Switch版『A列車で行こう はじまる観光計画』レビュー! かゆい所に手が届くまで進化した究極の時間泥棒
- 文
- 編集O
- 公開日時
- 最終更新
鉄道やバスなどの公共交通機関を整備しながら、都市を開発して理想の街作りを体験できるシミュレーションゲームとして根強い人気を誇るアートディンクの『A列車で行こう』シリーズ。3月12日に待望の最新作『A列車で行こう はじまる観光計画(以下、はじまる観光計画)』が発売されます。
『はじまる観光計画』はタイトルにもあるように、観光という要素を色濃く押し出したタイトルとなっており、いかに観光名所と街を公共交通機関で結び、人の流れを生み出すかがポイントとなっています。なお、本作は2014年にニンテンドー3DSで発売された『A列車で行こう3D』がベースです。
時代によって開発車両の制限や建築物に制限があり、シナリオごとにプレイ印象がガラッと変わるという要素が人気で、3DS版に加えてPC版も購入するほどドハマりしたタイトルなだけに、そのアップデート版とも言える本作の発売を、首を長くして待ち続けていました。今回はそんなガチファンな編集Oが、ファン目線でのお気に入りポイントを語らせていただきます。
豆腐稼ぎはもうサヨナラ!? 隣接都市との接続がより重要に
鉄道やバス路線を整備しながら、駅や停留所を中心にして都市を発展させていく遊びがメインの
『A列車』シリーズ。本作は観光要素が重要とはいえ、まずは都市計画に必要不可欠なのが資金です。資金はシナリオと難易度(やさしい、標準、達人)によって初期額が異なりますが、どのシナリオも初期資金だけではクリア目標を達成するのが難しくなっています。
と、ここまで聞いたシリーズファンならば「まず隣町に鉄道や道路を接続させて、そこから資材工場で作った豆腐(資材の見た目が白い箱のためこの愛称で呼ばれる)を輸出して売却する、安定した稼ぎルートを構築すればいいじゃん」と思われるでしょう。ですが、『はじまる観光計画』は隣接する街との資源取引には売買案件(資源の項目から選択)を結ぶ必要があり、この“鉄板”での無尽蔵な資金稼ぎができなくなっているんです。
これだけ聞くと「めんどくさいなあ」と思われる方がいるかもしれませんが、個人的にはこれまで人の移動だけに気を配りがちだった遊びに、貨物ルートのサプライチェーンを構築する楽しさが加わり、経営SLGとしての魅力がより一層アップしたと感じています。各方面から資材などを集める貨物ターミナル駅を作り、そこから隣接する各街へ輸出していく貨物路線が作れることを考えるだけで、ワクワクしますよね?(笑)
観光客をバンバン呼び込めるドル箱路線の開拓が熱い
さて、次はいよいよ本作の目玉である観光にスポットを当てたいと思います。多くのシナリオでは“年間の観光客数が20万人以上”のように、どれだけ観光客を呼べたかがクリア条件になっています。この観光客はプレイしているマップにある街ではなく、公共交通機関を使って隣接している都市からやってくる公共交通機関と観光名所を結ぶことで多く呼び込むことができるのです。
マップ上にどんな観光名所があるのかはメニューの“役所”にある“観光案内”の項目で確認ができ、公共交通機関でどう結ばれているのか表示されます。マップの四方が隣接街になるので、観光名所がまんべんなくつながるように鉄道や道路を敷設していくわけですが、開通させたから仕事は終わり! というわけではないんですね。
じつは人気の観光名所ともなると、公共交通機関が開通するとドッと人が押し寄せて、あっという間に“密”が発生してしまうのです。一度に多くの乗客を輸送できる鉄道ならばまだしも、乗車人数が少ないバスの場合は、乗り切れない人が停留所に溢れる結果に……。
そんな場合はバスを増発したり、バス停を拡張して乗り場を増やしたりなどを行い、どんどんピストン輸送を行えるようにするわけですが、これがまたうまくさばけるようになると気持ちイイんです。
もしバス輸送が間に合わない場合は、専用の鉄道路線を敷くことを検討してもいいし、その計画を脳内で立てるだけでも楽しいですよね!
