スマホ版『オクトパストラベラー』開発者インタビュー。シングルプレイRPGとしての熱量がすごい!

長雨
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 スクウェア・エニックスより、好評配信中のiOS/Android用シングルプレイRPG『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー) 大陸の覇者』

 12月中旬に初の大型アップデートを迎える本作のプロデューサーの横山祐樹氏、開発ディレクターの鈴木裕人氏、運営ディレクターの木寺康博氏のインタビューを複数回に渡ってお届けします。

 インタビュー第1回は、作品のコンセプトや、『オクトパストラベラー』らしさへのこだわりなどをうかがいました。

  • ▲写真左から、木寺康博氏、横山祐樹氏、鈴木裕人氏。

開発スタッフも想像しないスピードでトラベラーが急増中

――10月28日に配信され、11月14日には早くも1000万プレイヤーを突破しました。ユーザーからの大きな反響を受けて、今のお気持ちを教えてください。

横山:我々が予想していたよりも早い段階での達成で、まずは「ありがとうございます」と言う気持ちをお伝えしたいです。

 本作を制作するきっかけは、Nintendo Switch版『オクトパストラベラー』の企画・プロデュースを担当する浅野智也の思いを受けてのものでした。ゲーム機を持っていない方でも遊べるように、スマートフォンでも展開して、より多くの方に『オクトパストラベラー』を届けたいという。その願いが叶って嬉しいです。

鈴木:本作は幅広い層に気軽に遊んでいただくソーシャルゲームの枠というより、面白いRPGを作って、遊ぶ層は選ぶかもしれないけれども、それが刺さる人にしっかり楽しんでいただくタイトルとして作ってきました。

 しかし多くのお客様が実際に楽しんでくださる様子を見ると、こういう作品を待っていていただけたんだなと嬉しく感じています。

木寺:『大陸の覇者』をリリースしたあとに、「Switch版も遊んでみたい」「Switch版を遊んだら楽しかった」という声をたくさんの方からいただきまして、Switch版のプレイヤー拡大にも貢献出来たかなと思います。

 これからも『オクトパストラベラー』というIPを広げていきたいですね。

――プレイヤー数888万突破のドットイラストや学者ネコからのメッセージなど、お祝いも印象的なものが多いですね。

横山:本作は“8”の数字を大事にしているので、大々的にお祝いしたいなと思いまして。

 正直な話、888万人のときのドット絵は……事前に用意していました。8が並ぶ888万は盛り上げたいタイミングだと思ったので、制作時間もかけて、気合を入れて準備していたのですが……まさか2週間前後で突破することになるとは!

木寺:準備はしていたものの、これが世に出るのはもう少し先……早くて半年くらいはかかるかなと思っていたら、あっという間(笑)。

鈴木:早くも、大掛かりに準備していたお祝い演出のストックがなくなりましたね(苦笑)。次は……8888万かなあ。

 突破記念のプレゼントについて、学者猫のアイラから送る手紙のメッセージは、クスっとしてもらえるようにライターと一緒に試行錯誤しながら書いています。

 ログインボーナスも、学者猫のアイラからの手紙形式です。毎日プレイしてもらうのは難しいことだと思うのですが、手紙でちょっとしたヒントを書いたり、プレイヤーの方を気遣う内容になっていたりすることで、「アイラからの手紙を読みたいな」とログインしてくれるお客様が増えるといいなと。

Switch版から繋がる『オクトパストラベラー』らしさ

――今後も1カ月、半年、1年と、毎日手紙を読むのが楽しみです! 続いてはお約束の質問ですが、開発の経緯やコンセプトについてお聞きします。先ほど「ゲーム機(Switch)を持っていない方にも遊んでほしい」という話が出ましたが、最初から移植ではなく、オリジナル作品という方向性だったのでしょうか?

横山:移植というワードは、最初からなかったですね。ただ浅野から、昔ながらのドット絵に画面効果を加えた“HD-2D”のルックはスマートフォンでも担保してほしいとリクエストはありました。

 そのあと『オクトパストラベラー』らしさを継承しながら内容を詰めていった結果、自然にSwitch版の数年前がいいだろうという流れになった感じですね。

――『オクトパストラベラー』らしさで、特に意識された部分はありますか?

