【おすすめDLゲーム】秋田名物が食べたくなる良作アドベンチャー『秋田・男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花』

まさん
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 ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回は昨年2020年の12月24日にNintendo Switchで配信された新作アドベンチャー『秋田・男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花』の魅力をお届けします。

 本作は、往年のコマンド式アドベンチャーをリスペクトしたレトロスタイルの旅情ミステリー第2弾。前作の『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』から舞台を変えて、秋田・男鹿地方を中心に新たな事件が描かれていきます。
 
 前作で好評を博した8bit風のグラフィックや、「きけ」「みせろ」といったコマンドを選んで捜査を進めていく昔懐かしのシステムは健在。雰囲気や見た目こそ当時の作風ですが、スマートフォンを使った検索や特殊詐欺を扱う事件など、内容は令和ならではの新しさがあります。レトロとモダンが融合した独特な作風が魅力です。

 キャラクターデザインは、前作と同じく漫画家の荒井清和氏が担当。さらに、本作では開発費の一部がクラウドファンディングによってまかなわれており、目標金額の3,000,000円を超える5,762,000円の支援金を集めて製作されました。

 作中には、クラウドファンディングのリターンとして支援者を模したモブキャラクターが登場したり、留守番電話のメッセージなどで支援者が出演したりする場面も。前作以上に、ファンと密接にかかわって作られた作品となっています。

前作から進化を遂げて、あの名物刑事コンビが帰ってきた!

 東京で勢力を拡大する特殊詐欺グループ。組織を壊滅させるために幹部を追っていた刑事の主人公・センパイ(プレイヤー)と後輩のケンは、彼らの潜伏先である秋田県へと向かう。それは、凄惨な事件の幕開けとなることを知らずに……。

 といった2時間ドラマのあらすじのような冒頭から始まる本作は、複雑に絡み合う人間模様を描いたシナリオが秀逸な推理アドベンチャーゲームです。自分は、前作の『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』からファンだったので、本作の発売を今か今かと待っていたくらい楽しみな作品でもありました。

 前作のレビューでも書きましたが、レトロ風といってもただ古臭いものではありません。シナリオもシステムも、令和の時代に合わせたアレンジが絶妙なのです!

 見た目や雰囲気は当時に寄せたリスペクトをしていますが、秋田を丁寧に取材したことがわかる風景描写や現代に合わせた事件の新鮮さ、張った伏線を巧みに回収していく構成の鮮やかさを含めて、そのクオリティは間違いなく現代のアドベンチャーと言えるでしょう。

 このゲームからコマンド式の推理アドベンチャーを遊ぶという人でも楽しめる作品となっています。

 なお、旅情ミステリーシリーズの第2弾ではありますが、前作の『伊勢志摩ミステリー案内』と直接的な事件の繋がりはありません。主人公であるプレイヤーとケンが続投して違う事件を追っている形になるので、前作を遊んでいなくても問題なし。

 ただ、前作を知っているとニヤリとできる要素があることに加えて、前作の知識があると理解が深まるキャラクターも出てくるので、できれば先に遊んでおくことをオススメします。前作もミステリーとしてきちんと作られた作品ですし、何よりもシステム面で本作のほうが進化しているので、先に遊んでおくほうが素直に楽しめると思います。

 それくらい、今回は前作の『伊勢志摩ミステリー』よりもシステム面が進化しているのです。同じ文章が2回目以降でメッセージスキップされたり、ゲーム中にスマホカメラで撮影した写真をアルバムで見返せたりと、欲しかった機能が追加。クリア後はサウンドテストやミニゲームを自由に遊べるモードが選べるようになるなど、前作以上にサービス精神盛りだくさん!

 また、前作は「夜からはじめて一気に遊び、朝焼けを見られるくらいのボリューム」だったのですが、本作は2倍以上の長さ。一気に遊んでも終わらず、前作よりたっぷり楽しめるようになりました。

 一度しか行かない東京の街並から秋田の名所まで、訪れる施設も大幅に増えています。事件の描写もファミコン風のドット絵で描かれているので、グロテスクなビジュアルが苦手な人も安心(?)。

ファミコン風のドット絵に説明書。細かいコダワリも健在!

