世界的注目作『サイバーパンク2077』の魅力にローカライズの観点から迫る! 本間氏&西尾氏インタビュー【電撃PS】
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2020年4月16日に発売予定のPS4/Xbox One/PC用ソフト『サイバーパンク2077』。マイク・ポンスミスさんによるテーブルトークRPG『サイバーパンク2.0.2.0.』に基づいて開発された物語主導型のオープンワールドRPGである本作は、近未来の巨大都市・ナイトシティを舞台に、新鋭のサイバーパンク“V(ヴィー)”を主人公として物語が展開します。制作は、『ウィッチャー3』が世界的高評価を得たCD PROJEKT RED(日本のPS4版パッケージ販売はスパイク・チュンソフト)。
E3 2019ではゲーム内のキーキャラクター“ジョニー・シルヴァーハンド”をキアヌ・リーブス氏が演じることが発表され、キアヌ氏自身もステージに登壇するなど会場が熱狂の渦に包まれました。Youtubeの公式動画はいずれも驚異的な視聴数(E3 2019のシネマティックトレーラーが約1100万再生)を叩き出すなど、現在、世界で最も注目を集めているゲーム作品と言っても過言ではないと思われます。
そんな本作を日本に届けるべく尽力しているのが、数々の要素を日本語環境に調整するローカライザーの方々。今回は、圧倒的マンパワーで『ウィッチャー3』をはじめ多数の作品のローカライズを手掛けてきた本間覚氏と、『ライフ イズ ストレンジ』『オーバーウォッチ』などのローカライズディレクターを務め、センシティブな訳に定評のある西尾勇輝氏(元スクウェア・エニックス)に、ローカライズの観点から『サイバーパンク2077』の魅力を尋ねました!
世界の住人になったような
圧倒的没入感を生み出す
――まず最初に、西尾さんがCD PROJEKT REDに合流したきっかけについてお聞きしたいです。
西尾勇輝氏(以下、敬称略):僕自身、ローカライズを手掛ける人間として、そろそろ次のステップに行きたいと考えていたんです。よりストーリー性が強い、ナラティブベースの大作に携わりたいという気持ちがありました。そこで、昨年末に本間と食事をしていた際に雑談程度に話してみたんです。暗に『CP』やらせてよ、というオーラを出しつつ……(笑)。その後、年明けに改めて本格的に転職の意向を相談させてもらったところ、ありがたいことに本間が本社の社長にかけあってくれました。そこからはとんとん拍子で進みましたね。
本間覚氏(以下、敬称略):私がちょうどそのとき本社にいたんです。私も面接にはポーランドから同席したのですが、共同社長のマーチン・イウィンスキと西尾はすでに面識があり、西尾の人柄はある程度知られてはいました。おかげでCV(履歴書)を使った審査や、人事の面接などは一切なかったので、その点はラクでしたね。
西尾:結局CVを送ることなく入社しました。僕は日本の自宅から、ウェブカメラで面接に臨みました。しかし、好印象は残しておくものですね(笑)。僕は2月末でスクウェア・エニックスを退社したのですが、翌月からすぐに本間と合流して作業に入りました。
本間:『CP』の専属ローカライズマネージャーという立場で雇っているので、『CP』に関しては基本的に西尾に見てもらっています。『ウィッチャー』関連のものや『グウェント』については、私が中心で見ていくというスタンスです。もう作業量的に限界を感じていたので……(笑)。ただ、『CP』は物量が多いので、可能な限り私も翻訳のチェックなどを行っています。
今回、E3後に『CP』を全世界同時に予約開始したじゃないですか。グローバルに合わせて予約を開始したというと聞こえはいいのですが、日本の小売さんも含めて同時に予約開始するのは、そうとう大変で……。通常、世界同時発売の場合、発表はともかく予約タイミングは国によって違います。海外はすぐ予約開始するけれども、日本はタイミングを見て発売の数カ月前から予約を開始するなど、国によって慣習が違うんですよ。今回CD PROJEKT REDとしては、あらゆることを世界同時に進める方針なので、今後も新情報を公開する時や、新しい映像の発表などは、日本も遅れずにやっていく予定です。これに伴う作業がとても多いので、正直すべて自分で担当するのは厳しいかなと思っていました。まさにそんなとき、「うってつけの人材がいるじゃないか」という形で、西尾が声をかけてきてくれたと。
西尾:僕も前から(『CP』のローカライズを)「本当に1人でやるつもりですか?」ってジャブを打っていましたからね(笑)。
――今年のE3では『CP』が最も盛り上がったタイトルの1つだったと思える内容でしたが、お2人は現地にいたのでしょうか?
