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『FF14』“YoRHa: Dark Apocalypse”グラフィックインタビュー後編・各ボスはオーバーテクノロジーの結晶!?

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 『ファイナルファンタジーXIV(以下FFXIV)』と『ニーア』シリーズとのクロスオーバーコンテンツ“YoRHa: Dark Apocalypse”を、グラフィックチームへのインタビューから掘り下げるインタビュー企画。コンテンツ全体のデザインコンセプトや制作過程を伺った前編に続いて、後編では現在パッチ5.3時点でプレイできる“複製サレタ工場廃墟”“人形タチノ軍事基地”の、各ボスの注目ポイントなどを個別に掘り下げます。

 前編の記事はこちら:『FF14』“YoRHa: Dark Apocalypse”グラフィックインタビュー前編・職人技で新たに構築された『ニーア』世界

  • ▲インタビューに参加いただいたのは、左から高梨佳樹氏(リードバックグラウンドアーティスト)、三石祐次氏(リードキャラクターアーティスト)、市田真也氏(リードアーティスト)の3名。

“複製サレタ工場廃墟”のデザインは3つのテーマで構築

――ここから個々のデザインについて“YoRHa: Dark Apocalypse”の第1弾である“複製サレタ工場廃墟“からうかがっていこうと思います。このダンジョンのデザインコンセプトはどういったものだったのでしょうか?

高梨佳樹氏(以下、敬称略):上層、中層、下層に分かれていてそれぞれ“樹木に覆われた廃工場”“スタンダードな廃工場”その次に“白い粉が舞う廃工場”というテーマを、最初にヨコオさんからいただいて作っていった感じですね。奥に進むほど前者から後者へ変化する様子を見せたい、というオーダーをいただいていました。

――なるほど。たしかに『ニーア オートマタ(以下、オートマタ)』の序盤の雰囲気を感じさせるデザインでした。そしてボス1は多関節型・司令機になりますが、『オートマタ』をプレイしていない『FFXIV』のプレイヤーは「これはきっと『オートマタ』に出てくる敵なんだよね」と思って、その後『オートマタ』をプレイしてみると「出ていなかった!」と驚いたという声もあるほどでした。最初に出てくる敵ながらオリジナルで、かつ『ニーア』の世界観にマッチしたデザインだったと思いますが、こちらはどのようなイメージで制作されたボスになりますか?

市田真也氏(以下、敬称略):こちらもアートスタッフからコメントをいただいてきたのでご紹介します。コンセプトは“遺跡に続く道に並んで眠っているロボット兵”です。遺跡で見える古びたドラム缶のようなものがロボットに変化していった、というイメージでデザインをしました。ヨコオさんからは“三次曲線を使わないルールで”と最初に伝えられていて、そこのルールに従いながらアートのほうでデザインを起こしていった流れです。

 じつは『オートマタ』を開発したプラチナゲームズさんの開発ブログに、そのあたりのデザインコンセプトの詳細が語られていまして、そちらを大いに参考にさせていただきました。

――プレイヤーと同じ目線で見られていたんですね(笑)。

市田:すごく情報が詰まっていて助かりました(笑)。

――ボスはシルエットだけでなく、攻撃エフェクトも相当『オートマタ』を忠実に再現しているという印象でした。

市田:そうですね。『FF』らしい表現を今回は極力使わない、というのがテーマとしてあって、原作をなるべく再現するということで、極力“目コピ”して、爆発1つとってもしっかり再現していきました。

――一番印象的なのは、よく“イクラ”と呼ばれている赤い弾ですが、あれも“目コピ”で制作されたのでしょうか?

市田:じつはエフェクトって、リソースデータがあまり存在していないんですよ。ゲームエンジンにけっこう依存するものなので、基本はデータというものが存在していなくて、動画を見ながら再現するという形ですね。

――手作業で『ニーア』のイクラっぽい感じに寄せたと。

市田:「これだよね」っていうものになったと思います(笑)。

――次はボス2のホッブスですが、こちらはボスと戦うというよりも“フィールドと戦う”といった形で、これまでの『FFXIV』のバトルとはひと味違う印象でした。こちらはエネミーのデザインと背景のデザインがけっこう密接に関係したのではないかと思いますが、どのような作り方だったのでしょうか?