 旅情ミステリーシリーズの魅力はたくさんありますが、とくにレトロ風へのこだわり方が素敵です。ドット絵にしただけのレトロ風ではありません。まず、ゲーム中でファミコン(ファミリーコンピュータ)カセット風の説明書が読める要素があります。わざわざ説明書を作っているんですよ。当時のゲームを知っていると懐かしくなるやつですね。しかも、わざわざホチキスで止めたページまであるというコダワリ。これってpdfのデータをぶち込んでるだけじゃなく、紙の説明書として実際に作ってから取り込んでいるということですよね!?

 注意書きから巻末のメモ書きまで、説明書のコダワリ方が恐ろしいレベル。なんと今回は、ゲーム内で遊べるミニゲーム『トンデモ西ブー記』のほうにも専用の説明書がついています。しかも、こちらは横長の説明書なんですよ。ファミコンはカセットの箱に縦長と横長があり、それによって説明書の形も違うのです。やり過ぎ!

 文字サイズは、フォントがドットで打たれた通常サイズと拡大サイズを選択可能。それに加えて、ドットではなく読みやすいフォントまで用意されています。セーブファイル(捜査メモ)は3個に増加。見た目こそ古いアドベンチャーゲームですが、遊びやすさという面ではちゃんと現代のゲームです。

 ちなみに、今回も隠し要素があるので“温泉に行けるようになった場面”のセーブデータを取っておくといいでしょう。

 コダワリはシステムだけではありません! シナリオやテキストの面も細かくこだわっています。前作で好評だった食レポやご当地の解説も大幅に増量。ゲーム序盤から中盤までにたびたび入ってくるので「早く事件が起きてくれ!」と思う人もいるかもしれませんが、4日目以降で話がグッと動くので、最初は観光に来た気持ちでケンの食レポを楽しみましょう。

 聞き込みに行くたびに、なぜか寄り道して始まる食レポ。スマホを使って検索したご当地の情報で秋田を満喫するケンたち。仕事半分、観光半分の気持ちで来ていません!?

 前作でも、特定の飲み屋に集まって酒を飲みながら情報を交換する“捜査本部(自称)”があったのですが、今回もそうした“秋田名物を食べながら捜査する”場面があります。今のご時世だとなかなか難しいのですが、おいしそうに食べてくれるので自分も旅行に行って食べたくなるんですよね。通販で頼もうかな……?

 先にツッコミどころを言ってしまうと、現実世界で警察官が飲み屋で仕事の情報をしゃべったり、証拠品を回し見たりしたら問題がありそうなのですが、そこはあくまでもゲームということで。きっとゲーム内では個室に案内されているのだと思いましょう。いや、ラーメン屋でもしゃべってますが気にしない! 気にしない!

 とにかく食べる! 飲む! 味の解説をする! 舞台となった地方の名物を魅力的に描写しているのも、このゲームの特徴。気は早すぎるのですが、次回作でどんな名物が出るのか今から楽しみです。

 秋田犬を“アキタケン”と読んでから“アキタイヌ”と訂正されるシーンがあるのですが、そのあとに同じコマンドを選ぶとちゃんと“アキタイヌ”と話してくれたり、本筋とは無関係な部分のテキストにも細かなコダワリが見られます。

 小さなところかもしれませんが、そうした部分にも手を抜いていません。もちろん、本筋のシナリオも二転三転。前作以上に楽しませてくれます。前作同様に秋田の人たちが方言で話す場面もあり、そうした“ご当地感”も好きなところですね。


 後輩刑事ケンが聞き込みの前後で礼儀正しくアイサツする点も、ゲームではおろそかになりがちなコダワリのポイントです。

 そして、前作でも存在していたコマンド選択形式の3Dダンジョン。推理アドベンチャーに欠かせない(?)アレは、今回もありますよ! ファミコン世代ではない若い人だと「推理ゲームでなぜ3Dダンジョンがあるの?」と思うかもしれませんね。

 ですが、昔のコマンド選択式推理アドベンチャーでは、必ずと言っていいほど3Dダンジョンがあるんですよ。こればかりはもう、当時を知っている人ならはずせない要素なのです。ただ、どこで出るのか。今回はどういった形式なのかはお楽しみということで……。

点と点が繋がり、見事に収束していく王道のミステリー

 推理アドベンチャーなので、やはり気になるのはシナリオ部分。前作では東京で起きた事件から始まり、伊勢志摩での連続殺人事件に発展していく2時間ドラマのような内容でしたが、本作でも王道の推理ものを楽しめます。もちろん主人公は警視庁の捜査一課なので、はじまりは東京から。

 ここから、どんな風に展開して行くのかは実際にプレイして確かめてほしいのですが、今回は冒頭にあたる東京のパートもボリューム多め。東京在住の人ならうれしくなりそうな意外な場所が登場するかも……!? 私もよく行くところですね。

 今回は終盤にいろいろな展開が詰まっていて驚くことが多いのですが、配信やSNSでのネタバレが可能な区間は序盤も序盤である、冒頭の3日目まで。実は、ここまでだとシナリオの見どころに関してはほぼ語れないに等しいです。というよりも、4日目以降の急展開に次ぐ急展開と、ばらまかれた伏線が繋がっていく構成が一番おもしろいんですよ!