本間:私はメディア対応などもありましたので、現地に行きました。渡航できなかった社員の多くはワルシャワなど各拠点の食堂などに集まって、皆でカンファレンスを見ていたようです。あの時間は日本では早朝、ポーランドだと深夜に相当するので、本社では深夜シフトを組んでプレスリリースなどに対応しました。日本チームとしてはPR担当の櫛引がワルシャワ本社で勤務してくれているおかげで、E3でもいろいろとグローバル同時のタイミングでSNS対応ができ、非常に助かりました。
西尾:僕は家で1人寂しく見てました。まだ『CP』にかかわっていることが発表される前だったので、あまり大々的にコメントできず……
――現地の反響はいかがでしたか?
本間:E3で発表された映像の中では、YouTubeの再生回数で1位を取ることができたなど、グローバルで大変盛り上がりました。日本では、やはり国産タイトルの反響が大きかったように思いますが、その海外ゲームと国産ゲームの壁のようなものを突破するために、今後いろいろと施策を行っていく予定です。キアヌ・リーブス氏が登場することでの盛り上がりは日本でもすごかったですし、プレオーダーを同時に始めたこともあって、コアな海外ゲームファンの興味をひくことができた実感はあります。「コレクターズエディション」の購買にもつながったので、調整をがんばってよかったなと思いましたね。
――「コレクターズエディション」の再販は予定されていないのでしょうか?
本間:残念ながら、増産する予定は今のところありません。
――『ウィッチャー3』では主軸となる物語がありましたが、『CP』の物語はどのようになりますか?
西尾:もちろん大筋の物語は本作にも存在します。主人公の「V(ヴィー)」は、いわゆる傭兵なのですが、不老不死のカギを握ると言われている、とあるインプラントを追う依頼を請け負います。この依頼は、Vが今まで受けたなかで最も大きな仕事であり、成功させることで名を上げようとするのですが……という物語が展開していく形になります。現状でお話できるのはここまでですが、CD PROJEKT REDが作るゲームなので、ナラティブ性が高いのは言うまでもありません。もちろん今回も、『ウィッチャー3』と同じように、大筋以外の細かいお話もつながってきて、1つの大きな物語になるでしょう。
本間:去年公開されたのは、ナイトシティやサイバーパンクというものが、どういうものなのかを紹介する側面が強いものでした。今年公開されたトレーラーは、ストーリー性に焦点を当てたものです。8月末のPAX WESTのタイミングで公開される予定のプレイデモでは、選択肢や行動による物語の変化や、「ネットランナー(ハッカー)」や「ソロ(銃火器や近接戦に特化)」といったビルドに特化した戦い方をお見せできると思います。
――『CP』の世界観を考えると、かなり自由度が高そうに感じますが、その自由度の高さをどのような形で表現しているのでしょうか?
