『不思議の幻想郷 -ロータスラビリンス-』レビュー。大人数ローグライクのワチャワチャ感が絶妙【電撃PS】
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“東方Project”のキャラクターが大人数でダンジョンを探索する、PS4/Nintendo Switch向けローグライクRPG『不思議の幻想郷 -ロータスラビリンス-』が7月18日、ついに発売!
この記事では一足早くプレイしたライターによる、本作の感想などをお届けします。※本レビューで使用したゲームデータはVER.1.02のものです。
大人数での探索は普通のローグライクとは違ったチャンスやピンチがある!
本作は“東方Project”の二次創作であるローグライクダンジョンRPG(以下、ローグライク)。もしタイトルにある“不思議の”から連想されるタイトルがあるなら、その認識でおおむね間違ってはいないでしょう。
ただ、通常のローグライクよりもダンジョンに同時に連れていける仲間が多いのが大きな特徴。その気になれば、数十人の仲間とダンジョン攻略に向かえます。
仲間はそれぞれ、ほぼ完全にプレイヤーについてくる“同行”、同行に近い行動を取るけれど敵を見つけると撃破を優先する“応戦”、好き勝手に探索して敵を見つけると戦う“探索”、ほぼその場から動かない“待機”の4種類の指示を出すことが可能。
さらに、仲間同士でチームを組ませて、複数の仲間が一丸となって行動する別動隊を作ることもできます。このとにかく仲間の多いダンジョン探索がとても新鮮。
同行中の仲間が後ろから支援してくれるというのはローグライクでは珍しいシチュエーションではありませんが、それが1ターンの間に全体攻撃3回+プレイヤーへの強化1回などという数になるとプレイ感覚はまるで別物。自分が攻撃するために一歩近づいたら味方のスキルで敵が倒れているなんてこともざらにあって、大軍で敵を蹂躙していく気持ちよさがあります。
また、仲間が足を踏み入れた場所もマップに反映されるので“探索”を指示したチームの動き方しだいでは、マップも普通ではありえないほど素早く埋まっていきます。
できあがったマップを見て、アイテム回収に足を踏み入れるもよし、うまみがなさそうだと思ったらさっさと次のフロアに行ってもよし。おいしいところだけ持っていくのがパーティ全体のリーダーの役割なんです! 多分(笑)。
そして個人的に気に入っている本作ならではのシチュエーションが、全員“応戦”を指示して大きめの部屋に籠もってのレベル上げ兼アイテム集め。敵が部屋に踏み込むと(正確には踏み込む一歩手前)数十人の仲間がワサーっと敵の方に向かっていき、倒したらまた戻ってくる。
この間、画面には敵が映ることさえなし。ちょっとかわいそうになりますが、足踏みしているだけでキャラクターのレベルが上がり、装備にも経験値が入って強化されていくのが気持ちいいんです。
と、仲間が多いというのは基本的にメリットなのですが、ときどき仲間が多いからこその失敗もあります。例えば“探索”を指示した仲間が“百鬼夜行(敵が大量にいる部屋。モンスターでハウス的なもの)”に踏み込んだとき。
“探索”=別動隊ですから、当然フルメンバーのときよりも戦力は劣ります。しかも、仲間はAI操作。もしも百鬼夜行に踏み込んでしまったら“同行”の指示を出して戻ってくるのを祈るか、“探索”のまま敵を全滅させるのを祈るかだけ。うまくいかなければそこで1人もしくはもっと多くの仲間が脱落です。
同じように一部のフロアにいる強敵と別動隊が出くわしたときもビクビクしながら祈ってみたり。混乱の状態異常も、仲間がチームを組んで行動できるからこその怖さがあります。ローグライクにピンチはつきものですが、一風変わったローグライクである本作はピンチの陥り方もまた一風変わっていますね。
では全員“同行”もしくは“応戦”の指示をすれば、と思うかもしれませんが10人も20人も仲間がいると、後方の仲間が戦闘にほとんど参加していないことが増えるんですよ。大人数を連れていくのはメリットですが、ともに行動しても別動隊を作っても一定のリスクがあるのが悩ましいですね。
とはいえ、仲間が力尽きることに1人戦力が欠ける以外の大きなデメリットはなし。使い捨てる感覚でできるだけ多くの仲間を連れて行くというのもシビアに見ればアリなのですが……なんか、イヤなんですよ(笑)。
数十人という仲間がいて、しかも別動隊を作れる以上本作で、仲間全員の動きを考えながら1ターンずつていねいに進めていくのはまず無理。ある程度おおざっぱに遊びながら、特定のフロアだったり思わぬトラップだったりでピンチになる、もしくはなりそうなときに注意深く遊ぶというのが本作の遊び方になりそうです。
装備システムもやっぱり普通と一味違う!