 おもしろいのですが、残念ながらそこに関してはお伝えできません。やはり推理ミステリーですからネタバレ厳禁。自分で遊ぶのが一番です。

 動画配信が可能な区間は、このカラオケ屋に到着したところまで。これ以降、話が怒涛の勢いで動き出すのですが言えないのがもどかしい……。アレとかコレとか、ネタバレありの座談会で話したいですね!

 序盤はやや呑気な感じで進むのですが、伏線の回収が始まる中盤以降はゲームを中断せず、一気に遊びたくなるくらい引き込まれます。Switchは本体にスクリーンショットを撮影できる機能がついているので、気になる場面やテキストを撮影してあとで見返してみるのもアリでしょう。

 特に終盤は、事件や人間関係が錯綜するので一気に遊ぶと見落とすかもしれません。事実確認のために、気になる場面とテキストを撮影しておくことをオススメします。エンディングのテキストもしっかり読みましょう。

レトロ風な見た目にビビっと……こなくても遊んでみるべし!

 往年の推理アドベンチャーに対するリスペクトにあふれつつも、現実的な内容の事件を扱う最新の推理アドベンチャーとして楽しめる本作。ダウンロード版の値段が2,000円というお手頃価格ですが、値段分以上に楽しめることを保証します。登場するヒロインも魅力的で、グッとくるんですよ。前作でもヒロインは魅力的に描かれていたのですが、今回もその魅力を余すところなく描いた物語になっています。

 ヒロインその1。りんちゃん。ゲーム中の説明書に「謎多き秋田美人」と書かれていることからもわかるように、彼女に関する謎も本作の大きな見どころです。ああ、ネタバレした~い!

 ヒロインその2。秋田県警捜査二課の如月刑事。初対面では(主にケンのせいで)ツンツンしていますが、非常に優秀な刑事さんです。個人的には、ケンと交代してもらってもいいくらいに優秀。

 ヒロインその3。秋田犬。いや、性別はたぶんオスだと思うのですが……活躍的にヒロイン認定でいいでしょう!

 クラウドファンディングのリターンとして登場するメッセージやモブキャラクターをはじめ、隠し要素やお遊びの要素もたっぷり用意されています。序盤は寄り道の要素が多くもどかしく感じる場面もあったのですが、それもまたこのゲームの味。気持ちに余裕をもって遊びましょう。むしろ、中盤からは事件、事件で寄り道が懐かしくなるかも?

 推理アドベンチャー好きにはたまらない作品ですし、自分としてもこのシリーズにはまだまだ長く続いて欲しい良作です。前作の時点でもオススメだったのですが、やっぱりまだまだゲーム好きにも一般層にも届いていない印象があります。

 だからこそ、もっと多くの人に遊んでもらいたい! レトロを謳うだけではなく、作り手の“好き”と“本気”が見られるゲームになっていますし、アドベンチャーが嫌いじゃなければ確実に楽しめることを保証します。皆さんも遊んでみてください!

 なお、Steam版は1月14日に配信となります。

©2020 Happymeal Inc.

『秋田・男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花』

  • メーカー:フライハイワークス
  • 対応端末:Switch(ダウンロード専用)
  • ジャンル:アドベンチャー
  • 配信日:2020年12月24日
  • 価格:2,000円
  • ※開発:ハッピーミール

『秋田・男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花』

  • メーカー:フライハイワークス
  • 対応端末:PC(STEAM)(ダウンロード専用)
  • ジャンル:アドベンチャー
  • 配信日:2021年1月14日
  • 価格:2,000円
  • ※開発:ハッピーミール

『秋田・男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花』

  • メーカー:フライハイワークス
  • 対応端末:PS4(ダウンロード専用)
  • ジャンル:アドベンチャー
  • 配信日:未定
  • 価格:未定
  • ※開発:ハッピーミール