『戦国無双5』開発者インタビュー。岡部元信や三淵藤英たちがなぜ選ばれた? 武器種の選抜基準とは?
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7年ぶりのナンバリング最新作として、6月24日にPS4、Nintendo Switch、Xbox One、Steam(Steamは7月27日発売、XboxとSteamはダウンロード版のみ)で発売されるコーエーテクモゲームスの“『戦国無双5』”。
発売迫る今回は、すでに公開中のインタビューの後編をお届けします。
インタビューにお答えいただいたのは『戦国無双5』の制作に携わる河原淳氏、篠原大嗣氏のおふたり。
ふたつの視点だからこそ描けた濃密な戦国ドラマ
――『戦国無双5』のストーリーは信長編、光秀編という2つの視点から戦国史が描かれていきます。この視点が異なることでどんなおもしろさを味わえる内容になっていますか?
河原淳氏(以下、敬称略):実際にプレイしていただくとわかると思いますが、その視点でないと見られないストーリーがあります。信長編、光秀編でそれぞれプレイを進めると、「あ、ここではこんなドラマがあったんだ」ということがわかり、両サイドのストーリーが複雑に絡み合うことで1つの物語が形作られていきます。
当然、序盤ではそれぞれの道を歩んでいますが、中盤以降は同じ勢力としてライバルでありパートナーとして進んでいきます。そこでのふたりの関係性と、それぞれの視点から見た歴史により、今回本能寺の変はどうやって起きたのか、という部分が明かされていきます。ぜひその壮大な戦国ドラマを、味わって感じていただけたらうれしいです。
――信長編であれば徳川家康の戦いが体験できたり、光秀編であれば山中鹿介の戦いが体験できたりと、サブストーリー的なステージも用意されています。こちらはどういった基準で用意されているのでしょうか?
河原:やはり信長と光秀のストーリーを描くうえで、「ここを描かないとストーリーの深みが出ないよね」という話になり、ふたりの脇を固める秀吉や家康といった武将たちのサイドストーリーを用意しました。
本当は収録した以外の戦いも描きたかったのですが、メインストーリーを際立たせるという面で取捨選択しています。ですので「実際には武将たちはこれ以外にも戦いを経験しているんだろな」と、そう想像しながら遊んでいただけたら幸いです。
――青年期と壮年期の信長、光秀について、演じられた島﨑信長さん、緑川光さんには何か特別にオーダーを出された形ですか?
河原:今回オファーをさせていただいたときに、青年期と壮年期の資料をお渡ししていました。キャラクターの演じ分けの都合上、それぞれ別日で収録することになっていましたが、初日の収録時に「まずは青年期、壮年期のキャラクターを固めましょう」というお話をした形です。
こちらから「こういう風にお願いします」とお話はさせていただきましたが、おふたりも収録前からご自分のなかで「こんな感じですかね?」とキャラクターを作ってきてくださっていたので、そこをすり合わせて調整していったという感じです。
――信長は島﨑さんが初となりますが、光秀は緑川さんが引き続きご担当されています。武将としての見せ方が本作では変わったことで、緑川さんは戸惑われていた印象はありましたか?
河原:これまで光秀を演じてこられていますし、戸惑っている感じはありませんでしたね。こちら側からは青年期だと「もうちょっと荒々しさを出してください」、壮年期だと「これまでイメージに近いような“おとなしさ”を出すような感じで」とお伝えしました。
青年期の光秀は“一本筋の通った性格”で、壮年期の光秀は今までとは違う“いろいろな迷い”を抱えていますので、そういった部分を意識して見事に演じ分けてくださいました。
篠原大嗣氏(以下、敬称略):今作の光秀は、外見はそれほど劇的に変わっていないはずなのに、主人公然としていてとても格好いいんですよ! 光秀パートはぜひ期待してほしいですね。
――たしかに光秀は声の演技にすごく引き込まれて、劇中のムービーで光秀が出るたびに「カッコいいなー」と魅了されまくりでしたね。
河原:信長が島﨑さんという新キャスティングで、光秀はこれまでどおり緑川さんにお願いしたので、収録前まではバランスがどうかなと案じていたのですが、そこはまったくの杞憂でしたね。
――ではストーリーにつながる質問にもなりますが、今回のステージデザインでのコンセプトなどがあればうかがえますか?