本間:よく誤解されるのですが、本作が提供する自由度とは、決してなんでも好き勝手にできる“フリーダム”ではありません。クエストを無視して登場人物全員を皆殺しにしたり、周囲のものをなんでも拾って投げたり、NPCにバケツをかぶせたりという仕組みは、恐らく実装されないでしょう。我々が提供したいのは、ナラティブ性を高めるための、ストーリーのなかでの自由度です。今回は一人称視点のゲームということもあり、非常に没入感を意識して作られています。戦闘や移動のみならず、会話の選択肢の出し方にもこだわっています。例えば、『ウィッチャー3』では、会話中にゲラルトの顔が映り、右にUIとして会話の選択肢が表示されるのですが、そのタイミングで一度現実に意識が戻されますよね。ある種、ゲーム体験的にポーズがかかってしまう。三人称視点ではこれが避けられませんでした。なんせ戦闘時と会話時はカメラがまったく別ですからね。
西尾:『ウィッチャー3』は会話シークエンスがしっかり用意されていて、プレイヤーが「ここは選ぶところなんだ」という認識があったと思います。ですが今回は戦闘と会話がシームレスで描かれます。例えば、銃を撃ったあとにすぐに会話が始まり、そこから別のシークエンスに行くことなく会話に移行する、というように、没入感を維持しようとする流れを作ろうとしていて。そこが『ウィッチャー3』との大きな違いですね。とある事件の解決法として、武力で黙らせるのか、賄賂を渡すのか、関与せずに別ルートで情報を握るのか、あるいは完全に無視するのかなど、選択肢がとても多いです。
本間:Vのビルド(育成方針)でアプローチが大きく変わってくるのも特徴です。例えば「ネットランナー」と「ソロ」では、同じクエストでもアプローチ手段が変わってきます。『ウィッチャー3』では、主人公はゲラルトという固定された人物なので、「印」特化の育成をしても、とくに新しい選択肢が出ることはありませんでした。アクスィーの印など、例外はありますが、それもごく一部の話。このあたりはかなり進化していますね。
西尾:「ネットランナー」の場合、例えば事前にハッキングすることで、特定の情報を得ておくことができたりします。なので、とある会話の選択肢で、ほかのビルドでは知りえないことが、「ネットランナー」であれば聞くことができるかもしれません。
――ビルドによってクエストの流れや、ゲーム体験も大きく変わりそうですね。こういった変化が物語にも影響を与えることはあるのでしょうか?
西尾:クエストの流れには大きく影響しますね。もちろん演出も変わってきます。
本間:例えば、手に入れたチップがウイルスに汚染されているかを確認したり、そのウイルスを除去したりといった、「ネットランナー」だからこそできるアクションなどは出てくると思います。
――E3 2019で公開されたトレーラーではサイバー空間へのダイブのような描写がありましたが、ハッキング周りの描写はどのようになるのでしょうか?
西尾:そこはまだ詳しくは言えません。ただ、アーティストチームもプロデューサーチームも、サイバー空間には強いこだわりを持っていて、いろいろ模索しながら描写のしかたを考えているようです。
本間:サイバー空間とは別に、ハッキングのミニゲーム的なものも用意されています。数合わせみたいな感じでドアのロックを解除するといったものはあります。
――『ウィッチャー3』では、プレイしたクエストの結果がゲームに反映される要素がありましたが、同じような要素はありますか?
西尾:あります。選択肢しだいでいろいろ変わっていくでしょう。エンディングも複数ありますし、それがどう変わるかというのはプレイヤーしだいですね。
――そういう意味では、ナラティブ性は高いと。
本間:高いです。個人的に本作の何が一番推しかと聞かれたら、やっぱりストーリーだと思いますね。
西尾:戦闘もおもしろいですよ! でも一番の魅力はストーリーにあるというのは僕も同意ですね。CD PROJEKT REDは、そこは一貫して変わらないと思います。
――トレーラーでは、銃のほかに、エネルギーを具現化したムチのようなもので攻撃するシーンがありました。武装はどれくらいの種類が用意されているのでしょうか?
本間:ワイヤーや投げナイフ、割れたビンなども使えます。銃の種類で言えば、ハンドガンにショットガン、アサルトライフル、ライトマシンガンなどさまざまですね。カタナやナックル、マンティスブレードといった近接武器も充実しています。
西尾:ムチのような武装は、正確にはナノワイヤーという名称です。「ネットランナー」の場合は、ナノワイヤーを使って遠方の敵をハッキングするというように、複数の使い方ができる武器もあります。デモのように物理的に攻撃するためにも使えるので、こちらの方法であれば「ソロ」でも使えます。
――改造は、部位ごとに行えるのでしょうか?