高梨:ここはもう全セクションが協力して制作したバトルです。キャラクターセクションやモーションセクションと話し合い「ここをバックグラウンド(BG)側で動かすので、ここにキャラクターデータを置いて……」というように、いろいろ試行錯誤して作っています。

三石祐次氏(以下、敬称略):アクターを3つに分けて「どこに付けるからどの位置に置いてほしい」とかですね。あとは「BGと合わせるからサイズはこれくらいにしてほしい」とか。

――床がぐるぐる回転するギミックも印象的でした(笑)。

高梨:3アライアンスがそれぞれ別のギミックになっているんですよね。

――アライアンスによってギミックが違うので「前クリアしたとき覚えたのと違う!」となって、毎回とまどっていました。それこそ5回目にはじめて当たるギミックがあるとか(笑)。ここは最初から、ステージをダイナミックに展開させて動かそうというコンセプトだったのでしょうか?

市田:そうですね。バトルプランナーが部屋自体をボスとして戦わせたいというコンセプトを出してきていたので、たとえばアームの部分はキャラクター制御なのか、BG側の制御なのかなど最初に綿密に設計図を引いているんです。

――たしかにここまで複雑な造りですと、どこの領域がどの担当なのか迷ってしまいますよね。

市田:それでもかなり、どのセクションがどの部分を手がけるのか試行錯誤があったバトルになりますね。

――この部屋は突入時に床が見えるアングルになったときに、ロボットの顔が並べられた箇所があり、すごく印象に残っています。デザインでのこだわりポイントはありますか?

高梨:あそこのエリアは機械生命体を検品したり、解体したりする場所をイメージした部屋です。ベルトコンベアみたいなのがあったり、アームのようなものがあったりなど、そのコンセプトに合わせてデザインしています。最後のクリア後に穴が開いて下に落ちるというのも、廃棄するというイメージで作りました。

――実際にバトル中のセリフも「異常が検知されました」となっていましたね。そしてボス3は『オートマタ』にも登場したエンゲルスになりますが、これは『FFXIV』でも屈指の“超巨大さ”を誇るボスだったと思います。こちらもある意味、背景と戦うボスになっていますよね。

市田:背景とも言えるレベルで巨大ですね。ただ、やはりキャラクターとしていろいろなアクションや技を行わなくてはいけないので、制御できる形ですべてを作り切らないといけませんでした。かなり制作難易度が高かったボスだと思います。

――単なる背景ではなく、しっかりモデリングが作られて存在しているんですね。

市田:これまで『FFXIV』で作ってきたキャラクターのなかでも、最大サイズになります。

――これまでのレイドでも“クリスタルタワー:闇の世界”の暗闇の雲など巨大なボスがいましたが、やはりそれを超えるサイズなのですね。

市田:それをはるかに上回るサイズになっています。キャラ班も相当苦労していました。

――エンゲルスが出てこそ『オートマタ』だろうという思いもあったので、戦うことができてうれしかったです。ノコギリ(マルクス)との戦いもしっかり再現されていましたし。

市田:そう言っていただけると光栄です(笑)。

三石:マルクスもエンゲルスもそうですが、『オートマタ』チームから提供されたデータを見たときに腰が引けたというか……。

一同:(笑)

三石:まず「これが本当に『FFXIV』で動くんだろうか……」という心配がありました。実際に『FFXIV』の仕様に落とし込むために、プランナーであったりとかBGであったりとか、各セクションでコンテンツのリソースの量を調整しなくてはいけないので、そこは相談しつつキャラクター仕様の設計を行いました。

 結果としてポリゴン数は5分の1くらいまでリダクションして、テクスチャーサイズは標準的なボスクラスのエネミーサイズまで落とすという作業になりました。それでもキャラデータサイズは『FFXIV』でトップクラスとなっていますが、コンテンツのリソースの調整が行えているので無事に実装できたしだいです。

 なお、当初実装したときは白い粉が舞うグレーの背景という特殊なBG環境なので、全体がフラットに見えてしまい立体感に乏しかったんです。そこは担当者がオクルージョンマップ(オブジェクトの間接照明など、光源を確認できるもの)で陰影情報を追加して巨大感と立体感をテクスチャーで誇張する対応を行っています。そのあたりもけっこう苦労したポイントですね。

