『オルサガ』開発者インタビュー。ついにアニメ放送開始! 開発陣が語るオルサガのこれまでとこれから

ライターM
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 スマートフォン用戦記RPG『オルタンシア・サーガ(オルサガ)』の開発者インタビューをお届けします。

 昨年末に『オルタンシア・サーガ ゼロ(オルサガゼロ)』の終章をリリースしたことで完結を迎えた『オルサガ』。本日1月6日よりTVアニメの放送が開始し、2021年初頭には『オルサガ』を3Dでフルリメイクした『オルタンシア・サーガR(オルサガR)』も配信されます。

 『オルサガ』ファンにとっては見逃せない出来事が続きますが、そんな本作の開発を手がけてきた「オルタンシア・サーガプロジェクト」プロデューサー・田口堅士氏と、アニメ『オルタンシア・サーガ』プロデューサーの佐藤允紀氏にお話を伺いました。(※インタビュー中は敬称略)

『オルタンシア・サーガ』TVアニメ化のきっかけは?

――まずは、『オルサガ』TVアニメ化の経緯について教えていただけますでしょうか。

佐藤:実は3~4年前からTVアニメにしたいという気持ちがあって。……ちょっと言っていいかわからないですけど、「セガさんの『チェインクロニクル』のアニメ化がうらやましいね」というのがありまして(笑)。

一同:(爆笑)。

佐藤:当時はゲーム会社とアニメ制作会社って距離があったと言いますか、”ソシャゲのアニメ化”は今でも難しいと言われています。『オルサガ』第3部のオープニングアニメを制作するタイミングで、ライデンフィルムさんとご縁を持たせていただいて、「いつかTVアニメ化を目指したいと思っている作品でして、今回OPアニメという形でご一緒できないか」とご依頼したのが最初のきっかけでした。

 『オルサガ ゼロ』のOPを作っていただいた折に「ここで決めないとラインを抑えられない」と言われ、監督や脚本の方を含めて制作陣を固めスタートしたのが発表の1年半くらい前になります。

――12月5日の配信番組でもアニメの西片康人監督が語っていましたが、そもそも『オルサガ』って第1部だけでもものすごいボリュームですよね。

佐藤:非常に有難いことに、監督は、騎士伝や外伝を含めて第1部~第3部のシナリオを読んでくださったんです。完結までの流れやキャラクターの役割を踏まえてオルタンシア伝の第1部を12話に構成して頂きました。

 あの一連の流れを12話のテンポで、要素を凝縮させたときに流れの中で収まるといいなというのが当初の目標としてはありました。

――f4が開発に携わるゲームのアニメ化というと『マギアレコード(マギレコ)』が挙げられますが、今回のアニメ化に際して活かされた経験などは?

佐藤: 監督を中心としたクリエイター陣の方々との向き合い方は、アニプレックス社から多くを学びました。ゲームを売るためのアニメを企画される会社さんが普通だと思いますが、ゲーム側のエゴを一切捨てて、アニメを観て感動いただくことをゴールにしたいと。

 視聴者が5年後、10年後に「そういえばこんなアニメやってたの知ってる?」と話題にしたり、思い出になるような作品になると、僕らとしても5年、10年このIPを引っ張っていくことを考えたときにすごく大事な財産になる、と監督にもお話しました。

――f4samuraiのスタッフからアニメ制作に参加された方もいますか?

佐藤: 顔を中心とした作画部分に、弊社イラストチームが監修に入らせていただいたたり、美術設定等の監修のみでなく今回のアニメ12話のシナリオ本読みに、僕も毎回参加させていただきました。

――今回コロナ禍で音声収録も大変だったと伺ったのですが……。

佐藤:1つのスタジオに3人以上入れてはいけなかったり、ではガヤの収録はどうする等。本来は1回、多くても2回くらいで終わっていた収録も複数回に分けなくてはいけなくて、結果的にそこに同席する監督や編集される方の時間も拘束してしまい、非常に長期戦になったのは影響として大きかったと思います。演者さんの中で誰も発症しなかったのは当然ですが幸いですね。

――劇伴、BGMまわりの収録はいかがでしたか?

