楽しさが増すアミューズメント業界を創り出したい! GENDA・片岡会長が考えるゲームセンター事業とは?
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GENDA・代表取締役会長の片岡尚さんへのインタビューを掲載する。
2020年11月、セガ エンタテインメントの株式の85.1%を取得することがアナウンスされた、株式会社GENDA。同社はアミューズメントマシンレンタル事業やオンラインクレーンゲームなど、さまざまな展開を行っている。
今回、その代表取締役会長である片岡尚さんにお話を伺った。同社の事業形態やセガ エンタテインメントの株式を取得した経緯、今後のアミューズメント業界への意気込みなどを質問している。
アミューズメント事業が盛り上がる余地はまだある
――2020年の12月にセガ エンタテインメントの株式を取得され、社名を「株式会社GENDA SEGA Entertainment」と変更されました。以前から、このような形でアミューズメント事業に参入したいと思われていたのでしょうか?
私はもともとアミューズメントに限らず、エンターテイメント全域の中で仕事をしたいと考えていました。
ただ、20年近くアミューズメントを仕事にしてきたため、そこが一番詳しいわけです。そこからしっかりとビジネスを広げていくのが、順当な形かなと捉えています。
――前職であるイオンファンタジーからの流れもあって、得意であると。
そうですね。これまでにやってきたことは生きてくるでしょう。
アミューズメント事業はコロナで厳しい状態にあるのですが、ダメな状況ではない。むしろ、悪くない市場であると考えています。
――片岡さんの中で、アミューズメント施設はどういう位置づけになりますか?
皆が楽しめる空間であってほしいという位置づけですね。
小学校のころは、暗くて怖くて、タバコの煙がすごい場所という印象で、ちょっとドキドキしながら遊びにいっていました。
イオンファンタジーに入った時には、コア層に向けるのではなく、ファミリーに向けた施策を行いました。内装を明るくし、遊びやすい遊具や筐体を配置する……それまでとは真逆のコンセプトを打ち出したわけです。このコンセプトは当時は新しく、ゲームセンターのイメージをネガポジ逆にしたような感覚でした。
それがスタンダートになった結果、現在ではゲームセンターは子どもが入っても楽しめて、年配の方も訪れるような安全な場所になっています。私が小さいころと比べると大きな変化だと感じています。
――ゲームセンターやゲームタイトルについての思い出などはありますか?
イオンファンタジーで働くようになってからは、お店に立つこともありましたし、仕事が終わってから遊びに行くこともありました。場に対する思い入れがありますし、セガというブランドも好きです。そういう意味でも、今から事業を始めるのが楽しみですね。
印象にあるのは、大きなボールが中央で回る『ビンゴプラネット』というタイトル。他にもメダルゲームを楽しみました。
――これまでに御社が行われてきた業務内容についてお話いただけますか。
大きく4つを展開しています。
1つはアミューズメントマシンレンタル事業になります。こちらは会社を立ち上げた時から行っている事業となります。スタートから2年で100社のオペレーターさまへ、30社のメーカーさまの製品を合計4,300台レンタルさせていただいています。
リースと違って、我々がメーカーさまから筐体を購入して資産として保有しているものを、オペレーターさまの施設に置かせていただき、売り上げをシェアするモデルとなります。リスクは我々が全部とっています。
メーカーさまから見ると売れなかった筐体が売れる、オペレーターさまから見ると買えなかったものを使える、エンドユーザーさまから見ると遊びに行く場所に入らなかった筐体で遊べる、そして我々も利益が出る。4者が“Win-Win-Win-Win”の関係になっており、アミューズメント業界の活性化に役立てると考えています。
それがうまく回っているため、これだけ多くのオペレーターさまに導入していただいています。
――あえて購入してリスクを背負う形にしている理由は?