篠原:ここも“和”にこだわった作りですね。ステージが広いゲームはたくさんありますが、そういう方向ではなく“狭くて坂が多く、草木も生い茂っている日本をしっかり再現する”というところから始まっています。
これまでの『戦国無双』シリーズよりも狭い道や坂があり、崖から見下ろすと見晴らしのいい場所がたくさんあります。そういった先には、ランドマーク的な目標が見えるようにしました。また、当時の日本を旅しているような楽しさのある設計にしています。
――プレイをするとたしかに道は狭く坂を上ると砦があり、本当に城攻めをしているなという感覚が味わえますよね。
河原:でもそこはけっこうゲーム性と相反するところがありまして(笑)。
篠原:そうなんですよ(苦笑)。
河原:狭いところや傾斜がついた場所は戦いにくいし、そこはバランスを取りつつですね。実際に設計して上がってきたものを見て「ここは戦う場所だから、もう少し広げてほしい」というような意見も出して、ステージ設計を練り込んでいきました。
篠原:日本らしい見た目を取るか、ゲーム性を取るか……。これはもう戦いですよね(笑)。
河原:CGデザイナーとプランナーとのやり取りはけっこうありました。
篠原:あとはやはりステージと言えば“本能寺”を見ていただきたいなと。かなり苦労したステージになりますので。
――本能寺は今までのイメージの本能寺とはまた違う印象を受けました。史実でも寺というよりも城的な意味合いがあったので、実際はこんな感じだったのかなと“歴史のロマン”を感じるステージ構成でした。
河原:どのシリーズ作品よりも本能寺をフィーチャーした作品なので、そこをどうするのかは悩みました。あとは燃えたあとの表現でしょうか。ここにはすごく力を入れています。
篠原:過去最高に燃えています。ちなみに、本能寺を思わせるネタで、総務省消防庁とのタイアップキャンペーンもやらせていただきました(笑)。
――あのポスターは話題になりましたよね。でも、当の信長本人も比叡山延暦寺を焼き討ちしていますけど(笑)。
模擬演武で使える10名の個性的で魅力あふれる武将たちにも刮目!!
――発表されている武将以外に、模擬演武で使用可能な武将が数多く用意されています。岡部元信や三淵藤英など予想外のメンツがそろっていますが、彼らはどういった基準で選ばれたのでしょうか?
河原:ストーリーの脇を固める武将たちから選んでいます。これは『無双』シリーズでの悩みではありますが、ストーリーが進むと武将が死んでいくので、後半になると固有のデザインを持つ武将たちの数が減っていってしまうんですね。
模擬演武で使える武将は、そこを補うような意味でも登場させています。たとえば岡部元信などは、今川以降に武田方に仕えた武将ですが、武田勝頼の時代になると勝頼しかいなくなってしまうんです。
勝頼も無双武将ではなく模擬演武で使える武将ですから、そこで彼がいないと戦闘としておもしろくないよねと。そのような理由で選んでいます。
――もともと開発がスタートした時点で、模擬演武で使える武将を用意しようというのは決まっていたのでしょうか?
河原:“いわゆる無双武将ではないが、通常の武将とは異なるデザインの武将”は今までの『戦国無双』シリーズでも登場していました。今回もそういったポジションの武将を入れようということは、スタートから決まっていました。
それでその枠を誰にしようかと人選をしたのですが、なかにはストーリーを考えていく終盤にかけて「やはりこの武将は固有デザインのほうが盛り上がるよ!」となり、登場させた武将もいます。先ほどの岡部元信はまさにそのひとりですね。「岡部ならば今川を描くときにもだせるからいいね!」と。
――たしかにそうですね。猛将として有名でもありますし。でも、ファンの間では「えっ、なぜ岡部!?」と話題になりそうですね(笑)。
河原:そういう話は出てくるとは思います(笑)。でも、実際に遊んでいただくと「岡部がいてよかったね」と思っていただけるのではないでしょうか。
――個人的には細川藤孝でなく、兄の三淵藤英を使えることに驚かされました。「麒麟がくる」を見ていたので、とてもなじみがあったのでうれしかったです。
河原:もちろん、大河ドラマとストーリー的なコラボをしようと狙って登場させたわけではありません。足利義昭という存在を固有のデザインで登場させるときに、彼だけを固有にしても義昭サイドにあまり深みが出ないなと。それで、そばに仕えていた三淵を加えた形になります。
篠原:三淵は実際にゲームをプレイすると、とてもいい味がある武将ですよね。私はすごく好きです。
河原:私は朝倉義景がすごく好きですね。
――義景はかなりイメージが変わった武将ですね! 信長サイドで物語を描くと、どうしても滅ぼされる側なので名君主として見ることがないのですが、今回の義景はすごくしっかりしていて思わず助けたくなりました(笑)。
河原:デザインもそうですが、ストーリーのなかでの役割も「カッコいいな、今回の義景は」となるので、人気が出てくれたらうれしいなと思っています。
――模擬演武で使える武将は、武将自体の魅力も無双武将に負けず劣らずな者ばかりなので、ファンの反応が楽しみですね。
河原:そうですね。27人で少ないというようなイメージを覆していただけるとうれしいです。
篠原:なにより操作していて楽しい武将ばかりなので、ぜひ彼らでも戦ってほしいですね。社内でテストプレイをしていると、本来は揺れ物などCG周りのチェックをしなくてはいけないのに、……つい熱中してプレイしちゃうんですよね。
とくに今回はストーリーにすごく引き込まれてしまうので、気づいたら真剣にプレイをしてしまっているという(笑)。
一同:(笑)
武将の個性とアクションの遊びやすさを両立させた15の武器種
――武将には得意武器が設定されていますが、どういった基準で振り分けていったのでしょうか?