――『オートマタ』はカメラアングル自体が巨大さを演出させるために固定になっていましたが、『FFXIV』はプレイヤーによって、寄っているのか引いているのか、水平なのか見上げているのかが全然違いますから、立体感の演出というのは大変ですよね。

市田:そうなんですよ。普通ならば角度を変えての演出ができますが、『FFXIV』の場合は画角を変えることができずに、つねに一定以上のフラットさを保つ必要があります。そのなかで、どういう演出を入れていくのかは苦労しています。

 たとえばエンゲルスも、元のデータよりも若干肩幅を広げる形にして、少し広角な感じに映るようにシルエットを調整しました。データ側のほうでそういった調整を織り込んで巨大さを表現しています。

――ここは途中でステージが破壊されるダイナミックな演出や、倒したあとに体を伝って登っていく演出も印象的でした。あの体を登るというのは、そのまま戦闘中のモデルを使用しているのでしょうか?

高梨:あそこは完全にBGモデルに差し替えています。あれも倒した形状のままBGモデルを別データとして作成する必要があったので、担当者はそこが一番苦労したと話していました。背景としてもデータ自体がけっこう大きいんですよ。BG側でポーズをつけてこれに合わせて討伐時のモーションを調整してもらったという経緯もあります。

――BGにかかわる要素になりますが、エンゲルス戦の少し前のエリアから、白い粉が舞う表現がすごく印象に残ります。一部のプレイヤーの間では、この粉は『ドラッグオンドラグーン(DDD)』のEエンディング(新宿エンド)や『ニーア レプリカント』にも関係する塩なんじゃないか、という考察もあります。そこについてはいかがですか?

高梨:これについては最初に話したように「最終フェーズは白い粉が舞うようにしてほしい」というヨコオさんのオーダーでしたので、真相はヨコオさんにお聞きしてみないとわからないですね。

――なるほど(笑)。でも、白い粉といっても例えば雪のようにするのか、鉄粉のようにするのかなど、表現方法には相当悩まされたのではないでしょうか?

高梨:そうですね。当初のオーダーでは「白い粉のようなもの」としか書いてなかったので「これっていったい何なんだろうと」(笑)。

一同:(笑)

――そして最後のボス4は9S:多脚戦車従属との戦闘になりますが、バトル終盤では戦車と飛行ユニットが分裂して爆撃してくるなど、分離・合体が印象に残るボスでした。

市田:このボスはアート側でデザインを起こしたときに、3つくらいラフデザインをヨコオさんに提案させていただいています。人型になっていて乗り込むタイプだったり、少しマッシブな感じであったり、実装した戦車のデザインに近いものなどがあります。これらがそのアートですね。



市田:そういったなかで、ヨコオさんからは「合体とかもっと遊び心を入れてもいいんですよ」とご提案をいただいて、飛行ユニットと戦車が合体するギミックが誕生しました。

――あらためて見ると、足回りの部分は機械生命体のフォルムを踏襲されているのですね。

市田:そうですね。必ず顔が付くというルールがありまして。

――同じメカでも魔導アーマーのような『FF』シリーズのメカとはデザインの方向性が違う印象です。

市田:三次曲線を使っていないということもありますので、けっこうシンプルな形状になっていますが、そのなかでもしっかりとディテールを作り上げていくことは大事なポイントでした。

――バトルでは飛行ユニットが爆撃するギミックがありましたが、背景的なデザインのポイントはありますか?

市田:爆撃のポイントとしては、爆撃をしつつ飛行ユニットが飛んでいくわけですが、爆炎と飛行機の軌跡を見ながら次に機体がどこから来るのかを判断するのが、ゲームとしてのギミックの1つになっています。

 最初は表現を重視したが故に、ゲーム的な意図が伝わらずに判断ができないということもありました。ゲーム的な表現と『ニーア』的な表現を残すように、何テイクも重ねましたね。けっこう大変なアクションの1つでした。

『FFXIV』らしい“予兆を見て避ける”形ではなく、アクション自体を見て対処するというギミックにしたのは、『ニーア』のアクションゲームという部分の再現ということで、できるだけ予兆ではなくゲーム中の絵で遊んでいただきたいという狙いです。

――『新生編』の初期ダンジョンでは見かけたタイプのギミックで、最近はあまりなかったので新鮮でした。そうなると、ステージ自体はプレイヤーが縦横無尽に動くということを想定しているので、わりとシンプルな造りになっている感じでしょうか?