佐藤:実は壮大なオーケストラ収録を実現しようとかなり気合い入れて楽曲の制作を進行し、地下にある非常に大きなスタジオを押さえて30~40人のオーケストラ演奏を準備していたのですが……密にも程があると。

――確かに……。

佐藤:スタジオを押さえていたお金を全部演奏者さんに分配して在宅でも録音できる環境を整えていただいて、その音源を全部集めて編集するという。実際に30~40人の方々が演奏されたものを集める、オンラインオーケストラみたいな形で収録させていただきました。

――あまり耳にしたことのない収録ですね。

佐藤:これを機に、今後も同じようなことをやっていかないと大変というのもあったと思いますし、収録の光景を映像に残せなかったのは残念ですが、早いタイミングで決断ができてよかったなと。

――いよいよ放送が始まるTVアニメ第1話の見どころについて教えてください。

佐藤: 衝撃的な冒頭から、各CM入りもしかり、登場人物の強い感情があらわれる展開が重なってきます。

 壮大な物語の序盤ではありますが、マリユスと主人公(アルフレッド)の気持ちに少しでも共感して頂けると有難いです。もちろん、ゲームを知らない方でも続きが気になるかなと。

――アニメを視聴された方がゲームをプレイしたくなるような仕掛け、導線といったものはご用意されているのでしょうか?

佐藤:両作品ともにアニメと連動して1月~3月動いていくというスケジュールになっています。

 『オルサガ』内では、アニメに連動して“サイドメモリーズ”というシナリオを毎週公開していきます。登場キャラクターのアニメで描かれていない裏側に近い部分を知ることができます。

 また、『オルサガR』では、ちょうど今アニメで放送されている内容がフル3Dで楽しめます。

――収録と制作はすべて終えられて、あとは放送を待つのみという感じですか?

佐藤:音声収録とコンテ制作はすべて終わっていて、引き続きライデンフィルムさんでは作画とブラシュアップを行っていただいています。1月6日(水)24時30分から、地上波&BSほか各配信サイトでも同時に放送されますので、ぜひぜひご覧ください!ちなみに、日本国外でもほぼ同日に展開され、世界中でオルサガの視聴機会が準備されています。

『オルサガ ゼロ』の後も『オルサガ』は続いていきます

――昨年末に完結した『オルサガ ゼロ』ですが、今後の展開はどうなるのでしょうか?

田口:『オルサガ ゼロ』は完結ということで、いったん区切りはついています。ただ、『ゼロ』が終わった後の大きなお話というのはなかなか難しいのですが、ユーザーさんに新しいお話を届けたく、次の展開も考え始めてはいます。

 そして、これからも同じように運営を続けていきますし、クリスマスやお正月といった季節イベントもやります。アップデートも続けていきたいし、1月には新しいタイプのイベントも用意しています。

――先ほど話題に上がった“サイドメモリーズ”というのも、今後の『オルサガ』の魅力となるのでしょうか?

田口:あれはどちらかというと、TVアニメも見てくれている人があわせてプレイしたら楽しいという内容になっています。『オルサガ』全体を盛り上げるというよりも、TVアニメを見た後にプレイしてみると、「こんな風に関連していた、ちょっとおもしろい!」みたいな。

 第1話はフェルナンドと主人公にスポットを当てたフェルナンドが殺されてしまう前の話で、こんな風につながっていたんだといった楽しさを感じてもらえるかと。ストーリーを読んで報酬をもらってという、騎士伝くらいという感じで軽めなので気楽に楽しんでいただければと思っています。

――ちなみに『オルサガ ゼロ』に対して、ユーザーから何か要望などはきていますか?

田口:本当にありがたいことに、おもしろかったとか感動した、今でも涙が出てくるといったお声をたくさん頂きました。あとは『ゼロ』の後の話が気になるとか、その後はみんなどうしているんだろうというのを知りたがっている人は結構いたりするので。

――後日談的なものを知りたがっていると?

田口:本来は『オルサガ ゼロ』の終章で後日談的なものを書きたかったんですけど、あまり書きすぎてしまうのもちょっとという感じで、軽く抑えていた部分でもあるので。

――あと非常に個人的な意見でもあるのですが、イラスト集の新刊などは……?

佐藤:まだ詳しくはお話できないのですが(笑)。今回、アニメのDVDの特典にイラストを中心としたコンテンツの収録も検討しています。ビジュアルブックという形で、パッケージの中に入れたいと思っています。

――なるほど!

佐藤:ページ数厚めの豪華な封入特典にしますので、恐縮ですがDVDかBlu-rayのボックスを買っていただけますと!

――でもアニメの特典となると、ネタバレ的な意味で『オルサガ ゼロ』のイラストは収録しづらいのでは?

