『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女』レビュー。魅力的なシナリオをリッチな演出で体験

カワチ
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 任天堂から、5月14日にNintendo Switch用ソフトとして発売されるミステリーアドベンチャーゲーム『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女』のレビューを、ライターのカワチがお届けします。

 『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』および『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』は、1988年~89年にファミコン・ディスクシステムで発売された『ファミコン探偵倶楽部』のリメイク作品です。

 豊富なアニメーションやフルボイスの会話シーンなどによる演出などが追加されていることは発売前の情報でも公開されていましたが、実際にプレイしてみるとオリジナルのよさを生かしつつ現代向けにしっかりアレンジした作りになっており、原作へのリスペクトを感じました。

 アニメーションの演出も“派手にアニメさせる”といった手法ではなく、さりげなくキャラの視線や体、背景の人物が動くというもので、静かにじっくり楽しむアドベンチャーゲームのよさを引き立てるものになっています。スーパーファミコン版のリメイク版『ファミコン探偵倶楽部』も後ろのキャラクターが本をめくっている演出がありましたが、それが強化されたイメージです。



  • ▲さりげないアニメーション。派手さはないものの、こだわりを感じます。

 例えば、現場を調べている警察官は普段は遺体をカメラで撮影していますが、プレイヤーが話しかけると振り向いて会話に耳を傾けてくれます。他にもマンションでは背景のエレベーターが動いて人が移動しているなど、物語の邪魔にならない程度に自然な行動をしています。そのため、画面の背景にリアリティがあります。



  • ▲背景が動くため、画面の絵面も地味ではありません。

 この演出については、今回の『ファミ探』だけでなく、後に発売されるアドベンチャーゲームのスタンダードになってほしいと思えるようなクオリティでした。リメイク版はアドベンチャーゲームを多数手がけてきたMAGES.が開発しているだけあり、さすがだなと感じた部分です。

操作コマンドを使ってゲームを進行!

 『ファミコン探偵倶楽部』は“移動する”、“聞く”、“呼ぶ”、“見る・調べる”など、操作コマンドを使うことでストーリーが進行していきます。便利なのが新たに追加されている既読スキップ! 本作は1度選んだ文字を高速でスキップできる既読スキップが搭載されており、コマンドを総当たりすることも苦ではありません。

 『ファミ探』はゲーム内に次の行動へのヒントが多かったり、選べるコマンド数が最初から少なめに設定されていたりするものの、意外なコマンドが次に繋がることもあるため、既読スキップはとても助かります。

 当時の雰囲気を味わうのであればオフにして使わなければいいわけですし、実装してくれてうれしかったですね。

 また、本作には“調査メモ”が搭載されています。事件の状況が掲載されているので、じっくり推理することが可能。キャラクターの情報などは新情報が明らかになるたびにアップデートされていくので便利。

 当時はノートに関係者の情報などをメモしながら攻略したものですが、便利な時代になりましたね(笑)。

 さらに注目してもらいたいのは、環境設定。本作ではBGMがアレンジとFC(オリジナル)から選べることができ、FCであれば当時の雰囲気そのままにプレイできます。さらにフォントもレトロに変更可能で、より懐かしい雰囲気にできます。


  • ▲レトロのフォントにした状態です。

 個人的におもしろいと思ったのはボイス。今回は豪華なフルボイスになっているのですが、この項目ではオフ、レトロ、オンという3種類の項目が存在します。

 「レトロってなんだ?」と思って選択してみましたが、テキストが送られるとともに「テロテロテロ……」という懐かしい音が! アドベンチャーゲームでおなじみの、あの音が流れる仕掛けでした(笑)。

 やっぱり、この音を聴くとテンションが上がりますね。「自分は今、アドベンチャーゲームをやっているなぁ」という気持ちに浸れます。

 ベテラン声優を多く起用したボイスも必聴なので、こちらも言わずもがなプレイして楽しむべき。ボイスありとレトロ音の最低2回はクリアしましょう(笑)。

今なお引き込まれるストーリー

 『消えた後継者』は崖から落ちて記憶を失ってしまった探偵助手の主人公が、“死人蘇り伝説”が今なお語り継がれる明神村で起きた事件の真相を探るという内容。




 一方の『うしろに立つ少女』は『消えた後継者』の数年前の物語で、空木探偵事務所の助手となった主人公が、ある女子高生の死と学校で噂される怪談“うしろの少女”について調べていくという内容です。


 『消えた後継者』は旧家の遺産相続に絡む事件ですが、意外な展開のスタートは驚かされますし、次々に殺される関係者や、明かされる村の呪いは本格ミステリーの雰囲気たっぷりで引き込まれます。題材が王道であるため、古臭さを感じません。


 操作コマンドによってはコミカルな会話になることもありますが、それはこの作品の特徴だと思います。小説よりもライトに楽しめるのがこの作品の魅力ですね。

 『うしろに立つ少女』は学校を舞台にしているため、誰でも感情移入がしやすいストーリー。ふたつの事件が同時に進行し、絡み合っていく内容は、『消えた後継者』に負けず劣らず先が気になる展開になっています。そして、あゆみちゃんがカワイイ(笑)。



 なお、『消えた後継者』に比べて『うしろに立つ少女』のほうがコミカルなシーンが多いので、本筋と関係ない部分でクスリとさせられて楽しいです。じっくり遊んでみてほしいですね。

  • ▲『うしろに立つ少女』はリメイク版がベース。ニンテンドウパワーという書き換えシステム専用だったので、プレイしたことがない人も多いかも。

 というわけで、プレイするまでは原作ファン向けのタイトルかと思っていましたが、ファンはもちろんそれ以外の人も楽しめる作品になっていると感じました。記事を読んで気になった方はぜひチェックしてください。

 アドベンチャーゲームのおもしろさがわかると思いますよ!

※パッケージ版は『COLLECTOR'S EDITION』のみの販売となります。
※『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』の各単品のパッケージ版は発売されません。
(C) 1988, 2021 Nintendo / TOSE CO., LTD. / MAGES.
(C) 1989, 1998, 2021 Nintendo / MAGES.

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