電撃オンライン

読むと誰かに話したくなる! 開発者が明かすスマホ版『オクトパストラベラー』の意外な苦労点や幻の没ネタ

長雨
公開日時

 スクウェア・エニックスより、好評配信中のiOS/Android用シングルプレイRPG『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー) 大陸の覇者』

 12月中旬に初の大型アップデートを迎える本作のプロデューサーの横山祐樹氏、開発ディレクターの鈴木裕人氏、運営ディレクターの木寺康博氏のインタビューを複数回に渡ってお届けします。

 インタビュー第2回目は本作の持つRPGらしさや魅力的な64人のトラベラーたちについてのお話を伺いました。

  • ▲写真左から、木寺康博氏、横山祐樹氏、鈴木裕人氏。

RPGとしての没入感を大事に

――本作はとてもコンシューマ的なRPGらしさが詰まった作品ですが、皆さんがRPGづくりの際に大事にされていることは何ですか?

横山:現代の人はとにかく時間がないと言われているので、時間はものすごく貴重なものだと感じています。ゲームだけでなく、世の中には楽しいことがたくさんありますしね。

 ですので、そんな貴重なお時間をいただくからには、価値のあるものをお返ししたいと考えています。

 『オクトパストラベラー 大陸の覇者』で言えば、RPGとしての没入感を大事にして、いい意味で時間を忘れて楽しんでいただけるゲームになっているかを意識しました。

木寺:私は運営だけでなく、実はバトル周りも担当していまして。

 バトルで言えば、繋がりを大事にしています。例えばBGMですが、前作でも使用していた演出ですが、バトル前の場面では前奏的な部分をループさせて緊張感をもたせ、バトルに入ったら、自然な形で曲の盛り上がり箇所につなげるという、あまり他のゲームではない演出にしています。

――とても自然な流れで曲がつながりますよね。自分は最初、毎回ボスのたびにいい感じのところで曲が盛り上がるので、「これはプレイヤーが文字を読む速度を計算して曲のイントロの長さを場面ごとに調整しているのかな? すごいな」と感心していました(笑)。

木寺:ボス戦の音楽では、そのくらい“自然なつながり”を演出しました。

 音だけでなく絵についてもそうで、バトルに入る直前とバトルに入る時とで、キャラのポーズや配置をできるだけそろえることで、物語から戦闘へ切り替わったときに自然なつながりを持たせて、体験が損なわれないように一体感のあるバトルシーンを設計しています。

――言われてみると、物語場面で敵が左、プレイヤーが右にいることが多く、バトル画面でも同じ配置で戦闘が始まりますね。

鈴木:すべては無理でしたが、できるだけそうしています。遊んでいる方にはあまり伝わらないかもしれませんが、地味に大変だったりします(苦笑)。

木寺:ただ、そういうこだわりが没入感にかかわってきますので、大変ですけどスタッフと一緒に最後まで調整しました。

バトル開発秘話。システムもバランスも開発途中でいろいろ変わった!?

――バトルのお話になったので、システム面について教えてください。特徴的な8人での戦闘は、最初から決まっていたのでしょうか?

木寺:888万プレイヤーの話でも出ましたが“8”という数字を大事にしているので、8人パーティにしようというのは最初に決まりました。

 8人をどう割り振るかと考えたときに前・後列の配置にすることになったのですが、最初は前列4人だけが画面に登場して、交代するとキャラが画面外から出てきて入れ替わる形だったんです。

 そこで浅野から「せっかくなら、8人を一度に見せた方がいいんじゃないかな」と助言され、今の形になりました。

横山:4人だけを表示していた時は、それはそれでSwitch版と同じような画面構成で悪くはなかったと思いますが、画面に『大陸の覇者』として明確な特徴があるのはよいことだなと。

木寺:これまでのコンシューマRPGでも、8人の仲間を全員表示するゲームってあまりないじゃないですか。8人表示させてみたら、それまでのRPGとは違う新しさを感じましたね。単純に、バトル画面でたくさんの仲間がズラリと並ぶのもかっこいいですし。

 また、システム的にはブーストの操作方法はけっこう難航しました。Switch版のようにコントローラ操作だと、LRボタンでの直感的な増減をする形で、「ブーストを3回しよう。バンバンバン」みたいな気持ちよさを出せていますが、同じようなことをスマホのタッチ操作でやろうとしてもしっくりこなくって。