高梨:そうですね。ちなみに、この場所は開発内では“エンゲルスの墓場”という名称で作成していて、遠くにエンゲルスの残骸などがふわっと見えるような感じになっています。一応廃工場内ではあるので、ヨコオさんからは「屋外という感じにはしないでほしい」というオーダーがありました。そのオーダーに加えて担当スタッフは“心象風景”などをテーマに取り入れて、独自に作り上げたという感じです。

スタッフの全リソースを注ぎ込んだ“人形タチノ軍事基地”

――続いて第2弾の“人形タチノ軍事基地”についておうかがいします。まず印象的なのはスタート時に見える落下したバンカー跡ですが、このバンカー跡を大きく見せるカットで始まるというのは、当初から決まっていたことでしょうか?

高梨:今回はレイド側(コンテンツ内)だけでなくフィールド側にも変化が起こって、フィールド側からもクレーターやバンカーが変化して見えるという形でした。そのあたりを考慮した結果、「何かランドマーク的なデカいオブジェクトが欲しいよね」となりまして。

 そこでBG側でクレーターやバンカーの仮モデルを作成して、アートセクションと話し合いました。その結果「こういうものがドカッと置いてあればカッコいいのでは」となり、バンカー跡を大きく見せる方向で進めていった流れです。

――そんな印象的な高台からポッドで降りると、ボス1の813P:拠点防衛ユニット装備戦が始まるわけですが、いまだに油断すると戦闘不能になることが多い、ギミック山盛りのバトルになっています。中央からいろいろな攻撃が繰り出されるなど、イメージ的には“リターン・トゥ・イヴァリース”の楽欲の僧院 オーボンヌで戦う雷神シドに近いのかなと思ったのですが、ここはどういうイメージでモデリングやデザインをされていったのでしょうか?

市田:このボスのデザインはオリジナルになりまして、まずは原作のデザインに合わせる形で、原作に登場したとしても違和感を与えない表現に着地させています。エフェクトもできるだけ『ニーア』に出てくるようなオリジナルのエフェクトの印象を再現することをかなり意識して制作しています。

――光が重なったところに安全地帯が発生するという表現も新鮮でした。

市田:そうですね。とにかく新しい表現が多かったボスです。

――なかでもヨコオさん作品のファンが「おおっ」となったのは、内側から外側に広がるエフェクトの隙間をかいくぐるギミック“終焉ノ歌”だと思います。こちらも先ほどの白い粉と同様に「『DDD』のEエンディング時のボス戦のエフェクトなのでは?」という声が多いですが、いかがでしょうか?

市田:そうですね。プランナーの方から「この表現はこのあたりのエフェクトを使ってほしいです」という指定があって、それを“目コピ”しながら再現しました。

――次は2ボスの724~772P:強化型飛行ユニット[A-lpha][B-eta] [C-hi]ですが、VTOL機のようなデザインが特徴的です。こちらもオリジナルにはなると思いますが、デザインのポイントなどありますか?

三石:キャラクターとしては当初デザイン通りに制作を進めていたのですが、バトルの企画に合わせてモデルを修正する必要がでてきまして。機体上部に垂直発射型のミサイルハッチが付いているのですが、当初開かない設計だったんです。ただ「バトル的にミサイルを打ち上げる必要がありますよね」となり、ハッチが開くように修正しました。

 あとは垂直離着陸用のエンジンも回転するようになるので、そこに付いている補助エンジンがほかのモデルと接触しないようにとか、モーション班と連携を取りながら長さの調整などを行っています。また、翼の下にミサイルランチャーのようなものが付いているのですが、そこにもミサイルがキレイに格納されていまして、ちゃんとモデルとして飛ばせるようになっているなど、担当者が細かくこだわって作っていました。

――ああいうメカを見るとフィギュアやプラモデルが欲しくなります(笑)。メカ系のデザインは、見た目のカッコよさも必要ですが、実際に稼働したときに無理がないことも実証しながら組んでいくのですね。

