『サガ フロンティア リマスター』は違和感も文句もない完全版。新シナリオ・ヒューズ編の作り込みに脱帽!

まさん
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 4月15日にスクウェア・エニックスから発売された『サガ フロンティア リマスター』。本作のプレイレポートをお届けします。

 RPGファンから『サガ』シリーズファンまで多くのユーザーを魅了し続けた初代PSの名作RPG『サガ フロンティア』。本作『サガ フロンティア リマスター』は、その往年の名作をHDリマスター版として現代によみがえらせたタイトルです。

 画質の改善や倍速機能の追加。UIの変更など、現代のゲームにも見劣りしないくらい、遊びやすさが大幅に向上。さらに、当時は未実装だったアセルス編のイベントに加えて、8人目の主人公“ヒューズ”編のシナリオが追加されました。

 ただのHDリマスター化には留まらない「24年越しの完全版」とも言える内容になっています。

 新規要素の追加シナリオは『サガ』シリーズ総合ディレクター・河津秋敏氏原案、監修のもとに、ゲームライター・小説家のベニー松山氏が書きおろした豪華なものとなっており、ファンも納得の完成度です。

 今回は新たに追加されたヒューズ編を中心に、『サガ フロンティア リマスター』の魅力について語っていきます。なお、今回の記事はどちらかと言えば当時の『サガフロ』ファンに向けたものとなっていますが、本作は『サガ』シリーズの初心者にもオススメのタイトル。

 後日、本作から『サガ』に入る人に向けた記事の後編もお届けする予定なので、そちらもご覧ください。

未実装のシナリオと裏解体真書のいいとこ取りなヒューズ編

 『サガ フロンティア』は1997年に発売された名作、いやゲーム史に残したい超・名作RPGです。7人の主人公すべてのメインストーリーとラスボスが異なり、慣れてくると短編集を読むくらいの短時間で1ルートが完了するので何度も遊びやすく、それでいて奥深いやり込みとバトルの楽しさで延々と遊べてしまいます。

 当時としても異例のボリュームと魅力を持つ作品でした。

 まず誰のシナリオから遊び始めるかで悩んだ選択画面。主人公によってゲームの遊びやすさや印象も大きく違いました。学校で、違う主人公のルートを遊んでいる友人と情報を交換するのが楽しかったゲームでもあります。

 PS版で使えた7名も魅力的だったのですが、往年のファンとしては心残りだったのがヒューズ編。彼が活躍するシナリオは当時のゲーム雑誌などで存在が示唆されていたのですが、最終的には実装されていない幻の主人公になっていました。

 のちに発売されたゲームの攻略本『サガ フロンティア裏解体真書』では、今回のヒューズ編を手掛けたベニー松山氏による小説“ヒューズのクレイジー捜査日誌”を収録。小説という形でしたが、ヒューズ編を読むことができました。内容は、ゲームを下敷きにしたベニー松山氏のオリジナル小説。小説という自由度を存分に駆使したはじけたノリになっていました。だからこそ、ゲームとして実装されたものが見たかったのです。

 そんな自分の願いをかなえてくれるように、今回は新規シナリオとしてヒューズ編を実装! 当時構想にあった「すべての主人公と絡み、すべてのラスボスと戦える」流れを取り入れつつも、クレイジー捜査日誌を読んだ人はニヤリとできる要素もあるファン必見のシナリオとなっています。

 小説と違ってギャグに寄り過ぎてはおらず、とてもいい塩梅。仮に、当時ヒューズ編が実装されていたとしたらここまで完成度が高いヒューズ編になってはいなかったかもしれない……と考えると不思議ですね。当時の構想と完全に同じものではないと思いますが、今の時代で追加した意義があります。素晴らしい仕事です!