どう考えても投資回収の早い、施設に設置したら絶対に儲かるというゲーム機は皆が買います。ただ、その年の筐体を買う予算を使い切ってしまったけど「もう少し予算があればこのゲーム機も買いたいのに……」ということは毎年必ずあるわけです。
誰かがリスクをしょって筐体をシェアしてくれれば、プラスアルファの売り上げが生まれる……前職であるイオンファンタジーの時に「こういうビジネスを誰かやってくれればいいのに」とずっと思ったのですが、今までこのようなビジネスモデルをやる人がいませんでした。
業界が盛り上がる余地はまだあると常々思っていたので、踏み出しました。
――それによって、大きな成果があったわけですね。
はい、そうなります。2つ目は、オンラインクレーンゲーム事業です。国内で200億円くらいのマーケットだと思われ、これがこの数年で新しく生まれた市場になります。
我々は2019年8月に“LIFTる。(りふとる)”というサービスを始めました。現在は7,000アイテムの景品を取り揃えており、国内のオンラインクレーンゲーム業界ではトップの品揃えとなっています。遊びの仕組みとしても、他社のオンラインクレーンゲームにはない特徴が多数あります。
――特に2020年はコロナ禍もあり、家で楽しめるオンラインクレーンゲームというサービスが盛り上がっている印象です。これからもまだ伸びると感じています。
私どもだけでなく、それぞれのオンラインクレーンゲームがグッと伸びています。こちらについては、まだ伸びる余地があると感じています。
――3つめは?
セールスプロモーション事業です。
こちらは、2年半前にGENDAを立ち上げた際に買収した会社を通じて、アミューズメント業界、映画業界、カラオケ業界、プロスポーツ業界など、広くエンターテイメント業界にセールスプロモーションを行っています。インストアプロモーションとデジタルマーケティングの両面で事業を展開しています。
――具体的にどのようなことをやられたのでしょうか。
例えばカラオケであれば、IPもののコラボルームを扱っており、企画立ち上げ、内装の手配、商品やフードメニューの開発などを行っています。
そして最後は米国と中国で行っている、海外事業になります。
米国ではラウンドワンさんとの合弁会社、子ども向けアミューズメント施設“Kiddleton”を展開しています。2020年7月にはテキサスで1号店が開店し、これから多店舗展開していこうと思います。
ラウンドワンさんには「一緒に事業をやりましょう」という話はこれまでにも沢山あったと思うのですが、実際に合弁会社を作るのは初めてのこと。会社を立ち上げたばかりの我々と組んでいただき、大変感謝しています。
――コロナ禍にもかかわらず、営業キャッシュフローが黒字化しているということですが……。
そうですね。コロナ前に比べてショッピングセンターに来られる方は少なくなっていますが、すでに店舗の営業キャッシュフローは黒字となっています。
――アミューズメント施設の文化がない米国に、子ども向けで参入しようと考えたのは?
10年ほど前から、米国のショッピングセンターはチェックしていました。レストランに併設しているものはあっても、おっしゃるように子ども向けの施設はショッピングセンターにはない。日本と同様に、子ども向けの施設を作ったら需要があるというのはずっと考えていて、いつかやりたいと思っていたためです。
中国ではフクヤさん、加賀アミューズメントさん、ナコスさんとの合弁会社・伍彩(ウーチャイ)を作り、アミューズメントマシンのレンタル事業と景品の販売事業を展開しています。こちらも初年度から黒字化しています。
大きな利益ではないのですが、厳しい状況下でも黒字化できたことは大きいと捉えています。中国におけるネットワークを最初から確保できていたのがその要因だと考えています。
――もっとも力を入れているものはどれになりますか?
すべて力を入れているので、難しいですね……ただ、この瞬間の売り上げや利益の構成比はアミューズメントマシンレンタル事業となります。ここはまだまだ潜在需要が大きいと考えています。
楽しさが増していくようなアミューズメント業界を創り出したい!
――GENDAに社名変更された経緯は?
IPO(新規の公開株)の準備をしている際に、証券会社から「ミダスエンターテイメントはファンドのミダスキャピタルと同じブランドのため、投資家に誤解を与える可能性があるので、別の名前にしたほうがいい」とアドバイスをもらったのが、きっかけでした。
新しい社名を考えた時に、“Global Entertainment Network for Dreams and Aspiration”の頭文字をとってGENDAとしました。グローバルにエンターテイメント事業を展開し、「世界中の人々の人生をより楽しく」するという私たちのAspiration(熱望)を実現する社名としたわけです。
これには裏話があって、5年前くらいから日中のエンタメ業界の社長で毎年集まる会があって、この会の名称が“GENDA”でした。この名称が好きだったので、メンバーの皆さんに相談をして、私の新会社の社名にさせていただきました。
――セガ エンタテインメントの株式を取得した経緯について、お話いただけますか?