佐藤:あえて『オルサガ ゼロ』のイラストが中心になっています。ゲームを知らないユーザーにとっても『ゼロ』の世界を知っていただくのは楽しんでいただけるかと。

――2019年に開催された“オルタンシア・サーガ展”のようなリアルイベントもまた足を運んでみたいです。

佐藤:ありがとうございます。それについては2021年春、次の周年が迫るタイミングで何かしらの情報を発表できればと思います。

田口:『オルサガ ゼロ』については、プレイがちょっと止まっていますとか、ゲームから離れてしまっている人もいるとは思いますけど、今読めば全部最後まで楽しめます。

 多くのユーザーさんからも反響があったように、本当に泣けるし幸せな気分になれる話になっているので、ぜひ読んでいただければと思います。

フル3Dの『オルサガR』はやり込み重視に

――3Dフルリメイクとなる『オルサガR』開発の経緯をお聞かせください。

佐藤:開発のスタートは2019年頭頃です。3年くらい前にLongtu Gameさんとお会いさせていただいて、日式ゲーム(日本ならではのアニメ調の作品)にチャレンジしたいということで、ストーリーの深さとキャラクターに魅力があると『オルサガ』を評価してくださり、中国から始めてアジア全体で展開していきたいということだったので、弊社からもご提案させていただいたことがきっかけとなります。

――では、中国が先行スタートになるのでしょうか?

佐藤:配信時期に関しては審査の事情が日本と違うのでなんとも。ものを作りながら、台湾、香港・マカオ、日本と多言語の展開を同時に進めて行くというのが中国の開発スタイルですね。

――実はβ版をプレイさせていただいて、いざ3Dで見せつけられると臨場感が尋常ではなかったのですが、そもそも何故3Dで描くことになったのでしょうか?

佐藤:表現自体を3Dでやらないとクオリティが出ないというのが中国の会社ならではというか、特にフルボイスというのも価値が全然違うと。どちらかと言えば、Longtu Gameさんが考えるクオリティというものをそのまま追求していただいたという形です。

――開発に関して、f4samuraiはどのような形で関わられたのでしょうか?

佐藤:こういうのは継続した拡張性があるとか、こういうのは受け入れられ易いといった設計のアドバイスは、田口が現地に足を運ぶなど深く関わらせていただきました。アートワーク周りの進行ですとか、何よりもフルボイスなので、アニメの収録をやりながらゲームの収録も同時進行するなど、かなり大変な1年でした。

 昨年の後半までにすべてのシナリオをリライトして台本化して、演者さんにお配りして予定を組み始めたところでロックダウンしてしまい(苦笑)。

――ああぁ……。

佐藤:それが回復するところから徐々にスケジュールを仕切り直して、1年間かけて収録しました。すでに一度、演じられていたということもあり、収録自体はスムーズに進行いたしました。

――奥義ですとかいわゆる3D周りの演出はいかがですか?

佐藤:Longtu Gameさんで演出を企画・制作されてるんですが、今回はとにかくド派手なので、やはり先方が考えるクオリティを出し切ってもらうことを考えました。それこそ、3~4時間くらいモーションアクターさんの演技をひと通りチェックさせていただく形で中国とZoomでつないで、「こういうキャラクターなんです」みたいな方向性や動きのニュアンスをお伝えしたりなども。

 中国で作っていると向こう側が見えなくて、今までは「できあがったものを監修するしかできない」となりがちでしたけど、リモートのツールによって、コミュニケーションの距離がすごく縮まった一年だったなあと。今回のインタビューに入る直前までも、仕様の詰めなどの確認を一緒にしていたところです。

――f4samuraiとしてもこれまでにない試みですよね?

佐藤:そもそも弊社自体がリモートの開発体制になっているので(笑)。メンバーとオンラインで仕事をするという中で、中国にも一緒に働いてくれる方々がいるみたいな感覚というのも今年ならではですね。

――『オルサガR』のアピールポイントは?

佐藤:騎士をじっくり育成してしっかり戦うというところで、PVP要素「アリーナ」が最初から入っています。『オルサガ』では騎士団戦を通じたユーザー同士のつながりが魅力のひとつだったと思いますが、『オルサガR』はわりとやり込みがフォーカスされた作りになっています。

 騎士団戦がないのであれば『オルサガR』を遊んでみたいといったご意見も結構いただいているので、「ちょっぴり騎士団戦に疲れちゃった」という方や、リメイクされたストーリー演出をみたり、じっくりキャラクターを育てて戦うのが楽しいという方にはオススメかなと思います。

 そこから他のユーザーと一緒に協力して何かしたいという方は、ぜひ『オルサガ』のほうで騎士団を作っていただいて。先々の話を最後まで読めるのは『オルサガ』だけなので、物語の続きが気になるという人もぜひ!