河原:たとえば前田利家の“槍の又左”や本多忠勝の“蜻蛉斬り”のように、史実的に謂(い)われがあるような武将はその武器を持たせようとすんなりと決まっていました。あとは主人公であったり、使う機会が多い武将に関しては、なるべく使いやすい武器を割り振ろうと決めています。
今回15種類の武器がありますが、武器種に関しても本作は『戦国無双』を描き直すタイトルになるので、刀や槍といった基本武器はチョイスしつつ、それだけではゲームとしておもしろくないので、護符や鼓(つづみ)のようなトリッキーな武器も用意しています。
――鼓はすごくおもしろい性能の武器ですよね(笑)。
河原:鼓は前作の長宗我部元親の三味線などがモチーフで、それを「今回新たに楽器として武器を用意するならばこういう形かな」と考えてデザインしています。
――今回は得意という概念はありますが、どの武器も自由に使えるようになったのがうれしいですよね。この仕様変更はどういったところから決まったのでしょうか?
河原:『真・三國無双』シリーズでは武器を持ち替えるシステムがあり、それを参考にもしています。また「この武将は好きだけど、この武器はちょっと……」という理由で使うことを敬遠されてしまうのを避けたかったんですね。
あとはシリーズを一新という部分で、武将たちの個性をもちろん出しつつもアクションでの遊びやすさを最大限出すには、やはり武器の持ち替えが自由にできることが重要だと考え、取り入れた形です。
――本作はストーリーを楽しむ“無双演武”、武将との絆を深めたり、強化素材を集めたりする“堅城演武”が用意されています。データ的にはリンクしていますが、あえてモードを分けた狙いは何でしょうか?
河原:これまでの『戦国無双』には“無限城”のようなやり込みモードが必ず用意されていたので、サブモードを用意しようという点はすんなり決まっていました。
ただ、ストーリーを追うプレイスタイルの方は“無双演武”をプレイして満足したら、なかなかサブモードまで手を出されないというケースもありまして。
極端な話でいえば、まったく遊ばないという方もいらっしゃるんですね。今回はメインの“無双演武”をプレイしつつも、サブモードに行くきっかけとして「強化要素を集めてみよう!」という形で用意しました。
もちろん、サブモードをプレイしなくてもストーリーはクリアできますが、よりストーリーモードを楽しく遊ぶ、やり込みを進めるにはサブモードも一緒に進めるといいですよ、というポジションになっています。
――プレイをして1つご質問なのですが、後半になると強化素材をたくさん要求されるのですが、これは“堅城演武”で挑めるステージの後半になるほど多く手に入るのでしょうか?