 スマホならではの気持ちよさと直感的な操作を実現するためには? と考えて出てきたのが、現在のスワイプ的な操作方法でした。ちょっとだけブーストしたい時は軽くスッと、全部ブーストしたい時は思いっきりスーッと指を動かす感じで、かなり直感的な気持ちよさを出せたかなと思っています。

横山:浅野に最初に見せた時、「いいね!」ってホメられました(笑)。

鈴木:浅野にホメられると、嬉しいんですよね。『オクトパストラベラー』らしさとして、合ってたんだって(笑)。

木寺:あと、Switch版は1人ずつ操作していましたが、スマホ版は操作時間を短くしたほうがよいだろうと、基本的には何もしなくても“たたかう”が選択された状態で、指示を出したいキャラだけコマンド入力をするという形にしています。

――便利機能はありますが、オートがないところにこだわりを感じました。

木寺:そうですね。オートにしてしまうと、没入感がそがれてしまいますので。PVに“他人に判断を預けるな”という言葉もありますが、自分で決めて戦闘を楽しんで欲しいですね。

 その反面、快適に遊んで欲しいと言う気持ちから“オールブースト”や“全員交代”を入れています。

横山:バトルのテンポ感は、かなり悩みましたね。本格的なシングルプレイRPGとして、少し時間がかかってもよいバランスにするのか。それとも、スマホRPGとしての側面を重視して、もっとさくさく遊べるようにすべきなのか……。

 一時期はザコ戦のテンポをアップするため、シールドポイントがない敵を配置するなど、試行錯誤していました。ただ、弱点をついてシールドを破壊して、ブレイク状態になったところで大ダメージを与えて敵を倒すという気持ちよさは『オクトパストラベラー』の大きな特徴なので、そのような敵の配置はやめ、今のバランスに落ち着きました。

 それから、かなり悩んだのは、行動順番の表示ですね。行動順番を見せると、バトル時の情報量が増えて、人によっては「難しそう」「ハードルが高そう」と感じられてしまうと思いました。

 我々としては、そこまで考えることをスマホのユーザーに求めなくてもいいのではと思ったのですが、先行体験版で「Switch版同様、行動順を表示して欲しい」という要望が多数あって、最終的に追加しました。

木寺:本作のバトルは、「どのタイミングでブレイクを狙うか」「キャラを交代させる時、どのタイミングなら全体回復が効果的に使えるか」など、行動順を考えることが攻略にもつながるので、追加してよかったと思います。

“驚き”を骨子として設計された秀逸なストーリー

――話を戻しまして、鈴木さんのRPGにおけるこだわりはいかがでしょう?

鈴木:僕はRPGに限らずなのですが、ゲームを作るときは作用と反作用を意識しています。プレイした結果として返ってくるリアクションが遊んだ人にとって価値があるものになっているのか? がとても大事だと。

 本作では、リアクションの中でも特に“驚き”を骨子のひとつとして設計しています。“フィールドコマンド”ひとつとっても、“聞き出す”でそのNPCの意外な情報が見られるなど、やってよかったと思えるものになっているように制作していますね。

 その要素がもっとも色濃く出ているのがメインストーリーです。「まさかこうなるとは!」と感じて続きが気になる展開をしっかりと用意しましょうと、シナリオ担当の普津澤とも密に話しながら設計を練っていきました。

 SNSなどでの反響を見ていると、そういう思いがプレイヤーに伝わって、“驚き”を誰かと話したいという流れになったのかな、と感じることができてうれしいです。

――確かにメインストーリーは、驚きの要素が凝縮されていましたね。

鈴木:メインシナリオは僕が監修していて、普津澤と一緒に作っては壊すを繰り返しながら進めてきたのですが、設計の部分は自分の性格の悪い部分が出たかもしれませんね(苦笑)。

横山:ここはちゃんと書いておいてください(笑)。

鈴木:(笑)。

――完全に救いがないわけではないですが、かなり心をえぐられました。

鈴木:もっと批判的な声が多いかもしれないと思って覚悟していたのですが、僕の方が驚いています(笑)。

木寺:大人向けではありますけどね。家族に勧めるときも、甥っ子には少し早いかもって話しました(笑)。

鈴木:少し驚きが過ぎましたかね。

婿探し&成人の儀が多いのには理由があった

――物語や没入感のあるシステムだけでなく、登場する個性的なトラベラーたちも魅力的です。最初から64人とかなり人数が多めですが、どのように決めていったのでしょうか?

