『TSA:ノーモア★ヒーローズ』須田剛一氏インタビュー完全版。最新作『3』ではサノス級のヤバいヤツが敵に!?
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独創的なゲームを多数手掛ける須田剛一氏の作品のなかでも、特にコアなファンが多い『ノーモア★ヒーローズ』。その外伝作品がDLCをすべて収録した完全版『トラヴィス ストライクス アゲイン:ノーモア★ヒーローズ コンプリートエディション』となってPS4に登場する。
ここでは電撃PlayStation Vol.678に掲載された須田剛一氏のインタビューを完全版でお届け。シリーズ復活の理由や開発秘話のほか、誌面には掲載していない『3』についての話題などもフォローしているので、ぜひチェックしてみてほしい。
インディーゲームから刺激を受けて生まれた『トラヴィス ストライクス アゲイン』
――本作は須田さんの10年ぶりのディレクションタイトルですが、どのような経緯で開発はスタートしたのでしょうか?
『ノーモア★ヒーローズ』は2007年に発売した『1』、2010年に発売した『2』ともに好評で、続編を望む声も多いタイトルでした。自分自身も主人公・トラヴィスのストーリーを描きたいという想いは常にありました。(Nintendo Switch版を発表した)2018年にいろいろな事が重なり、このタイミングなら『ノーモア★ヒーローズ』を復活できると思い、再始動させました。
――正当続編ではなく外伝作品になった理由をお聞かせください。
弊社はUnreal Engineを使うようになってからマルチプラットフォームの大規模タイトルを手がけることが多くなっていました。ただ、ここ数年でいろいろなインディーゲームやそのクリエイターと出会う機会があり、彼らのゲームに対する情熱を感じていたことで、自分もかつてのような規模でゲームを製作したくなったんです。
そこで『ノーモア★ヒーローズ』ではあるものの、これまでの殺し屋たちのストーリーではなくトラヴィスがゲームの世界に入って冒険するという、外伝としてコンパクトなものになりました。
――PAXなどのインディーのイベントに参加されたことが刺激になったのでしょうか?
もともとは『ホットライン・マイアミ』というゲームに出会ってショックを受け、開発者であるDennaton Gamesの2人に出会ったことがすべての出発点でした。あとは電撃PSで連載している"キテル51インディーズ"のおかげです。この連載で毎月新しいインディーゲームを紹介しているので、それも軸になっています。
また、インディーのクリエイターさんに出会うと自分が作った『killer7』や『ノーモア★ヒーローズ』が好きだったとか影響を受けたとか言ってくださるんです。自分がインディーゲームに影響を与えていたことがわかり、自分のことながらおもしろい循環になっているなと感じました。
――本作がゲームの舞台になっているのは、須田さんのゲーム愛が根底にあるのでしょうか?
そうですね。あとはトラヴィスがもともとゲーマーだったり『LET IT DIE』というゲームを作ったときに幻のゲーム機"デスドライブブMk128"を登場させたので、そこからゲーム内ゲームの着想を得た部分もあります。
――最新作『トラヴィス ストライクス アゲイン:ノーモア★ヒーローズ』でのトラヴィスはアメリカ南部の片田舎でトレイラーハウスで生活していますが、彼の生活や心境の変化についてお聞かせください。
トラヴィスは『1』と『2』で絶えず殺し屋とのランキング戦を繰り広げてきたことで消耗してしまったり、チャンプになったことで狙われる立場になったので家族の身に危険を及ぼさないためにテキサスの山奥にひっそりと身を隠しています。
そんなときに『1』に登場したバッドガールの父であるバッドマンが彼のトレイラーハウスを襲撃するところが本作の幕上げとなります。
――バッドマンはもうひとりの主人公ですが、なぜおっさんがトラヴィスのパートナーになったのでしょうか?
もともとバッドマンはボスの1人として設定されていたのですが、デザインがあまりに素敵だったので主役に格上げしたんです。普通に市場のニーズを考えたらシノブをパートナーにするべきだとは思うのですが、デザイナーのboneface(以下、ボーンフェイス)があげてきたバッドマンのデザインに自分が惚れ込んでしまったんです。
『トラヴィス ストライクス アゲイン』はネタの宝庫!?
――本作のタイトルは『Batman:The Dark Knight Strikes Again』のリスペクトでしょうか?
