“かまえにたちよる”公開記念! 名作『かまいたちの夜』とサウンドノベルを振り返る

カワチ
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 大分県南部振興局による、周遊体験型イベントサイト“かまえにたちよる”。その公式サイトが公開中です。

 この“かまえにたちよる”は、名作サスペンスゲーム『かまいたちの夜』のオマージュ企画。

 スマートフォンやパソコンの画面を通じて、ゲーム風動画によって大分県佐伯市蒲江の魅力を擬似体験できます。動画ならではの映像・音響効果と、工夫をこらした演出が雰囲気を盛り上げ、プレイヤーをより深く蒲江の世界と、その魅力へと引き込んでくれます。

 ここでは、その“かまえにたちよる”の元となったサウンドノベル『かまいたちの夜』シリーズについて振り返っていきます。シリーズのファンは当時を懐かしみながら、知らない人は“かまえにたちよる”の予習として、作品を知ってもらえればと思います。

 なお、発売日やハードは最初に発売されたものとなります。また画像には後日発売されたものが含まれます。

サウンドノベルとは?

 小説をベースに背景やサウンドを追加したゲームで、絵や音の演出によって、文章を読むよりも臨場感が増しているのが特徴。文章の途中には選択肢があり、その選択によって物語が分岐していきます。

 また、いちどゲームをクリアした後に選択肢が追加され、新しい展開が楽しめるというゲームならではの仕掛けも。

『かまいたちの夜』シリーズを紹介

1994年11月25日 SFC『かまいたちの夜』

 スーパーファミコンで発売された記念すべきシリーズ第1作で、チュンソフトのサウンドノベルとしては『弟切草』に続く第2弾。『弟切草』は理不尽なことが巻き起こるホラーでしたが、『かまいたちの夜』は雪山で起こる不可解な事件の謎を解き明かすミステリーでした。

 “あなたのせいで、死体が増える”というキャッチコピーのとおり、自分自身で謎を解いていくというゲーム内容が新鮮で大ヒットしました。

 また、『弟切草』からの変更点として登場人物が青いシルエットで表示されるようになったのが特徴。『かまいたちの夜』は登場人物が多いのが特徴ですが、シルエットのおかげでシチュエーションがすごくわかりやすいです。

 自分は「ホラーじゃないからお化けも出てこないし、内容もおもしろそうだからプレイしてみよう」と思って遊んでみたのですが、やってみたら普通に怖かったです。

 どこに潜んでいるのかわからない犯人と疑心暗鬼になっていく人々。静かに聴こえる時計の音や外の吹雪……そして悲鳴。アクションゲームではないのに、ここまで進めるのが怖い作品が作れるなんて……と驚きました。特にヒロインと悲劇的な展開になる結末はトラウマ級でした。

 メインとなる“ミステリー編”をクリアした後は“悪霊編”や“スパイ編”がプレイ可能になり、ストーリーがガラリと変わるのはもちろん、キャラクターの設定も変化。同じ人物なのに、善人が悪人に、逆に悪人がいい人に変わってまったく先が読めなくて楽しかったです! “鎌井達の夜”編のノヨール・カマーイとか好きでしたね(笑)。

 他にも“宝探し編”や“不思議のペンション編”のような隠し要素も多く、プレイしてもプレイしても新しい発見がある魅力がありました。ノベルゲームということもあり、今プレイしても古臭さを感じることはあまりないと思うので、ぜひプレイしてもらいたいです。

2002年7月18日 PS2『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』

 PS2で発売された『かまいたちの夜』の新作。8年ぶりということで、発売されること自体に驚いた人も多いのではないでしょうか? 当時、自分はまだPS2本体を持っていなかったのですが、この『かまいたちの夜2』をプレイしたすぎて、親にねだって買ってもらいました(笑)。

 本作は『かまいたちの夜』の続編ですが、本編内では『かまいたちの夜』は劇中劇ということになっています。自分たちがキャラクターのモデルになったゲーム『かまいたちの夜』がヒットしたということで、原作者の我孫子武丸から主人公らが絶海の孤島である三日月島に招待される……というプロローグになっています。

 ハードが進化したことで演出もパワーアップ。シルエットがポリゴンになり、動きで楽しめるシーンが増えました。実写によるオープニングムービーも迫力がありましたね。

 本作のシナリオは、前作『かまいたちの夜』の我孫子武丸さんに加えて、田中啓文さんと牧野修さんが参加。もともと尖った小説を書く方々ですが、その個性を本作でも存分に発揮。田中さんの“底蟲村篇”や牧野さんの“妄想篇”、“惨殺篇”は忘れられないインパクトがあります。