三石:アートセクションでデザインする段階で、そういったギミックを考えてデザインしてくれています。ただ、実際にモーションさせてみると部位が干渉してしまうなど、いろいろ不具合は出てくるので、そこはデザインも変更しつつ調整していく感じですね。

――演出的には3機が並んで突進してくる攻撃はなかなかインパクトありました。メカものとしては鉄板の演出かなと(笑)。

市田:あれはロマンですよね(笑)。プランナー側が「これをやりたい!」という感じでした。

――そしてボス2以降はバンカー内に入り、雰囲気もガラッと変わる印象です。自由探索で歩いてみると、その作り込みのスゴさに圧倒されました。

高梨:原作では格納庫もそうですしバンカーの廊下も2Bの部屋も、ほぼサイドビューで表現されているので、あれを通常の状態で再現したら広さはどれくらいだろうというのは担当スタッフが結構悩んだところです。とはいえ『FFXIV』の仕様に完全に合わせてとてつもない広い廊下にすると、原作のイメージとまったくかけ離れてしまうんですよ。

 ここについては、2Bの部屋を作った『ニーア』愛あふれるスタッフの頭の中に原作の様子が入っているので「こうやったほうがいいんじゃないか」というように試行錯誤して、原作では見られないカメラの視点でこれらのマップを楽しんでいただけるように作ってくれました。

――しかも単に歩くだけでなく、バンカー自体も斜めになっていますからね。

高梨:墜落して壊れているということで、もうボキッと折ってしまえ、みたいな(笑)。それで移動もスーッと滑るような形になりました。

――原作では宇宙空間にあり無重力なのであの構造は気になりませんでしたが、重力があると「こんなに急な傾斜なんだ」と、滑って初めてわかる感じがよかったです。通路を抜けたあとは司令室先でボス3である905P:重陸戦ユニット装備との戦いになりますが、ここはボスだけなく周囲の壁も見てギミックの判断をする必要があります。あのモニターに表示される記号などは、BG班がデザインして作ったのでしょうか?

高梨:そうですね。あとは『オートマタ』チームから「モニターの表現はこうしてほしい」という要望をいただきつつ、やり取りして作っていった形です。

――『ニーア』らしさとギミックとしてのわかりやすさを両立させるように試行錯誤したというわけですね。棒のようなマークが表示されたあと、真っすぐなエフェクトの攻撃が発動したりとか。

高梨:はい。アートセクションに何枚もデザインを描いてもらいました。

――このバトルは中央からの攻撃と、周囲の壁からの攻撃があるなど、わりとボスだけでなくバトルエリア全体と戦うような造りですが、こちらは“複製サレタ工場廃墟”のボス2(ホッブス)と同じように、ほかのセクションと連携しながら作っていった感じでしょうか?

高梨:中央にあるレーザーがでる部分のギミックについては、BG側が『オートマタ』のデータを改造して作ったものになります。

市田:あそこに映し出される映像や、戦闘中に出るハンマーなどはエフェクト表現になるので、エフェクト班も参加して「ここはどのパートが担当しよう」などと綿密に打ち合わせしています。

――ちなみに、この戦いではモニターでオペレーター21Oが登場しますが、キャラクターのモデルは存在するのでしょうか。

市田:『ニーア』チームから画像をいただいて使用しています。

――色味などが原作とは少し違う印象を受けたのですが?

高梨:そうですね。モニター表現としての加工を加えています。

――お話をうかがってみると今回のアライアンスレイドは、各チームの領域の境目を越えて作られている部分が多いようですが、これまでの『FFXIV』のなかでもそういったケースはあまりなかった感じでしょか?

市田:今回はもう『FFXIV』の想定していた仕様を超えた形になっていまして……(笑)。

一同:(笑)

市田:そこを表現していくには、各セクションで分散しつつも長所をお互いに持ち合って、限界を超えていく……みたいな。そこまでやらないとちょっと難しかったですね。

――技術の限界を超えた開発スタッフの努力の結晶というわけなのですね。ある意味“YoRHa: Dark Apocalypse”は“オーバーテクノロジー”でできていると(笑)。

