【おすすめDLゲーム】『螢幕判官 Behind The Screen』は殺人犯の人生を追体験できるカオスなゲーム

sexy隊長
公開日時
最終更新

 ダウンロード用ゲームから佳作・良作を紹介する“おすすめDLゲーム”連載。今回はPC(Steam)でリリースされ、その後Switchやアプリでリリースされた『螢幕判官 Behind The Screen』を紹介します。

 本作は、台湾のインディーデベロッパーである“光穹遊戯(18Light Game)”が手掛けたサスペンスパズルアクションゲーム。サスペンスでもあり、パズルでもあり、アクションでもある少しカオスなゲーム内容ながらも、深く考えさせられるストーリーが体感できると話題になり、東南アジア国際モバイルゲーム賞の“最優秀デザイン&ビジュアルアート賞”や台湾&マカオのiOS App Store 有料アプリランキング1位を獲得しました。

 そんな本作『螢幕判官 Behind The Screen』の魅力に迫ります。

今見ているニュースは真実なのか!?

 本作の魅力は、妄想とカオスな“グラフィック”と深く考えさせられる“ストーリー”の2つがあげられます。

 ストーリーの概要を説明すると、インターネットがまだ一般的でない1970~80年代の台湾が舞台。父親を殺害した犯人として捕まった“ある殺人犯”が主人公。

 “幼少期”、“少年時代”、“青年時代(事件直前)”と3つの時代で人生を振り返るという内容になっています。

 この時代の台湾は、テレビで流れているニュースで世論を操れる時代。

 “父殺し”として連日ニュースに取り沙汰され、“幼少期”、“少年時代”に犯人がどれだけヤバい人間性の持ち主だったのかを、関係者が当時のことをインタビューで答えていきます。

 その放送を見た国民から弁解の余地はないとされバッシングがどんどん過激化していく……まさに世論がニュースに先導されていくさまが描かれています。

 幼少期には幼稚園の先生が当時を語りっています。実写とゲーム内イラストがどことなく似ているのがおもしろいところ。

 関係者のインタビューは本当のこと言っているのか? なぜ父親殺しをしてしまったのか? 当時起きたことを体験し、歪められ見えなくなった真実を追うのが、本作の最終的な内容になります。

 少年時代に主人公を苦しめ、のちに台北市議員となる彼。学校内の権力の持ち主で主人公は現実のつらさを味わいます。

人を選ぶがインパクト大のグラフィック!

 グラフィックは、リアルなCGや近年流行している8bit風のドット絵ではなく、手描きポスターや絵本のようなレトロ感漂うノスタルギックなグラフィックで表現されています。

 プレイする人を選ぶかもしれない独特でカオスなグラフィックですが、ひと目見たときのインパクトで言ったら他の作品を圧倒。筆者もこのグラフィックに惹かれてプレイしました。

 幼少期の主人公には世界がこのように見えていたのかもしれません。幼少期は主人公の主観だと虚構のグラフィックしか確認できませんが、青年時代になってから再度訪れることで現実の幼稚園も確認できる仕組みに。

 “殺人犯の人生”と“カオスなグラフィック”という一見合わなそうな組み合わせですが、本作はかなり綿密に作り込まれています。

 プレイしながら感じられるのは、グラフィックは“虚構と現実”がテーマで作り込まれているということ。

 幼少時代は子どもがゆえに現実と夢想の区別がついておらず、不気味なグラフィックで世界が描かれ虚構の世界のみで描かれ、少年時代は正義感が強く自身が古代の戦士になりきるためコロッセオで戦う剣闘士のように描かれ、虚構と現実の両方が描かれています。

 バケツやトイレの掃除道具で武装する主人公、次のシーンでは虚構のグラフィックになり剣闘士のような見た目に! このように虚構と現実の両面が確認できます。

 そして、すべてが現実として受け止められる青年時代は虚構のグラフィックはなく現実のグラフィックだけで描かれています。

 一見カオスのようなグラフィックですが、子どものころに見ていた夢想の景色から、大人になって現実と向き合わなければならなくなったということをグラフィックだけで表現するという、かなりのこだわりを感じられます。

 青年時代のグラッフィクに虚構は存在せずすべて現実。光や色味も少なく暗くなっており、主人公の心の暗さが表現されています。

実話をベースにしたストーリー

 本作最大の特徴はなんといっても、クリア後にプレイヤーが深く考えさせられる展開にあると思います。

 父殺しの話以外にも、学校のいじめや階級差別、家庭内暴力といった1970~80年代の台湾の社会問題であったであろう話が主人公に関わってきます。

 学校のいじめ、階級差別では集団生活の難しさやもどかしさが前面に押し出されており、正義感の強い主人公が苦しむ姿に心打たれます。

 主人公の家庭内に何かが起きていることをゲーム開始早々に友だちから伝えられます。

 階級差別で社会の厳しさを学ぶことになるシーン。しかし主人公は正義のもと立ち向かいます!