西尾:できます。目、頭、手、腕、脚など、いろんな部位が改造可能です。体の外見に反映されるようなものだけでなく、内部にもインプラントを入れることができます。例えば、去年のデモでも出ていた「ケレズニコフ」ですね。反射神経を加速させるサイバーウェアの1つです。
本間:サイバーウェアはそれぞれアビリティを持っています。「ダブルジャンプ」機能を持つ義足を装備すると、ダブルジャンプができるようになるなどですね。
西尾:サイバーウェアはアップグレードもできます。「ダブルジャンプ」を持つ義足をアップグレードすると、着地の音が聞こえにくくなって、ステルス性能が増すとか。
本間:『ウィッチャー3』は、主に「剣」、「印」、「錬金術」の3つの強化ルートがありました。「剣」を強化することで技が変わったり、単純に攻撃力が上がったりしていましたが、『CP』のキャラカスタマイズの幅は、『ウィッチャー3』をはるかに越えるものになるでしょうね。
――ビルドに関しては、ある程度方向性を絞ってカスタマイズしていく感じになるのでしょうか?
本間:いわゆるポイントの振り直し的なことができるかどうかは、開発中のため明確な言及は避けたいと思います。ただし、「この方向性で育てていく」というのがロックされるわけではないので、ソロのPERKを2つとって、ネットランナーのものを3つとるといったこともできます。「ソロ」というクラスではなく、「ソロっぽいネットランナー」みたいなこともできます。
西尾:1つのビルドパスが完全に固定されるわけではありません。ただ、ビルドに関してはサイバーウェアほど気軽に振り直しができるわけではないと思います。
――本作はオープンワールドとのことですが、フィールド全体の広さはどの程度になるのでしょうか?
西尾:正確には測っていないので、面積や東京ドーム何個分などに例えて言うことは難しいのですが、本作は平坦なフィールドで、山や崖が点在しているタイプのオープンワールドではありません。ナイトシティという1つの都市をオープンワールドにしているため、今までになかった上下の概念があります。地下もありますし、クエストによっては建物の上層にも行くことになります。このような縦の広さは、これまでのオープンワールドにはない感覚かなと。総合的な広さでいえばかなり広いと思います。1つ言えるのは、狭いと感じることはまずないと思います。ナイトシティだけでも6つの地区に分かれていますし、それだけでも膨大な広さがありますから。1つの完成された都市をオープンワールドでプレイできるので、体感ではかなり広く感じるのではないでしょうか。
――昼夜の概念はあるのでしょうか?
本間:あります。リアルタイムで変わっていきます。天気も変わります。
――マップ上では基本的に一人称視点ですか?
西尾:はい。三人称になるのは乗り物の運転時とカットシーンのみで、ほかはすべて一人称で進みます。今回はキャラクタークリエイト要素があり、服装も変えられるほか、サイバーウェアでも見た目が変わるので、カットシーンを通して自分のキャラを見れるようになっています。
――バイクに乗るシーンが公開されていましたが、乗り物の種類はどのくらいあるのでしょうか?
西尾:種類という意味では車とバイクのみですが、それぞれに豊富な車種が用意されています。レースのような乗り物を楽しむミニゲームなどもありますよ。航空機も登場はするのですが、プレイヤーが自由に操縦できる予定はありません。
――ファストトラベルでの移動はできるのでしょうか?
本間:できます。基本的にはファストトラベル以外ではデータロードを挟まないというのを目標にしています。
西尾:ファストトラベルの仕様についてはまだ開発中ですが、突然何の説明もなくワープするようなものにはならないと思います。
原作へのリスペクトを忘れずに、より聞きやすい会話を目指す
――キアヌ・リーブスさんが演じているジョニー・シルヴァーハンドは原作のTRPGにも出てきますが、ほかにも原作のキャラクターは登場するのでしょうか?