それもありますし、The Smithsの『Bigmouth Strikes Again』からの引用でもあります。でもアメリカだと『Travis Strikes Again』ではなく『Travis Strikes back』だと思われているんですよね。本作にはスター・ウォーズのパロディが多いので『Empire Strikes Back』のイメージに引っ張られるようです。
――そういえば本作ではゲームの世界に移動するとき、『ターミネーター』のパロディになりますが、なぜ急に『ターミネーター』なのでしょうか? これにも意味が?
別の場所にワープするなら全裸になるでしょうし、全裸といえば『ターミネーター』だなと思いました。アングルも完全に『ターミネーター』になっているのでぜひ比べてみてもらいたいですね。
――本作はインディーズ的な規模の作品となっていますが、フルプライス作品と比べて作りやすかった点や大変だった点はありますか?
ボリューム的にはコンパクトになりましたが、ゲーム内ゲームの内容をすべて別ジャンルにしたので開発はとても大変でした。本当はすべてクォータービューのゲームにすることもできたのですが、欲が出てすべて違うゲーム内容にしてしまいました(苦笑)。
――パズルやレースなどそれぞれまったく違うジャンルのゲームになっていますね。アドベンチャーはトラヴィスとバッドマンが急に丁寧語でしゃべり出すのがおもしろかったです。
『ミシシッピー殺人事件』(※)時代のアドベンチャーゲームのリスペクトですね。とくに説明していないので「わかってくれる人だけわかってくれればいい」と思って作りました。
※アクティビジョンが1986年に発売したコモドール64、Apple IIのアドベンチャーゲーム。後にジャレコがライセンシーを得てファミリーコンピュータ、MSX2に移植した。
――登場するゲームのジャンルは最初から決まっていたのでしょうか?
ほぼ決め打ちでしたが、本当はRPGも入れたかったです。ただ、弊社にも自分自身にもそのノウハウがなかったのでお蔵入りになりました。
――本作は初代PS風などデモシーンのこだわりもすごいですね。
はい。このムービーは個人で映像を製作している方にお願いしました。最初に作ってもらったものがPSのムービーにしては綺麗だったので、もっと粗くしてもらいました。色のグラディエーションが出ないように何度もリテイクして映像のクオリティを下げてもらいました。
――ビームカタナの充電システムが本作にも残っているのは、やはりこだわりでしょうか? 「もういらないんじゃないかな」と思っているユーザーもいるのでは……。
いや、そんな人はひとりもいないですね。むしろ入れないと怒られます。
――個性的なボスも本作の見どころですが、とくにお気に入りのキャラクターは?
連続殺人鬼のドッペルゲンガーはいいキャラクターに仕上がったかなと思います。でもどのキャラクターも好きですね。ボーンフェイスが素晴らしいデザインに仕上げてくれました。
――ボスはキャラクターの設定や使う技などをボーンフェイスさんに送って設定してもらったのでしょうか?
本当にざっくりとした設定だけですね。彼には自由にデザインしてもらい、そのあとこちらでゲーム的なデザインを追加していきました。リテイクはほとんどありませんでしたが、ブライアン・バスター・Jr.というパワードスーツを身にまとったボスはメカニカルなデザインに修正してもらいました。
――ADVパートには『KILLER IS DEAD』のキャラクターが登場するなど、『ノーモア★ヒーローズ』以外の須田さんの過去作品のキャラクターが多く登場しますが、これはどのように実現したのでしょうか?
Nintendo Switch版を発売したときに弊社が20周年だったので、ファンのみなさまへの恩返しも兼ねて新旧オールスターが登場する物語になりました。権利の難しかったタイトルのキャラクターも名前をひねって別人として登場させていますし、なかには計画が頓挫して世に出ていない作品のキャラクターも登場します。
――PS4版ならではの魅力をお聞かせください。
DLCだったシノブとバッドガールを最初から使うことが出来ます。もともとはバッドマンを際立たせるために2人をDLCにしたのですが、本作では好きなキャラクターで遊ぶことができるようになっています。あとはPS4向けの解像度に対応していたり、新たにトロフィーを実装していたりしています。
――本作はさまざまなインディーゲームともコラボしていますね。
はい。ローカライズなどを担当している会社である架け橋ゲームズさんが尽力してくれたおかげで、多彩なインディーゲームとコラボすることができました。
――須田さんはインディーゲームにも造形が深いですが、最近特に衝撃を受けたタイトルがあれば教えてください。
須田:『Papers, Please』を作ったLucas Pope氏の新作『Return of the Obra Dinn』ですね。アドベンチャーゲームとしても秀逸ですし、それをひとりで作り上げたことや、そのための工夫に驚きました。
――改めて主人公・トラヴィスについてお聞かせください。トラヴィスはどういうキャラクターなのでしょうか?
