電撃小説大賞《金賞》受賞作『ギルドの受付嬢』香坂マト先生インタビュー。一番のこだわりはキャラにあり

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 電撃文庫で活躍する作家陣のメールインタビューをお届けする“Spot the 電撃文庫”。今回は電撃小説大賞《金賞》受賞作『ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います』を執筆した香坂マト先生のインタビューを掲載します。

  • ▲本作の表紙イラスト(イラスト:がおう先生)

 本作は、ギルドの受付嬢で実は凄腕の冒険者“アリナ”が、超安全・超安定な受付嬢の仕事を守り抜くために、正体を隠して戦う異世界コメディです。

あらすじ:強くてカワイイ受付嬢が(自分の)平穏のため全てのボスと残業を駆逐する!

 デスクワークだから超安全、公務だから超安定!

 理想の職業「ギルドの受付嬢」となったアリナを待っていたのは、理想とは程遠い残業三昧の日々だった。

 すべてはダンジョンの攻略が滞っているせい! 限界を迎えたアリナは隠し持つ一級冒険者ライセンスと銀に輝く大槌(ウォーハンマー)を手に、自らボス討伐に向かう。

 ――そう、何を隠そう彼女こそ、行き詰ったダンジョンに現れ、単身ボスを倒していくと巷で噂される正体不明の凄腕冒険者「処刑人」なのだ……!

 でもそれは絶対にヒミツ。なぜなら受付嬢は「副業禁止」だからだ!!!! それなのに、ボス討伐の際に居合わせたギルド最強の盾役に正体がバレてしまい――??

 残業回避・定時死守、圧倒的な力で(自分の)平穏を守る最強受付嬢の痛快異世界コメディ!

 インタビューでは、本作を書くうえで悩んだところをはじめ、小説執筆に関するお話などを伺っています。小説を書く上での一番のこだわりはキャラクターだという香坂先生。キャラクターを作るに際してどんなところに注力しているのかもコメントしてくれました。

――この作品を書いたキッカケを教えてください。

 それはもちろん、私のリアルお仕事経験が元になっています!(笑) いや全然笑えないんですけどね……! 日々の残業の恨みつらみをおもしろおかしく昇華させた結果、このお話が出来上がりました。

――作品の特徴やセールスポイントを教えてください。

 強くてかわいい残業まみれな受付嬢が、“平穏に生きる”ためにあらゆる障害をウォーハンマーでタコ殴りにしていく、そんな痛快コメディ――

 ですが! それだけでは終わりません。

 受付嬢や冒険者といったお仕事にスポットを当て、“働き方”というテーマにも触れていきます。仕事がきつい? じゃあそんなところ辞めればいいじゃない……というわけにはいかない事情が現代に生きる我々にもあるように、受付嬢にも冒険者にもあったりします。彼らの生き様も見どころの一つです。

――作品を書くうえで悩んだところは?

 あらゆる箇所で悩んだ気がしますが、特に時間がかかっているのはラストバトルです。

 本作は全体的にコメディテイストで、主人公アリナは最強の物理を持ち、様々な敵をタコ殴りにしていきます。でもラストバトルすら秒で終わるってそんなのあんまりじゃないの……ということで、もっと印象的で熱いラストバトルにしたい!と悪戦苦闘しました。

 どんなラストバトルになったかは、ぜひ本作で確認してみてください。

――執筆にかかった期間はどれくらいですか?

 本作は電撃大賞の受賞作を改稿したものなのですが、まず応募するため書き上げるのに一年ほどかかりました。当時、まあその、なんと言いますか、物理的に執筆時間があまりとれなかったので……理由は残ぎょ……いや詳細は割愛しますね……。

――執筆中のエピソードはありますか?

 これは執筆中というよりその少し後の話なのですが、散々迷い抜いた末に意を決して退職いたしました……!