西尾:多数出てきます。ジョニーに関してはデジタルゴーストのような存在なので、同一人物であり同一人物ではないみたいな感じです。ジョニーはジョニーなのですが、「2020」のジョニーがそのまま存在し続けているわけではありません。彼が〈Samurai
〉というバンドのヴォーカルであることと、「ロッカーボーイ」という……原作でいうと、音楽を使って人を扇動するようなクラスであることは変わっていません。『CP』の世界では、政府というものが完全に機能しなくなっていて、代わりに巨大企業が世界を牛耳っているのですが、そういった企業支配を嫌って音楽で戦うというジョニーの根源的な部分は変わっていません。そんなキャラクターを、今回キアヌ・リーブスさんに演じて頂いています。
――ジョニーは作中でも比較的登場機会が多いという話を耳にしたのですが……。
本間:そうですね、メインキャラクターといって差し支えないと思います。セリフ数も多いキャラクターですし、重要人物の1人と言えるでしょうね。ちょっとしたカメオ出演という感じではなく、ガッツリ関わって頂いています。
――ローカライズするうえで、ジョニーの性格付けなどは悩まれたりしましたか?
西尾:ジョニーは原作にも出ていますし、超個性的なキャラクターなので、一切悩みませんでした。逆に難しいのは、その個性をチープに見せないことです。あくまでも1人の人間なので、人間味を感じさせるように仕立て上げるほうが難しいと感じています。人物像は最初から固まっていたので苦労はしませんでしたが、それを取り入れつつ、ありきたりなステレオタイプなロッカーのようにしないことが大変です。我々の感じるジョニーらしさを活かそうとしているのですが、今まさに頭を悩ませているところですね。
――あらためて原作の文章を見てみると、当時のセリフ回しはかなり独特ですよね。
西尾:さすがに時代が変わってしまいましたからね。とはいえ、我々もそうなのですが、こういった言い回しこそサイバーパンクだと感じる人もいると思うんです。しかし本作は吹き替えですから、このテイストのままやるとさすがにクドイと思いますし……。文字として読むだけなら、恐らく大丈夫なんです。ですが、会話が飛び交うなかで、皆がこういう喋り方をしていると、ずっとバターを無理矢理食べさせられているようでキツイなと(苦笑)。
本間:街のNPC全員が「エッジに生きる」や「フラットライン」(死を意味するサイバーパンクスラング)と言い出したら、会話の内容が入ってこなくなっちゃう危険性があります。決め台詞としてはいいと思うんですけどね。
西尾:やろうと思えばできるのですが、みなさんに会話の内容がしっかりと伝わるように、現代風に落とし込んではいます。ですが、原作に出てくるスラングや用語、言い回しについては基本的には統一して翻訳させて頂いています。ただ、原文の英語のほうで少し改変されている用語や言い回しがあるので、そういった場合は日本語もそれに応じて新しい用語を作ってみたり、もともとのスラングを引用してみたりと、ケースごとに対応しています。
本間:ジョニー・シルヴァーハンドが「バ」ではなく「ヴァ」なのも原作翻訳リスペクトですね。今の時代でシルバーと書くときは大抵「バ」を使うと思います。そういったニュアンスに関しては原作を参考にさせて頂いています。
――吹き替えの話が出ましたが、本作も全編吹き替えとなっているのでしょうか?
本間:すべて吹き替えます! そうでなければ彼を雇ったかいがないですし(笑)。
西尾:声優陣も決まり始めているところで、主要キャラクターはほぼ固まりました。ただキャストの公開に関してはもう少しお時間を頂ければと。発表だけしても、実際の声が皆さんに届かないとイメージしづらいとも思いますので。今後日本語音声をみなさまにお届けできるタイミングで、キャストについても公開できればと思っています。
――キアヌ・リーブスさんをはじめ、海外俳優さんには洋画の吹き替えの際に専属の声優さんがいらっしゃると思うのですが、そういったことも意識されてキャスティングを行っているのでしょうか?
