『鬼滅の刃』『ニーア』シリーズのシンガー・中川奈美さんが大切にしてきたことを独占インタビュー!

サガコ
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 アニメやゲームにどうしたって欠かせないもののひとつに“音楽”がある。

 どのエンタメにおいても主題歌はもちろん花形だが、作品自体のイメージすら左右し、視聴者やプレイヤーにさまざまな印象を与える劇伴やBGM、挿入歌にも奥深い世界が存在する。

 「あのシーンの、あの一曲がどうしても忘れられない……」そんな思いで作品のサントラを探し求め、購入する人も多いのではないだろうか。

 今回は『ニーア』シリーズや『テイルズ オブ』シリーズなどで多岐にわたって活躍され、2019年から2020年にかけて大ヒットしたアニメ『鬼滅の刃』の挿入歌『竈門炭治郎のうた』(椎名豪 featuring 中川奈美)で注目を集めた中川奈美さんの独占インタビューをお届けする。

■中川奈美さんプロフィール
 愛媛県宇和島市出身。劇団シェイクスピア・シアターにて喋ることの基本を学び、声優の道へ。

 外画(※)などを経て、ゲーム主題歌から歌唱の仕事がスタート。以降、歌手、声優、ナレーターとして幅広く活躍中。

 コーラス参加の代表作に『GOD EATER』シリーズや『鉄拳』シリーズ、『ニーア』シリーズなど。

 合唱コーラスや民族コーラス、子供の声でのコーラスなど、多彩な声色とレンジの広さが持ち味。

※海外制作の映画・ドラマなどの映像作品

「竈門炭治郎のうた」で大ブレイク! の裏に職人魂アリ!!

――昨年は映画「鬼滅の刃 無限列車編」の公開もあり、「竈門炭治郎のうた」で年末の歌番組にも多数出演されて大ブレイクの年となりましたが、この楽曲に巡り合ったきっかけは?

中川奈美さん(以下、中川。敬称略):きっかけは15年ほど前からずっと、作曲家の椎名豪さんとお仕事をさせていただいていることですね。

 その出会いの発端はというと、『ニーア』シリーズでご活躍中の岡部啓一さんが率いるMONACAさんで「楽譜が読めて、民族コーラスができる歌い手さんいない?」という椎名さんからの問い合わせに応える形で、引き合わせていただいて。私はいろんなコーラスを一人で全部やってしまうので(笑)、宅録もできるし、おそらくは利便性の高さでずっと使っていただいてて。

 『竈門炭治郎のうた』も、『鬼滅の刃』の椎名豪さんの楽曲でコーラスを担当させていただいていた流れから、採用していただくことになりました。

――19話の“ヒノカミ”で場面を盛り上げる挿入歌として最高の存在感だと感じるのですが、中川さんにとってはチャレンジな部分などありましたか?

中川:『鬼滅の刃』はフィルムスコアリングといって、場面や演出に合わせた音づくりをしていく収録スタイルなんです。

 『竈門炭治郎のうた』はアニメ中に日本語のセリフが流れるなか、その後ろで日本語で歌唱する楽曲なので、主張しすぎると演出の邪魔になってしまうのではないかと考え、どう歌うべきかたくさん悩みました。

 何度も収録しては椎名さんに確認していただき、ようやく完成しました。

――曲が使用される場面に応じて、それほどまでに細かくチューニングするんですね。

中川:私は基本的に声優は前に出る仕事、ナレーターは後ろに下がる仕事だと思っていて、都度都度演技や声音の使い方を意識します。

 歌唱についてもメインボーカルなのかコーラスなのか、どんな場面で使われる曲なのかというのを考えて考えて、求められる“音”を提供するのが自身の役割だと考えています。

 常に今までいろんな仕事で積み重ねてきたものを総動員して取り組んでいますが、その集大成のような形で『竈門炭治郎のうた』は歌わせていただきました。

――場面を盛り上げるための楽曲として完成されていたように感じます。この大ヒットで変わったことはありましたか?