 今回のヒューズ編は『裏解体真書』の要素も搭載。はじけたテイストだった小説版とは違いますが、ファンとしても納得できる“ゲームとしてのヒューズ編”になっています。

 しかも、ヒューズ編のメインシナリオは7人の主人公それぞれの事件をルート別に追う形になっており、実質的に7ルート分の追加! 各主人公のシナリオにヒューズが関わることで、それぞれの事件の裏側や補足された内容が見られるようになっています。

 ヒューズ編と合わせることで意外な事実がわかる話もあり、まさに24年越しの完全版! テキストに関しても、ゲーム関連の小説を書かせれば右に出る者はいない安定安心のベニー松山氏です。『サガ』ファンとしても納得の人選。文句のつけようがない『サガ フロンティア』ファン感涙の新要素です!!

 エミリア編では最悪の出会い方をしたヒューズの印象が覆ったり、モンドへの思い入れができたり……24年ぶりにキャラクターの魅力を再発見できました。

 ただし、すぐにヒューズ編を遊ぶことはできません。「各主人公シナリオの裏側を見る」という構成上、ヒューズ編は誰か1人でも別の主人公でクリアしないと解禁されないのです。また、複数人のシナリオをクリアした状態でヒューズ編を選ぶと、自分がヒューズ編のなかで遊んだことのないルートからランダムで選ばれるという特殊な仕様も。

 一気に他の7人をプレイすると狙ったシナリオを出しにくくなってしまいます。絶対にプレイしたい主人公のヒューズ編がある場合は、基本的には1人クリアするごとにヒューズ編を選び、各主人公とセットでヒューズ編のルートをクリアする遊び方をおすすめします。

 ヒューズ編開始時の時点で未プレイのルートがない(解禁されていない)場合は、すでにクリアしたルートのなかから好きなものを選べます。

 なお、ヒューズ編は7人分のルートが用意されていますが、各ルートのシナリオ自体は短めです。探索をするしないもユーザーに任されているので、メインストーリーだけを追うならサクサクと進められます。自由行動しかないリュート編に近い形ですね。

 主人公を全員仲間にできるうえに、サブキャラクターでも夢のパーティを組むことが可能なので最後にやり込む主人公としてもピッタリ。リマスター版では引継ぎ要素も充実しているので、周回も楽々です。ステータスや技術を引き継いだ強いキャラクターで2周目以降を遊べますし、引き継ぐ項目も細かく選べます。

 ちなみに、ヒューズ編では盾のカードを取りに行くサブイベントなど、IRPOが絡む話になるとヒューズならではの展開が。他の主人公で盾のカードを取りに行かされたのは、そういう事情だったのか……と驚きました。レンを仲間にできるし、IRPOメンバーで遊ぶのも楽しそうです。

 発表当初は初代PSソフトのリマスターということで4.800円(税込)という値段に少し驚いたのですが、当時の想い出補正を現代的に補正しているグラフィックの描き直しに遊びやすさの向上だけでも、逆に安いくらいの作り込み。ファンとしては、ヒューズ編だけでおつりがくるくらいです。

 これまでの『サガ』シリーズで展開してきたリマスター版と比べても追加要素が手抜かりなく、快適に遊べて非常に完成度が高いです。『サガ』入門の決定版的なタイトルとしても、非常にオススメしやすくなりました。

 もちろん、クリア後の“開発室”も健在! ヒューズ編をクリアするとスタッフたちのコメントが聞ける“開発室”に行けるのですが、なんと当時の開発室ではなくリマスター版スタッフのコメントを収録した特別仕様になっています。

 当時、自分と同じく1ユーザーとしてファンだったスタッフが、時代を経て本作に関わり、その魅力や追加要素について語ってくれます。内容も「そうそう!」、「そうなんだよ!」と1人で納得。往年の名作を好きだった人たちが、愛情を注いで作り上げたタイトルだと確信できました。ちょっとヒューズ編の話とはズレてしまいましたね。すみません。

 ヒューズ編に話を戻しますが、何度も書いているように7つ分のシナリオを作り込んだこと自体がとても素晴らしいです。当時プレイしたという人は、絶対に遊んでほしいですね。もしも『裏解体真書』のギャグ一辺倒なノリが合わなかったという人でも、ゲームとして違和感なく小説の要素が落とし込まれているので食わず嫌いせずに見てください。

