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『サイバーパンク2077』プレイレビュー。自己投影という遊びかたがここまで楽しいゲームがあっただろうか?

hororo
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※『サイバーパンク2077』は、CERO Z(18歳以上のみ対象)のソフトです。
※18歳未満の方は購入できません。

 12月10日にPS4/Xbox One/PCで発売予定のオープンワールドRPG『サイバーパンク2077』のプレイレビューを掲載します。

 世界的に高い評価を得たファンタジーオープンワールドRPG『ウィッチャー3:ワイルドハント』。その開発会社であるCD PROJEKT REDが満を持して送り出す最新作が、12月10日に発売予定のオープンワールドRPG『サイバーパンク2077』です。

 “サイバーパンク”といえば、強い影響力を持った国や企業が市民を抑圧していたり、肉体を機械化するサイバネティクスや、コンピューターに脳や視界を接続する技術など、“肉体と機械の融合”というテクノロジーがいびつに発達していたりする架空世界を描くジャンル。作品としては小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』や映画『ブレードランナー』などが有名で、熱烈なファンが多いジャンルです。

 ビルが乱雑に集合・合体したようなスラム感、ケバケバしい色合いのネオンや街頭ビジョン、そしてヘンテコな日本語などが舞い踊る独特なビジュアルは、多くの人を惹き付けてやみません。

 かくいう自分も、そんな世界観に魅せられたひとり。サイバーパンクという名を冠する本作が何を描き、何を見せてくれるのか。先行プレイした体験をもとに、その魅力を語ります。

これはVという人物の追体験ではなく、プレイヤー自身の物語!

 『サイバーパンク2077』を手がけるCD PROJEKT REDは、プレイヤーの心をグッとつかむストーリー演出を得意としています。もちろんそれは本作にも当てはまり、先が気になる物語は本作の魅力のひとつであることは疑いありません。

 舞台となるのは、さまざまな人種や文化を内包する巨大都市“ナイトシティ”。プレイヤーは、この街で成り上がることを夢見る若手の傭兵“V(ヴィー)”となって、さまざまな依頼に挑み、名声を獲得していくことになります。そして、引き受けた仕事のなかで、不老不死のカギとなるインプラント<Relic>を入手し、大きな陰謀へと巻き込まれていくことに。

 ネタバレになるため物語の詳細は省きますが、予測ができない展開の連続や、個性的なキャラクターのかけ合いは、十分に物語に没頭するだけのパワーがあり、気が付けば時間を忘れてのめり込んでしまうほど。

 特に、Vの相棒となるジャッキー・ウェルズはかなり愛嬌のあるキャラクターで、個人的にイチオシの人物。独りで生きるには厳しいナイトシティにおいて、Vの悪友であり、よき兄弟のような立ち位置で孤独を紛らわせてくれます。

 そして中盤以降はキアヌ・リーブス氏が演じるキャラクター、ジョニー・シルヴァーハンドがVとともに行動するように。このジョニーという人物は<Relic>の中にのみ存在するデジタルゴーストなのですが、かなりのクセモノ。Vとは反目し合ったり協力したりしながら生きていく共生関係を築いていきます。さらに彼は本作の世界と物語の重要人物でもあるため、関わっていくにつれ、よりストーリーに興味を持つことでしょう。

 このようなストーリーだけでも魅力的なのですが、本作の引力というものは物語のよさだけに留まりません。一人称視点による“プレイヤーが味わえる主人公感”こそ、本作に没入感をもたらしているカギだと感じました。主観視点でプレイするゲーム自体はたくさん存在しますが、本作ほど“物語の登場人物”という感覚を味わえるのは稀有だといえるでしょう。

 これには、プレイヤーが操作できるパートからNPCとの会話パートがシームレスで展開される、という要素が一役買っています。会話シーンとの間でテンポが崩れない……というだけであればそれほど珍しくはありませんが、場面に沿った行動だけではあるものの会話中でも動けることや、NPCの表情や身振りなどが自然に描かれることなどが相まって、ものすごく自然なシーンが構築されていくのです。

 例えば、序盤にジャッキーに車を運転してもらい、Vは助手席に座ってドライブするシーンがあります。この時、Vの顔をジャッキーの方へ向けることもできますし、前を見続けることもできる。窓の方を見て、流れる景色を眺めつつ話をすることも可能です。

 実際の世界で、車の助手席に座りつつドライバーと話をする際、相手の顔を見続けるということはあるでしょうか? 話題や相手の反応によっては、たまには顔を向けるかもしれませんし、単純に風景が気になって窓を見ているかもしれません。どういった行動を取るかは人それぞれだとは思いますが、その個人のクセみたいなものがゲーム中でも出せる作りになっていると感じました。

 さらにいえば、左側にはジャッキーの顔、正面にはナイトシティの景色、右側にはより近いナイトシティの街並みと、どこを見るにしても情報量が多く作られており、見たくなる場所が意図的に散らされている印象。これが“プレイヤーそれぞれの視線のクセ”みたいなものを引き出す効果を持っているのかもしれません。このような効果が、Vとプレイヤー間のリンクを深め、よりこの世界に没頭させてくれるのです。