河原:そうですね。あとはクリア時にいい評価を得るとボーナスが付きます。さらに難易度を上げると、よりいい評価を得られやすくなるので、うまくプレイすると素材がたくさん手に入る仕組みです。
ほかにはメインモードで描き切れなかった、脇を固める武将たちのストーリーを“親密度”を上げることで見られるようになります。または本編ではありえない武将の組み合わせでのストーリーなども、楽しんでもらえる要素として用意しています。
――“無双演武”はすごいボリュームだし、“堅城演武”も輪をかけてすごいボリュームなので、本当に“シリーズ最大のボリューム”と言ってもさしつかないですよね。
河原:まさにそう言っていただけるように作っています。
――あとはアクション部分で言えば、神速アクションから通常攻撃が出せる、攻撃をキャンセルできる“閃技”によって操作感は『戦国無双』らしさを継承しつつ、格段にテンポ感が増している印象でした。このあたりのアクションでの見どころを教えてください。
河原:アクションについても今回は試行錯誤した部分が多数ありますね。やはり『戦国無双』として楽しんでいただくには“爽快感”が一番重要だということで、『戦国無双4』で好評だった神速アクションは入れようと考えました。
ただ、神速アクションは強力かつ便利で「それだけを使えばいいよね」となりがちでしたので、今回はそこから通常攻撃につなげるという形で、それぞれのアクションを楽しんでもらうようにしました。
さらに今までは通常、神速、チャージ、無双奥義という4つの攻撃手段が軸でしたが、その間をつなぐような“閃技”という要素を入れています。これは単に使うだけでなく、使うタイミングを考えることでさらに有利に戦えるようになりました。
今回武器を自由に選べることで個性が出しにくくなっているので、武将固有の閃技、チャージ、無双奥義を用意するなどして、使いやすさだけでなく武将の個性を出すようにしています。
――プレイを重ねるほどにどんどん「こんな使い方ができるんだ!」と発見があって、やり込みがいがある作りになっているわけですね。
河原:そうですね。実際に武将を成長させて閃技を覚えていくということもありますが、実際にその閃技をどういった敵に使うべきかを考えていただくと、より遊びごたえを感じていただけるのではないでしょうか。
――閃技は最大4つ装備できますが、開発陣で人気のセットテンプレート的なものはありますか?
河原:組み合せで言えば、やはり攻撃系でしょうか。特定の兵種に有効な閃技があるので、攻撃系は2つセットしておくといいですね。あとは攻撃力アップ“昂然”や無双ゲージ増加の“快気”を入れつつ、最後に移動系の“瞬動”を入れる、などがスタンダードかなと思います。
ただ、私の場合は“瞬動”でなく攻撃系を3つ選んで、1つは“快気”ですね。無双ゲージがあると属性攻撃が出しやすくなるので、敵の攻撃をキャンセルする効果と無双ゲージ増加を狙いつつ、3つの攻撃系閃技でどの兵種にも対抗できるようにしています。
篠原:基本、攻撃メインになりますね。
――とはいえ、何をセットしてもプレイヤーの自由で、これでないとダメというものがないのはいいですよね。
河原:能力アップ系ばかりにすると少し使いづらいかもしれませんので、そこはバランスかなと。
――気になるのはクリア後のやり込み的な要素ですが、こちらはいかがでしょうか?
河原:信長編、光秀編をクリアしたあとには“夢幻編”と呼ばれる、いわゆるifの展開が楽しめるストーリーが用意されています。これらはシナリオの解放条件がありますので、そこでのやり応えを感じていただきつつ、最終的に本作を遊びつくすという方向で楽しんでいただきたいです。
――予定されているDLCの内容について教えてください。
河原:まずは早期購入特典や店舗別特典、ダウンロード版の予約購入特典としてさまざまな衣装を用意しています。さらに、追加シナリオとBGMのセットや、オリジナルデザインの強力な武器や軍馬も配信予定です。
追加シナリオは本編とは違うファンタジーな内容で、より盛り上がって楽しんでいただけるにぎやかなシチュエーションになっています。弥助が主人公であるストーリーなど、本編では絶対描けない内容なのでぜひご期待ください。
――では発売を待っているファンに向けてメッセージをお願いします。
篠原:とにかく楽しんでいただきたいです。日本らしいこだわり、コーエーテクモゲームスらしい表現をふんだんに盛り込んでいます。実際に手に取って楽しんでいただけたらと思います。あとは個人的にお伝えしたいのは、濃姫に刀を持たせて戦うとすごくカッコいいのでオススメです!
河原:やっとナンバリングの最新作をお届けすることができました。初代『戦国無双』の世界を新たに描き直すということで、武将、ビジュアル、ストーリー、すべて一新していますので、シリーズを応援してくださってきたファンのみなさんはもちろん、今回初めてプレイする方、最近シリーズから離れていた方も遊びやすいタイトルになっています。ぜひご期待ください。
篠原:最後に宣伝にはなりますが、TREASURE BOXのキャラクター設定画集には、とある武将たちの姿をちょっとだけ描いています。こちらもぜひご覧いただければ幸いです。よろしくお願いします!
■戦国無双5(通常版)
■戦国無双5 TREASURE BOX
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※画面は開発中のものです。
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