なぜ9年も放置した。インディーゲーム初心者が名作『風ノ旅ビト』を今さら遊んだ感想は…!【電撃インディー#17】

江波戸るく
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 電撃オンラインが注目するインディーゲームを紹介する電撃インディー。今回は、thatgamecompanyとSIEサンタモニカスタジオが開発し、現在はAnnapurna InteractiveからはPC/iOS向けに、SIEからはPS3/PS4向けに配信されている『風ノ旅ビト』のプレイレビューを、インディーゲーム初心者・江波戸がお届けします。

 なお、電撃オンラインは、尖っていてオリジナリティがあったり、作り手が作りたいゲームを形にしていたりと、インディースピリットを感じるゲームをインディーゲームと呼び、愛を持ってプッシュしていきます!

操作説明以外の“文字”がない作品

 本作がリリースされたのは今から9年前、2012年となります。以前から何度かタイトル名を耳にすることはありましたが、プレイするのは今回が初めてです。

 名作と謳われる『風ノ旅ビト』。9年、という数字を改めて見ると、そんな名作と言われている作品をどうして9年もプレイしなかったのだろう……という気持ちになります。振り返ってみれば、この9年、コンシューマーのシリーズ作品や、イベントが途切れないソーシャルゲームに追われていました。自分の中にある、“いつかやりたい作品リスト”には入っていたのですが……なかなか食指が伸びず、今に至ります。

 そんな筆者が今回、『風ノ旅ビト』をプレイしよう! と思い立ったのは、インターネット上で、本作のとある場所の風景を映したスクリーンショットを見たことがきっかけでした。

 その場所へ辿り着くことは、見つけることはできるのか……という想いを抱きつつ、ゲームを起動します。


 開始すると、主人公が砂漠に降り立ちます。見渡す限りの砂の平原には地名を示す看板もなく、行き先の指示が出るわけでもありません。

 この世界がどういうところなのか、一体何があったのか……広大な景色や点在するオブジェクトから、それらを想像させるのも本作の魅力の一つのようです。

 目的地が明確に示されているわけではなく、そもそもマップに該当するものがないので、何をすればいいのかも分からない状態。風のように気ままに……とさすらうには少々環境が厳しいようにも思えますが、遠くまで見渡せない砂漠の景色には“向こうが気になる”という想いがかき立てられます。

  • ▲砂に埋もれかけた建物が。

 道中、かつてここに存在していたのであろう文明の遺構をいくつも見かけます。〇ボタンで主人公が波動のようなものを放つと、宙を舞っている、細切れのスカーフが共鳴。高く跳び、滑空できるようになりました。使い放題ではないようですが、移動がかなり快適です。


  • ▲軽やかにジャンプ!

 なるほど、これで速く移動しつつ探索を進めればいいのだと、文字での説明はないものの察します。直感的に進められるのがいいですね。



 壁画を灯したり、街があったと思えるようなところへ辿り着いたり、不思議な白マントと遭遇したりと、謎は深まるばかりの世界観。

 冒頭のムービーから、かなり遠くに見える山を目指せばいいのかと思っていましたが、砂漠に隠されたものたちが立ちはだかり、簡単に到着させてはくれないような気がしてなりません。


 そんな中、自分と同じ姿をしたキャラクターを発見。

 この広大な砂漠を一人でさすらうことになるのだと思っていましたが、同じ境遇の仲間(プレイヤー)に出会うことができたようです。

 しかし話しかけることはできず、オンラインゲームによくあるチャットもないので、言葉を交わすことはありません。

 筆者がこのとき出会った旅ビトはずっとその場にぺたんと座っており、動く様子がなかったので、少ししてからそっと離れてしまいましたが……あのあと、無事に進めたのでしょうか?(隣に座るトロフィーがあることを知ったのはクリアしたあとでした。惜しい!)


  • ▲過去の断片は見られますが、全体を把握できるのはまだ先の模様。

 更に進んでいくと、スカーフが集まった生き物のようなものと出会いました。よく聞いていると鳴き声が聞こえますが、何の生き物なのでしょうか。

 そんな彼ら(?)は、主人公を導くように飛んで行きます。


  • ▲海を漂う魚のようでかわいいです。

 主人公は砂丘を走りますが、泳ぐように空を飛んでいく生き物たちを追いかけるのはなかなか大変です。滑空で早く移動できるとはいえ、使用回数に制限があるので、またすぐに離れてしまいます。それを補充できる、あのスカーフの切れ端も近くには見当たりません。