西尾:もちろん参考にはしますが、それがすべてではありません。専属でずっと特定の方が担当しているケースもありますが、多くの場合では劇場版とテレビ版とVHS版など、媒体で変わることも多いですからね。今回のようにオーディションを通して決める場合もありますし、インスピレーションでこちらからお願いすることもあります。ジョニー以外のキャラクターもそうですね。参考にはしますが、それが決定権をにぎっているわけではありません。
――世界が広いだけに、声優さんの数もすごいことになりそうですね。
本間:『ウィッチャー3』のときは、数十人くらいで、数百キャラを演じてもらっていました。今回はまだ総キャラクター数がわからないので何ともいえませんが……。
西尾:3ケタいく可能性はありますよね。もちろん一般人やお店のベンダーなどは複数の方に演じてもらう必要はありますが。
――ゲーム内の表現について、『ウィッチャー3』でも少々調整が必要だったと記憶していますが、『CP』に関してはどうなる予定でしょうか?
西尾:必要に応じて、最低限の調整を行います。もちろんギリギリを攻めるスタンスではいたいのですが、レーティングという制度がある以上、我々はそれに従うつもりです。ただ、そのなかでCD RPOJEKTが伝えたい表現を、可能な限り活かせるようにはしたいです。
本間:性行為シーンなどもあるので、残念ながら完全に修正なしにはならないですね。無規制で出すことは正直難しいでしょう。どういった変更になるのかについては、現状ではまだわかりませんが……。
西尾:『CP』はセリフもかなり攻めています。差別用語や、一般的に放送禁止用語とされているものを採用することはもちろんありませんが、今まで僕が書いたことがないくらい下品なセリフが多くて……(笑)。その下品さを、いかにオシャレに表現するかが今の僕の課題です。英語だとすごいオシャレなんですよ。CD PROJEKT節というか……ライターのセンスの塊ともいうべき文章なので、それをどう日本語で表現しようか悩んでいます。ナイトシティにいる人ってブッ飛んでいる人ばかりなのですが、そんな人物でないと、この過酷な街で生きていけないんでしょうね。
本間:でも、サイバーパンクっていうジャンルは、そういう世界観ですよね(笑)。
――英語音声&日本語字幕など、ゲーム内音声の切り替えには対応するのでしょうか?
本間:おそらく可能になるかと思いますし、そこを目指して作業はしています。基本スタンスとしては切り替え可能にするつもりですが、データ容量がBDに収まらない場合など、どうにもならないときにそういった部分が削られる可能性はあります。
――そのセンスのあるという英語の言い回しというのを実際に聞ける可能性はあるということで、楽しみです。
西尾:突き詰めると、言っていることは普通なんですけどね。言い回しが独特というか……。
本間:2077年のテーマをスパイスのように振りかけている感じだよね。
西尾:そう! それを100%日本語にすると恐らく伝わらなくなるうえ、言語が違いすぎて同じようなテイストは出せないんです。どうしても冗長になってしまうので、そういうところは省かなければいけませんし。それをふまえたうえでサイバーパンク感をどう出していくかを模索しているところですね。
本間:といっても、決して味付けを変えているわけではなく、同じ味を日本語でお届けするというポリシーでやっているので、ご安心ください。
――主人公のVは男女を選択できるとのことですが、義体として男女のボディが用意されているのですか? それとも本来の性別から選べるのでしょうか?
西尾:別に義体というわけではなく、生身の肉体ですね。男女という概念はあるので、そこから選んでいただく形になります。
本間:キャラ作成時にボイスを複数のなかから選択するということはありません。男性の声と女性の声が1つずつあるだけです。ボイスパターンを増やしたら我々が死んでしまいます(笑)。
西尾:発売が10年後とかになっちゃいますね(苦笑)。
本間:とくに今回は、男女が違うだけでもNPCの台詞が変わってくるので、相当なパターンがありますね。
――ということは、Vの性格設定は最初からある程度決まっているのですね。
西尾:そうなります。我々の思い描くVという存在があり、プレイヤーがVに親近感を持ったうえで、自分を投影できるように仕上げられるのが理想ですね。
本間:Vは夢見る若者なんです。そこは絶対に変わらなくて、夢見るおじいちゃんでもなければ、夢見る子どもでもない。ナイトシティで一発デカいヤマを当てたいという野望を持っていて、基本的にはガツガツ行くでしょう。ただ、クエストのなかで安全な道を取るのか、正面から行くのかという判断はプレイヤーしだいになります。
西尾:Vはやんちゃというか、まだ未熟なんです。逆におじいちゃんであの性格だったらだいぶ問題ありますよ。「こんだけ生きてきて何を学んできたの?」って(笑)。
本間:確かに(笑)。恐れ知らずといえばいいのかな。ビッグネームになるためにはリスクを抱えなければいけないと知っていて、それでもデクスターという危険なフィクサーから仕事をもらうのも、ビッグになりたいという衝動があるからだと思います。
西尾:皮肉屋で勝気な性格ですね。もちろん選択肢しだいで少し変わってはきますが。ただ、そこからキャラとして大きくブレることはないでしょう。
――Vの過去やパーソナリティについて、物語中で触れられることなどはあるのでしょうか?