鈴木:独特なバトルシステムを踏襲することなどももちろんですが、特にプレイスタイルをユーザーにゆだねられるところは大事にしています。

 Switch版は、8人いる主人公の誰からでもスタートできます。“フィールドコマンド”も、やってもやらなくてもいいけど試すといいことがあって、自分が行動することで発見があったり、登場人物の繋がりを見つけて想像を膨らませたりできます。

 本作でも“フィールドコマンド”をがっちり入れて、もっと知りたい人のために一部NPCに“さらに聞き出す”も用意しました。

 ただ主人公たちよりもNPCが“富”、“権力”、“名声”の何を大事にしているかにスポットライトを当てた方が作品としてしっくり来たので、“フィールドコマンド”のシステムは少しアレンジしています。

――違うシステムもありますが、Switch版と同じ手触りで遊べることに感動しました。ソーシャルではなく、1人用というのは最初からブレることなく、固まっていたのでしょうか?

横山:そうですね。『オクトパストラベラー』を広く知ってもらうための作品でもあるので、まったく違うものになっては意味がない。そう考えたときに、何が必要で何が不要か、皆で考えました。

――そのなかで、入れるかどうか悩まれたシステムもあるのでしょうか?

鈴木:今でこそ言えますが……1番悩んだのは“フィールドコマンド”でした。

 とても面白いシステムで、『オクトパストラベラー』らしさを体現する要素ではあるのですが、入れ込むのが大変だと言うのは最初からわかっていたので……。

 テキスト量や入手できるアイテムも増えるので、デバックなどのカロリーも、とにかく増えるんですよね。

 そのため、開発初期はジョブごとに釣りができたり、お祈りをするとアイテムがもらえたりと、今とはまったく異なる方向性で考えていました。

 しかしSwitch版をプレイしたユーザーの皆さんが、予想以上に“フィールドコマンド”を楽しんでいて、これを外すと『オクトパストラベラー』じゃないなと。

木寺:人間関係などを想像して楽しむための要素が“フィールドコマンド”のテキストに入っていたので、その体験をそこなうのはどうなのかという話になって、入れることになりましたね。

横山:本作はSwitch版が発売される前から開発していたので、『オクトパストラベラー』のどの部分をお客様が楽しんでもらえるのかわからない部分もあって、試行錯誤しましたね。

 最終決断は、Switch版で皆さんが楽しんでいるのが我々の目に見えてからでした。浅野にフィールドコマンドを入れたいと相談したとき、浅野からも「フィールドコマンドは、やっぱりいると思ったよ」と言われましたね。

――普通のRPGだと単に情報をくれるだけの村人について、その背景設定がわかったり、アイテムをもらえたりして、世界観が広がりますからね。おじいさんに戦いを挑んだら、思ったよりも強くてビックリとか!

木寺:Switch版を遊んだ方からも、かなり反響が大きかったところですからね。

 ただ……それまで考えていたアイテム入手バランスが、一気に壊れました(笑)。

鈴木:最初からバランスを考え直すしかありませんでした。でも、やろうと!