 没入感を感じる理由はもう1つあります。それが会話(または行動)の選択肢の豊富さと、それに伴う反応の変化です。ゲームプレイに選択肢を導入するゲームは多いですが、どの選択肢を選んでもその後の展開に影響はないものもあります。しかし本作では、選んだ選択肢に応じて相手の反応や、状況がかなり大きく変わっていきます。

 もちろん、相手のセリフが変わるだけのような小さなものもありますが、例えば自分の選択が登場人物の生死に関わったり、戦う相手が変わったりすることは珍しくありません。そして、変化する展開先はザックリ2つに分かれる、というようなシンプルな分岐ではないのです。1つ1つの返答によって細かく未来が動いていき、その積み重ねによって大きな変化が訪れる、というイメージ。

 代表的なのが、序盤のメインストーリーで訪れることになるメイルストロームギャングとの交渉シーンでしょう。以前の先行体験レポートなどでも触れられていますが、この交渉の分岐はかなり多く、自腹を切って取引を成立させたり、力ずくで商品を奪い取ったり、情報を与えて懐柔したりとさまざまな手段があります。そのうえ、単純に戦闘をするにしても、相手の機嫌を損ねて戦闘になだれ込むパターンや、こちらが積極的に口火を切るパターンなども用意されており、正確にどのくらいの分岐があるかわからないほど。

 こういった“自分の選択が反映されている”という感覚が、自分が物語の主役であると認識させてくれます。そして、自分の選択によって物語がどのような結末を迎えるのかを確かめたくなる魅力があるのです。

ゲームが自分に合わせてくれる、TRPGライクなプレイフィール

 突然ですが、テーブルトークRPG(以下、TRPG)というジャンルのゲームをご存知でしょうか? プレイヤーがそれぞれ自分のキャラクターを作り、ゲームマスターと呼ばれるプレイヤーが司会進行を務めつつ、会話を中心に物語を進めていくゲームです。最近ではオンラインで遊ぶプレイヤーも増えてきていますし、YouTuberがプレイしている動画を公開していることもあるので、知名度は上がってきているかもしれません。

 そして、実は『サイバーパンク2077』も、『サイバーパンク2.0.2.0.』というテーブルトークRPGを原作とするゲームなのです。

 そんなこともあって、本作にはTRPGのエッセンスがふんだんに盛り込まれています。基本的にTRPGの魅力というのは、プレイヤーがさまざまな能力を組み合わせて“自分のキャラクターを作れる”こと。そして作り上げたキャラクターが“どのような行動を取るかを想像してゲームに反映できる”ことにあります。

 これを本作に当てはめて見てみましょう。まず“自分のキャラクターを作り上げる”という要素は、キャラクターカスタマイズの幅広さに現れています。本作の容姿のカスタマイズ項目は非常に細かく、顔の詳細な造形はもちろん、歯の色やタトゥー、傷跡のパターン、爪、インプラントの描写など多岐にわたります。男性の体に女性の声(NPCからの対応は声依存)を当てることすら可能です。

 詳しくは後述しますが、全5種類の能力値へのポイント割り振りや、パークによる得意分野の差別化など、同じVというキャラクターでも、プレイヤーによってまったく異なる人物ができ上がるはずです。これはまさしくTRPGにおけるキャラクターメイキングの過程と大きく似ています。

 また、本作には“ライフパス(出自)”という要素があります。Vがこれまでどのように過ごしてきたか、という要素なのですが、選んだライフパスに応じて、NPCとの会話時に特殊な選択肢を選べるようになります。

 例えば“ストリートキッド”であれば、ナイトシティの路地で育ったという設定のためギャングの事情に詳しく、ギャングとの交渉時に有利な選択を選べることもあるでしょう。“コーポレート”を選んだ場合は企業の事情に精通しているため、企業関連の交渉に役立つはずです。このように、主人公の“設定”がゲームプレイに影響するのは、かなりTRPG的と言えます。

 能力値やパークも然りで、“肉体”値が高ければ体力やスタミナの値が増える他、ドアを無理矢理こじ開けたり、羽交い絞めにした敵に逃げられるまでの猶予時間が増えたりします。“意思”値が高ければステルス時に敵に発見されにくくなるなど、能力値によって恩恵が異なるため、自分のVをどのように育てていくかを考えてポイントを割り振っていくのは悩ましくも楽しい作業です。

 この割り振りによってVのスタイルは大きく変化。例えば“肉体”&“知力”重視でハッキングを駆使しながら戦う戦闘スタイルを作ることもできれば、“肉体”&“意思”を重視して戦闘とステルスを両立することもできますし、“知力”&“意思”を重点的に上げ、ハッキングとステルスを得意とするVも作れます。

 さらにここにパークが加わり、多様性はより拡大! パークは能力値に比べて、より専門的な分野を強化するもの。とにかく数が多く、同じ“肉体”特化型のVを作ったとしても、パークの習得のしかた次第でプレイスタイルはガラっと変わります。そしてパークの数は尋常ではないほど多いため、ゲームが進んでVが成長するほど、自分だけのキャラクターだという感覚は増してくるはずです。

