けました。そういう意味では、そこはかなり“目コピ”で調整されていたんですね。

三石:各シーンのスクリーンショットを撮影して、色をスポイトで抽出して……というような地道な作業をやっていました(笑)。

――キャラクターの表現に少し重なる要素として、今回“複製サレタ工場廃墟”では、通常の報酬の防具のほかに、種族・性別・ジョブにかかわらず装備できる“二号B型防具”一式が報酬としてもらえるのが話題になりました。こちらを用意するのは相当苦労されたのではないでしょうか?

三石:防具に関しては、基本的に全種族に対応する形で用意していますが、今回は性別を問わず着用できるという点がポイントでした。2Bのシルエットは足首が細かったり、手首が細かったりするので、男性が着用してそのようなシルエットになると、若干得体のしれない違和感を与えてしまうんです。

 手足のくびれや腰回りなどは男性らしさを残しつつ、全体にメリハリを付けて種族や性別に関係なくバランスよくシルエットを仕上げることに注力しています。そこは苦労した点です。

――しかも染色も自由にできるという点もポイントで、いろいろな色を付けたときに違和感がないように見えるようにも調整されたのでしょうか?

三石:そうですね。担当がすべての色の組み合わせを確認して、関係各所に確認しながら実装をおこなっていました。

――ちなみに、そういったデザインを進めるにあたり、『オートマタ』の開発チームから「こういった要素はやめてください」というような指示はあったのでしょうか?

市田:事前にはとくになかったですね。企画の段階で「報酬は今回このようなテーマで作りましょう」と決めたうえでデザイナーがデザインして、それをヨコオさんに確認いただいて、そのなかで『ニーア』としてのデザインルール的にはずれているものがあれば「ここは修正してください」と指摘していただく、といったやり取りをしていました。

――細かい指摘はアートの段階で受けていたんですね。

市田:そうなります。その段階ですり合わせていました。

――結果的にプレイヤーの評判もかなり高く、すごく使い勝手のいい素晴らしい衣装になったと思います。制作段階でそこに手応えは感じていましたか?

三石:若干『FFXIV』の仕様に合わせてデザインが変わる部分がありますが、基本的に2B(2P)が着用している防具のバランスを崩さない形で、プレイヤー用の装備に落とし込んでいます。組み合わせしだいで、いかようにも楽しんでいただけるんじゃないかなと。ぜひ自由に着せ替えを楽しんでください。

――通常の報酬装備では“複製サレタ工場廃墟”ではヨルハ五一式装備、“人形タチノ軍事基地”ではヨルハ五三式装備が用意されています。こちらのデザインコンセプトはどういったものでしょうか?

市田:こちらは担当したアートスタッフからコメントをいただいてきました。ヨルハ五一式装備については、まずは『ニーア』のイメージを崩さないような、ファンが喜ばれるような2Bと9Sのイメージを大事にしてデザインしています。女性キャラ装備は2Bに近い印象、男性キャラ装備は9Sの少年っぽい印象になるように用意しました。



 ヨルハ五三式装備のほうは舞台「ヨルハ」を参考に描かせていただいて、同じように『ニーア』シリーズのファンに喜んでいただくことを大事にしてデザインしています。あとはヨルハ任務の遂行を妄想しながら膨らませてデザインしたということです。また、ボタンのサイズや縫い目などもかなり調整して、時間をかけて制作しています。

――舞台も参考にされているのには驚きました。

市田:そうですね。『ニーア』シリーズは多くの展開をしていますので、いろいろなコンテンツのエッセンスをもらって形にしています。

メカニックやダンジョンのこだわり、そして2Bの部屋の実装経緯は?

――次はキャラクターに関連してメカニックについてもおうかがいします。『オートマタ』を象徴する飛行ユニットは完成度が高く、動くギミックを含めてほぼそのままと言える再現ですが、こちらの制作も相当大変だったのではないでしょうか?

三石:『オートマタ』チームから提供されたデータにできるだけ手を加えず移植できればいいのですが、『FFXIV』仕様までサイズダウンして移植をしなくてはいけません。最初に実装関係者と相談をして、変形ギミックを残す必要があるとなったわけですが、変形するパーツも多いので、そこを維持しながらポリゴンリダクション(ポリゴン数を削減してデータを軽くする作業)をするのがまず大変でした。

 実際にいただいたデータの3分の1くらいまでリダクションを行い、テクスチャーに関しては『FFXIV』の標準的なエネミーサイズまで落として調整する必要がありました。変形ギミック部分は省略することができないので、担当モデラーが変形確認用のモーションを作成して各部位細かくアニメーションさせながら移植作業を進めていました。

 見えない部分のテクスチャーまでていねいに描き込みを行っています。なので、あらためてプレイをして変形シーンを確認していただいて、こだわりを理解していたただけるとうれしいですね。