中川:変わったことというのは自分ではとくに感じていなかったんですが、先日SNSを通じて、人生を諦めようとしていた方が『竈門炭治郎のうた』を聞いて、もう一度立ち上がって生きてみようと思った、ということを伝えてくださって……。

 もちろん作品の力が大きいとは思うんですが、それでも「歌ってこんなに力があるんだ」と改めて実感するような出来事で、素直にとても感動しました。

 『鬼滅の刃』は“全員で力を合わせて妥協せずいいものを作る!”という座組みだと思います。だから私も、たいへんだけど全力で頑張らないと!! という思いでたくさんの楽曲やコーラスに臨んでいました。

――ひょっとしてアニメの途中の、各話タイトルが出る画面で流れる、ごく短い一瞬のコーラスも中川さんだったりします?

中川:気づいていただけてたんですね!(笑)

――正解! スッキリしました!!(笑)

  • ▲スッキリ! スッパリ!!

世界観の一部になるために“合わせていく”のが私のスタイル

――すでに中川さんは沢山のゲームのBGMで活躍されていて、とくに私は『ニーア』シリーズが大好きなので『ニーア オートマタ』での『取リ憑イタ業病』が印象深いのです。先日の『声優と夜あそび』で花江夏樹さんが『取リ憑イタ業病』を紹介してくださいましたが、こちらの楽曲の収録秘話や、思い出話などありましたらぜひ。

中川:『ニーア オートマタ』の打ち上げの際、花江さんに『取リ憑イタ業病』が好きだとおっしゃっていただけて、すごくうれしかったです。

 『ニーア』シリーズは造語を扱わせていただいたのがはじめてで、日本語や英語で歌詞を書いたり、歌うのとは勝手が違って戸惑い、苦労した部分もありましたが、今はどれもいい経験をさせていただいたなと思っています。

 私は現在、造語の作詞も結構担当させていただいていまして、一番と二番で同じような韻を踏んだり、戦闘のようなかっこいい楽曲だとドイツ語っぽい音を組み込んだり、柔らかい楽曲にはフランス語のような柔らかい音を選んだりと……いろんな工夫をしています。

――お話をうかがっていると、ひたすら真摯に作曲サイドの要求に応えていくことを大事にされてるなという印象なのですが、中川さん自身が歌手としてこだわっている部分は?

中川:私は“合わせていく”タイプの歌唱を大事にしているので、こだわりがあるとしたらむしろその部分でしょうか。

 こんな作品だからこんなテイストで、と発注されたものを、なるべく実現していくスタイルで歌っていきたいなと。作品をつくる作家さんやスタッフさんの求めるものに柔軟に対応できる歌い手でありたい。

 そのきっかけは岡部さんや椎名さんたちがくださってて、すごい楽曲や素晴らしい作品がもう用意されていて、私はそこに合わせるだけ。それだけで素晴らしい一曲ができる。参加させていただけてる。それはとても幸せなことだなと常日頃思っています。

――なんというか、アーティストさんって誰もが自我が強いというか、強くないとやっていけないのかなと勝手に思っていたフシがあったんですけども。

中川:元々は自我がすごく強いほうなので、自我を殺して歌うくらいがちょうどいいのかなと思っています(笑)。

 『DOD』や『ニーア』、『鉄拳』や『テイルズ オブ』で、私が私がという主張をせずに、ひとつの世界を構築するパーツでありたいと素直に思えるような素敵なコンポーザーさんに巡り会えたことが私にとっては幸運でした。

――作品や作曲家さんとの繋がりを大事にしてらっしゃるんですね。

中川:今申し上げたことと少し矛盾するのかもしれませんけど、『竈門炭治郎のうた』をたくさんの方に聴いていただけて、改めて「自分の歌は無力ではない」と思えるようになった気がします。

 アートの力を信じてはいたけれども、思いとしては弱かったというか自信がなかったのかもしれない。

 実際に「あなたの歌を聴いて、生きようと思った」なんて言っていただけるとか……長年活動してきましたが、こういった形で目の当たりにしたことはなかったので、自分が歌うことで救われる人がいらっしゃるのであれば、私が歌う意味というのはあるんじゃないかと素直に思えるようになりました。

コロナの影響で卒業式ができないみんなと、少しでも喜びを共有したい! 『卒業おめでとうプロジェクト』って?