 本作のストーリーは主観と客観の視点切り替えが大事。

 ニュースで垂れ流されているインタビューがすべて嘘で、主人公を陥れるために情報が歪められているのは明白なのですが、視聴者にはそれが嘘だと知るすべはありません。

 そして、プレイヤーは主人公に心打たれる感情もまた主観でしか見れておらず、本当に不幸だったのか? 主人公に悪いところはなかったか? といった客観性がなかったことにストーリーの終盤で気付かされます。

 殺人犯の人生を追体験できる作品なので、客観性をもって主人公を見ることはなかなか難しく、どうしても感情移入という主観的な視点になってしまいます。

 そうなると、知らず知らずのうちにニュースを信じている世論と同じように誰かの主観的な意見に先導されてしまう……このように、プレイヤーもまた大衆と同じという秀逸なストーリーが味わえます。

 こういった部分を含めて、深く考えさせられるストーリーになっていると感じました。

 また、本作に出てくるストーリーは、実話を基にして作られたストーリーになっているというのだから驚きです!

時代ごとに違うゲーム性

 “サスペンスパズルアクションゲーム”と銘打っている本作ですが、時代ごとにさまざまなゲームが登場します。

 幼少期には、『倉庫番』や『箱入り娘』のようなパズルと、ステルスゲームのような“かくれんぼ”、そして“おにごっこ”といった子どものころの遊びでストーリーを進めていきます。

 布団を動かし、移動したり運んだりする『倉庫番』や『箱入り娘』みたいなパズルゲーム。

 主人公を探している先生に見つからずに脱出を目指す“かくれんぼ”。

 先生から捕まらないように脱出を目指す“おにごっこ”が、作中もっとも怖いゲームです(笑)。

 少年時代には、敵の動きに合わせてボタン押す“アクションバトル”で討論バトルを行います。

 青年時代には、スライドするバーを“目押し”して殴り合うという、格闘でストーリーを進めていきます。

 少年時代の“アクションバトル”。コロッセオや討論の場の熱いバトルとなっています。

 青年時代の格闘はリズムゲームのような“目押し”!

 この一見バラバラでミニゲームの集合体とも思えるラインナップですが、ラフィック同様ストーリーと関連するように作られています。

 幼少期は身体が小さく逃げることしかできないのでパズルゲームやかくれんぼを、少年期は討論というバトルで進行し、青年時代では身体も大きくなり肉体と肉体のぶつかり合いである格闘という感じですね。

 グラフィックとゲームとストーリーがうまく重なり合っていく演出は秀逸です。

 あと本作のゲーム難易度は少し高めに作られているのが特徴。殺人犯の苦悩と葛藤がゲーム難易度に反映されていると筆者は思っているのですが……どうなのでしょうか?

 “おにごっこ”で先生に捕まるとゲームオーバーになるのですが……このシーンだけ結構怖いです(笑)。

綿密に練り込まれた“グラフィック”と“ストーリー”のおもしろさを感じる作品!

 ゲーム自体は2~3時間ぐらいで終わるボリュームですが、終わったあとの脱力感がハンパなかったです。しばらくボーッとしてしまいました。

 最初に述べましたが、妄想とカオスな“グラフィック”と深く考えさせられる“ストーリー”の2つが本作最大の魅力。2~3時間で終わるゲームだからこそ、綿密に練り込まれた“グラフィック”と“ストーリー”のおもしろさ、素晴らしさ、巧妙さが走馬灯のように流れ込んできました。

 本作はBGMも素晴らしく、セリフやグラッフィクだけでは表現しきれない苦悩と葛藤といった主人公の心境を音にて表現しているので、ストーリー演出のひとつを担っています。

 プレイする際には音量を少し大きめにしてプレイすると、より本作の世界観に没頭できると思います。

 本作は、アクションやパズルが好きな人よりも、サスペンスや重い人間関係の話が好きな人にオススメしたい作品。

 最後の最後で大どんでん返しが! というような作品ではないですが、最後までプレイすると「あぁー……そっかぁ……」と深く考えさせられます。

 『螢幕判官 Behind The Screen』の世界観をぜひご賞味あれ!

(C) 18Light Game Inc. Publishing by COSEN Co., Ltd.

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

『螢幕判官 Behind The Screen』

  • メーカー:賈船
  • 対応端末:PC(Steam)
  • ジャンル:パズルアクション
  • 配信日:2018年4月4日
  • 価格:1,000円(税込)

『螢幕判官 Behind The Screen』

  • メーカー:賈船
  • 対応端末:Switch
  • ジャンル:パズルアクション
  • 配信日:2018年8月23日
  • 価格:1,000円(税込)

『螢幕判官 Behind The Screen』

  • メーカー:賈船
  • 対応端末:iOS/Android
  • ジャンル:パズルアクション
  • 配信日:2019年7月12日
  • 価格:370円(税込)

関連する記事一覧はこちら