――吉田さんは「マウントとして欲しいという声も多い」とおっしゃっていましたが(笑)。

一同:(笑)

市田:難しいですよね。全種族別に作らなくてはならなくなるので。

――たしかに乗っかるのではなく、装着することを考えると大変ですね。

市田:ボディにピッタリ合うサイズ感で作られていますので。全種族でとなると、全部がオリジナルで作らないといけなくなりますから、相当な難易度というかいろいろな制約がかかってくるなと。自分もマウントとして欲しいですけどね(笑)。

――あと従来のIDやレイドでは、ダンジョンをじっくり観察しようとした場合、クリア後に脱出せずに戻って鑑賞したり、観光ツアー的な募集を募ったりしていましたが、“YoRHa: Dark Apocalypse”ではクリア後ならいつでもダンジョンに入って自由に探索できるようになっています。こちらはどういった意図で用意されたのでしょうか?

高梨:もともと要素のひとつとしてアーカイブを集めて探索するという遊びがありましたので、発注時の段階からですね。「ここはクリアしたら自由に歩けるようになるんで」と言われて「えっ!?」と(笑)。

――このインタビュー直前にパッチ5.4で自由探索のシステムが実装されると発表されましたが、“YoRHa: Dark Apocalypse”の開発の段階ではほかにはありませんでしたよね。

高梨:初めての試みではありました。ですのでバトル優先で制作をしつつも、それに加えて、それぞれの場所を歩いたときにキレイに見えることも心がけて作っています。

――バトル中は入ることができないが、クリア後に入れてログが拾えるようになる場所も、意図的に配置しているのでしょうか?

高梨:そうですね。最初は扉が閉まっていて、クリア後には扉が開いていて中に入れる場所などは、話し合いながら作っていった感じです。

――2Bを模した人形が転がっている部屋や、マップにない場所でログが拾えたりしましたね。

高梨:2Bの部屋の扉もクリア後に来ると開く形になっています。

――そういった演出の指示はどなたが出されているのでしょうか?

高梨:2Bの部屋に関しては、うちのBGにものすごく『ニーア』愛が強いスタッフがいるんですね。それで“人形タチノ軍事基地”の進行ルートを見たときに「格納庫からバンカーを通って指令室に行くならば、このあたりに絶対2Bの部屋がありますよね」となりまして。だから作りましょうとなって「マジっすか!?」と(笑)。

一同:(笑)

――2Bの部屋を作りたいから作るのではなく、必然的にこのルートを通るならばあってしかるべきだという理由だったんですね。

高梨:「原作でこういう構造だからここに作るね」と作業を進めて、あとでプランナーに「作ったのでここに置いてください」と(笑)。

――逆アプローチだったんですね。

高梨:だから2Bの部屋自体はとくに発注もなく、担当スタッフが作ったという感じです。

――あとは自由に探索できるということで、これまでのダンジョンの造りとは違う面で気を配ったことはありますか?

高梨:通常のダンジョンでも気を配りますが、ゾーン移動して降り立ったときにどう見えるかという部分でしょうか。“人形タチノ軍事基地”ではボス2の少し手前で、ソーラーパネルを爆破してそのまま落ちる箇所があり、ポッドに掴まってスーッと移動するのですが、ボス2に行くまでにわざと少し傾斜を付けているんです。上から光が漏れている箇所を見せながら移動させるなど、普通のルートでも見え方も細かく気を使いながら作っています。

――自由に探索する際には一部のボス戦のエリアがないなど、本来のつながりにはない調整がされていますよね。

高梨:そのままバトル用のダンジョンデータを使えるわけではないので、自由探索用に調整した部分もあります。

――それはデータとして別のものを用意していると?

高梨:共有できる部分もありますが、動かす部分やなくす部分は専用のデータを用意してON、OFFするなどしています。

――これまで何気なく探索していましたが、ものすごく手間がかかっているんですね。驚きました。そうなると、開発スタッフ的にはこれまで作ってきたアライアンスレイドのなかでも、けっこうな難作業だったのでしょうか?

市田:そうですね。間違いなく手間はかかっています。あらゆるリソースデータについて専用に描きおこすものが多く、再現度に気を遣いますから、ハードルは予想どおり高かったです。また、自分たちだけでは決められない部分もあり、確認事項も多くて工数もかなりかけています。その甲斐があって好評をいただけてよかったです。

【インタビュー後編では“複製サレタ工場廃墟““人形タチノ軍事基地“の各ボスのグラフィックなどを細かくうかがいます!】

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IMAGE ILLUSTRATION: (C) 2018 YOSHITAKA AMANO
※画面はPC版、PS4版のものです。

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