――今、コロナ禍でたいへんな世の中ですが、中川さんのお仕事にも大きな影響があるのでは?

中川:私は幸いなことに、自宅に防音室や宅録できる設備を整えていたりしたのもあって、コロナで極端にお仕事が減るということがなかったんですね。

 ですがコロナ禍の影響で、修学旅行や卒業式などのイベントが一切できなくなってる若者たちがたくさんいるということを知り、愕然としてしまって……こんな自分でも歌の力で何かできることがあるんじゃないか、と考えるようになりました。

 友達やクラスの仲間に会えない? 卒業式もできない? そんな経験を私はしたことがないけれど、きっとすごくツライことなんじゃないかって。

 それでなんとか「卒業するってとてもスゴいことなんだよ、頑張った証なんだよ、ステキなことなんだよ」という祝福の気持ちを伝えて、共有するようなことができないかと思って、地元である愛媛県の方々と一緒に『卒業おめでとうプロジェクト』というのをやってみることにしたんです。

――具体的にはどんなプロジェクトなんでしょうか?

中川:愛媛県出身の私と、Yurica。さん、NOZさんとで、それぞれに“卒業”にまつわるオリジナルソングを制作しました。

 その楽曲やミュージックビデオを2月20日のオンラインライブでお披露目するので、ぜひ皆さんに聴いて、観ていただいたうえで、たとえば歌ったり演奏したり踊ったり……自由に活用してもらって、それをオンラインでみんなで共有して楽しもうよ、という内容になります。

 企画に共感して、協力してくださっている方々もたくさんいてくれて、愛媛県の観光大使『いよかん大使』に任命していただいた御縁もあって、ミュージックビデオには愛媛県の中村知事にもご出演いただいてます。

 すごく楽しいミュージックビデオになりました。
 
――県知事が!! おかたいところもやわらかく、楽しんで巻き込んでいく感じが、もうなんだかスゴくいい感じですね(笑)。

中川:こんな時代だからこそ工夫して、繋がって、みんなで楽しくしちゃおうよ♪ って。

 オンラインだったらやってもいいんだ! 地方も都市も関係なく、離れていても楽しめるんだ! って、いろんな人たちに思ってもらって、歌やダンスで気軽に参加してもらえたら嬉しいですね。

 ミュージックビデオでも愛媛のヒップホップダンス、フラダンス、クラシックバレエの方たちなど、地域の皆さんにコラボ参加していただいて、私自身にとっても記念になる、楽しい作品にできました。

――地域の皆さんとコラボしつつ、さらに全国、世界中の皆さんに参加していただきつつ盛り上がろうというわけですね。みんなの思い出が増えるきっかけになりそうでいいですね。

中川:地方には地方の良さがもちろんあるけれど、それと同時に都会と違って何もないところには本当に何もなくて、何かをやりたいと思ってもきっかけも仲間も見つけにくい、というような側面もあると思うんです。

 でも今はスマホひとつあればいろんなことができる時代。家の中からでもいい、触れ合わなくてもできることはあるから。いろんな形で、一緒に発信しようよって。

 私なりの地元の印象ですけれど、過疎化も進むなかで皆さん本当に真面目にステイホームを守ってらっしゃる方が多いので、精神的には窮屈で寂しい気持ちになることも多いんじゃないかなって。だからインターネットを利用した地域活性化の願いも込めてのプロジェクトです。

 せっかくの機会なので、こだわりも詰め込ませていただいて、自分の曲『キミ ハ キラメキ!』は贅沢に生楽器ばかりで録音させていただきました。

――普段、あまり自我を出さないタイプの中川さんの自我が炸裂している楽曲なわけですね。レアだ……!