アミューズメント業界に20年間たずさわってきて、施設の運営は大好きな事業です。GENDAとしていつか参入したいと考えていました。
今回、セガグループさまからお話をいただいて、セガ エンタテインメントの株式の取得についての意向を聞かれたのが経緯となります。時期的には夏でした。
――となると、そこから急ピッチで進めていったと。
そうですね。大筋の流れはかなり早めにまとめました。
GENDA SEGA Entertainmentは「楽し場」を通じて笑顔と感動を創造することをミッションとし、全国に約200店舗のアミューズメント施設を運営しています。アミューズメント施設運営企業としては、国内3位の事業規模を誇ります。
当社とGENDA SEGA Entertainmentが協業することで、業界を活性化させ、メーカーさま、オペレーターさま、エンドユーザーさまなどかかわるすべての人々にとって、より楽しさが増していくと実感できるようなアミューズメント業界を創り出すことを目指していきます。
――アミューズメント施設を運営していくに際して意識していることはなんでしょう。
施設ビジネスのポイントは“立地、ブランド、品揃え、接客”の4点です。
GENDA SEGA Entertainmentではスクラップアンドビルドが終わっていて、現在の200店舗はどれもいい店舗ばかりです。そのため、しばらく続くであろうコロナ禍の市場環境においても、大きな抜本的な戦略の変更は不要だと考えています。
――2020年の5月に緊急事態宣言が解除されてからも100%のユーザーが戻ってきている状況には至っていないと思うのですが、そちらについてはどのようにお考えですか?
例年に比べるとユーザー数は減っていますが、これは必ず戻ってきていただけると考えており、あわてて何かをするわけではありません。
そもそもの前提になるのですが、エンターテイメントのように“必要だからではなく、好きだから、楽しいからやっていた”ことこそはコロナが収束した後には100%もとの状態に戻ると考えています。
――というのは?
出張や会議など「必要だからやっていたこと」のあり方はコロナの前後において、不可逆的な変化があり、もとには戻りません。
エンターテイメント業界は、コロナ禍において大きなダメージを受けました。ただ、エンタメは好きだからやっているからこそ、ユーザーは戻ってきます。戻ってくるタイミングに向けて、今までやってきたことを一緒にブラッシュアップしていくのが基本方針となります。
――セガ エンタテインメントの中で特に評価しているところはどこになりますか?
本部の社員から店舗のアルバイトの方まで、かかわっている方が皆、ゲームが好きだったり、IPが好きだったり、SEGAブランドが好きだったりして集まっています。それは大きな強みだと感じます。それぞれの想いや能力を発揮できる環境を整えるのが我々の仕事となります。
――これまでの話題と重複するところもあるのですが、GENDAとして考えているこれからの方向性は?
短期的には、昨年株式を取得したGENDA SEGA Entertainmentを中心に、アミューズメントの領域が事業の業績の中心になるのでここをしっかりやっていきつつ、エンターテイメント業界の中で事業領域を広げてまいります。
「もうアミューズメント事業はダメだ」と考えている人は多くいると思われますが、決してそんなことはありません。かつて7,000億円あったアミューズメント市場は、2014年には約40%縮小して4,200億円まで下がりましたが、そこからの4年間で5,200億円まで回復しました。規模が縮小していた時期に、家庭用ゲーム機やスマートフォンゲームへの置き換わりは完了したと捉えています。
現在のアミューズメント施設には、その場に行かないと楽しめない“リアルな場でのエンタメ”として確立されたものが残っております。“リアルな場”での遊びを追求してきたアミューズメント業界としての一定の成果だと考えます。
とはいえ、ここからかつての7,000億円まで市場を拡大するためには、プリントシール機や音ゲー、キッズ向けのカードゲームが生まれたような、発明レベルの大きな革新がいくつか必要。誰かが作ってくれるのを待っていてもできないかもしれないので、中期的にはここにも本気でチャレンジしていきたいです。
GENDAにとって、エンターテイメントは「世界中の人々の人生をより楽しく」するための手段です。そのため、アミューズメントだけにとどまらず、より広い事業領域でビジネスを展開してまいります。映画・モバイルゲーム・ホテル・カラオケ・テーマパークなどすべてに可能性があると考えています。もちろん日本だけでなく、世界中が我々の事業フィールドです。
――アミューズメント事業は日本独自の展開でしたが、今後は海外にも広がっていくということでしょうか?
日本発のアミューズメント施設事業は世界中の多くの国で普遍的に成立するエンタメだと思います。皆さんが楽しめる場所を提供していきたいですね。
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