――確かに確率は低いですが、序盤に貴重なアイテムが入手できることもありますからね。

鈴木:手に入るアイテムも仲間になる協力者も格段に増えるので、バランスが取りにくくて大変なシステムなんです。でも、だからこそ遊んで楽しいという。

木寺:“勝ち取る”や“引き入れる”で登場するエネミーのデータも作らないといけなくなったので、そこでも作業量が増えました(笑)。

――“フィールドコマンド”は、本シリーズのポイントですよね。個人的に“聞き出す”で見られる“富”編のタヴィアーニと周囲の人間関係がツボでした。

鈴木:タヴィアーニがはべらせている愛人かと思いきや、実は……とかですよね。

木寺:タヴィアーニから「いつか返せよ」と言われている財布を、それを借りている部下から“買取る”こともできますからね(笑)。それを買うかは、プレイヤー次第。

 プロフィールを見ることで新たな人間関係が見えたり、どうしてそのアイテムを所持しているのかという理由が見えたり、いろいろと楽しんでいただけるかと思います。

鈴木:「このアイテムをもらっちゃってもいいの!?」みたいな、人間心理的に悩むようなシチュエーションやアイテムもちょこちょこ用意しています。

横山:エンバーグロウにいる“寒さに耐える少女”とかね。形見と思われるアイテムを交渉するのは、良心が試される……。

木寺:「大事にしてね」って言われちゃいますしね。

――自分がプレイしたときは、大人なら大事にしそうなアイテムはあっさりくれたのに、キャンディだけくれないことがありました(笑)。

木寺:小さい子だと、そういうこともありそうですよね(笑)。そういった、プレイヤーそれぞれのドラマや体験が生まれるのも、『オクトパストラベラー』の楽しさだと思います。どんな会話があったのかは、ぜひ想像で補完してほしいです。

この先2年分を用意!? 地に足がついたシナリオへのこだわり

――個性的なシステムだけでなく、重厚な物語も見どころです。最初からエンディングまでプレイできてとても嬉しかったのですが、運営型のRPGとしてはとても珍しいですよね。

横山:1人用RPGとして、エンディングは必要だろうと考えました。配信とあわせてエンディングを用意することは、最初から決めていました。

鈴木:物語が尻切れトンボだと、プレイした時の満足感がコンシューマゲームとまったく違うものになる気がしまして。

 まずは本作を遊んで『オクトパストラベラー』を好きになって、遊び続けていただきたいと言うことが目標でしたので、できる限りのボリュームで配信しました。

 ストーリーが面白くて、ついつい止め時を失って、徹夜してエンディングまで遊びたくなってしまう経験って、コンシューマゲームではよくあったことだと思うんですよね。その楽しさを用意したいなと。

木寺:富、権力、名声をすべてクリアすると新たな物語“全てを極めし者”が楽しめるのですが……実は最初は、あれが最初から遊べるメインシナリオでした。遊んだ方にはわかっていただけるかと思いますが、かなり長いです(笑)。

 最初からあの長さだと途中で離脱してしまう方も多くなると言いますか、まずはもうちょっと気軽に達成感を味わってもらってから長編を遊んでもらうのがいいんじゃないかと、富、権力、名声と、それぞれちゃんとエンディングを楽しめる3つのメインシナリオを作っていったんです。

鈴木:“全てを極めし者”だけで、富、権力、名声をすべてあわせたシナリオよりもボリュームがありますからね。

 続くシナリオも、かなり完成しています。12月中旬予定のアップデートで追加予定のメインストーリー新章からは分割にはなりますが、毎回何かしらの満足感が得られるものになるよう、努力しています。

木寺:エンディングを見て面白いと感じていただき、そのプレイヤーさんが「基本無料で遊べるから、遊んでみて!」と、周りの方に広げてくださるのが大事だと思っています。

 そうなればSwitch版に興味を持つ方も増えると思いますし、何年も『オクトパストラベラー』というIPが続けられるように、「遊んで楽しかった」「クリアして楽しかった」と感じてもらえるように作っています。

――数年先まで物語が完成しているとのことでしたが、先行して作っている意図、狙いを教えてください。

鈴木:2年分ほど用意しているのは、お客様に満足感を継続して提供し続けられるようにていねいに作っているからです。

 イベントやゲーム設定にもお時間をいただくので、そういった物語を面白いゲーム体験としてお届けできるように、長期的な展開を担保できるだけの量を準備しています。

――運営型だと連載漫画に近い形で制作される作品も多いなか、ちょっと特殊ですよね。

横山:1人用RPGでお客様が求めるコンテンツは、まずはメインストーリーじゃないかと。なので、定期的な配信は運営の軸にすべきだと思っています。

鈴木:連載的なやり方もできるんですが、それだと矛盾が生まれやすくて、『オクトパストラベラー』が大事にしている“地に足がついたシナリオ作り”が難しくなってしまいます。

 そして、そうなると作品を愛してくれるお客様には受け入れてもらえないでしょう。なので、時間をかけて事前にストーリーを練り込めるように、その準備に時間をかけた流れですね。

インタビューの続きは近日公開!

 開発者インタビューでは、キャラクターにまつわる開発秘話や、今後のロードマップについても詳しく伺いました。続きは近日公開予定なので、お楽しみに!

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OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

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