 自分は特に惨殺篇に思い入れがあります。内容はめちゃくちゃスプラッターで最後も救いがないのですが、スタッフロールの流れるラストシーンがすごく印象に残るんですよね……。ラストといえば、底蟲村篇の最後もすごかった……。

 また個人的にお気に入りなのは“官能篇”。あるキャラクターの誘惑シーンにドキドキしましたが、その動きのモデリングを担当したのが男性スタッフだったと知った時には愕然としました(苦笑)。

2006年7月27日 PS2『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』

 『かまいたちの夜』シリーズ完結編としてPS2で発売されました。なお、『3』ではなく『×3』となっているのは『かまいたちの夜』と『かまいたちの夜2』のメインシナリオも収録されているため。そのため、この1本があれば前2作をプレイしていなくても物語やキャラクターの関係性を理解できるうれしい作りでした。

 ストーリーは『2』の事件のあと、悪夢を見るようになってしまったキャラクターの香山誠一が供養のために三日月島を訪れるというものです。

 本作は1作目のように我孫子武丸さんがシナリオを執筆。物語の途中には前作で死んでしまったキャラクターが亡霊として登場することもあるのですが、そこで彼らが単純な悪い人ではなかったことが発覚。フォローされているケースもあります。ここは我孫子さんの優しさを感じて好きでした。

 物語の構成は複数の主人公の視点を切り替えながら進めていくというもの。これまではアクの強いキャラクターとして登場し、ときには「うっとおしいな~」と思いながら傍目から見ていた香山さんの視点で物語を進めるのは新鮮でした(笑)。

2011年12月17日 PS3/PS Vita『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』

 『×3』から5年ぶりに発売された最新作で舞台やキャラクターを一新して登場。ただ、舞台が雪に閉ざされた山荘だったり、“謎のコートの男”が登場したりと、『かまいたちの夜』らしさは健在でファンはニヤリとします。

 ストーリーは小説家志望の主人公・坂巻快人が小説の題材を探しに岩手県にやってきたところ、宿泊先のペンションで大学時代の友人・立花京香と思わぬ再会を果たすというもの。本作から登場人物にボイスが付き、物語を盛り上げてくれるようになりました。

 『×3』はサブシナリオが少なめでしたが、本作は多彩な分岐を楽しむことができました。自分はどこからともなく「ビンゴー!」の声が聴こえてくる“ビンゴ編”がカオスで好きでした(笑)。

 また、マルチプレイで事件を推理する“みんなでかまいたち”も実装されていました。他のプレイヤーから情報を集めていく“犯人”、“凶器”、“死体の隠し場所”を突き止めることが目的ですが、これがアナログゲームをプレイしているようで楽しく、ずっと遊んでいました。

 なお、“みんなでかまいたち”のサービスは2014年1月20日に終了しています。

スパイク・チュンソフトのアドベンチャーゲームを紹介

 ここからはスパイク・チュンソフトのサウンドノベルやアドベンチャーゲームの歩みを簡単に振り返っていきます。それぞれ魅力的な作品なので、ぜひチェックしてみてください!

1992年3月7日 SFC『弟切草』


 チュンソフトのサウンドノベル第1弾。夜道をドライブしていた主人公とヒロインの奈美が山奥の洋館に迷い込むところから物語はスタートします。選択肢で物語は分岐しますが、いわゆるバッドエンドは存在せず、必ずどのルートかのエンディングに到達します。

 1999年にはグラフィックが強化され、シナリオが追加された『弟切草 蘇生篇』がPSで発売されました。

1994年11月25日 SFC『かまいたちの夜』


 サウンドノベル第2弾で、バッドエンドを回避しながら真相にたどり着くのが目的。1998年にはリメイク作PS『かまいたちの夜 特別篇』が発売され、さらに2017年には5pb.からキャラクターがイラストで描写されたリメイク作『かまいたちの夜 輪廻彩声』が発売となりました。

 多彩な機種に移植された人気作ですが、移植版は劇中で話題になるドラマのタイトルが違ったり、“日本円”の価値を語るセリフが変わっていたりと細かい違いがあります。

1998年1月22日 SS『サウンドノベル 街 -machi-』


 サウンドノベル第3弾。渋谷の街を舞台に職業も年齢も違う8人の物語を並列して進めていく内容です。実写が使われており、ダンカンさんや竜雷太さんなどの有名俳優に加えて、若いころの窪塚洋介さんや北陽の伊藤さおりさんなども出演しています。

 後にPSに移植され、“シルエットモード”などが追加されました。

2002年7月18日 PS2『かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄』


 『かまいたちの夜』シリーズ第2弾で、ハードがPS2になったことで演出がリッチになりました。また、フローチャートやバッドエンドリストが搭載されたため、より快適にプレイできるようになりました。