 退職にあたって引き継ぎをしたり挨拶回りをしたり引っ越しの準備をしたりとバタバタしていたところ、なんと退職日二日前に受賞の連絡をいただきました。人生何が起こるか本当にわかりませんね。

 とはいえ、私の未熟な人間性や社会性を叩き直してくれた前職には本当に感謝しています。ここでの得難い経験、出会いが本作につながっているように思います。ちなみに現在はぼちぼち就活しながら執筆作業にあたっています。

――本作の主人公やヒロインについて、生まれた経緯や思うところをお聞かせください。

 私は元々『スレイヤーズ』のリナが大好きで、強い女の子が書きたい! という願望がありました。

 そうした願望のままに生まれたのが本作の主人公、アリナです。ただ、書いてみたらアリナはなんだか拗れていてですね……最強の力を持つ一方で、「仕事行きたくないー!」と自宅のベッドでじたばたしたりと、お仕事に対するメンタルは弱めです。

 でも、彼女を書いているときは死ぬほど楽しいです。

――特にお気に入りのシーンはどこですか?

 アリナが残業の恨みを叫びながら、残業の原因となるドラゴンをウォーハンマーでボコボコにしているところですね。わりと早めに出てくるシーンなのですが、私の言いたいことの九割は言ってくれているので大好きです。

――今後の予定について簡単に教えてください。

 現在、二巻を鋭意執筆中です。そして『電撃大王』様で優木すず先生によるコミカライズが決定しました! いつかマンガになったらいいな……と思っていたので本当に嬉しいです。刊行の際にはぜひ手に取っていただけたらと思います!

――小説を書く時に、特にこだわっているところは?

 一番こだわっているのはキャラです。個性的で魅力的なキャラというのはもちろん、そのキャラがどんなものを大切にしているのか、何を恐れているのか、などなど内面にも力を入れています。読んでくれた方たちが「わかる……!」と思ってくれるようなキャラをつくりたいなぁと日々勉強しております。

――アイデアを出したり、集中力を高めたりするためにやっていることは?

 夜、ベッドに入ってから寝付くまでの間に「妄想タイム」をつくることで、アイデアが出てきたりします。散歩するといいとよく聞くのですが、引きこもりな私には外を一人で歩くというのはSS級難易度でして……。外は謎に緊張してしまうので、やはりおうちは正義ですね。

――学生時代に影響を受けた人物・作品は?

 神坂一先生の『スレイヤーズ』シリーズです。当時小学四年生だった私はスレイヤーズ一巻を図書館で見つけてしまい、見事ラノベ沼に引きずり込まれ、つよつよ女の子が大好きな人間へと成長しました。

 『スレイヤーズ』は本編も短編も大好きでしたが、「あとがき」のおもしろさが毎回毎回神がかっていて、一番楽しみにしていました。L様大好き。気になった方は是非読んでみてください。

――今現在注目している作家・作品は?

 もはや今現在というレベルではないのですが、『魔王学院の不適合者』の秋先生です。『魔王学院』をオシャレにカフェで読んだところ見事ボロ泣きし、以来自宅で読むようにしています(笑)。全ての理不尽を砕いてくれるアノス様……ああアノス様が上司だったら最&高――いえ、なんでもないです。

 一巻を刊行する際には敬愛する暴虐の魔王アノス・ヴォルディゴード様から応援メッセージを賜り、ひたすらに感激でした……!

――その他に今熱中しているものはありますか?

 一緒に暮らしている二匹の猫に毎日夢中です! 自分は揺るぎなき犬派だと思っていたのですが、一緒に暮らし始めて一ヶ月経たないうちにあっさり猫派になっていました。にゃんこ達の寝息を聞いている時が一番幸せです。

――最近熱中しているゲームはありますか?

 もうずっと前からの話ですが、『モンスターハンターワールド:アイスボーン』が大好きです。モンスターとハンターが共存するあの美麗で作り込まれた世界観、雑魚モンスターを倒しただけでもひたすらホメてくれるストーリー、中二心をくすぐる演出、戦いの立ち回りや装備を研究するワクワク……! 特に強いモンスターを倒した時の快感は本当に中毒になります。

 もうすぐ新作が出るので(〆切に影響を与えない範囲で)遊び尽くしたいなと思っています。

――それでは最後に、電撃オンライン読者へメッセージをお願いします。

 お仕事だけでなく勉強や部活、家事育児など、毎日ヘトヘトになるまで必死に生きている方たちが、本作を読んで少しでも元気になってくれればと思い書きました。

 残業まみれになりながら不器用に突き進んでいくアリナと一緒に、この社会を生き抜いていきましょう!

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