このように観光という要素は、これまで漠然と乗客を運んでいた『A列車』にわかりやすい指針が生まれたので、とても気に入っています。某箱庭SLGのように、観光の次は工業、商業、教育といったような要素にスポットを当てた『A列車』が出るといいなと、ひそかに期待するほどでした(笑)。
ダイヤ設定の手間がグンと楽になり複雑な路線も組める
『A列車』がほかの箱庭系SLGと一線を画しているのが、鉄道やバスのダイヤを緻密に組むことができることです。もちろん『はじまる観光計画』でも、営業時間や回送時間時間の設定をはじめ、曜日指定も可能となっており、1分単位で指定が可能と細かく運行させることができます。
そんなダイヤ設定でラクになったのがバス路線で、『A列車で行こう3D』では道路の交差点ごとに曲がる方向を指定していたのが、今回は停留所を指定するだけで、自動的にルートが決まるようになりました。これは本当にありがたい機能で、バス路線の設定がとてもスムーズになるし、路線の管理もしやすくなり、バスの使い勝手が相当増しています。
また、個人的によかったのが路線ごとに使う車庫を設定できること。路線のどこか1つを車庫設定しておけば、営業時間外に指定した車庫に向かってくれます。鉄道もそうですが、営業時間外にちゃんと車庫に戻って停車している姿は、なんかグッと来ますよね?(笑)
実在の交通機関に寄せられる車両カスタマイズが魅力
そして語らずにいられない魅力ポイントは、現実の鉄道車両やバスを彷彿させるリアルなデザインの車両カスタマイズが可能になったことです。『A列車9』などは多くの鉄道会社の協賛もあり、実際の車両が数多く登場していますが、本シリーズは“それらしいモデル”をベースに、自分でデザインをしていくことになります。
『A列車で行こう3D』はこのカスタマイズがすごくシンプルで、若干物足りなさを感じていたので、今回の仕様は大歓迎ですね! 色はもちろん、パーツの配置位置まで微調整できるし、これを使えば鉄道ファンが見ると「あ、あの車両ね」とニヤっとするものが作れます。
ちなみに現在配信中の体験版では、チュートリアルにあたるシナリオ“はじまる観光計画”がプレイできますが、こちらのシナリオでは運行計画の複写や、車両の細かいカスタマイズなどの機能が拡張されません。基本的に『A列車で行こう3D』にあったシステムはそのまま継承されており、ほかのシナリオのオプションで拡張機能を利用できます。やり込んでい居たヘビーユーザーはご安心ください。
作成した街をボタン1つで3D視点に切り換えて眺められる
最後に“進化したな”と感じたポイントが、やはりクオータービューだけでなく3D視点で自由な角度で街を眺めながら作業がことができる点でしょう。なにせ『A列車で行こう3D』は3D視点はあくまでおまけで、通常は90度単位での視点切り替えしかできませんでしたからね。
とくにうれしいのが3D表示になると、乗客の姿を見ることができる点です。ほかの箱庭系SLGでもそうなのですが、自分は乗客が乗降している様を定点観測するのが好きなので、駅と車両がイイ感じに映るお気に入り角度を探すのにもハマっちゃいました。
というわけで『A列車で行こう はじまる観光計画』で時間を忘れてハマった要素を語らせていただきました。上記では語っていませんが、本作はオリジナルシナリオをオンラインで共有可能と、用意されているシナリオを終えたあとも遊び続けられる要素があり、個人的には35周年という歴史あるシリーズ作品のなかでも、トップ3に入るほど時間泥棒されそうな未来が見えているタイトルです(笑)。鉄道ファン、箱庭ゲームファン、経営SLGファンのみなさん、ぜひ自慢のデータをやり取りしながら、新たな“A列車ライフ”を存分に満喫しょう!
(C)2021 ARTDINK. All Rights Reserved.
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります
A列車で行こう はじまる観光計画
- メーカー: アートディンク
- 対応機種: Switch
- ジャンル: SLG
- 発売日: 2021年3月12日
- 希望小売価格: 6,980円+税