 さらに、ヒューズ編はやり込みをしたいファンに向けたものとしても最適です。なんと、クリア済みのヒューズ編ルートの主人公を仲間として連れてくることで、ラスボスと戦う前に別の主人公のラスボスに挑めます。

 他の主人公のラスボスを倒すほど、最後に戦うメインルートのラスボスが強化されるという仕組みになっており、すべて倒した場合のラスボスは超強力。『サガ フロンティア』は各主人公ごとにラスボスが異なるので、実質7体の超強化されたラスボスと戦える機会があるのです。スゴイ! やり込みがいがある。ヒューズ編だけでも、ヴァーミリオン幻魔の買って損なし跳弾(5連携)ですよ!

アセルス編にも追加イベントが……!

 ヒューズ編だけでも最の高! と言いたいところですが、本作ではヒューズ編の次に力が入った追加要素があるシナリオも。それが、ファン感涙のアセルス編です。彼女のシナリオには、当時実装されずに『裏解体真書』などで明かされたイベントがありました。それらが、今回実装されているのです。幻の焼却炉脱出イベントが!

 当時は服が焼けて裸の状態で脱出するシーンだったと思われるのですが、HDでクッキリ見えてしまう今のご時世。いろいろと工夫を凝らして表現を現代に置き換えたようです。いや、別にそれはどうでもいいことでしたね。

 なお、焼却炉以外にも脱出ルートが追加されています。PS版を遊んだことがある人なら、見慣れない人物やイベントがあることに気付けるはず……。

 もちろん、アセルス編の新規イベントは序盤だけに留まりません。他にもいくつか新規イベントが用意されています。PS版では、特に重要なイベントがなかったあそことか、意味深なあの場所などで新規のイベントが発生。当時わからなかった意外な真実がわかるかも……! 

 ただ、アセルス編は初心者が最初に遊ぶルートとしては特殊で、やや推しにくい……というのは当時の話。今なら攻略情報も充実していますし、ちょっと頑張ってアセルス編をクリアすれば、幻魔や金獅子の剣といった強力な装備が引き継げるので周回がグッと楽になります。ファンなら、この引継ぎがどれくらいありがたいかわかるはず。

 もう、不思議なデータディスクは必要ありません。

 当時遊んだファンの方なら、間違いなくアセルス編→ヒューズ編の順番でプレイするのがオススメですね。もちろん、好きな主人公から遊んでもOKですし、最終的には8人全員プレイすると思うので、誰から遊んでも問題ありません。私が書かなくても、8人全員分遊んでしまうと思います。

 だって、『サガ フロンティア』はおもしろいですから。

 おもしろすぎて、面白面白面白面白面白面白面白面白面白面白(略)と40連携しちゃうくらい、つい遊んでしまうと思います。

 というわけで、今回はヒューズ編とアセルス編の追加要素に絞って当時のファンに向けた魅力を語りましたが、このゲームのよさは“完全版”というだけではありません。3倍速&退却コマンドの追加によるテンポアップや行き先を示すシナリオチャートなど、PS版よりも徹底して遊びやすさの向上が図られており、当時のファンはもちろん初心者でもストレスなく遊べるようになっています。

 もともと『サガ フロンティア』はシリーズの中でも人気が高く、粗削りな部分がありながらも『サガ』の入門編として推しやすいタイトルだったのですが、今回のリマスターでは24年の時を経て文句なしの『サガ』入門タイトルになりました。

 ここから『Sa・Ga COLLECTION』や『ロマンシング サガ2』と『ロマンシング サガ3』のHDリマスターに行っても楽しめると思いますし、『サガ スカーレットグレイス 緋色の野望』で新鮮な驚きを味わうのもアリです。

 『サガ』シリーズならではのクセも自由度も内包しつつ、8人も主人公がいるのでどれか1つは確実に好きなルートが生まれる『サガ フロンティア』。当時のファンは想い出を奇麗に現代へよみがえらせてくれた仕様と、想像でしかなかった数々の追加要素に胸躍る体験ができます。いつ遊んでも遅くないので、早くプレイしましょう!

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