 何かいい方法は……と思っていると、そのうちの1体が近寄ってきます。すると、スカーフに光が灯り、再び滑空できるようになりました。必死に走る主人公のことを気遣ってくれたのでしょうか? そんな彼らは、旅の途中で出会う、親切なサポートキャラの位置にいるのかもしれません。

文字も地図もない旅路。言葉のない物語が散らばっている世界

 そうして飛べる頻度が増えたのでさくさくと進んで行ったところ、砂嵐のせいで薄暗く、どこか不気味さのあるエリアに踏み入ってしまいました。塔を中心としたそこは雰囲気が重苦しく、危険な場所なのではないか……と、早くここを出たい衝動に駆られます。


 風景が美しいことには違いないのですが、よからぬものの気配を感じます。中央にある塔には、先ほど出会ったスカーフの生き物たちが囚われていました。彼らの仲間を助け、力を借りつつ、塔を登っていきます。すると……。

 塔と砂嵐を越えた先には、差し込む橙色の光に、砂が反射する回廊がありました。

 初めて訪れましたが、初めて見たわけではない場所。「前にスクリーンショットで見かけた場所はここだったのか!」と、サイドビューになったエリアを滑りながら思います。旅行ガイドブックで見た地を、実際に訪れた時のような気持ちに。私は夕暮れの時間帯が好きなので、この回廊はずっと見ていられそうです。

 はっとさせられるほど陰影が綺麗な風景の中を進んでいくと、今度は下へ下へと落ちていきます。夕暮れから夜へ移り変わる時刻に感じる、美しさと寂しさを感じました。



 水はなさそうなのですが、まるで海中のようなところへ。藻のようにゆらゆらと揺れている布を伝って先へ進むと、今度は古代の兵器(に見えるなにか)がズラリと並ぶ場所へ出ました。


  • ▲怪しい者ではないので勘弁してください。

 通り抜ける時、嫌な予感はしていました。絶対これ動くだろう、と思ってしまったのですが、予想した通りです。

 見つかると、障害物に隠れていても避けられない攻撃を放ってくるのですが、食らうたびに主人公のスカーフが短くなっている気が……。ゲームオーバーになってしまうのかとヒヤヒヤしましたが、主人公が立ち上がってくれたのでほっと一安心。

 どうにか突破すると、その先で「おや?」となるような映像を見せられます。

 壁画などから、ここにあった文明は、先ほど見かけた兵器を用いた戦争で滅んでしまった……とも受け取れます。空の光から現れた主人公は、ここに生きていた種族の生き残りかなにかなのでしょうか?

プレイヤーに委ねられた解釈

 見上げるほど高い吹き抜けの塔を抜けた先は、一面の銀世界でした。暖かさのある光に満ちた空間から一変、真っ白な世界へ切り替わり、容赦なく寒さの感覚が襲ってきます。

 ここで再び、別の旅ビトと出会うことができたのですが、吹きすさぶ吹雪の中で見失ってしまいました。最後まで一緒に行けるかと思ったのですが、残念ながら叶わず。

 極寒の環境は奥へ行くほど厳しさを増し、主人公も雪にさらされて白くなっていきます。猛吹雪の中で体力が削られてしまっているのか、今にも倒れそうな主人公。コントローラーのスティックを全力で傾けていても、その歩みはどんどん遅くなっていきます。

 目的地の山すら見えなくなり、主人公はついに力尽きて倒れてしまいます。が、道中で何度も出会った白いマントの彼らが現れ……。


  • ▲一気に上空へ飛翔。流れる景色が爽快!

 徒歩で登るのは大変そうだなあ~、と思っていた険しい山を、一気に飛んで乗り越えることができました。この先に待ち構えているものに歓迎されているのか、空飛ぶ布が形成する生き物たちが、次々と主人公を山頂の光のところへと導いてくれます。

 そして、辿り着いた光の中へと踏み出す主人公。その姿は徐々に白に飲み込まれて見えなくなっていきます。歩いていった先に一体何があったのか……と気になったところで『風ノ旅ビト』の物語は終わっているようです。

  • ▲この後に取得したクリアトロフィーは“再誕”。その意味とは。

 トロフィーの一覧を確認したところ、普通にプレイしているだけではなかなか取れなさそうなものもありました。見落としたものを探すことと、別の旅ビトとの出会いを含めると、次は1周目とは異なる旅路となりそうです(今度こそ、誰かと一緒に最後まで進めたらいいな……と思いつつ)。

 世界の情報が文字で語られることはない本作。物語や世界観の考察が好きな人におすすめ、とされていた理由が分かりました。この広大な世界をすみずみまで見て回りたくなったので、また新しく旅に出てみようと思います。

©2012 Sony Interactive Entertainment America LLC. Developed by thatgamecompany.

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