元ネタはアメリカのコメディ番組『ジャッカス』の出演者であるジョニー・ノックスビルです。やっていることは馬鹿馬鹿しいですが、そのスケールがとても大きく、ファッションも格好良いですし、そんな彼にシビれてモデルにしました。
そのなかで殺し屋やプロレス好きといった自分の好きな要素も加わってトラヴィスというキャラクターになっていきました。
――須田さんのヒーローの原点はなんでしょうか?
やはりウルトラマンと仮面ライダーですね。子どものころは怪獣大百科を読んですべての怪獣の名前を覚えました。そのため、かけ算九九は言えませんでしたが、怪獣の名前はすべて言うことができました。
――須田さんの作品は殺し屋を題材にしたものが多いですが、殺し屋に強い思い入れがあるのでしょうか?
アクションゲームを作っていると、そこに勝ち負けがあり、生と死があります。そして死を記号ではなく物語として成立する場所を考えたとき、それは僕らが生きている社会ではなく裏社会ではないかと思っています。身近な題材ではないですが、だからこそ妄想を広げて物語を作ることもできるんです。
――作品のリアリティを生むために必要だと。
自分の作品は突拍子もない展開に突入することも多いですが、ベースにリアリティがなければすべてがウソになってしまうと思っています。
――須田さんの作品は政治的なメッセージが盛り込まれることも多いですが、これもリアリティを出すためでしょうか。
そうですね。主人公の周辺には自治体があり、その先には社会があって、その土台にあるのは政治になります。そのため、政治が物語に関与していることを描くことも多いです。とはいえ、『ノーモア★ヒーローズ』は政治の話を出す必要がないので出てきませんが。
最新作『3』ではサノス級のヤバい奴が登場!?
――最新作『3』の構想について、物語の舞台など可能な範囲で教えてください。
宇宙からサノス級のヤバいヤツが襲来してきて、トラヴィスが立ち向かうことになります。
――映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』のラスボスですね(笑)。
『ノーモア★ヒーローズ』というタイトルなので、今回はスーパーヒーローを描こうと思いました。『アベンジャーズ』はヒーローみんなでサノスに立ち向かいましたが、トラヴィスはひとりで巨悪に立ち向かうので、ヒーローの孤独な戦いのようなものも描きたいと思っています。また、近所にいそうな人物というのがトラヴィスの魅力だと思っているので、その部分は変えずにいようと思います。
『3』はトラヴィスが変身してフルアーマー化するのですが、それもウルトラマンや仮面ライダーの影響ですね。
――PSでは『トラヴィス ストライクス アゲイン』が『ノーモア★ヒーローズ レッドゾーン エディション』以来のシリーズ作品となります。過去作がPS4で遊べるような構想はありますか?
須田:はい。実現に向けてマーベラスさんと相談しているところです。前向きに検討中ですので、いい発表ができるとうれしいです。
――最後にPS4版『トラヴィス ストライクス アゲイン:ノーモア★ヒーローズ』を楽しみにしているファンにひとことお願いします。
PS4版はすべてのDLCが内包されたコンプリートエディションになります。PS4版だけのオリジナルのコラボTシャツもあるので、ぜひプレイしてみてください!
ⒸMarvelous Inc. / Grasshopper Manufacture Inc. MAPPY™&ⒸBANDAINAMCO Entertainment Inc.
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『トラヴィス ストライクス アゲイン:ノーモア★ヒーローズ』公式サイトはこちら
Travis Strikes Again: No More Heroes Complete Edition(トラヴィス・ストライクス・アゲイン:ノーモア ヒーローズ コンプリートエディション)
- メーカー: マーベラス
- 対応機種: PS4
- ジャンル: アクション
- 発売日: 2019年10月17日
- 希望小売価格: 3,980円+税
『Travis Strikes Again: No More Heroes Complete Edition(トラヴィス・ストライクス・アゲイン:ノーモア ヒーローズ コンプリートエディション)』
- メーカー: マーベラス
- 対応端末: Steam
- ジャンル: アクション
- 配信日: 2019年10月17日
- 価格: 3,980円+税