西尾:キャラクター作成時に、ライフパスというものを選びます。「なぜアナタはナイトシティに来たのか」という理由付けですね。ここで決めたライフパスについて、Vが語る部分は出てくると思います。
本間:用意されているライフパスは、街で育った「ストリートキッド」、ナイトシティの外で家を持たず放浪して暮らす「ノーマッド」、企業出身者の「コーポレート」の3つがあります。
――本当にTRPGみたいですね。
本間:原作のTRPGのデザイナーであるマイク・ポンスミスさんが、「TRPGをデジタルゲーム化するうえで、CD PROJEKTは可能な限り多くの選択肢をプレイヤーに提示している」とおっしゃってくれましたね。
実力派2人による共同作業でローカライズクオリティがさらに向上
――ローカライズ作業の進行は、現在どの程度でしょうか?
西尾:ようやく本番が始まったくらい、かな?
本間:E3が開発にとってのマイルストーンだったので、それが落ち着いてようやく動き始めましたね。
西尾:本社の人間含め、皆さんがE3に集中していたので、それが終わった今、一気に加速し始めたところです。ようやく本格化してきたかなと。ちょうど今は台本をガリガリ書いているところです。
本間:音声吹き替えに対応している国はそんなに多くないのですが、日本語はそのうちの1つなので、そのぶん動き出しも早いんです。
――『ウィッチャー3』の頃は、本間さんが現地へ行き、缶詰状態で仕事していたという話でしたが、今回は国内でできそうですか?
本間:正直、まだわからないです。現地へ行くことによるメリットも大きいですから。テストも含めて、どういう形をとるかは未定ですが、幸い今回は開発の内側にいるので、現地に行けば前回より気軽に開発とコミュニケーションを取れますし、日本語版を作るにあたって調整できるとは思います。
西尾:僕としては行くつもりではいますし、可能性も高いとは思いますよ。どれくらいの期間になるかはまだわからないですが。
――お2人は知り合われて長いとのことですが、一緒に仕事をされるのは初めてですよね。実際にお互いの仕事ぶりを見て、どう感じましたか?
本間:ゲームローカライズ業界は顔見知りの人が多いですし、西尾が入る前には、非常にクオリティにこだわるという評判も聞いていました。実際に間近で見てみて、まさにその通りだなと思います。西尾の訳文などを見させてもらうと、自分が求めていたものに近いものがあがってくるんです。なので、私がひととおり見るとはいえ、そこまで大きく変えたところは今のところありませんし、かなり高いクオリティのものをあげてもらえるので、非常に助かっています。
西尾:現状のワークフローではそういう形で進めています。とはいえ、このやり方にこだわっているわけではなく、今後場合によっては本間が先に訳文を書いて僕が見るケースが出てこないとも限りません。そもそも1人でやる物量ではないんですよ。3人いてようやく無理なく回るかな……というくらいなので。
本間:そうですね。とはいえ、西尾がローカライズマネージャーという立場である以上、『CP』に関しては西尾にローカライズの権限などはすべてまかせようとは思っています。なので私の参加の比率に関しては恐らく西尾よりは少ないとは思います。が、私は私で全部自分で見ないと気がすまない性分なので……。
西尾:本間さん、今のところ結局全部見てますからね(笑)。まぁ、僕も自分で全部やりたいタイプなので、人のことは言えないのですが……。
本間:なので、できる限りは見ていきたいなと思います。二重で見ることでクオリティもアップしているとも思いますから。
西尾:僕の本間に対するイメージですが、知り合ってから長いということもあって、あまりイメージとはズレてません。ただ、思った以上にこの人アンドロイドだなとは感じました。仕事がとにかく早いんですよ。そこは一緒のオフィスで働くようになって、本当に驚きました。僕はあまり長時間集中力が持つタイプではなく、短期集中型なんです。だから適度に休憩を挟んだり、周囲に人がいなくなってから一気に進めるのですが、本間はずっと働いている。そこはちょっと対照的かなと思います。じつは、入る前はもっとケンカをするかもなって身構えていました。我々は今まで担当してきたゲームのジャンルも違うし、スタイルも異なっていましたから。比較するのは難しいのですが、セリフ回しや翻訳スタイルに大きな違いがあるなとは感じていたので……。翻訳に関して衝突するかもな、という覚悟は入社前にしていたのですが、今のところ一切ありません。むしろ『CP』というフィルターを通してみると、ほぼ意見が一致すると思っています。セリフの書き方などは一切衝突しないですよね?