市田:そうかもしれません(笑)。

――そしていよいよラストのエイリアンシップで融合シタ人形タチと戦うわけですが、まずはエイリアンシップ自体のデザインの見どころをお聞かせください。

高梨:こちらも原作ではサイドビューでバトルをする箇所でしたので、どのカメラを向けても見られるようなデザインにしています。『FFXIV』では原作で戦っていた場所の上で戦うので、なかなか原作の部分は見えないのですが、じつは下をのぞくとエイリアンが座っていた椅子もあります。

 あとは原作にシャッターが開いて、奥にエイリアンの母船の残骸が見えるというカットシーンがあるのですが、原作ではカットシーンのみだったところを、『FFXIV』では開いた先で残骸を見ながらバトルができるようにしました。

 これはBGスタッフから「これをオマージュして入れよう」と提案があった形です。また、エリア自体のスケールも大きく作る必要があったので、これまでのエリアとの差別化も大変でした。

――ボスのデザイン自体も相当驚かされた演出でした。こちらは原作の機械生命体が合体するシーンをオマージュしていると思われますが、あれだけのモデルが集合して1つになるなど、表現という面では相当苦労されたのではないでしょうか?

三石:いやー、モデリング担当者はかなり辛い思いをしていました(笑)。

一同:(笑)

三石:今までのレイドコンテンツのなかでも、一番制作難易度が高いアセットだったと思います。全身がアンドロイドで構成されているので、ハイポリゴンのモデルを制作するうえで1体1体貼り付けていくという、気の遠くなるような作業をしていました。

――あれはちゃんと1体ずつモデルを融合させているんですか!?

三石:はい、ぜひハイヒールまで見てもらいたいですね(笑)。全員きれいにポーズを取っているんですよ。注目していただくと、1体1体が個性的でおもしろいと思います。

市田:制作時はかなりやりくりをしていまして、ワーッと集合するシーンも一度に表示できるキャラクター数を超えた表現をしないといけないので、BG側に人形たちが集まった山のようなモデルを用意してもらいました。そしてそれを動かしつつ、今度はそこにキャラ側の人形たちを集まらせる……というように、相互に表示できる限界ギリギリを攻めて、あれだけの数がいるように見せています。

 また、上空から降ってくる人形たちも画面外に消えた瞬間に上に戻して、降り続いているように見せているんです。ありとあらゆる限界ギリギリを攻めていて、裏側を見せると「あれっ?」みたいな感じにはなってしまうのですが(笑)。

一同:(笑)

――吉P散歩でも、吉田さんが「これどうやって作っているんだろう」と、あらためて感心されているのを見て「プロデューサーが感心するくらいだから本当にスゴいんだろうな」と(笑)。

市田:スタッフも長い年月開発を続けてきて、仕様上限のギリギリまで使い切って表現できる技量を持っているからこそ、あそこまでのことができるようになった感じですね。

――それを単体のチームでやるだけでなく、BG班、キャラクター班、エフェクト班の全リソースを使ってギリギリを攻めることを今回やられているわけですね。

市田:もうギリギリです(笑)。

――でもその甲斐があって、『FFXIV』と『ニーア』が合体したBGMとあの演出もあり、ものすごく印象に残るバトルでした。

市田:ありがとうございます。

なかには新規機能を実装して再現した要素も……

――あとはここまでおうかがいした以外で、ダンジョンやボスの注目ポイントがあればぜひお聞きしたいのですが。

高梨:“人形タチノ軍事基地”のボス3手前の司令室がありますが、当初は司令室でバトルをする予定でした。ですが、ここでバトルをさせようとすると2倍、3倍の広さになってしまって、そこにポツンポツンと机や端末が置いてある形になってしまって。

 さすがにこれはダメだろうとなり、プランナーとBG班で考えてモニターの奥に部屋があった、という体で中に入っていくという形に変更した経緯があります。ですから、司令室自体は原作のスケールそのままに、自由に歩いて楽しんでいただく場所として残しています。

――最初にプレイしたときには、あの奥が開いたことにビックリしました。「え、ここが開くんだ」と(笑)。

高梨:そうですよね(笑)。あと、エリア内での移動時にはポッドに掴まって移動しますが、当初の“複製サレタ工場廃墟”ではあのアイデアはなかったんです。普通に高い場所から自然落下で降りるとか、木の根っこを滑っていくというように、ほかのレイドにあるような演出の予定でした。