多くのローグライクで採用されている装備によるキャラクターの強化は、もちろん本作にも存在。さらに仲間の能力も装備によって強化できます。ただ、最大で数十人もの大所帯になるパーティメンバーの、一人一人に装備を用意しようとしたら大変でしょうし、どれが誰のための装備だったかきっとわからなくなります。
それもあってか、本作では主人公が“武器”“防具”“お守り”の3種類の装備を最大10個ずつ装備でき、それらの性能が主人公と仲間に反映されるという少し変わったシステムになっています。
例えば“攻撃力4で、宙に浮いている敵に大ダメージを与える”武器Aと“攻撃力6で、妖怪に大ダメージを与える武器B”を装備すれば、仲間全体の攻撃力が10増加して宙に浮いている敵と妖怪に大ダメージを与えられるといった具合です。
『不思議の幻想郷』シリーズ、ひいてはローグライク全般ではこれぞと決めた1本を極限まで強化するというのが遊びのひとつでしたが、本作の場合は10種類3部位の計30の装備の総合力をどう高めていくかという形。
これによって、いろんな装備をお試し感覚で装備できるのがいい感じです。1本にすべてが集約されてしまうと別の付加効果を少し試したいと思っても準備にそこそこ手間がかかりますが、本作の場合は武器や防具を1本、ざっくり書くと全体の10分の1だけ気軽に調整可能。知らない武器が手に入ったら、探索中でもとりあえず装備してみて使い勝手を見ることが気軽にできます。
また本作では、同じ装備を使っていると装備に経験値がたまって性能が強化されるというシステムもあります。一定のレベルに達すると別の武器に変化して、新しい能力が付与されることもあるため、この点でも10本の総合力で能力が変化するシステムとの相性は良好です。
また、武器や防具を10本装備するシステムで「遊びの形が変わった」と感じたのが、ダンジョン突入時に装備などを持っていけない、いわゆる“持ち込み不可ダンジョン”。普通のローグライクの場合、こういったダンジョンでは高性能な装備が手に入りつつ、装備を合成したり強化したりするレアなアイテムが手に入るかで成果が大きく変動します。
ですが、本作では数さえ手に入ればとりあえず10本までは装備可能。もちろん装備が10本手に入るかは運しだいではありますが、運の要素が比較的少なくこういったダンジョンを楽しめました。
最後に少しだけ不満点を書いておきますが、今回のプレイが発売前ということもあってか“探索”を指示したリーダーが同じチームの仲間に囲まれるとチームごと動かなくなってしまう(NPCの仲間同士が自動で場所を入れ替えがないため)など、かゆいところに手が届かないことがチラホラ。
また、10個×3部位の装備が可能でありながら、そのすべてを総合して自分がどれだけの付与効果が得られているかが見られないといった、新しいシステムに関連した気になる部分もありました。
ただ、個人的な印象ですが、本作を手掛けるAQUASTYLEは数あるインディデベロッパーのなかでも、1タイトルあたりかなり多めにアップデートを行います。今後いろいろ改善されていくでしょうから、ちょっと変わったローグライクを遊びたいという人は、ぜひ本作を手に取ってみてはいかがでしょう。
(C)上海アリス幻樂団
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