木寺:単純に“8”にこだわって、8×8で64だろうと言うところからスタートしました。

鈴木:ジョブも8つあるからと64かと、今思うと32でもよかったのに(笑)。

 最初はトラベラーストーリーも僕が監修していたんですが、さすがに多いので、途中から木寺に担当してもらいました。

木寺:トラベラーストーリーはSwitch版のシナリオを書いていただいた方を中心にお願いして、完成したものをもとにイベントにしています。

鈴木:今は担当がまた僕に戻っているんで苦労していますが、1キャラずつ丁寧に作っているので、見る甲斐があるものになっているとは思います。

木寺:皆さんにも楽しんでいただいており、うれしいです。現在は、アップデートごとに星4キャラのトラベラーストーリーを追加していますが、好評をいただいています。

鈴木:リリース直後から64キャラ分すべてを入れることも考えたのですが、メインストーリーから横道にそれ過ぎてしまうかもしれないという懸念があり、星4キャラのシナリオは段階的に公開していく形をとりました。

木寺:ちょっとした悩みと言いますか、課題なんですが、64人以上も用意したことで、町にトラベラーが溢れちゃってるんですよね(笑)。

鈴木:今後も増えますし、NPCより多いんじゃないかってところもありますね(笑)。

木寺:シアトポリスに盗賊がたくさんいて、都会には盗賊が多いんだろうなと思いました(笑)。

 シナリオの流れで、やたら盗みに入られている民家があったりします(笑)。そういうところも楽しんでいただけたら。

鈴木:一部で、婿探しや、魔物と戦う成人の儀が多くて、トラベラーストーリーがワンパターンだという意見もいただいているのですが……ちょっとだけ釈明を。

 まず、メインストーリーが非常に重いため、トラベラーストーリーはもう少し気軽なものにしたいと思いまして。特に星3トラベラーの話はライトな話にしています。

 また、同じ傾向の方が物語に入りやすいかなと、あえて共通性を持たせているのですが、配信直後は星3のキャラしかいないため、意図と違う形で偏ることになってしまい、反省しています。

木寺:星4以上のシナリオでは重い話も出てくるので、味の違いを楽しんでいただければと思います。

鈴木:星5、星4のトラベラーストーリーの解放は少し特殊で、同じタウンで発生する、同じ影響力の星3トラベラーのストーリーをクリアするとクエストが受けられるようになります。一気に解放されると、どれから遊べばいいのか悩む方もいるかと思うので、そういった条件を入れました。

木寺:序章は誰でも遊べて、それ以降は仲間にしたら見られるようになっています。序章で興味を持って、仲間にしたいと思っていただけたら、うれしいですね。

 また各トラベラーのイラストは、それぞれのシナリオの一場面を切り取ったものになっています。ぜひストーリーを読んで、どのシーンか確かめてみてください。

――お気に入りやオススメのトラベラーストーリーはありますか?

木寺:フィオルのストーリーは、ボス戦よりも動くんじゃないかというくらい作りこんでいますね。ストーリーも重めです。

鈴木:いい意味でトラベラーストーリーらしくないですね。あとクレスも重いシナリオです。

 フィオルやクレスは“権力を極めし者”の原案を書いていただいた羽多野大さんが担当なので、その色合いが出ているかもしれません。

木寺:コミカルなものだと、ファビオや、Switch版にも出てきたノエルですね。スキルが便利なキャラクターのペレディールも、笑えるシナリオになっています。

インタビューの続きは近日公開!

 最終回となる第3回目では、今後の展望や気になるSwitch版キャラクターたちについてうかがいました。続きは近日公開予定なので、お楽しみに!

(C) 2020 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
(C) 2018, 2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります


OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: iOS
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者

  • メーカー: スクウェア・エニックス
  • 対応端末: Android
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年10月28日
  • 価格: 基本無料/アイテム課金

関連する記事一覧はこちら