 さすがに「なんとかならないか」と、プランナーとの間でブレスト(ブレインストーミング)した結果、原作にあったポッドで移動したらカッコよくなるんじゃないという案が出て、まず第1弾で実装してみました。プレイヤーの皆さんにも好評だったので、“YoRHa: Dark Apocalypse”シリーズを通して「こういう高低差があればポッドで」と、汎用的に使われる移動方法になりました(笑)。

――とくに“人形タチノ軍事基地”のボス2の前は、かなりダイナミックな移動演出になっていますよね。

高梨:普通の落下ではああいった演出ができなくて、じゃあそれに沿わせて木の根っこやスロープみたいなのを作るかとなると、それはそれでコストがかかったりします。結果的にポッドはミニオンにもなったので、それも含めてよかったなと思います。

――ちなみにポッドについても『FFXIV』仕様にリダクションされているのでしょうか?

三石:そうですね。また、場面ごとに用途が異なるので、移動に使う場合は内部のギミックがない簡易版にしたり、ミニオンでは固有アクション用にギミックを仕込んだモデルを用意したりしています。

――それ以外では“複製サレタ工場廃墟”に戦車も登場しますが、こちらのデザインで工夫された点はありますか?

三石:機械兵器の丸いアタマなど、他移植アセット同様稼働箇所も多いので、そのあたりを残しながら実装仕様に落とし込むのに苦労しました。

市田:戦車戦のあとになりますが、じつは2Pが飛行ユニットに乗り込んで去っていくシーンの実装にもかなり苦労しています。2Pが飛行ユニットに乗り込んだ瞬間に色が変わるという、原作にある表現をしっかり再現しようとしたのですが、『FFXIV』の仕様上どうしてもできませんでした。

 そこで新規機能を実装するまで力を入れたのですが、実際のプレイではボス戦が終わるとみなさんササーッと先に進んでしまうので、苦労したのにあまり見られていない気がしていまして……(笑)。

一同:(笑)

――ボスを倒したあとは次のエリアにみんな急いで移動しちゃいますからね。

市田:そうなんですよ。だからといって、通路の真ん中にこれ見よがしに置いておくのもなんだかなと。モーション班が相当苦労して実装しているので、ぜひこの機会にあらためてじっくり見ていただけるとうれしいです。

――あとはダンジョンとは異なる話題になりますが、パッチ5.3で“複製サレタ工場廃墟”をイメージした家具がハウジングでも使えるようになり、ものすごく“ニーア愛”にあふれる方々のハウジングが話題になっています。

高梨:吉P散歩で拝見させていただきました。2Bの部屋もそれ専用の家具などは出していないのに、しっかりそれらしく見えましたからね。

――横から見たときのシルエットがそのままでした。

高梨:少し遠くから見ると原作の見た感じそのままで、みなさん楽しんでいただいているなと喜んでいます。

――今後も、例えばバンカーを再現できる調度品が登場したらうれしいですが……。

高梨:この場でやりますとは言えませんが、今後もそういった声を挙げていただければ、担当者に伝えておきますので。

――ちなみに、実装された家具はBG用で作ったデータをそのまま使っているのでしょうか?

高梨:こちらはハウジング用に調整を行っています。

『FFXIV』を“限界突破”させた“YoRHa: Dark Apocalypse”

――今年の夏に7周年企画として、ファミ通.comでアンケートを実施したのですが、その中の好きなバトルコンテンツの1位が“複製サレタ工場廃墟“になるなど、“YoRHa: Dark Apocalypse”はとても反響の大きいコンテンツになりました。あらめて、本コンテンツを制作してよかったことは何でしょうか?

市田:求められるハードルがものすごく高かったコンテンツでしたが、みんなの力を結集した結果、先ほど言った“オーバーテクノロジー”のような本来の上限を超えるものを作ることができました。今まで以上のものが作れる力を身に着けたことで、今後のメインストーリーでもこれらの表現力を使えるようになると思います。

 また、“YoRHa: Dark Apocalypse”の続きでもさらにより高い表現を目指すことができます。そういった意味では限界を広げてくれたというか、今まで以上に『FFXIV』の表現を広げてくれたことが、このコンテンツを制作してよかったことです。