――本作のバトルシステムについてですが、『オルサガ』とは大分毛色の異なる形になっているのはどういった狙いでしょうか?

佐藤:1人プレイを重視しているという点と、あとはユニットの魅力とか個性、スキルの特徴を出せるようにといったところですね。フィールドも結構大きいので、こういう戦い方をしないと超えられないといった試練があったり、いろいろなゲームモードも用意されているので。

 例えば敵側のフィールドに村人がいて、彼らに攻撃が当たらないように戦ったりとか、目の前を次々と通過していくゴブリンを逃さないように倒していくとか。ストーリーやイベントに応じて多彩な演出を落とし込めるようなシステムになっています。もちろんオートモードもついています。お任せすると村人が全員巻き込まれちゃったりもしますけど。

――な、なるほど。そういえばf4samuraiでは現在、絶賛人材募集中とのことですが?

田口:『オルサガ』に限らず、弊社として、常にメンバーを求めています。重視されるポイントは自ら主体的に動けることで、自分が作ったゲームがどのようにユーザーに届いていくのかということを想像して、どれだけ自分で面白くしていきたい、と思えるかというところですね。

 人に言われたことだけをそのままやっていたのではそう思えないので、自分がユーザーさんにゲームを届けているんだという強い思いで作ってくれる人を求めてはいます。

――『マギレコ』や『ディズニー ツイステッドワンダーランド』といった人気IPを多数抱えられているので、入社希望の方は多いのではと思っていたのですが。

田口:弊社は大きな版元さんとの協業案件をやっているんですけど、それだけではなくて、自分たちでオリジナルの作品を伸ばしていくとか、頑張ってそれを続けていくみたいなところに、まあ大変なんですけど開発者として共感できる方とか、こういう挑戦をしていきたいという方にも、このタイミングでぜひf4samuraiにきてもらえると嬉しいという思いがあります。

 今回のタイミングで取材していただいたのは、自社のIPを自社パブリッシングでここまで持ってきたので、こういったことも諦めなければできるんだぞと。

→f4samuraiの人材募集については公式サイトをご確認ください。

――最後に一言ずつメッセージをお願いします。

田口:『オルサガ ゼロ』が完結して、今始めたら第1部から最後まで全部読めるので、本当にすごいボリュームで感動しますし、いい話だと思うので、ぜひ今楽しんでいただければと思っています。

 『オルサガR』もあるよと言っているのは『オルサガ ゼロ』が終わったタイミングにたまたま重なっただけで、「『オルサガ ゼロ』が終わったからアニメと一緒にリメイク版を楽しんでね」という意図はなく、『オルサガ』というアプリは今後も続いていきます。ちょっと騎士団戦に疲れちゃったという人はリメイク版を楽しんでもらったり、いろいろな楽しみ方をユーザーさんが選んでくれたらいいなと。

 『オルサガ』はまだまだいろいろ楽しんでいただきたいと思っていますので、期待してください。TVアニメについては監督さんが作りたいものを作ってほしいとか、開発者のエゴを出さないということで本当に僕は口出しをしていません。もうお任せしますと言うことで、最初の頃は「何か意見ありますか?」と聞かれていたのですが、特に答えなかったら何も聞かれなくなったので……。

――なるほど(笑)。

田口:ボクも一視聴者として、いいモノになっているといいなとアニメを楽しみにしています。

佐藤:TVアニメに関しては、ようやく放送までこぎ着けましたという思いが正直なところです。新型コロナウィルスの影響で制作が大変だったり、いろいろなものが長く時間かかってしまったりというのはあるんですけど、制作の方々が何一つ妥協なくやってくださったのが凄く良かったと思っています。

 音楽もめちゃくちゃいいです。それこそOP&EDの楽曲を担当されたアーティストの方々も喜んで参加してくださって、歌詞もそのまま『オルサガ』の世界を書き下してくださったり。今回は社外の方々が弊社と思いをひとつにして作品を作ってくださったように思い、感謝しかありません。僕らにとっては一生に一度のアニメになるかもしれず、本作が、みなさまの思い出になればいいなと思っております。

(C)SEGA・f4samurai
(C)オルタンシア・サーガ製作委員会

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