中川:アーティストの皆さんにも元気になって欲しかったんです。

 現在、多くのアーティストが自粛をしていますが、ステージとかたくさんしたいと思っているはずなので、せめて楽曲とミュージックビデオに出演してもらって、自己表現して欲しいなって。

 普段ならDTMでやってしまうところも、贅沢に生楽器で……参加してくださったアーティストの皆さんに本当に感謝しています。

 コロナで空白の時間を過ごしてしまっている気がしている学生さんや若い人たちに、どこにいたってこんなにステキな可能性があるよってことが伝わったなら……いろんなコラボが広がっていってくれたなら本当に嬉しいです。

――今回の企画を実現するにあたって苦労した点は?

中川:私たちにとっては当たり前になっている作業を、経験のない一般の方々にやっていただかないと映像が作れないところがたいへんでした。

 普段まったくやったことがないようなことを、ご自分でやっていただかないといけなくて。画像や動画を扱うのに「ギガファイル便ってなんですか……?」みたいなところからのスタートでした(笑)。

 あと、ミュージックビデオ撮影のソーシャルディスタンスがわりとたいへんで、距離を取るとどうしても画面が寂しくなっちゃうんですね。

 そこでtenboさんというブランドに協力していただき、色やデザインがとてもかわいくて、画面がより鮮やかに、元気に見えるような衣装を用意していただきました。

 “洋服で人を幸せにする”というコンセプトがとても素敵なんです。ソーシャルディスタンスを保ちつつも寂しくない、楽しい映像が撮れたので、早く皆さんにお披露目したいですね。

――この映像は2月20日のオンラインライブで初公開されるんですよね?

中川:と思ったのですが、せっかくなので、先行公開させていただくことになりました!

■「キミ ハ キラメキ!」【卒業おめでとうプロジェクト】中川奈美 楽曲

中川:こちらの初お披露目は、2月20日土曜日のオンラインライブになります。

 なるべく多くの方に見ていただきたいので、チケットは1000円という低価格設定にしました。この金額だったらギリギリ中学生くらいのお小遣いでもなんとか見てもらえるんじゃないか、と。

 今の私たちは“卒業の先輩”なので、今、リアルタイムに卒業を経験していく若い人たちに先輩からのメッセージが届いたらいいなと思って、作詞にもたくさんの要望を出しました。

 3人のアーティストがそれぞれの立ち位置で“卒業おめでとう”という気持ちを込めて楽曲を作ったので、ぜひこの楽曲をみんなで共有して、少しでも楽しんでもらいたいです。

――楽しみです! 4月のバースデーライブも今年は地元で開催されるそうですね。

中川:オンラインで配信できるんだったら、どこでやってもいいよねっていう、ある意味で自由になれたような気もしています。

 コロナが奪っていったものもたくさんあるけれど、得られたこともあるはずなので、そこを大事にしていきたいなと考えています。

――中川さんの思い、きっと多くの人に届くと思います! 最後に読者の方へメッセージをお願いいたします。

中川:ツライときこそ、エンタメやアートの力を信じてほしいと思っています。

 一人になっちゃうと、どんどん追い込まれて、自分がツラいという事にすら気がつけなくなってしまうこともある。

 どうか自分の価値を、自分から手放して、なくさないでほしい。それぞれの人に、それぞれの価値があるんだと信じてほしい。孤独にならず、こんなしんどい時期を生きているだけでエライ!! と自分を褒めてあげてほしいです。

 生々しい話になりますけれども、コロナいじめとかも子ども大人関係なく起こったりしていますから、とにかく何かのきっかけをつくって、どうか独りにならないで、という気持ちを歌を通して伝えていけたらなと思っています。

 よかったら、オンラインライブにもぜひお越しくださいね!

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