――7年前と比較すると、『FFXIV』の限界はいったいどこにあるんだろう、とすごく思います。グラフィックの表現1つ取っても(笑)。

市田:本来ならばだいぶ前に限界はとっくに到達しているはずなんですけどね。まだ成長しているという(笑)。そこがあるから自分たちもまだまだがんばれるというか、モチベーション高く続けていけるんだと思います。

三石:プレイヤーの皆さんに高評価を頂けているということと、自分たちが制作したグラフィックを違和感なく受け入れてもらっていることが、すごくやりがいがあることだなと思っています。難易度の高いグラフィックを毎回制作して、市田が言ったように制作者側のスキルもどんどん伸びています。

 次にどんなデザインがオーダーされても制作できる体制が整ってきているなと感じています。ボスエネミーのデザインに関しては次もすごいのが来るんだろうなと緊張感と期待感を抱きつつ、制作者の努力がみなさんに直接届くんだと考えると、スタッフ一同やりがいをもって制作に取り組めると思います。もちろん、現場にも『ニーア』のファンがいますので、プレイヤーの方々と同じ気持ちと目線で開発に力を注げて行けたらと考えています。

――現場には若い方もけっこう多いのでしょうか?

三石:そうですね。若い方もいますし、もう10年~20年というベテランのスタッフもいます。若い子は「『FFXIV』のチームにいながらこんなゲームも作れるんだ」といったようにモチベーションは高いですね。『FFXIV』は長期コンテンツなので、別のタイトルにかかわれるという意味でもけっこう楽しんでやってもらえています。

――スタッフとしても今回のクロスオーバーは新鮮だったわけですね。

三石:『FFXIV』も好きだし『ニーア』も好きだという人にはたまらないですね(笑)。そういった意味でも現場のテンションは高めで、今後もコンテンツ制作に邁進していきたいと思います。

高梨:『ニーア』が好きな方、『FFXIV』が好きな方の両方に喜んでいただけて、反響もすごく届いて心からそれがうれしいです。制作側としても普通のファンタジーのなかで、SF的な世界観のまったく違うものが作れたのは楽しくてしょうがないと、各担当スタッフは感じています。世界観の違いをどう融合させるかということも、個人個人でいろいろ考えながら作りました。

 先ほどオーバーテクノロジーという表現もありましたが、たしかに大変なことは大変です。でもそのなかでワクワクしたり、楽しんだりして作ったことが伝わったからこそ、この高い評価をいただけたんじゃないかなと。そこはうれしいですね。

――ちなみに、コンテンツ制作に参加されている人数は、ほかのコンテンツと比べて多かったりするのでしょうか?

市田:人数自体は各コンテンツに割り当てられる人数は決まってはいるので、そんなに大きく変わらないと思います。

――例えば“希望の園エデン”と比べて多いということはないんですね。

市田:そこのバランスは崩さないようにはしています。あとは熱量だと思います!

――これまでのアライアンスレイドもそうですが、今回は『FF』とは違う『ニーア』シリーズとのクロスオーバーということで、プレイヤー側としても作り手の熱量をより一層感じるコンテンツでした。あと、ファンとしては来年4月に発売される『NieR Replicant ver.1.22474487139...』の要素も入れてほしいなと思っています。曲は入っているので可能性はなくはないかなと……(笑)。

一同:(笑)

――ということで、続編についてはまだ何も言えないとは思いますが、ぜひ意気込み的なメッセージをお願いします。

市田:みなさんにプレイしていただいて、驚いてもらえるというか「あっ!?」と衝撃を与えられるような表現を目指して入れていますので、そこを楽しみにお待ちいただければと思います。

――吉P散歩でのヨコオさんのお話的に、ストーリーは大変な展開なんだろうなと覚悟していますが、コンテンツ自体も衝撃的になることを期待しています。これまでのアライアンスレイドの3番目は、たいてい大変なことになっていましたから(笑)。

三石:キャラクターセクションも第1弾、第2弾とコンテンツ制作にかかわってきましたが、第3弾もみなさんにビジュアル面でインパクトを与えられるようにがんばってまいります!

――新たなキャラクターも出るといいなと期待しています!

高梨:またマンパワーを総動員して、第3弾もいいものを作れたらと思います。

――本日はありがとうございました!

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IMAGE ILLUSTRATION: (C) 2018 YOSHITAKA AMANO
※画面はPC版、PS4版のものです。

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