無線式は正義だ! スマホゲームで使える低遅延ワイヤレスイヤホン“NSMO TWS”使ってみた

澤田真一
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 クラウドファンディング“Makuake”でワイヤレスイヤホン“NSMO TWS”が巨額の出資金を集めています。

 これはゲーミング用音響機器で、オンラインゲームのプレイに用いることを前提に開発されました。ゲーミング用イヤホンやヘッドホンは少しの音の遅延が重大なミスにつながってしまいますが、“NSMO TWS”はもはや人が感知できない0.047秒の低遅延を実現させました。この製品により、eスポーツの在り方が大きく変化するかもしれません。

eスポーツでは“有線式”が主流

 『PUBG』や『荒野行動』などのバトルロイヤルゲームでは、音が重要な要素です。他のプレイヤーキャラの足音の大きさや方向などを瞬時に察し、それに応じて動作を変えるというのがバトロワゲームの基礎技術。ですが、もしもその音に遅延が発生すればどうでしょうか。取るべきアクションが大幅に遅れ、結果としてすぐに敗退してしまいます。

 従って、バトロワゲームのプロ選手の間では今も有線式ヘッドセットが広く用いられています。有線式は無線式よりも確実かつ迅速な通信を可能にするからです。“NSMO TWS”は、そのような状況に反旗を翻した製品……と表現するべきでしょうか。

プレイを阻害しない伝達速度

 早速試してみましょう。実は筆者は、新興国でプレイヤーの多い『Rules of Survival』というバトロワゲームの長年のプレイヤー。日本35位になったこともあります。もっともこの順位は、日本人プレイヤーがあまりいないからこその成績。最近は仕事が重なっているせいでプレイできず、腕がめっきり落ちています。

 まあでも、やってみればいろいろと思い出すでしょう。iPhoneと“NSMO TWS”をペアリングし、いざ戦場へ!

 すると、驚きました。確かに音の遅延がない! 厳密にはコンマ00秒の遅れが生じているはずですが、人間の耳にそのレベルの遅れは察知できません。稜線のどこかから発生する銃声を捉え、他のプレイヤーを見つけて狙撃!! こうしたことを“NSMO TWS”は叶えてくれました。最高に気持ちいい!

スマホゲームはキラーコンテンツ

 ここで、海外のオンラインゲーム事情について解説を。“スマホを使ったバトロワゲーム”は、新興国にとってはネットインフラを構築するための重要なコンテンツになっています。

 筆者はコロナ前は日本とインドネシアを往復するような生活を送っていました。インドネシアはメルカトル図法の世界地図のせいで小さな島国と思われがちですが、実際は恐ろしく巨大な国。その中に2億5000万人の人々が暮らしています。“Bhinneka Tunggal Ika(多様性の中の統一)”の国是の下、国民には必ず1人1票が保障され、どの民族や地域も平等な発展を目指しています。

 しかし現実は、インフラや外国からの投資がジャワ島都市部とバリ島に集中し、それ以外の地域は慢性的な貧困に喘いでいる……ということもよくあります。すると地方部から都市部へ人が移動してしまい、農業や漁業といった一次産業の空洞化が発生します。現にインドネシアは、穀物や食用肉の大部分をオーストラリアやニュージーランドからの輸入に頼っています。

 これを解消するには“一次産業のスマート化”、即ち農村部にネットインフラを導入するのが絶対条件です。しかしネットを使ったことのない人に“ネットの重要性”を教えるのは、なかなか難しいことでもあります。そこで注目されるのが、キラーコンテンツとしてのオンラインゲーム。インドネシアのどこにいてもゲームができ、同時に“ネットがあればこんなことができる”ということを体感できます。

 インドネシア中央政府は、ノートPCよりも安価なスマホでできるゲームの普及に力を入れています。何と大統領杯も開催されるほどの盛況ぶりです。そして、オンラインゲームをプレイするためのデバイスは、新興国ではスマホが主流。となると、“スマホでのプレイをより快適にする周辺機器”が登場するのはむしろ自然の流れではないでしょうか。

 此度の“NSMO TWS”は、ある意味で“時代の先駆け”になっているのではと筆者は解釈しています。つまり、今や珍しい機器ではなくなったワイヤレスイヤホンが売れる必須条件に“オンラインゲームができるくらいの低遅延”というものが加わるのでは……とおぼろげながら思案しています。

ジャズを聴いてみよう!

 最後に、音楽を聴いてみましょう。今回の記事のために筆者が選んだのは、J・J・ジョンソンの“ダイヤルJ.J.5”。モダンジャズの名盤です。

 J・J・ジョンソンはトロンボーン奏者。実はトロンボーンという楽器はスウィングジャズには最適の性能を発揮できますが、より高速かつ複雑になったモダンジャズには対応できない代物と言われていました。長いスライドを行き来させなければならないという構造上、どうしても他の楽器に遅れを取ってしまうからです。

 しかし、トロンボーンは高音域で吹けば1~3ポジションまでのスライドで済みます。J・J・ジョンソンはこれを実行しました。文字で書く分には簡単ですが、トロンボーンを高音域で吹くというのはとんでもなく難しい技術。それを楽々とこなしたJ・J・ジョンソンのアルバムには「これはバルブ式トロンボーンではありません」という注意書きがあったほど。

 “NSMO TWS”が伝えるJ・J・ジョンソンのトロンボーンは、彼の息遣いまで見事に表れています。トロンボーンが奥行きのある音色の楽器であることを、“NSMO TWS”は証明してくれているようです。

 この製品は現在、8,829円からの価格でMakuakeに出品中です。

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