 2006年にPSPへと移植され、画面比率がワイドに対応するなど、細かい部分が変更されています。

2004年6月24日 PS2『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』

 TVドラマ『3年B組金八先生』が題材のアドベンチャーゲームで、プレイヤーは入院した坂本金八に変わって3年B組を受け持つことになります。キャラクターデザインは『猫の恩返し』で知られる森川聡子さん。

 全編フルボイスで、画面上にテキストが表示されないのが特徴で、生徒の才能を開花させる“才能開花”といったシステムを搭載しています。

2006年7月27日 PS2『かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相』


 『かまいたちの夜』シリーズ完結編で『かまいたちの夜』、『かまいたちの夜2』のメインストーリーを同時収録。2007年には携帯電話用アプリとして配信されました。

2007年10月25日 PS3『忌火起草』


 PS3で発売されたサウンドノベルで、『弟切草』のようなホラー作品。人々が謎の焼死を遂げる事件に巻き込まれた主人公とヒロインが、朽ち果てた屋敷に向かうという内容です。

 『街』のように実写が使われていますが、人物は鼻までしか映らないようになっており、想像力を掻き立てられます。

 2008年にはWiiで『忌火起草 解明編』が発売。タイトルが示すとおり、すべての謎が明らかになる新シナリオが追加されています。

2008年12月4日 Wii『428 ~封鎖された渋谷で~』


 渋谷を舞台にした実写サウンドノベルで、5人の主人公が午前10時から午後8時まで体験した出来事を追っていくという内容です。なお、主人公のひとりは『3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!』に登場する御法川実となっています。

 直接的なつながりはないものの、同じ渋谷を舞台にした実写サウンドノベル『街』の小ネタも随所に用意されていました。

 さまざまな機種に移植されており、現在はPS4やSteamなどのハードで遊ぶことが可能です。

2009年12月10日 DS『極限脱出 9時間9人9の扉』


 サウンドノベルと脱出ゲームを組み合わせた『極限脱出』シリーズの1作目で、打越鋼太郎さんがてがけています。豪華客船のような場所に閉じ込められた9人の男女が9時間以内に9と書かれた扉を探す“ノナリーゲーム”に挑んでいくことに。

 2017年には次回作の『極限脱出ADV 善人シボウデス』とセットになった『ZERO ESCAPE 9時間9人9の扉 善人シボウデス ダブルパック』がPS4/PS Vita/Steamで発売されました。こちらは新たにボイスが追加されています。

2011年12月17日 PS3/PS Vita『真かまいたちの夜 11人目の訪問者』


 登場人物や舞台を一新した『かまいたちの夜』シリーズ最新作。画面の気になる部分を選択する“おさわり選択肢”や怪しい理由などを組み合わせる“推理システム”などを搭載しています。また、ダウンロードコンテンツでシナリオが配信されました。

 なお、ゲーム本編とは直接関係ありませんが、本作は電撃オンライン内のアドベンチャーゲーム紹介コーナー“まり蔵探偵事務所”とコラボし、オリジナル壁紙が配布されました。

2012年02月16日 PS Vita/3DS『極限脱出ADV 善人シボウデス』


 『極限脱出』シリーズの2作目。男女9名が協力か裏切りを選ぶ“ノナリーゲーム アンビデックスエディション”に挑んでいきます。前作にはなかったフローチャート機能が追加された他、脱出パートの難易度を3段階から選べるようになりました。

2016年06月30日 PS Vita/3DS/PC『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』


 『極限脱出』シリーズ完結作で、3人1チームで地下核シェルターからの脱出を目指す“ディシジョンゲーム”が描かれます。

 時系列が不明な物語の断片をプレイしていく“フローティング・フラグメント・システム”や、物語の随所で重要な選択を迫られる“ディシジョンパート”を搭載しているのが特徴です。

2019年9月19日 PS4/Switch/PC『AI: ソムニウム ファイル』


 『極限脱出』シリーズを手掛けた打越鋼太郎さんの新タイトル。警視庁特殊捜査班・ABIS(アビス)に所属する主人公が高度なAIを搭載した義眼のアイボゥとともに凄惨な事件の謎を解いていくことになります。

 物語を追う“捜査パート”と重要参考人の夢の中で手がかりを探す“ソムニウムパート”が存在し、この“ソムニウムパート”の謎の解き方によって物語が分岐する仕掛けがあります。

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(C)Spike Chunsoft Co.,Ltd/『3年B組金八先生』はTBSの著作物です。

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