 “どのような行動を取るかを想像してゲームに反映できる”という要素について。前述した会話の選択もこれに当てはまりますが、単純な行動……プレイスタイルとしての幅広さも持っているのが本作の特徴です。

 例えば、ある倉庫に侵入しようとした際、壁沿いを調査していたら積み上げられたコンテナがあり、そこから侵入できました。その後さらに見回ると、別の抜け道めいた場所も存在していました。ただし、こちらは“技術”値が高いと開けられるという条件付きの扉で、自分のキャラクターではそのルートは使えませんでした……。もちろん、強さが充分であれば、強引に正面突破するのも1つの手段です。

 このように、自分のVが得意とするスタイルに応じて、攻略ルートを選定できます。また、サイバーウェアを利用すれば、2段ジャンプで高い塀を飛び越えたり、固く閉ざされた扉を強引にこじ開けたりといった芸当も可能に! 電子機器をクイックハック(ハッキング)して敵の注意を逸らし、そのスキに侵入する、といったテクニカルな突破方法も考えられます。クイックハックは戦闘中にも行うことができ、さまざまな効果で戦況を有利に運ぶこともできます。

 TRPGを遊んでいるとき「この難所をどうやって乗り越えようか」と考えることはつねですが、本作はそれをまさにゲーム内でやらせてくれるのです。もちろん本作にもできない行為はありますが、できる行為であれば、どんな選択や行動にもゲーム側が合わせてくれる、そんなな心地よさを味併せてくれます。

装備収集の楽しさや生活感のある情景など、ビデオゲームの利点を生かした作りも

 TRPG的な魅力はありつつも、デジタルゲームならではの楽しさを合わせ持つのが本作の優れたところでもあります。例えば、装備品の収集に関して。本作の装備品には、レアリティやある程度ランダムで変化するステータスが設定されていますが、いわゆる“装備掘り”的な楽しさはデジタルゲーム特有の魅力です。

 装備は敵が落としたものも入手できるため、かなり頻繁に装備厳選を行える印象。よりいい装備が出た時はやはりうれしくなりますし、お気に入りの装備を使い続けられるように“アップグレード”していく要素もあります。

 アップグレードには素材が必要ですが、その素材は拾う他に、いらない装備を解体して得ることも可能。そのこともあって装備を拾い集めるのが楽しくなっていきます。

 防具にも性能があるのですが、防具は外見に反映されるため、性能を重視していると悲惨な見た目になっていることもしばしば……。カッコよくキメたい勢としてはやはりファッションにもこだわりたく、そうなると性能と外見のバランスを取らねばなりません。結果、見た目が良くて性能もいい装備を求めてウインドウショッピングをする……という何ともリアルなナイトシティライフを送ることに(笑)。

 ともあれ本作はRPGなので、プレイヤーの腕前よりも装備や能力値、パークの充実が強さに直結します。いい装備を揃えられれば、その分成長も実感しやすく、RPGとしての根本的な魅力もしっかり備わっていると感じました。

 またTRPGとは異なる魅力として、“街の生活感”が感じられることがあげられます。TRPGの場合は基本的に口頭で説明されたものをプレイヤー側が想像することで風景を作り上げますが、デジタルゲームは目の前に風景が広がっているため、圧倒的にわかりやすいという特徴があります。

 そして舞台であるナイトシティは細かい部分の作り込みがすさまじく、まさに“街が生きている”と形容するのも納得のでき栄え。至る所に住人がいて会話をしていますし、その住人のスタイルも地区ごとにさまざま。事件や事故が起きている現場に出くわしたりと、とにかく賑やかなのです。

 ナイトシティならではの騒々しさと危なっかしさというものがよく描写されており、かつそこに生きる人々たちは個性的。仮想の都市でありながら、本当に存在しているかのようなリアルな生活感を体感できることも、本作の魅力となっています。

 見る者をグッと惹き込む物語と、登場人物やナイトシティの存在感、そしてプレイヤーを主人公に仕立てあげる数々の演出が織りなすナラティブ性は、まさにCD PROJEKT REDだからこそ成しえた妙技。TRPGの持つ想像力を生かした遊びかたを、ここまで見事に融合させた作品は滅多にありません。自分を主人公に投影して遊ぶタイプのプレイヤーにこそ、ぜひプレイして欲しい作品です。

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サイバーパンク2077 コレクターズエディション

  • メーカー: スパイク・チュンソフト
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: RPG
  • 発売日: 2020年12月10日
  • 希望小売価格: 29,800円+税

サイバーパンク2077

  • メーカー: スパイク・チュンソフト
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: RPG
  • 発売日: 2020年12月10日
  • 希望小売価格: 7,980円+税

サイバーパンク2077(ダウンロード版)

  • メーカー: CD PROJEKT RED
  • 対応機種: PS4
  • ジャンル: RPG
  • 発売日: 2020年12月10日
  • 希望小売価格: 7,980円+税

サイバーパンク2077(ダウンロード版)

  • メーカー: CD PROJEKT RED
  • 対応機種: Xbox One
  • ジャンル: RPG
  • 配信日: 2020年12月10日
  • 価格: 7,980円+税

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