本間:西尾がローカライズマネージャーという立場である以上、折れるのは自分かなと思っているので……。
西尾:折れてるの(笑)!?
本間:そのくらいのスタンスでいるってことね(笑)。実際折れる必要のないくらい順調に進んでいますよ。
西尾:チェック後にすごい長いコメント入ってきますけどね。「うわっ、長ぇ」って思うもん(笑)。
本間:それは意図をわかってもらうために書いてたらそうなっちゃうだけだね(笑)。
――では、現状で見解が異なりそうだなと感じている部分などがもしあれば教えてください。
本間:今のところとくに感じない……かな?
西尾:本間は『ウィッチャー3』を1人で担当したということもあって、彼の翻訳はCD PROJEKT REDの色でもあると思います。なので、僕もそこを意識しながら訳しているという部分は、多少なりともあると思います。ですので言ってしまえば、今までの僕らしくないセリフの回し方とかも出てきています。でも、別にイヤイヤ寄せているわけではなくて、こういうのもおもしろいなと思ってやっているので、今のところはそこがうまく合致しているのかなと思います。
本間:しいて言えばイントネーションくらいですかね。「データ」とか「デッキ」とか、そういう発音は揉めます。毎度議題にも上がるんですけど、結局は誰か1人が決めればいいだけの話ですから疑問にあがるたびに、西尾にどういうイントネーションかを聞いて、逐一メモを取っていくんです。
西尾:ああ、イントネーションは揉めますね!
本間:これはもう生まれとか育った環境とかで変わってきてしまうので、仕方ないんですけどね。
西尾:おかしいな……お互い関西出身なので、ほぼ一致するはずなんですけど(笑)。
本間:好みのリズム感みたいなものがありますから。イントネーションに関しては、みなさん譲れない自分の感覚があると思うんですよ(笑)。
――最後に、『CP』を楽しみにしているユーザーへメッセージをお願いします
西尾:発表された発売日まではまだ先は長いですが、そのぶん我々も開発とローカライズ両方に力を入れてがんばっていきますので、ご期待頂ければと思います。ローカライズという観点でいえば、手前味噌ではありますが、これまで別々の会社でローカライズをしていた人間が、1つのプロジェクトのためにそろうというのは過去にあまり例がないと思うので、そういう意味でもぜひ日本語版に期待して頂ければと思います。
本間:西尾が合流してくれたことにより、『CP』の日本チームもより強化されました。マーケティング・PR面ではスパイク・チュンソフトさんのお力もお借りして、本作の魅力を発信していく予定です。いわゆる海外ゲームという枠のなかでは、2020年4月に一番盛り上がっているタイトルにしたいと思っています。そのためには、やらなければならないことが山積みですが、1人でも多くのユーザーに『CP』をお届けしたいと思っておりますので、発売までもう少しお待ちください。よろしくお願いします!
※本インタビューは電撃PlayStation Vol.678に掲載された内容をweb用に再構成したものです。
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